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AI投資は拡大途上、続く夢は「核融合発電」 フジクラ岡田直樹社長に聞く <トップインタビュー>

配信元:株探
投稿:2026/03/04 10:00

―140年超の老舗企業がAI革命の真ん中に躍り出ることができた理由―

 2024年から本格化したAI(人工知能)相場は多くの新たなスター企業を生んだ。米ビッグテックが巨額の投資合戦を繰り広げるAIデータセンター の光ファイバー ケーブルで高いシェアを持つフジクラ <5803> [東証P]はその典型例だろう。創業140年超の歴史を持つ老舗企業でありながらAI相場の中で一躍、注目され、2024年年初から株価は20倍超。2022年4月に社長に就任し、様々な構造改革によって業績が停滞していた企業を、時代のど真ん中の先進企業へと蘇らせた岡田直樹社長に、成功の要因と今後の成長戦略を聞いた。(聞き手・樫原史朗)

●しがらみがない一技術者だったからこそ断行できた経営改革

──世界的なAI相場が続く中、この2年間でフジクラの事業は急拡大し、株式市場でも主役の1社と言える存在になりました。この現状を岡田社長ご自身はどのように受け止めていますか。

 いま振り返ってつくづく思うのは、危機があったからこそ、会社を良い方向に変えることができたのではないか、ということです。というのも、当社はほんの6年前、2020年3月期には385億円の最終赤字を出し、まさに経営危機と言える状態に陥っていたのです。情報通信、エレクトロニクス、自動車の主要3事業において過大な投資を行い、事業拡大を急ぎ過ぎていたこと、中国勢が台頭してきたこと、そして事業面で中国への依存度が高くなり過ぎていたことなどが要因です。

 当時、私は千葉県の佐倉事業所で、新たに開発した光ファイバーケーブルのプロモーション戦略をけん引し、事業拡大に努めていたのですが、2020年1月に本社に呼び戻され、当社140年の歴史の中で最悪の決算を目の当たりにしました。技術者である私がなぜ本社に呼び戻されたのか、実のところはいまだによく分からないのですが、覚悟を決めてその年の4月に常務執行役員となり「100日プラン」を策定。100を超える改善項目をリストアップし、不採算事業の整理・売却や拠点の統廃合など、細部に至るまで徹底的に構造改革を進めていきました。

──その後の業績推移を見れば、構造改革は大成功だったと言えます。技術の最前線にいた岡田社長が、なぜそれほどドラスティックな経営改革を実行できたのでしょうか。

 やはり大きかったのは、一技術者に過ぎなかった私には「しがらみ」がなかったことです。本社内に深い人間関係があり、従来の経営手法に慣れている人では、痛みを伴う大きな改革はなかなかできません。ですが、私にはまったくそれらがなかったので、物事の是々非々だけを冷静に判断することができたのです。

 構造改革を進めるに当たって、私がとにかく心掛けたのは「スピード」です。事業不振の状態が長引いてしまうと、働いている人たちの気持ちが疲弊してしまいます。ですから、いかに短期間で経営を変えていくかということを最優先に考えて取り組んでいきました。

●大手ハイパースケーラーが認めた光ファイバーの独自技術

──貴社は140年以上の歴史を誇る老舗企業で、住友電気工業 <5802> [東証P]や古河電気工業 <5801> [東証P]と並ぶ“電線御三家”として知られています。現在の躍進には、社是として強調されている二つの言葉が意味を持ったように感じますが。

 「進取の精神」と「技術のフジクラ」という言葉で、当社のDNAとして捉えています。私が入社した1980年代当時は上司や先輩からよく聞かされ、社内にも浸透していました。そもそも当社が競合する2社はいずれも巨大な旧財閥系企業であり、そうではない当社が普通に同じことをやっていたら、規模でも資金面でもとても太刀打ちできません。だからこそ技術にこだわりを持って、ターゲットを絞って集中して取り組んでいかなければならない、という教えです。

 ところがこの二つの言葉のうち、「技術のフジクラ」という言葉をいつの間にか聞かなくなっていました。ですから私が本社に戻ってから、この二つの言葉を意図的に社内外にアピールし、ようやく社内でも改めて浸透してきたのではないかと感じています。いま、当社の独自技術が米国の大手ハイパースケーラーから高く評価されています。結果論かもしれませんが、改めて先人の言葉の重みを感じているところです。

──主力製品の「SWR(スパイダー・ウェブ・リボン)」ですね。具体的に、他社製品とはどのような違いがあるのでしょうか。

 簡単に説明すると、従来の光ファイバーケーブルでは、全体を樹脂で固めて束ねた光ファイバーを採用していましたが、「SWR」はその名の通り、光ファイバー同士を間欠的に接着して蜘蛛の巣のように束が広がる構造になっています。これによって、従来製品と比べてはるかに柔軟な動きができ、細いケーブルの中に無駄なく高密度に詰め込むことができるようになりました。これが細径高密度光ファイバーケーブルの「WTC(ラッピング・チューブ・ケーブル)」です。

 通常、通信キャリアが使う光ケーブルでは多くても864本の光ファイバーが組み込まれる程度ですが、いまデータセンター用に大量に使われるようになった「WTC」では、「SWR」技術によって1万3824本もの光ファイバーを実装することができています。実は業界の常識では、ケーブルに沿ってファイバーが均一ではない「SWR」の構造は“邪道”と考えられていました。しかし、あえて常識を破ったからこそ、こうした製品を生むことができたわけです。

●当事者の実感としては、AI投資にバブルの兆候は皆無

──ハイパースケーラーが認める技術力は、常識を破ることから生まれたということですね。

 確かに彼らから認められたのは、「SWR」と「WTC」(以下、「SWR/WTC」)の技術力が大きいのですが、あとは周辺技術を含めて一気通貫でサービスを展開する体制が整っていることも影響しているのではないでしょうか。データセンターに光ファイバーを敷設するには、ケーブルを納めるだけではなく、光ファイバー同士を「光コネクター」や「融着作業」によってつながなくてはいけません。さらに周辺のコンポーネント類や、それらを設置するためのエンジニアリング技術も求められます。当社は、これらの製品やサービスをすべて提供できる世界でも稀有な存在です。

 「SWR/WTC」は世界一の光ファイバーケーブルだと自負していますが、実はコネクターと光ファイバー融着接続機に関しても、ニッチな範囲ではあってもかなり以前から当社の技術力は世界中の顧客に浸透していました。従来の光ファイバーケーブルは国内展開が中心でしたが、「SWR/WTC」の強みがAIデータセンターの建設ラッシュで見出され、コネクターや融着接続機とともに、トータルのソリューションとして北米市場で大きく花が開いたということなのです。

──実際に大手ハイパースケーラーからの引き合いに変化を感じたのはいつ頃からですか。

 2023年度の後半から引き合いが急増しました。ただ当時はAI投資ではなく、クラウド用のデータセンター需要が拡大していると表現されていました。2024年度に入ってからは、ご存じの通り生成AI向けのデータセンター投資が本格化し、それに伴い「SWR/WTC」の売り上げも急増しました。この状態は今も続いており、当社では増え続ける需要に対応するために、新工場の建設などの投資を積極的に行っているところです。

 いま、大手ハイパースケーラーの巨額投資に対して「AIバブル論」のような否定的な見方が一部で囁かれています。ですが、当事者の私たちとしてはそうした実感は皆無です。ハイパースケーラーと称される企業のほとんどは当社の顧客ですが、実際、各社の決算を見ても業績は好調ですし、投資欲もまったく衰えていないどころか、ますます強まっています。しかも、それを後押しするトランプ米大統領による国策としてのAIインフラ強化でも、極めて大規模な投資計画が示されています。

 2000年代初頭のITバブルは対象が情報通信分野だけでしたが、AIは情報通信分野だけではなく他産業にも波及しています。すでに当社を含めて膨大な実需が生まれていますし、産業の裾野の広がりを考えても、過去のITバブルと同様に考えることはできません。生成AIの性能は、1年前と比べて格段に上がっていますし、それがフィジカルAIや自動運転などへと広がっていくことになる。さらに生成AI革新によってソフトウェアさえ不要になると言われ出した。私の感覚では、少なくともあと5年、あるいはそれ以上の期間、AI投資の勢いは続くのではないでしょうか。

●「核融合発電」の実現に不可欠な「超電導」技術でも世界トップへ

──情報通信事業の飛躍的な成長もあり、2023年に策定した中期経営計画を大きく上振れて前倒し達成しています。中計策定時にこの状況は想定されていたのでしょうか。

 正直、まったく想像していませんでした。ただし、一連の構造改革を進めてステークホルダーと対話を重ねる中で、多くの分野で事業縮小やむなしという流れだった一方、積極的に投資を継続すべきと考えたのが、次世代光ファイバーケーブルに位置付けていた「SWR/WTC」でした。当時はまだ売り上げも小さかったですが、「ここだけはリソースを投入すべきではないか」と考え、実行したことは事実です。私の出身事業なので、手前味噌になってしまいますが(笑)。

──続いて2028年度に向けて次期中期経営計画を策定中とのことですが、現段階で話せる方向性などはありますか。

 現中計では、情報インフラ、情報ストレージ、情報端末を核心的事業領域と位置付け、集中的にリソースを投下してきました。次期中計でもこの方針は変わりません。AIの進化によってこれらの領域の技術はレベルアップしていくでしょうし、当社はさらに大きく貢献できると考えています。

 そして、この三つの事業領域以外に注力すべき新規事業分野があります。一つは「超電導」であり、もう一つは「ファイバーレーザー」です。この二つに夢を感じるのは、いずれも「核融合発電」の実現に結び付く技術だからです。

 「核融合発電」は日本でも高市政権のもと、2030年代の発電実証に向けて官民挙げて取り組みが進んでいますが、技術的には主に二つの方法があります。超電導マグネットでプラズマを閉じ込める「プラズマ方式」と、強力なレーザーで燃料を爆縮させる「レーザー方式」です。プラズマ方式では超電導技術が、レーザー方式ではファイバーレーザーが期待されており、当社はその両分野で長年、研究開発を進めてきています。高温超電導線材に関しては現在、すでに多くの企業から引き合いをいただいており、すでに60億円を投じて新工場の建設を進めているほか、56億円のさらなる増産投資も決定しました。「SWR/WTC」と違ってすぐに収益化できる段階ではありませんが、将来を見据えての投資です。

 何と言っても、「核融合発電」はエネルギー調達の概念を根本から変えると言われる夢の技術ですから、米国ではスタートアップ企業が続々と誕生しています。最も有名なのは、マサチューセッツ工科大学からスピンオフした「コモンウェルス・フュージョン・システムズ」ですが、すでにハイパースケーラーなどから凄まじい額の資金を調達しています。

──2030年頃まではAIデータセンター増強が続き、その後は「核融合発電」によるエネルギー革命が始まる、というイメージでしょうか。

 そうですね。ただその前に、これから全米各地に誕生する巨大なデータセンター群をつなぐ光ファイバーケーブルなどの膨大なインフラが必要になります。さらにAI投資の中心は、米国から全世界へ広がっていくでしょう。例えば日本のデータセンターへの投資額は、米国に比べればまだ微々たるものです。今後、「ソブリンAI」という言葉の通り、各国がAIへの投資を進めていくことは間違いありません。その分、当社の光ファイバーケーブルには市場拡大の余地があるということです。

 そして「超電導」に関しては、電力ケーブルはもちろん、超電導リニア、医療用MRI(磁気共鳴画像)、航空機などへの応用が期待でき、潜在的な活用範囲は光ファイバーよりはるかに広いと考えています。「超電導」には、液体ヘリウムでマイナス269度にまで冷却する低温超電導と、液体窒素を使う高温超電導があります。当社は「HTS(高温超電導線材)」の研究開発を続けており、世界トップレベルの性能を有しています。希少なヘリウムと異なり、窒素は空気中の約80%を占めるため、この開発が実を結べば「超電導」の商業化に大きく近づくことになるのです。

──なるほど。では最後に、個人投資家へ向けて、特に伝えたいことがあればお話しください。

 当社を見ていただく際のキーワードは、やはり冒頭に挙げた「進取の精神」と「技術のフジクラ」です。AIによって世の中はこれまで以上に大きく変わっていき、技術も進歩していきます。当社は140年以上の歴史を持つ企業ですが、成熟して技術の進歩のない分野は、極端に言えば我々のビジネスフィールドではない、とさえ考えています。だからこそ、フジクラの技術を生かせる領域がさらに広がっていくと考えています。

 光ファイバーは世の中を変えたと確信しています。そして、次の「超電導」技術はさらに大きく世の中を変えるポテンシャルを持っています。この技術によって「核融合発電」が実現すれば、利便性が高まることはもちろん、世界的な環境問題、エネルギー問題の解決にもつながります。私自身、そうした夢のある仕事に携われていることは非常にありがたいと感じていますし、できれば多くの個人投資家の皆さんにも、この感覚を共有していただきたいと願っています。

◇岡田直樹(おかだ・なおき)
株式会社フジクラ 代表取締役社長CEO。1964年生まれ。1986年、千葉大学卒業後、藤倉電線(現・フジクラ)入社。以来、30年以上にわたり光ファイバーの研究開発に従事。2008年、光ケーブル開発部長、2014年、次世代光ケーブル事業推進室長などを歴任し、2020年4月より常務執行役員として経営改革の陣頭指揮に立つ。2021年6月に取締役COO、2022年4月から現職に就任。生成AI需要拡大の追い風の中、2028年度を最終年度とする中期経営計画で次の成長戦略を策定中。

株探ニュース
配信元: 株探

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