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アルプス技研のニュース
■中長期の成長戦略
1. 中長期成長ビジョン
アルプス技研<4641>は、今後の事業展開の方向性について、「市場」と「事業・技術」を2軸として、それぞれ既存と新規の場合に分けた4象限のポートフォリオで説明している。
(1) 最先端技術(高単価ゾーン)の開発設計業務(新規市場、既存事業・技術)
AIやIoT、ロボット、ハイブリッド・EV車、航空宇宙関連、医療関連など様々な先端技術領域の開発設計であり、社会的ニーズのある技術の変遷に応じて対応市場の拡大を図っていく。既にAIや先端技術分野の稼働人数増加に向け、人材育成を積極的に推進している。
(2) 新規事業の可能性検討(新規市場、新規事業・技術)
異分野開拓(アグリビジネス等)と介護人材の活用、M&Aなどを進めていく方針である。前述のとおり、農業関連分野及び介護関連分野については新会社を設立し、新たな人材派遣事業の展開に向けて具体的に動き出した。
(3) グローバル展開(既存市場、新規事業・技術)
基本的には、顧客企業の海外進出に伴って、現地での生産設備構築や運用などのサービスを提供する。地域的には当面は中国やアジアが中心となる。また、ブリッジエンジニアのようなグローバルエンジニアの活用を図る。
(4) 高度技術サービスの提供(既存市場、既存事業・技術)
既存の機械設計、電気・電子設計、及び開発などのサービスである。同社の安定的収益源でもあり、今後ともプロジェクト管理体制などの強化で事業拡大を図っていく。
(5) 先行者利益の享受(既存市場、新規事業)
外国人材の育成・採用や、技術・農業・介護分野での外国人活用ノウハウにおいて、先行者利益を享受する。
2. 中期経営計画(ローリング方式)
同社は創業以来、5年単位の定性目標及び3ヵ年の定量目標(ローリング方式による中期経営計画)を推進してきた。2018年7月に創業50周年を迎え、第2創業期が本格始動するに当たって、次の5ヵ年計画(定性目標)の更新を公表した。「新産業革命時代に向けた経営資源の再投資」をテーマに掲げ、以下の3つの施策を推進している。特に評価すべきポイントとなるのが「農業・介護関連分野」への投資など、社会的課題の解決に向けた活動を具体的に取り込んでいるところにある※。
※同社グループは、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」に賛同し、経営理念“Heart to Heart”のもと、技術開発をはじめとしたアウトソーシングサービス事業等を通じSDGsの達成に貢献することを目指している。2019年8月に同社サイト上にSDGs推進に関するページを新設すると、SDGs推進企業として外務省のホームページにも掲載された。
(1) アウトソーシング市場における持続可能な競争優位性の創出
(2) 投資の拡大による成長の加速と収益基盤の強化
(3) 事業環境の変化に対応した人材育成と組織の最適化
また、3ヵ年の定量目標(ローリング方式)については、2023年12月期の売上高45,660百万円、営業利益4,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益3,280百万円を目指すとともに、ROEも20%以上を確保する計画である。
3. 業界動向と同社の位置付け
全国の派遣労働者数は、2008年リーマンショック時の202万人をピークに減少傾向にあったが、2013年に底を打ち、2019年時点では156万人となっている。また、労働者派遣法の改正や同一労働同一賃金制度の導入(いずれも2020年4月1日施行)※などによって、派遣事業をめぐる環境は大きな転換点を迎えている。それは、派遣社員の有する技術力や専門性などと派遣先企業が何を派遣社員に期待するかによって、今後大きく変貌していくものと考えられる。端的に言えば、より新規で高度な技術力・専門性を持った人材へのニーズは堅調に推移するが、下流工程の作業については、景気動向などで大きく変動するだろう。
※同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)間にある不合理な待遇差の解消を目指すもの。一般的には、本件の導入により、非正規雇用労働者の賃金アップや非正規雇用労働者間での賃金格差拡大などが懸念されている。
同社では技術者の立場が無期雇用(正社員)で安定しており、高度な技術力と専門性を持つべく教育研修を受けているため、顧客企業からも信頼を得ている。無期雇用型技術者派遣に特化した同社の業績は、堅調に拡大していくものと期待される。もちろん、電気・機械、自動車、航空・宇宙など、技術力と専門性が生かせる業種の顧客ニーズを汲み取り、上流工程を任せられるためには、努力が必要となるだろう。長期的な人間教育に支えられ顧客の信頼を得ることによって、継続的に事業が拡大できるものと考えられる。
また足元では「働き方改革」の影響を受け1人当たりの工数が減少する一方、エンジニア要請人数の増加のほか、メーカーの人手不足を補うだけでなく特定技術を必要とする先端技術領域においても需要が増えているところに特徴的な傾向が見られる。したがって、同社が重点領域と位置付ける最先端技術の分野においていかに優秀なエンジニアを確保(育成)できるかが、今後ますます重要な成功要因になっていくであろう。
4. 弊社アナリストの注目点
弊社でも同社の事業展開の方向性は、国内人口の減少や経済のグローバル化が進展するなかで、今後の産業構造の変化や社会的課題を見据えた合理的な戦略であると評価している。コロナ禍の影響により、2020年12月期の売上高の伸びは一旦足踏みしたものの、同社の中長期的な成長性の評価に変化はない。新規事業の進捗を含め、需要が拡大している新たな技術分野への対応や社会的課題の解決に向けた取り組みを、いかに持続的な成長に結び付けていくのかが今後の注目点となるだろう。特に農業・介護関連分野については、同社が他社に先駆けて新たな市場を創っていけるかどうか、先端技術の活用やノウハウの蓄積等により、人手不足の解消及び生産性の向上(及び収益性の確保)にもつなげられるかどうかが成否を決すると見ている。また、引き続き強固な財務基盤を生かしたM&Aも注視する必要がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<EY>
1. 中長期成長ビジョン
アルプス技研<4641>は、今後の事業展開の方向性について、「市場」と「事業・技術」を2軸として、それぞれ既存と新規の場合に分けた4象限のポートフォリオで説明している。
(1) 最先端技術(高単価ゾーン)の開発設計業務(新規市場、既存事業・技術)
AIやIoT、ロボット、ハイブリッド・EV車、航空宇宙関連、医療関連など様々な先端技術領域の開発設計であり、社会的ニーズのある技術の変遷に応じて対応市場の拡大を図っていく。既にAIや先端技術分野の稼働人数増加に向け、人材育成を積極的に推進している。
(2) 新規事業の可能性検討(新規市場、新規事業・技術)
異分野開拓(アグリビジネス等)と介護人材の活用、M&Aなどを進めていく方針である。前述のとおり、農業関連分野及び介護関連分野については新会社を設立し、新たな人材派遣事業の展開に向けて具体的に動き出した。
(3) グローバル展開(既存市場、新規事業・技術)
基本的には、顧客企業の海外進出に伴って、現地での生産設備構築や運用などのサービスを提供する。地域的には当面は中国やアジアが中心となる。また、ブリッジエンジニアのようなグローバルエンジニアの活用を図る。
(4) 高度技術サービスの提供(既存市場、既存事業・技術)
既存の機械設計、電気・電子設計、及び開発などのサービスである。同社の安定的収益源でもあり、今後ともプロジェクト管理体制などの強化で事業拡大を図っていく。
(5) 先行者利益の享受(既存市場、新規事業)
外国人材の育成・採用や、技術・農業・介護分野での外国人活用ノウハウにおいて、先行者利益を享受する。
2. 中期経営計画(ローリング方式)
同社は創業以来、5年単位の定性目標及び3ヵ年の定量目標(ローリング方式による中期経営計画)を推進してきた。2018年7月に創業50周年を迎え、第2創業期が本格始動するに当たって、次の5ヵ年計画(定性目標)の更新を公表した。「新産業革命時代に向けた経営資源の再投資」をテーマに掲げ、以下の3つの施策を推進している。特に評価すべきポイントとなるのが「農業・介護関連分野」への投資など、社会的課題の解決に向けた活動を具体的に取り込んでいるところにある※。
※同社グループは、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」に賛同し、経営理念“Heart to Heart”のもと、技術開発をはじめとしたアウトソーシングサービス事業等を通じSDGsの達成に貢献することを目指している。2019年8月に同社サイト上にSDGs推進に関するページを新設すると、SDGs推進企業として外務省のホームページにも掲載された。
(1) アウトソーシング市場における持続可能な競争優位性の創出
(2) 投資の拡大による成長の加速と収益基盤の強化
(3) 事業環境の変化に対応した人材育成と組織の最適化
また、3ヵ年の定量目標(ローリング方式)については、2023年12月期の売上高45,660百万円、営業利益4,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益3,280百万円を目指すとともに、ROEも20%以上を確保する計画である。
3. 業界動向と同社の位置付け
全国の派遣労働者数は、2008年リーマンショック時の202万人をピークに減少傾向にあったが、2013年に底を打ち、2019年時点では156万人となっている。また、労働者派遣法の改正や同一労働同一賃金制度の導入(いずれも2020年4月1日施行)※などによって、派遣事業をめぐる環境は大きな転換点を迎えている。それは、派遣社員の有する技術力や専門性などと派遣先企業が何を派遣社員に期待するかによって、今後大きく変貌していくものと考えられる。端的に言えば、より新規で高度な技術力・専門性を持った人材へのニーズは堅調に推移するが、下流工程の作業については、景気動向などで大きく変動するだろう。
※同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)間にある不合理な待遇差の解消を目指すもの。一般的には、本件の導入により、非正規雇用労働者の賃金アップや非正規雇用労働者間での賃金格差拡大などが懸念されている。
同社では技術者の立場が無期雇用(正社員)で安定しており、高度な技術力と専門性を持つべく教育研修を受けているため、顧客企業からも信頼を得ている。無期雇用型技術者派遣に特化した同社の業績は、堅調に拡大していくものと期待される。もちろん、電気・機械、自動車、航空・宇宙など、技術力と専門性が生かせる業種の顧客ニーズを汲み取り、上流工程を任せられるためには、努力が必要となるだろう。長期的な人間教育に支えられ顧客の信頼を得ることによって、継続的に事業が拡大できるものと考えられる。
また足元では「働き方改革」の影響を受け1人当たりの工数が減少する一方、エンジニア要請人数の増加のほか、メーカーの人手不足を補うだけでなく特定技術を必要とする先端技術領域においても需要が増えているところに特徴的な傾向が見られる。したがって、同社が重点領域と位置付ける最先端技術の分野においていかに優秀なエンジニアを確保(育成)できるかが、今後ますます重要な成功要因になっていくであろう。
4. 弊社アナリストの注目点
弊社でも同社の事業展開の方向性は、国内人口の減少や経済のグローバル化が進展するなかで、今後の産業構造の変化や社会的課題を見据えた合理的な戦略であると評価している。コロナ禍の影響により、2020年12月期の売上高の伸びは一旦足踏みしたものの、同社の中長期的な成長性の評価に変化はない。新規事業の進捗を含め、需要が拡大している新たな技術分野への対応や社会的課題の解決に向けた取り組みを、いかに持続的な成長に結び付けていくのかが今後の注目点となるだろう。特に農業・介護関連分野については、同社が他社に先駆けて新たな市場を創っていけるかどうか、先端技術の活用やノウハウの蓄積等により、人手不足の解消及び生産性の向上(及び収益性の確保)にもつなげられるかどうかが成否を決すると見ている。また、引き続き強固な財務基盤を生かしたM&Aも注視する必要がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<EY>
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