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デクセリアルズ、顧客が気付かない技術課題を先読みし、最適な製品の提案・ソリューション開発を実現

投稿:2022/12/26 09:00

第47回個人投資家向けIRセミナー

富田真司氏(以下、富田):みなさま、こんにちは。デクセリアルズの富田でございます。私たちは、一昨年から5回、ログミーファイナンスで説明会をさせていただいています。以前お話しした内容と重複している部分もあるかもしれませんが、おさらいとして聞いていただければと思っています。

前回の説明会は昨年の12月、ちょうど1年前に行いましたので、今回はその後の動向についてもお伝えします。また、初めてご参加いただく方にも当社へのご関心を持っていただけるような説明を心掛けますので、どうぞよろしくお願いいたします。

株価とEBITDAの推移

富田:はじめにご覧いただきたいのは、こちらのスライドです。当社が上場した2015年7月からの株価と、年度ごとのEBITDAの推移です。

EBITDAは、一般に「償却前利益」などと呼ばれ、現金の支出を伴わない費用を営業利益に足し戻したものです。当社では、私たちの稼ぐ力を表す指標として、みなさまにお示ししています。

私どもの稼ぐ力(EBITDA)と投資家のみなさまの評価である株価は、ご覧のとおり、ほぼリンクしています。特にご注目いただきたいのは、グラフの右側にある背景に色のついた期間です。

デクセリアルズではこの直前、2019年3月から社長を含む経営陣の世代交代を行い、2019年度、つまり2020年3月期からスタートした「中期経営計画2023」に取り組んでいます。

以降も、世界では大きな変化が起きていますが、中期経営計画で立てた戦略に基づき施策に取り組んだ結果、業績も回復し、ご覧のとおり株価もコロナ前の水準を超えてきています。

もちろん、これでゴール達成ということではなく、この先も持続的に成長していきたいと考えています。そこで本日は、当社の事業概要や強み、またご覧のような回復に至った動きの背景や、持続的成長に向けた取り組みについてご説明します。

どんな会社? ①

富田:当社の概要についてご説明します。スライドの左側をご覧ください。当社の年間売上高は約950億円、資本金は160億円程度で、本社は栃木県下野市にあります。東証プライム市場に上場しており、時価総額にして約2,000億円の会社です。

右側をご覧ください。当社の経営理念は「Integrity 誠心誠意・真摯であれ」です。お客さまから信頼されるパートナーとなるべく、何事にも誠心誠意、真摯に向き合うという、私たちの心のよりどころのような考え方として、社員一人ひとりが大切にしているものです。

また、企業ビジョン「Value Matters」には「機能性材料メーカーとして、常に新たな価値、お客さまの期待を超えるような価値や製品・ソリューションを提供する会社でありたい」という思いが込められています。

当社の「Dexerials(デクセリアルズ)」という社名ですが、前半は「巧みな、機敏な」という意味の「Dexterous(デクスタラス)」、後半は「材料・素材」を表す「Materials(マテリアルズ)」の、2つの言葉から成る造語です。

私たちは、お客さまの課題やニーズに対し、誠心誠意を尽くして考え、優れた技術開発力に基づいた解決策をスピーディに提供し、お客さまの期待を超えるような価値・製品を提供する会社でありたいと考えています。

どんな会社? ②

富田:当社は、もともとソニーケミカルというソニーの化学材料を担当する子会社として、1962年に設立されました。それから60年にわたって世界でビジネスを展開し、新たな製品・ソリューションを提供してきました。

2012年にソニーから独立し、社名を現在の「デクセリアルズ」に変更し、事業をスタートしました。今年は「デクセリアルズ」という社名になって10年目を迎えました。引き続き、テクノロジーの進化を支える製品やソリューションを提供し、持続的な成長を目指します。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):デクセリアルズという社名になって10周年ということですが、前身はソニーケミカルだったというお話でした。御社が現在作られている製品については後ほどご説明いただくのですが、ソニーケミカル時代はどのような化学製品を作っていたのでしょうか? 少し教えていただければと思います。

富田:当社は、ソニーのトランジスタラジオにおけるプリント基板用の接着剤付銅箔という製品の開発から始まりました。その後も、例えばラジカセからウォークマンへといったように、製品が大きなものから小さなものへ進化していく中で、最終製品の小型化・薄型化・軽量化などを支える電子材料・光学材料を開発してきました。

MDウォークマンやCDウォークマンを覚えていらっしゃる方も多いかと思います。あのような製品の中で光ディスクの信号を読み取る部品の組み立てに、当社の精密固定の樹脂が使われていました。

さらに、かなり昔のもので今は製造していませんが、一般の消費者向け製品として「ソニーボンド」、あるいは小型ビデオカメラ向けの高密度・多層プリント配線板のようなものも手掛けていました。また、熱転写インクリボンテープのような製品も製造していました。現在はあまり見かけませんが、物流で一部残っているかと思います。

このような事業を通じて、例えば樹脂を混ぜる、フィルムに塗る、部品を実装するなど、現在の製品を支えているさまざまな技術を獲得し、強化してきました。

どんな会社? ③

富田:スライド上段にお示ししているのが、当社の代表的な主力製品です。私たちは優れた技術開発力によって、お客さまの課題やニーズに対するソリューションを提供してきました。

その結果、当社の主力製品はニッチな市場ですが、世界シェアでNo.1となっています。ちなみに、こちらに挙げている代表的な3製品の売上高の合計は、全体の約56パーセントを占めています。

私たちの製品がどのようなところで使われているかをご紹介します。スライド下段にいくつか例を挙げていますが、主にスマートフォン、タブレット、ノートPCなどのコンシューマーIT製品に使われています。さらに、自動車のメーターやカーナビなどのディスプレイ、コードレスの掃除機、電動工具、医療現場で働く方々の目元を保護するアイシールドなどにも使用されています。

私たちの製品は、実は目に見えないところで多岐にわたって、みなさまの暮らしや産業を支えています。

坂本:御社は海外売上高比率が非常に高いと、以前からお話しいただいているのですが、近年はどのような状況なのか教えていただければと思います。

富田:当社の海外売上高比率は直近で70パーセントを超えているかと思います。

坂本:非常に高いですね。

富田:また、一昨年が66パーセントで、昨年の終わった期が73パーセントと上がってきています。特に、昨年に量産を開始した新製品の蛍光体フィルムは、基本的に海外で販売していますので、これが数字を大きく押し上げています。

坂本:なるほど。こちらの話も後ほど詳しく教えてください。

製品例:異⽅性導電膜(ACF)

富田:私たちの製品について少しお話ししましたが、1つの例をご説明します。ご覧いただいているスライドは、主力製品の1つである異方性導電膜で、略称でACFと呼んでいます。この製品は、ディスプレイやセンサーなどの実装で使われる電子材料で、半導体やセンサーモジュールと、基板の導電接続を行う機能を持つフィルムです。

昨今は、ディスプレイの画面は飛躍的にきれいになっていますが、このようなきれいな画像を映し出すのに欠かせないのがACFです。スライド右側の図ではディスプレイが真っ黒になっていますが、ふだん何気なく見ているTVやスマートフォンは、ACFがなければこのように真っ黒になってしまいます。

ACFはほんの一例ですが、みなさまの身近で「世の中になくてはならない製品」を手掛けている会社です。

ビジネスモデル

富田:「世の中になくてはならない、世界シェアの高い製品」を提供するためのベースとなるのが、スライド左側にお示しした当社のビジネスモデルです。スライドの図は、みなさまのもとに最終製品が届くまでの過程を示しており、上から下に物が流れているものとお考えください。

みなさまのもとに最終製品が届くまでの過程において、私たちは化学・素材メーカーから材料を購入し、加工して高い機能を加えた、いわゆる機能性材料を開発・製造しています。これをディスプレイメーカーや組み立てメーカーに納めています。

実は、私たちは今お話ししたメーカーのようなだけ直接のお客さまだけではなく、その先にいるIT製品メーカーや自動車メーカーといった最終のお客さまとも対話し、製品を開発・提案しています。

その結果、当社の提案が採用されて最終製品を量産する時には、最終のお客さまから量産を担当するディスプレイメーカー、つまり私たちの直接のお客さまに対して、当社製品の使用を指定していただけるという流れができています。

少し詳しくお話しすると、当社は最終のお客さまとの対話の場に、営業担当者だけではなくエンジニアも同行します。お客さまが作りたい製品や新機能に対して、開発部門とともに技術的な考察を加えて、お客さまがまだ気付いていない技術的な課題を私たちが見つけ出し、その課題に対して今までになかったユニークな製品やソリューションを開発し、提案しています。

このような活動から、当社の製品は技術トレンドの最先端を行く、最終製品のハイエンドモデルを中心に採用いただいています。

さらに、中期経営計画の期間においては、お客さまの直近のモデルの技術的な課題だけではなく、時間軸をもう少し先に伸ばして、今後起こるであろう技術革新の中で出てくる課題を見つけ出し、その解決策として製品やソリューションを先回りして開発するかたちに、ビジネスモデルを進化させてきました。

このように、お客さまの目先の課題だけではなく、将来の課題を先回りして見つけることで、その解決につながる製品を開発できることが、当社の強みだと思っています。

市場・技術トレンドを先回りした製品開発・採用の例

増井麻里子氏(以下、増井):顧客が気付かない技術課題には、例えばどのようなものがあるのでしょうか?

富田:具体的な例について、製品を挙げながらご説明します。今スライドにお出ししている表の下部に記載しているセンサーモジュール向けの異方性導電膜についてご説明します。

現在スマートフォンでは、広角や望遠などのカメラもしくは距離を測るセンサー、あるいは顔を認識するセンサーといった数多くのセンサーがモジュール化されて使われ、実装されています。その数も年々増えてきています。

実は、私たちは数年前からこのトレンドを予測していました。つまり、スマートフォンの高機能化に伴って、さまざまな機能を持つセンサーがモジュール化され、小さなスマートフォンの中に入っていくということを予測していました。

ここから導かれる技術的な課題として、スマートフォンの限られたスペースをいかに有効活用して多くのモジュールを搭載するか、モジュールの搭載数を増やしていくかといったところが課題になるだろうと見ていました。

その結果、モジュールの形状が四角形の箱型からパズルのピースのように複雑になり、お客さまのほうでは狭いスペースの中に多くのセンサーをどうにか敷き詰めていくことになるだろうと予測しました。併せて、センサーモジュールを実装する時の接続端子の配置も、同じように複雑になるだろうと考えました。

そこで当社は、端子のレイアウトや基板の形状に合わせて実装材料であるACFを加工できる「形状加工ACF」を開発し、多様な形状のモジュール実装を実現する提案をしました。お客さまにも評価いただき、現在採用が進んでいます。

このようなものが、当社が先回りして課題を見つけることでタイムリーに製品を開発、提案し、採用いただいた例になります。

坂本:開発と一体型で営業されているのは、御社の製品でないとできないような、非常に競争力の高いものを作る技術があるからこそだと思います。開発と営業についてはお話しいただきましたが、販売については直接行っているのでしょうか? それとも商社や代理店を通しているのでしょうか?

富田:販売に関しては、大半は直接お客さまに納めていますが、地域によっては代理店を使っています。例えば、中国では代理店を通すことが一般的なため、代理店を経由するということが多くあります。

坂本:代理店を経由する地域では、技術営業は行わないのでしょうか?

富田:そうでもありません。先に最終のお客さまとお話ししてしっかりと認めていただき、実際にどのような商流を作るかという交渉の中で、結果として代理店にお願いするといったケースもあります。

坂本:代理店をお願いする理由としては、物流面も絡んだりしますか?

富田:そうですね。中国国内での物流をスムーズに行うために、代理店にお願いすることもあります。

坂本:よくわかりました。

ビジネスモデル

富田:先ほど、最終のお客さまから評価いただくとお話ししましたが、実は直接のお客さまにも当社製品を効率よく使っていただく方法や量産の支援、接着時間を短くするといった生産性を向上させるような改良品やカスタマイズ品も提供しています。それによって直接のお客さまからも評価をいただき、双方のお客さまに価値を認めていただいています。

さらに、最終のお客さまが気づかなかった課題を当社から提示し解決策を出すことを続けた結果、新しい話があれば呼んでいただき、ニーズをうかがって新たな製品開発へつなげるといった好循環もできあがっています。

市場動向に左右されにくい体質へ進化

富田:先ほど、ビジネスモデルの進化についてご説明しましたが、強みの2番目としてお示しした内容が業績にどのような影響を与えたかについてご説明します。

棒グラフは当社製品の売上高で、前年同期からどのように変化したのか、増減イメージをアプリケーション別に記載しています。また、下部には最終製品の市場動向をお示ししています。

当社はビジネスモデルを進化させて、お客さまの目先の課題だけではなく、将来の課題を先回りして解決につながる製品をタイムリーに開発・提案できるようになりました。

技術のトレンドにミートした製品が新しい部位へ採用され、端末の1台あたりの採用数によって売上高が年を追うごとに増加しています。さらに、新たなお客さまや新しい最終製品・アプリケーションでの採用も加わり、最終製品の需要があまり伸びない中でも、影響を最小限にとどめて、持続的に成長できるようになってきました。

差異化技術製品の裾野の広がり

富田:ハイエンド製品が中心だった私たちのビジネスが、直近ではミドルレンジの製品にも広がってきたことについてご説明します。スライドには、当社のスマートフォンおよびノートPC向けの売上高を、最終製品のグレード別にローエンド、ミドルレンジ、ハイエンドと記載しています。

これまでの取り組みを通じて、ハイエンド向けの新たな部位・新用途での採用が増えてきています。新製品の貢献もあり、棒グラフの青色部分で示しているとおり、今期のハイエンド向けの売上高は2019年度比で約2.5倍に増える見通しです。

また、ハイエンドで使われていた技術がミドルレンジにも広がってきており、ミドルレンジ向けの売上高も、2019年度比で約2倍に増えると見込んでいます。

ミドルレンジの売上が増えている要因についてご説明します。まずはノートPCの「反射防止フィルム」です。当初はハイエンドモデルから搭載がスタートしましたが、その後はミドルレンジのノートPCにも展開が進み、拡大を続けています。

もう1つは「蛍光体フィルム」という製品です。こちらは2021年度から新規に採用しており、ハイエンドでの売上高の成長を後押ししています。

スマートフォン向け製品では、2019年度前後にハイエンドと位置づけられていた「リジッドOLED」という技術のディスプレイで、当社の「大径粒子整列型ACF」の採用が始まっていました。その後にハイエンドモデルの技術が変わり、「フレキシブルOLED」という技術のディスプレイが主流となりました。

当時はハイエンド向けで、その後ミドルレンジに変わってきた「リジッドOLED」のディスプレイは、ハイエンドではデファクト化し、現在はほぼすべてのハイエンドモデルのスマートフォンで使われるようになりました。また、ミドルレンジでも広く使われるようになっています。

このように差異化技術製品と呼んでいる当社の高付加価値製品が、従来のハイエンドからミドルレンジに展開が進み、売上の裾野が広がったことで、事業環境の変化に左右されにくい企業体質への移行と、持続的成長力の向上が進んでいると考えています。

増井:ハイエンドのシェアはどのくらいでしょうか?

富田:ハイエンド市場における当社の売上高シェアと捉えると、いろいろな製品・材料が入っているため、まとめてお答えするのは難しいです。しかし、例えば個別の製品としてディスプレイ向けACFや「反射防止フィルム」など、製品ごとに見ると、世界で高いシェアを持っているものがたくさんあります。

増井:ハイエンドとは、ゲーミングやクリエイター用などのパソコンのことでしょうか?

富田:スライドにお示ししているような製品で説明すると、例えばノートPCのハイエンドモデルの価格帯では一番上のものになります。ゲーミングモニターでは、おそらく専用のきれいで大きなモニターになります。

増井:まだノートPCはそこまで達しないのですね。

富田:今お伝えしたのは、そのような特殊な用途ではなく一般的に使われているノートPCやスマートフォンのハイエンドのモデルについての説明です。

増井:超軽量型などでしょうか?

富田:そうですね。超軽量で画面もきれいな商品になります。

⻑期視点で持続的な成⻑を目指す

富田:中期経営計画の進捗状況についてご説明します。スライドには、昨年5月に公表した中期経営計画リフレッシュの基本方針と位置づけを記載しています。

当時は、2021年度から5年間の内の、残り3年間で必要な投資を行って事業成長を図り、将来のための経営基盤強化や進化にかかる施策を実施し、持続的な成長と企業価値の向上を目指すとお伝えしました。

スライド右側に黄色の背景で記載している棒グラフをご覧ください。こちらは、昨年5月に公表した3年間の計画の1年目の結果です。外部環境が厳しい中でも、先ほどご説明したようなビジネスモデルの進化を含め、自分たちができることにしっかり取り組んできた結果、稼ぐ力も向上し、実績としては昨年5月に立てた2023年の業績目標値を2年前倒しで達成できています。

残りの2年間については、現行の中期経営計画で掲げている3つの基本方針のもと、各施策にしっかりと取り組み、引き続き成長を目指していきます。さらに、次期中期経営計画に向けた準備期間でもあるため、いっそうの経営基盤強化を進め、成長戦略を前倒しで実行し、長期にわたる持続的な成長と企業価値向上を目指していきます。

FY22.1H 連結業績サマリー

富田:2022年度の連結業績サマリーです。上期の実績は、売上高が前年同期比3割の増収で、営業利益も6割増加し、売上も利益も上期の過去最高を更新しました。円安の影響を除いても増収増益となっています。経常利益と当期純利益、EBITDAも大幅に伸びています。

FY22 連結業績見通し:上方修正

富田:連結業績見通しです。先ほどお伝えしたとおり、上期は高付加価値製品のハイエンド向けの採用増加とミドルレンジへの採用拡大により、増収増益となっています。

一方で、下期は不透明感が増す状況です。下期の為替前提レートを見直すとともに、第4四半期に一定のリスクを織り込みました。結果として、年間の売上高は据え置きとしています。

利益は、ローエンドを中心に売上モメンタムは弱まってきているものの、高付加価値製品のミドルレンジへの展開で、稼ぐ力も増しています。円安も加味して、年間の利益は7月の時点から上方に修正しました。結果として、年間の営業利益は4期連続で最高益更新の見通しです。

(参考)FY22 為替感応度

坂本:よく聞かれる質問だと思いますが、為替感応度について教えてください。

富田:ご覧のとおり、1ドル当たり1円動くと、売上高で6億円、営業利益で5億円強の影響があるといった構造になっています。

坂本:下期の前提レートは高かったと思いますが、為替予約はどのくらいの割合でされているのでしょうか?

富田:業績が為替の影響を受けるのは、当社の経営課題の1つだと考えています。そのため、利益をしっかり守りたいと思っています。特に当期純利益を守るためにも、為替のヘッジはしっかり行っています。今期においても、下期もかなりの部分まで適切なレートで行っており、為替のヘッジは終了しています。

新規領域での事業成⻑加速

富田:中期経営計画の進捗報告の続きとして、新規領域での事業成長の加速についてご説明します。

当社は、コンシューマーIT製品市場および特定顧客への依存を経営課題として認識しており、中期経営計画では自動車を成長領域と位置づけて注力してきました。ご存知のとおり、昨今の自動車市場は新型コロナウイルスや半導体供給不足などの世界規模の影響を受けて、工場の稼働停止や減産が続いています。

一方で、EV化やエレクトロニクス化、自動運転などを含めた自動車の進化は加速している状況です。車内で使われるディスプレイの枚数増加や大型化も進んでおり、ディスプレイ関連材料ビジネスにとっては追い風になります。特に、今は反射防止フィルムの新規採用が続いています。

左下に記載のグラフのように、2017年度の自動車事業の立ち上げ以降、減産の影響などを受けながらも持続的に成長しています。また、右側のグラフにも記載しているとおり、上期の売上高はACF、光学弾性樹脂、反射防止フィルムなど、競争力を持っている製品の採用が拡大しています。売上も大幅に増加し、前年同期比で4割増を達成できています。

通期では、事業開始後6年目で100億円を超えるところまで見えてきています。

坂本:自動車領域が成長領域ということで、車載や自動車というところが関わってきますが、御社の自動車領域向けの売上は「反射防止フィルム」の割合が多いです。EVが増えた時に、ガソリン車に比べて数量はどのくらい変わるのでしょうか? また、スライドのFY22以降の自動車領域の伸びがどのくらいになるのかという統計などがあれば教えてください。

富田:まず1点目の、インチサイズの変化についてです。具体的な数値は私も持ち合わせていませんが、私の肌感覚としては、ガソリン車のディスプレイとEV車のディスプレイを比較すると、EV車のほうがディスプレイの画面サイズが大きいです。

例えば、スライド左上にイラストがあるように、横がつながったディスプレイなどはEV車に多い傾向があると思います。

坂本:国産のEV車でも、走行時は水槽を表示するようなものがあります。

富田:そうですね。2点目に、今後の自動車事業はどこまで伸びるのかについては、ちゃんと伸びるのかという意図のご質問かと思います。

まず、当社のビジネスの柱となっている反射防止フィルムは、数年先の受注がしっかりと積み上がっており、2022年以降も毎年成長が続くと考えています。加えて、光学弾性樹脂は多数の車種に共通して採用されることになったため、採用モデルが増えていくことに伴い、毎年着実に伸びていくと見ています。

さらに、当社はヘッドアップディスプレイ向けの材料も手掛けており、ここも立ち上がってきています。当社としては、今後このようないくつかの柱がしっかりと伸びていくことで、自動車事業の中期的な成長を持続させていきたいと考えています。

成長確度の高い事業で積極的な投資を実施

富田:自動車事業の成長の核となる反射防止フィルムについては、スライド左側に記載のとおり、2021年11月に生産体制増強に向けた設備投資も決定しており、2023年4月の稼働開始に向けて順調に準備が進んでいます。

右側の表面実装型ヒューズも、リチウムイオン電池を搭載したアプリケーションの最終製品が広がっています。これに伴い当社のヒューズの需要も伸びていくとにらんでいます。

これを踏まえ、今期は新たに2ラインを上期中に稼働開始させ、将来の需要拡大をしっかりと取り込んでおきたいと考えています。このように、顧客や需要の見える、成長確度の高い設備投資を行い、当社が優位性を持つ差異化技術製品の持続的成長を図っていきます。

新規領域での事業成長加速

富田:順調な成長が続く自動車の次を担う領域を探索してきました。今後の社会はIoT化やビッグデータの活用など、デジタル化を通じてさらなる効率化を実現し、社会課題の解決を目指していくことが見込まれます。

デジタル化を通じた社会全体の効率化のために進化が求められる事業領域・技術と、当社が持っている技術・ノウハウを重ね合わせた結果、光と電気を相互に変換する光半導体の技術革新が、当社にとっても大きなビジネス機会となりうると判断し、2022年3月に京都セミコンダクターを子会社化しました。

京都セミコンダクターは、光半導体デバイスの開発、製造、販売を手掛けており、今後高い市場成長が見込まれている高速通信において、5Gや次世代の通信ネットワークに対応しうる優れた製品を持っています。

反射防止フィルムや光学弾性樹脂、異方性導電膜が主力の当社にとって、光と電気は得意分野であり、京都セミコンダクターが事業を展開する光半導体は、その隣接領域と言えます。京都セミコンダクターの持つ化合物半導体のノウハウに、当社の微細加工などの光をコントロールする技術を組み合わせれば、さらなる進化が可能と考え、今回のご縁につながりました。

この2年間は次期中期経営計画で大きく成長するための準備期間と位置づけ、当社がこれまで行ってきたような取り組みを京都セミコンダクターで展開し、稼ぐ力を向上させ、持続的な成長の土台作りに注力していきます。

業績を着実に拡大させつつ、当社と京都セミコンダクターとの協創による新製品創出の準備もしっかりと進めていきます。次期中期経営計画では100億円規模への事業成長を目指します。

なお、今期よりPLに連結した京セミは、昨年の業績には含まれていませんが、ご参考として前年同期比の状況を右側のグラフでご説明します。

上期は増収増益となりました。今期より、京都セミコンダクターでは、当社がこれまで行ってきた取り組みを展開しています。その成果として、生産性の改善とそれに伴う供給量の増加により、旺盛な需要への対応が可能となり、売上が伸びるとともに利益率も改善しました。引き続き、インフラ強化も含め自分たちでやれることを進め、稼ぐ力の向上を目指していきます。

FY22 株主還元

富田:株主還元についてご説明します。これまでお伝えしたとおり、私たちの取り組みが実を結び、稼ぐ力も向上しました。当社の持続的成長力が高まってきたことを踏まえ、成長投資を予定どおり継続しつつ、年間の自己株取得枠を60億円から90億円へ増額することとしました。

12月1日公表の株式の取得状況では、11月30日時点で約190万株、約70億円を取得しています。11月の1ヶ月分だけでも約90万株、約30億円を取得しています。また、先日取得終了のお知らせも出しています。

現金配当については、スライドのとおり中間配当30円、期末配当30円に記念配当5円を加えた年間65円を予定しています。

なお、今回の現金配当と自己株式取得を合わせて、今年度は一時的に総還元性向が53.2パーセントとなる見込みですが、当社ののれん償却前の当期純利益の40パーセントを目処に、利益還元を実施する従来の方針に変更はありません。

今後は、私たちの進化の加速に向けて財務の健全性を確保しつつ、積極的な成長投資を実践していきます。

坂本:株主還元について質問です。御社は業績好調で、結果として収益が予想を上回ることが多いのですが、上振れた場合、株主還元は配当というよりも自社株買いを増やしていくようなイメージでしょうか?

富田:幸いにして業績が上振れた場合に、そのお金をどのように有効活用していくかは当社も常に検討を続けています。まず、当社の経営方針の1つでもある「成長のためにどうお金を使うか」というところを優先的に考えています。その上で、還元について考えています。

還元に関しては、現金配当は従来より安定的に増やしていきたいとご説明しています。仮に業績が一時的に上振れるようなことがあれば、自社株買いを優先的に検討するということが当社の基本的な考え方です。

外部評価の向上と露出の拡大

富田:ご参考までに、外部評価の向上と露出の拡大についてお伝えします。当社は今年初めて「JPX 日経インデックス 400」の構成銘柄に選定されました。その他に、今年はサステナビリティへの取り組みも評価され、ご覧の構成銘柄にもそれぞれ選定されています。

また、スライド下に記載のとおり、先日はテレビ東京系列のドキュメンタリー番組「知られざるガリバー」で当社を紹介いただきました。このようなかたちを含め、引き続き当社の認知度向上の取り組みも行っていきます。

もっとよく知る デクセリアルズ①

富田:本日は時間も限られており、説明が十分でなかったところもあるかと思います。当社のWebサイトでは詳しい動画も使いながら、わかりやすい説明を心がけていますので、ぜひご覧ください。

もっとよく知る デクセリアルズ ②

富田:先日、直近の財務情報と非財務情報をまとめた「統合レポート2022」をWeb上で公開しました。また、当社の技術や製品をわかりやすくご紹介したサイト「TECH TIMES」でも新しいコンテンツを続々と掲載していますのでご覧ください。

持続可能な成長を続ける企業へ

富田:最後にまとめになります。私たちは、社会課題を解決するデジタルテクノロジーの進化に不可欠な、他社にはマネできない、製品や技術、ソリューションを通して社会に貢献する存在として、世界から選ばれ続ける企業になりたいと考えています。

そして、従業員や株主のみなさまへの利益還元を行いながら必要な投資も続けることで持続的に成長できる企業を目指していきます。

世の中には数多くの企業があり、それぞれ独自の考え方、方向性や方針で経営しています。私たちも、投資家・株主のみなさまに対し、このような機会を通じて、デクセリアルズの経営方針や考え方をみなさまにお伝えしていきます。

本日の説明で、当社に少しでもご関心を持っていただければ大変ありがたく思います。引き続き、デクセリアルズをよろしくお願いいたします。

質疑応答:半導体不足による影響について

増井:投資家のみなさまからいただいたご質問を見ていきたいと思います。「半導体不足による影響はありますか?」というご質問です。

富田:半導体不足の影響は1年くらい前からあった話かと思います。そこから比べると、モバイルIT製品向けについては影響が薄らいできたと考えています。

車も一時期かなり話題になりました。今もまだ減産というかたちで影響が残っていますが、こちらも徐々に解消に向かってきていると見ています。

質疑応答:株式分割の検討について

坂本:「株価の上昇が見られていますが、株式分割の検討はされないのでしょうか?」と質問をいただいています。

富田:今の株価水準で、というところに関してはコメントを控えますが、やはり投資家のみなさまが当社の株式に対して投資しやすい水準は常に意識しています。株価の水準や今後の見通しなどを考えながら、適切に判断していきたいと思っています。

質疑応答:自動車分野の反射防止フィルムの伸びについて

坂本:「自動車分野の反射防止フィルムの伸びが見込まれています。投資後にキャパシティが1.5倍かかるとご説明がありましたが、2年後にはキャパシティ不足になるように感じます。追加投資もされているのか、多少は競合に参入されることを許すのかなどについて教えてください」という質問をいただいています。

富田:車向けの反射防止フィルムは、車のビジネスそのものの足が長く、現在当社がお話をいただいて新たに獲得する案件は、おそらく2年から3年後にスタートするということから、将来の需要・売上がある程度見えるといったビジネスになっています。

当社が昨年に増産投資を決めたのも、おそらく来年くらいからキャパシティが足りなくなるのではないかというところが見えてきたためです。今も新たな獲得が続いているため、今後順調にビジネスが拡大し、将来の受注・案件獲得の積み上がりが見えてくれば、その次というところも検討課題になってくるかと思います。

坂本:車載のビジネスのよい部分は、一度採用されるとその車がモデルチェンジするまでお付き合いが続くという点かと思います。御社が使われている反射防止フィルムも同じようなかたちで考えてよろしいでしょうか?

富田:当社のビジネスのポートフォリオをより安定化させ、ボラティリティを減らすといった観点で、自動車がモバイルよりもよいというところは、いったん採用されれば、製品の寿命が長いことだと考えます。

もちろん、そこであぐらをかいて同じものを出し続けるというよりは、先ほどお伝えしたように、適切なタイミングで、お客さまにより喜んでいただけるような改良品を提案し、さらに価値を認めていただくといった点を含めて、長く製品提供を続けられるのが当社の考えです。

坂本:過去のセミナーでもうかがったと思うのですが、反射防止フィルムのローエンドの部分には、他社と言いますか、海外勢が入ってきているということはあるのでしょうか?

富田:もともと反射防止フィルムという製品そのものは昔からあるものです。製造方法の異なるさまざまな製品があり、多くの企業が扱っているのは塗布、つまり塗るタイプのものです。これは昔から多く、一部の車でも使われていると聞いています。

ただし、そのような製品はどうしても反射防止の機能が十分でないために、昔のように日差しの奥に入っている車に多いと思います。当社はむしろそこをクリアにすることで、反射防止機能が高いため、日差しの奥に入れずに、前面にかっこよく出しても大丈夫なものをみなさまに提供しています。

質疑応答:ノートPCやスマートフォン、車以外での新規採用先について

増井:会場から「ノートPCやスマートフォン、車以外での新規採用先などはありますか?」というご質問です。

富田:今のご質問も反射防止フィルムについてでしょうか?

増井:ご質問には書かれていません。ACFかもしれないです。

富田:例えば、反射防止フィルムの主戦場は確かにノートPCと自動車ですが、他の用途展開もしっかりと検討しており、さらにお客さまの評価もいただいています。現在はまだ大きなものには採用されていませんが、今とまったく異なるような、もっと小さなアプリケーションや、逆にもっと大きなアプリケーションにもアプローチしています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:トレンドを予測してとのことですが、その予想が外れる事もあるのでしょうか。

回答:当社のビジネスモデルの説明のとおり、自社内での検討に加え、顧客との対話を通じて将来の技術トレンドの予測を行う仕組みを持っていることで、確度の高い将来情報を安定的に把握できることが可能と考えています。

<質問2>

質問:これまでハイエンド向けを中心に展開されていますが、ミドルレンジ向けにはスペックダウンした上でのスペックインとなっているのか、スペック維持したままコストダウンにて参入されたのでしょうか。

回答:ミドルレンジ向けでも当社製品の価値を認めていただき、製品のスペックと価格を維持したまま参入できております。

<質問3>

質問:反射防止フィルムで力を入れている、入れていく市場(リージョン)はありますか。

回答:現在注力している車載市場向けでは今後も採用拡大の余地があり、中期的にも成長が可能と見ております。さらに、自動車の次の成長市場として新たなアプリケーションでの採用を目指し、準備を進めております。

配信元: ログミーファイナンス
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