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アドバネクス Research Memo(6):2019年3月期の通期予想を大幅下方修正

配信元:フィスコ
投稿:2019/01/09 15:36
■今後の見通し

1. 2019年3月期の業績見通し
アドバネクス<5998>の2019年3月期の通期予想は、上期の業績不振を踏まえ下方修正された。売上高が前期比4.5%増の21,200百万円、営業利益で同61.5%減の100百万円、経常利益が同24.2%減の180百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同39.8%減の30百万円と増収減益を見込む。第2四半期に材料費が前年同期比10%以上高騰したが、鋼材価格は2018年11月後半から下落し始めた。同社は、それまでの値上がり分を転嫁するための値上げ交渉を継続中だ。一方、開設後間もない“未成年”工場は、足元の生産量が少なく収益が悪いものの、引き合いが多く、投資を止められないことから固定費を抑制しづらいというジレンマに陥っている。設備投資額は、2018年3月期の1,568百万円から、2019年3月期は3,111百万円に跳ね上がる見込みだ。減価償却費は、2018年3月期の939百万円から2019年3月期は1,035百万円へ増加することが予想されている。


収益プラス工場の営業利益合算額は12億円
2. 工場別収益改善の取り組み
同社の国内外の工場の収益状況は、開設もしくは買収後の経過年数で顕著な傾向が見て取れる。特殊要因を除けば、開始後5年以上経過する工場はおおむね黒字である。一方、4年未満の“未成年”工場は、総じて損失を計上している。稼ぎ頭は、タイ及びイギリスにある工場群になるが、地域が分散する中国でも利益を上げている。日本に古くからある新潟工場、大分工場、青森工場も収益がプラス側にある。2018年3月期の黒字工場の営業利益の合算額は、中期経営計画の2021年3月期の目標値である12億円に相当する。現在、収支がマイナスの工場の損失幅圧縮、黒字転換に注力している。


埼玉工場は自動車業界の品質マネジメントIATF16949認証を取得
(1) 埼玉工場
2016年1月に新設された埼玉工場は、自動車部品専用の自動車関連事業の中核工場となる。まだ2年しか経っておらず損失金額が大きい。2018年7月に、ようやくIATF16949の認証を取得した。同認証は、自動車業界固有の品質マネジメントシステムの要求事項を ISO9001:2015に追加した規格であり、ISO/TS16949に替わる。当初はISO/TS16949の取得を目指していたが、認証規格が定義の変更や要求事項が倍増されるなど大幅な改定が成されたIATF16949に替わったことで想定以上の期間を要した。

今後は品質やコスト競争力を高め、新製品の量産を進めることで、2年以内の黒字化を目指す。前期まで、他の工場から設備を移管し、人材採用、教育、試作、客先評価、顧客認定監査などの先行投資を行った。パワーコントロールユニット、インバーター、バッテリーなど多くの次世代自動車基幹部品向けの供給が決まっている。新製品の生産が軌道に乗れば、稼働率向上に伴い収益性も改善する。2020年以降の需要拡大に対応するため、工場面積を5,000平米から9,000平米程度へ拡張する増設工事に着手しており、2019年6月に完成する予定でいる。

(2) 千葉工場
船橋電子(株)を買収して得た千葉工場は、宮城工場を統合したものの損失計上が続く。2015年から携帯電話用アンテナの売上高が半減したことが響いている。新市場の開拓に取り組んでいるが、試行錯誤の末、顧客要求に対応できる目途が立ってきた。コンタクトプローブを中心に、バックオーダーは100件以上に達した。欧州における深絞り加工品のニーズには、埼玉工場やチェコ工場が対応するため、千葉工場から技術移転を行う。3年以内に黒字化する見通しだ。

(3) インドネシア工場
買収したインドネシア工場は、今期中にブレークイーブンもしくは黒字化を目指す。子会社化後に、受注を一旦控え、同社の生産技術や品質・納期管理システムを導入して品質改善を図り、顧客の信頼を回復した。2018年4月に、社名もPT. Advanex Precision Indonesiaへ変更した。社名変更に伴い、今上期に予定していたスクラップの海外販売が、税関の問題から下期にずれ込んだ。現地通貨の下落により、仕入れコストが上昇した。今後は、線ばね、フォーミングの導入を計画しており、新規受注の獲得に励む。

(4) メキシコ工場
2018年3月期にアメリカ工場がメキシコ工場の立ち上げ支援を行ったが、2019年3月期は日本から営業と技術の両面でバックアップしている。大型プロジェクトが決まるなど、今後の期待は高まるものの、現時点では本格量産体制のまま低操業率の状態が続く。アメリカ政府の政策変更があり、競合先がメキシコ進出に躊躇したため、特に日系企業から想定以上の引き合いが同社に集中している。日本国内でも日系Tier1への売り込みを強化している。メキシコには、日本で実績のある設備と金型を移管する。技術面では、線ばね及びプレス技術者を派遣する。2018年5月以降、徐々に生産が上がっており、2019年3月期中に新製品の量産を開始する。黒字化にはさらに1~2年かかりそうだが、将来性は高い。

(5) ベトナム工場
2018年11月に、旧工場の4倍の面積(8,000平米)の新工場に移転した。生産設備の移設も完了し、既に生産を始めている。税制優遇の面では、旧工場が操業から10年以上が経過したため消滅していたが、新工場の開設で優遇期間を延長することが可能となった。2006年以来、ベトナムにおいて主にOA機器及び自動車(二輪車)向けに線ばねを生産販売してきた。旧工場は、建屋面積が2,000平米と小規模のため増設余地がなかった。ベトナムは、自動車向けなどで今後も成長する見通しであり、線ばね以外に板ばねや線径がより太い線ばねと製品ラインナップを拡大する計画だ。日本やタイからベトナムに流出したOA機器向けの需要を取り込む。旧工場時の収益を超えるのは、2~3年後になる見込みだ。


2019年に稼働するインドとチェコの工場は早期黒字化を目指す
(6) インド工場
インド政府の後押しを受けたインド工場は、2019年1月から稼働を開始する。近年開設した新工場の立ち上がりが鈍く、収益状況が計画値を下回っていることに鑑み、インド工場は賃貸とし、面積も2,157平米から始める。シンガポールとタイから生産品目を移管することで、立ち上げ時の仕事量を確保する。稼働から1年以内に黒字化する見通しだ。周りに自動車Tier1の優良顧客が多い。2018年7月に、インドで4番目となるベンガルール営業所を設置した。

(7) チェコ工場
欧州では、イギリスに生産拠点を有するが、大陸では初の工場をチェコに開設する。工場の面積は7,700平米で、2019年6月に稼働入りする予定だ。投資先行で立上げコスト負担が大きくなったメキシコの二の舞を演じないようにイギリスから医療用ばねを、千葉工場から深絞り製品を移管しスタート時の生産量を確保することでマイナスのインパクトを軽減させる。最終的には、欧州の自動車関連ビジネスの拡大を目指す。チェコには日系・欧米系自動車メーカーや自動車部品メーカーが多く、自動車産業の集積地として注目されている。同工場の立地は、ドイツへのアクセスも良い。黒字化は、稼働後2年以内を目標とする。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

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配信元: フィスコ
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