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―新型コロナがもたらす社会変革、世界的な省人化・自動化の潮流に乗る銘柄とは―
●コロナ対応の“3密回避”が新たな商機を生む
新型コロナウイルスの感染拡大は世界的に企業業績に大きなダメージを与えた。日本経済新聞が世界の1万社を対象に調査した20年4-6月期の売上高は4社に1社の割合で3割以上の減収に見舞われたという。これは100年に1度の経済危機と言われたリーマン・ショック後の09年4-6月期よりも厳しい状況で、いかに新型コロナの傷跡が深いものであったかを物語っている。
しかし、株式市場は常に先を見据える。4-6月期の企業業績がどれだけ悪くても、過ぎてしまえばそれはバックミラーに映る軌跡にすぎない。カネ余り環境のなか7-9月期以降の回復を先取りする相場が佳境に入っている。全般底上げムードが一巡しても、2極化の勝ち組に投資マネーが向かう。物色対象として有力視されるのは、新型コロナがもたらせた社会変革の波に乗って商機を捉える企業群だ。「3密」を避けるために、eコマース、宅配、ゲームなど巣ごもり消費やテレワークをはじめとするオンラインサービス分野で活躍する企業に光が当たった。しかし、精査すると3密回避を追い風とする企業群はまだ他にもたくさん存在することが分かってきた。
●新型コロナで活躍機会が広がったロボット産業
従来の人手不足と相まってオートメーション化が進んでいた工場などの生産現場では、感染防止のため、なるべく人間同士の接触を少なくするための省人化ニーズが高まる方向にある。これはワクチンや治療薬の開発に伴い新型コロナが収束した“アフターコロナ”の世界でも省人化・自動化の流れは止まらない。例えば、発生元ながら世界に先駆けて感染を収束させた中国では、経済活動再開を背景に企業の設備投資意欲も復活、ここ急速に市場が立ち上がる5G関連をはじめ、次世代IT社会を支える先端製品などを生産する現場において、ロボット 導入の動きが加速している。中国では2015年にハイテク産業育成を目指した「中国製造2025」が策定され、ロボット産業が重点育成分野に掲げられている。
工場などで使われる産業用ロボットの世界市場規模は25年には7兆7000億円程度まで膨らむという試算があるほか、ドローン などを含む業務・サービスロボットの市場規模は25年に4兆7000億円前後に達するともいわれている。
ちなみに日本はロボットの導入密度(従業員比)は世界でもドイツと並んで上位にある。また、最近は人工知能(AI)やIoT技術の進展が産業用ロボットや協働ロボットの普及を後押ししている状況だ。小型で比較的導入が容易な協働ロボットについては中小企業でも採用することが可能で、今後は更に市場の裾野が広がっていく方向となる。日本国内における協働ロボットの市場は25年に4000億円を上回る水準に成長することが見込まれている。
●人間と共生するロボットの近未来
もちろんロボットの活躍舞台は多岐にわたる。外食産業の店舗や病院、ホテルのロビーなどで人の代わりに食事や物を運ぶ運搬型ロボットや、空港や大型施設でゴミを拾いながら除菌剤を噴霧する清掃ロボット。AIや音声合成技術を活用して人間に話しかける形で様々な案内を行うコミュニケーションロボットなど、今はまだ普及初期だが、いずれ我々の日常と知らないうちに同化していくことになる。
新型コロナの感染拡大は世界中に脅威を与え、経済活動を凍らせ未曽有の景気の落ち込みをもたらせたが、そのインパクトの大きさが社会構造の変革を呼び、そこにまた新たなビジネスを芽吹かせている。産業用ロボットから各種サービスロボット分野にいたるまで、人間と共生するロボットの近未来も、新型コロナが引き寄せたニューノーマルの一形態と定義されることになるだろう。株式市場でもロボット関連は強力なテーマとして投資資金流入の有力なターゲットとなっていくことが予想される。
●ロボット関連でここから注目の5銘柄はこれだ
今回はロボット分野に戦略的に経営資源を注ぐ銘柄の中から、アフターコロナ時代で活躍が見込まれる中期的上値余地の大きい有力株をセレクトした。
◎川田テクノロジーズ <3443>
鉄骨・橋梁の大手だが、機械システムにも強みを持ち、ロボット分野に力を入れている。製造現場用途向けに人間と協働するヒト型ロボット「NEXTAGE(ネクステージ)」を開発。すべての可動軸を低出力のアクチュエータで構成し、画像認識技術の利用による治具レス・簡便設置が特長で、今後の受注拡大に期待が募る。また、ヒト型二足歩行ロボットHRPシリーズにも定評がある。21年3月期は営業48%減益を予想しているが、株価的には既に織り込まれている。1株純資産は1万円を超えており、PBR0.5倍未満と解散価値の半値以下に売り込まれた水準で、株価指標面からも見直し余地が大きい。
◎菊池製作所 <3444> [JQ]
試作品製作を主力に精密備品や金型を手掛けるが、ロボットの育成に傾注しており、ロボット関連では象徴的な銘柄のひとつ。マッスルスーツなどの装着型ロボット、作業支援ロボット、高度医療ロボットなど幅広く展開。またドローンやオクトパス(がれき除去などの無人作業ロボット)などフィールドロボット分野も開拓、直近では産業用ドローンを中心とした自立機器を開発するイームズロボティクス(福島市)の発行済株式の過半を取得し、グループ化した。また、除菌剤の噴霧ロボットの開発もスタートさせている。株価は8月25日に上放れた後一服しているが、目先動兆。日足一目均衡表の雲抜けで上値は軽く、6月初旬の戻り高値979円を目指す展開に。
◎妙徳 <6265> [JQ]
真空吸着パッドやアクチュエータなど空気圧関連機器の製造販売を主力とする。中小型ロボットを中心に、サニタリー、食品業界向け、あるいは協働ロボットに対応した多種多様なロボットハンドキットを製造する。協働ロボットの吸着型ロボットハンドは、物を空気圧で吸い上げて吸着、デリケートな柔らかい物体も形を崩さずに運ぶことを可能としている。更に非接触型のロボットハンドも開発し、新型コロナの感染防止ニーズを取り込む。20年12月期営業利益は前期比12%増の2億3900万円を見込むが、上期時点で対通期進捗率はほぼ7割に達しており、増額修正の公算大。株価は直近動意含みで1500円近辺のもみ合いを上放れてきた。
◎セック <3741>
リアルタイムソフトウェア技術に強みを持つシステム開発会社で、モバイル通信の混雑回避やロボット分野でその実力を発揮、宇宙先端システム分野にも展開している。IoT時代に進化が加速傾向にあるロボット分野では、03年からソフトウェアの研究開発をスタートさせており、希少なソフトウェアベンダーとして活躍。ロボットに搭載するAIなどの研究開発も進めている。産業用ロボットを遠隔操作するシステムで、今後同社に対するマーケットの注目度も高まりそうだ。株価は3000円近辺でのもみ合いを経て、5日・25日移動平均線のゴールデンクロスを示現、上放れの兆しをみせている。
◎CIJ <4826>
システムの受託開発を主力とし、独立系ながらNTTグループや日立グループからの案件獲得で高い実績を有する。足もとの収益環境はやや向かい風が強いものの、21年6月期は営業増益に転じる見通し。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)投資需要を背景に中期成長期待は大きい。ロボット分野への取り組みにも意欲的で、自律移動できるAIロボット「AYUDA(アユダ)」を開発中。AYUDAは「さがみロボット産業特区」のスペシャル動画に採用された。株価は8月7日に大陽線で上放れた後、75日移動平均線を絡め800円台半ばで煮詰まりをみせており、大勢2段上げの気配が漂う。
株探ニュース
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