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アドバネクス Research Memo(8):メキシコ工場は黒字化間近に

配信元:フィスコ
投稿:2019/07/17 15:58
アドバネクス<5998>の今後の見通し

(1) 埼玉工場
2016年1月に新設された埼玉工場は、自動車部品専用の自動車関連事業の中核工場となる。まだ3年しか経っておらず損失金額が大きい。2018年7月に、ようやくIATF16949の認証を取得した。同認証は、自動車業界固有の品質マネジメントシステムの要求事項をISO9001:2015に追加した規格であり、ISO/TS16949に替わる。当初はISO/TS16949の取得を目指していたが、認証規格が定義の変更や要求事項が倍増されるなど大幅な改定が成されたIATF16949に替わったことで想定以上の期間を要した。

今後は品質やコスト競争力を高め、新製品の量産を進めることで、2年以内の黒字化を目指す。2018年3月期まで、機械設備の購入および設置、人材採用、教育、試作、客先評価、顧客認定監査などを行った。2020年3月期にはパワーコントロールユニット、インバーター、バッテリーなど多くの次世代自動車基幹部品向け量産が開始される予定。新製品の生産が軌道に乗れば、稼働率向上に伴い収益性も改善する。2020年以降の需要拡大に対応するため、2019年6月に工場面積を3,670平米拡張する増設工事を完了した。

(2) メキシコ工場
自動車向けが75%を占めるメキシコ工場は、品質マネジメント規格IATF16949を取得した。米国政府の政策変更があり、競合先がメキシコ進出に躊躇したため、特に日系企業から想定以上の引き合いが同社に集中している。徐々に売上が増加していることから、2020年3月期後半にブレークイーブンとなることが見込まれている。2021年3月期以降から大型プロジェクトが始まり、その後の本格化により黒字化は間近となる。2023年3月期に稼ぎ頭となると期待されている。南米、日本、欧州へも輸出する。

(3) インドネシア工場
自動車向け依存度が95%のインドネシア工場は、2020年3月期後半のブレークイーブン、2021年3月期黒字化を計画している。顧客の信頼回復に伴い、引き合いと受注件数が増加した。来期から拡大局面に転換する見込みだ。一方、同国の最低賃金高騰が足かせ。

(4) ベトナム工場
2018年11月に、旧工場の4倍の面積(8,000平米)の新工場に移転。2006年以来、ベトナムにおいて主にOA機器向けに線ばねを生産販売してきた。新工場では、新たにプレス加工を導入し板ばねの生産を開始する。将来的にはインサートモールド、深絞り加工品へと拡大する。日本や中国から生産移管されるOA機器向けの需要を取り込む。旧工場の収益性を超えるのには2~3年を要する見込みだが、4年後以降は収益倍増を狙う。

(5) インド工場
2019年4月に、自動車向けを中心に線ばねを生産するインド工場が稼働した。近年開設した他の新工場の立ち上がりが鈍く、収益状況が軒並み計画値を下回っていることに鑑み、インド工場は賃貸とし、面積も2,157平米と同社工場としては小さな規模から始めた。シンガポールとタイから生産品目を移管することで、立ち上げ時の仕事量を確保している。欧米系、日系、インド系の有力顧客から多くの引き合いが来ている。稼働から1年以内に黒字化する見通しだ。

(6) チェコ工場
欧州では、イギリスに生産拠点を有するが、大陸では初の工場をチェコに開設する。2019年6月に完成したが、賃貸面積の7,700平米を当初からフルに使うわけではない。投資先行で立上げコスト負担が大きくなったメキシコの二の舞を演じないよう、イギリスから医療用ばねを、千葉工場から深絞り製品を移管しスタート時の生産量を確保することでマイナスのインパクトを軽減する。最終的には、欧州の自動車関連ビジネスの拡大を目指す。チェコには日系・欧米系自動車メーカーや自動車部品メーカーが多く、自動車産業の集積地として注目されている。同工場の立地は、ドイツへのアクセスも良い。黒字化は、稼働後2年以内を目標とする。


顧客の生産移管に迅速・効率的に対応が可能
3. 生産アロケーションの変更
(1) グローバル並行生産
自動車メーカーは、統一されたクルマづくりの設計思想に基づき、共通車台をベースに複数車種の同時開発を行い、部品・ユニットの共通化を進め、開発の効率化を図っている。部品の共通化は、同社の1製品当たりの生産量を増加させている。2020年3月期における特定製品の計画生産量を2015年3月期の水準と比較すると、代表的なインサートモールド製品が2.6倍、同じく代表的な板ばね製品が3.4倍、プラスチック部品締結部の補強部品インサートカラーが2.5倍となる。

同社の17の世界製造拠点数は、精密ばね業界の中で飛び抜けて多い。海外拠点数の多さは、グローバル発注システム上で有利になる。グローバル並行生産は、同一製品の受注が、例えば日本から始まり、タイ、中国、インドと展開される。自動車部品は、引き合い、見積、設計・試作の繰り返しなどの工程を経てから量産開始となる。海外における日本と同時もしくは追加的な受注では、設計・試作の工程が省かれる。金型などの量産設備を日本から海外工場に移管することで、スムーズな生産立ち上げを可能にする。中期経営計画において利益率が大きく改善する要因として、増収率ほど販管費などの経費が増えないことが挙げられている。

(2) 生産アロケーションの変更
米中貿易戦争とブレグジットは、製造業にとって中国とイギリスからの生産移管を喫緊の課題としている。完成品メーカーやTier1メーカーにとって、生産拠点を変更しても短時間に対応できるTier2メーカーを評価する。同社は、ここ数年でメキシコ、米国、ベトナム、インド、チェコに新拠点を立ち上げており、生産移管の受け皿を提供できる。

収益性の高い医療市場では、2019年3月期に米国工場が量産を開始した。今期は、チェコ工場の操業入りが計画されている。2021年3月期になると、自己注射器用ばね及び深絞り加工品の量産開始が見込まれている。グローバル生産は、コストメリットが大きい。パソコン、携帯電話、カメラ向け部品の場合は、生産量が年10万個から1,000万個単位であることから、1ヶ所で集中生産することが適している。一方、生産単位が1,000万個から1億個となるディスポーザブル医療キットは、関税、国内生産優遇、輸送費などを勘案すると分散生産による地産地消の方にコストメリットがある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

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配信元: フィスコ
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