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―株主還元強化で増配企業が増加、高配当利回りの割安成長株をリストアップ―
高配当利回り株は全体相場が乱高下するなかでも強い動きをみせている。ウクライナ情勢の緊迫化に対する警戒が高まった2月下旬は大幅な下落を強いられたが、その後は急速な戻り足に転じた。配当利回りに着目した株価指数に連動する上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100) <1698> [東証E]が6月1日に上場来高値を約4年5ヵ月ぶりに更新したほか、中小型の高配当株にも頑強な値動きを示すものが目立つ。
全体相場は5月中旬からリバウンド局面に入り上値追いを継続していたが、足もとで再び大きく値を崩している。前週末10日の米国株式市場がインフレ高進による金融引き締め加速への懸念から急落したことを受けて、13日の日経平均株価は800円を超える波乱安に見舞われ、一気に2万7000円割れまで水準を切り下げた。こうしたなか、今回は下落局面に強いとされる高配当株に注目し、先月までに一巡した3月期本決算で23年3月期に増配を計画している企業の中から、配当利回りが高水準で、かつ株価指標面に割安感のある銘柄を探った。
●23年3月期も増配ラッシュ続く
先行き不透明感が強まるなかでも上場企業は株主還元を重視する姿勢を崩していない。23年3月期の配当予想を開示している約2000社を調べたところ、増配を予定する企業はおよそ700社に上った。全体の3社に1社が配当を増やす計画だ。22年3月期はコロナ禍で落ち込んだ業績が急回復したことで増配する企業が大幅に増えたが、今期は原材料高などが重荷となり、最終利益段階で減益または赤字を見込む企業が半数を超える。
こうした状況にもかかわらず、手元資金を配当に振り向ける企業が多いのは、株主還元強化の機運が高まっていることが背景にある。海外投資家を中心に還元強化を求める声が強く、株主還元に積極的な企業が増えているためだ。ただ、配当は予想ベースで業績次第では減配のリスクがあることには十分注意しておきたい。
以下では、23年3月期に増配を計画している配当利回り3.5%以上の高配当株のうち、今期業績が営業利益段階で増益を見込み、かつ予想PER(株価収益率)に割高感がなくキャピタルゲインも期待できる6銘柄を紹介していく。
※配当利回りは6月13日終値ベースで算出。
【アマノ】 配当利回り4.03%
アマノ <6436> [東証P]は就業管理システムと駐車場管理システムの国内大手で、工場向け集塵機や清掃機器など環境関連分野でも高水準な導入実績を有する。コロナショックを受けた21年3月期は11期ぶりに減収減益となったが、すぐに立て直し23年3月期は営業利益165億円(前期比28.0%増)と最高益路線に復帰する見通しだ。駐車場オーナーの投資意欲回復を背景にパーキングシステムが成長軌道へ回帰するほか、就業管理ソフトやクラウドサービスなども伸びる。年間配当は前期比5円増の100円と連続増配を計画するほか、発行済み株式数の1.35%に相当する100万株または25億円を上限に自社株買いを実施するなど株主還元にも積極姿勢をみせる。予想PERは16倍前後と過去の水準と比べて割高感はなく上値期待は強い。
【シチズン】 配当利回り5.27%
シチズン時計 <7762> [東証P]は新型コロナウイルスの影響による時計販売の低迷などで、21年3月期は95億5100万円の営業赤字に転落したが、22年3月期は222億7300万円の黒字と急回復を遂げた。主力の時計が北米市場で好調だったほか、工作機械も半導体関連向けを中心に大きく伸びた。続く23年3月期は部材調達難やコスト高の影響があるものの、時計事業が牽引する形で営業増益を確保する計画だ。為替差益の計上を織り込んでおらず最終利益は減益の予想だが、想定為替レート1ドル=120円と実勢より10円以上も円高に設定しており、上振れする公算が大きい。配当は中期経営計画で掲げる配当性向50%を踏まえ、年30円(前期比12円増)を予定し、配当利回りは5%を超える。株価は約2年5ヵ月ぶりの高値圏に浮上したが、予想PER9倍台、PBR0.7倍近辺と割安感が強く、指標面からは一段の上昇余地がうかがえる。
【ダイヘン】 配当利回り3.50%
ダイヘン <6622> [東証P]は変圧器を祖業とする電力機器のトップメーカー。アーク溶接ロボットや 半導体製造装置向け高周波電源装置でも世界市場で高いシェアを誇る。また、直近では電気自動車(EV)向けの急速充電器や車体軽量化に対応した接合機器、エネルギーマネジメントシステム、省エネ電源といった脱炭素関連ビジネスに傾注しており、業容拡大に意欲的な姿勢をみせる。足もとの業績は半導体関連機器事業が旺盛な需要を背景に高成長が続いている。23年3月期は営業利益165億円(前期比16.3%増)と3期連続の最高益を計画し、配当は150円(前期比40円増)に増配する方針だ。配当利回り3.5%、予想PER8.8倍近辺と割安感が強く投資妙味は大きい。
【ピラー】 配当利回り3.92%
日本ピラー工業 <6490> [東証P]は産業機械の流体の漏れを防ぐメカニカルシールやパッキン、ガスケットなどの密封部品メーカー。半導体洗浄装置向けフッ素樹脂製の継ぎ手では世界シェア首位を誇るグローバルニッチトップ企業だ。足もとの業績は活況な半導体市場を追い風に、稼ぎ頭である半導体関連向け製品の絶好調な受注が続いている。22年3月期は2度にわたる業績上方修正を経て、売上高406億7000万円(前の期比34.7%増)、営業利益113億9200万円(同2.4倍)といずれも過去最高を大幅に塗り替えた。23年3月期も増収増益を見込み、配当は前期比2円増の108円を予定している。成長投資にも余念がなく、京都府福知山市に新工場を建設し、生産能力を8割増強することで、旺盛な半導体の設備投資ニーズを取り込む構えだ。
【日特塗】 配当利回り4.33%
日本特殊塗料 <4619> [東証P]は自動車用防音材や防錆塗料を主力とする自動車部品サプライヤーで、国内の幅広い自動車メーカーと取引実績を持つ。前期は原材料価格高騰が重荷となったものの、営業利益14億8200万円とコロナ禍の影響を大きく受けた前の期と比べて7割を超える大幅な伸びを示した。23年3月期は自動車の生産台数が回復するなか、営業利益は30億円と前期比倍増を見込み、配当は42円と2円増配を予定している。同社はプライム市場の流通株式時価総額基準を満たしておらず、株主還元の充実に取り組んでいることから業績次第では一段の配当増額が期待できそうだ。指標面では配当利回りが4%を超える一方、予想PER6倍台、PBR0.5倍弱と超割安で見直し余地は大きい。
【サンフロ不】 配当利回り4.28%
サンフロンティア不動産 <8934> [東証P]は大規模修繕が必要な東京都心の中小型オフィスビルを、リノベーションで高付加価値物件に再生するリプランニング事業を主力とする。前期は不動産再生ビジネスで利益率の高い中長期保有物件を売却し、営業利益121億2700万円(前の期比53.3%増)と急回復をみせた。23年3月期も増収増益基調が続く計画で、配当は46円と前期実績から2円積み増す方針だ。今期はコロナ禍の影響と新規ホテル開業費用の計上で前期大幅赤字に沈んだホテル・観光事業が巻き返しを図る。ホテル物件の売却を計画するほか、宿泊需要の回復で運営するホテルの稼働率が改善する見通しだ。同社は期初予想を保守的に算出する傾向が強く、業績、配当ともに上振れする可能性があるとみられる。
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