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窪田製薬HD Research Memo(4):近視の進行を抑制または改善する効果が期待される「クボタメガネ」

配信元:フィスコ
投稿:2021/03/17 15:54
■主要開発パイプラインの概要と進捗状況

1. ウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」
窪田製薬ホールディングス<4596>は、近視の進行を抑制または改善する効果が期待されるウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」の開発に注力している。近視の種類は、屈折性近視、軸性近視、偽近視、核性近視などに区分されるが、その多くは軸性近視と呼ばれるもので、眼軸が伸長することにより、眼球の中で焦点が網膜より手前になり、遠くが見えにくくなるメカニズムとなっている。このため、眼軸長を短縮させることができれば軸性近視は治療できるが、現在は治療法がなく屈折矯正(メガネ、コンタクトレンズ、屈折矯正手術)によって光の屈折を調整し、網膜に焦点を合わせることで矯正している。

近視人口は生活様式の変化もあって世界的に増加傾向が続いており、現在は約26億人と最も身近な疾患と言われている。また、世界人口に占める近視の比率は2010年で約28%を占めていたが、2050年には約50%(50億人弱)を占めるとの予測もあり、特に日本や中国、韓国などの東アジアの国々では若年層の近視が急激に増え、社会問題化している。近視が進行すると、将来的に緑内障や白内障など失明につながる疾患になるリスクが正視に比べて2~5倍に上昇すると言われており、根治療法の開発が強く望まれている疾患でもある。同社では、「クボタメガネ」の商業化に成功すれば、2030年までに最大1兆3千億円※の市場の可能性を有していると見ている。

※近視人口に同社が想定する普及率とデバイス価格を掛け合わせた数値。


「クボタメガネ」は、独自開発したクボタメガネテクノロジー(アクティブスティミュレーション技術)によって眼軸長の短縮を可能とするもので、既にヒトでの概念実証試験を行い、眼軸長の短縮が確認※されている。同技術では周辺網膜の手前に焦点が合うように能動的に人工的な光刺激を網膜に与え、網膜を内側に移動させる成長信号を生成させ、眼軸長を短縮するメカニズムとなっている。網膜周辺部へ投影するため、同デバイスから投影される特殊な映像は次第に認識されにくくなり、無意識のうちに眼軸長が短縮されることになる。

※米国の眼科専門研究所にて、21~32歳の近視傾向のある被験者12名に対して、クボタメガネテクノロジーを用いた試作機である卓上デバイスにて眼軸に与える影響を検証した結果、対照眼と比較して眼軸長の短縮効果が確認されたことを2020年5月に発表、また、ウェアラブルデバイス型試作機でも同様の効果を確認したことを同年8月に発表した。


自然光を用いた刺激を網膜に与えることで眼軸長を短縮させるデバイスは、海外で数社が商品化または開発している。しかし、クボタメガネテクノロジーの特徴は、能動的に光の刺激を与えることで、眼軸長の短縮がより短い時間で可能になるという効果が挙げられる。眼軸長は一時的に短縮しても、時間が立てば元の長さに戻るが、同社の技術によって短縮効果をさらに向上できる可能性もあり、どのように使うことが効果的かといった実用化のためのガイドラインを作成すべく、2020年7月にニューヨーク州立大学、同年11月にアイルランドのダブリン工科大学と共同研究契約を締結し、専門の研究者と共同で長時間使用における眼軸長への影響など研究データの集積に取り組んでいる。

商業化に向けては、2020年12月に初期型のプロトタイプを発表しており、多くのメディアに取り上げられたことで、国内外から注目度も高まっている。プロトタイプではメガネのフレーム部分に内蔵した光源から照射された光を、レンズに内蔵したミラーに反射させて網膜に刺激を与える構造となっている。現在は、2021年内の販売開始に向けた最終製品のデザイン設計に取り掛かっている段階にある。

また、早期の販売開始に向けて、現在各国の医療デバイスに関する規制状況なども含めた調査を進めている。有力候補としては東南アジア地域が考えられる。販売承認に向けた臨床試験が簡易にできる可能性があり、また、市場規模の小さな国であれば同社単独または現地代理店等を通じてスムーズに販売していくことも可能と見られるためだ。販売開始に向けてマーケティングチームの立ち上げも進めている。

一方、今後の市場として魅力的なのは中国となる。近視人口だけで約7億人にのぼり潜在需要が世界最大規模となるためだ。中国では近視の撲滅が国家戦略の1つとなっていることもあり、既に自然光を利用して眼軸長の短縮を図るメガネやコンタクトレンズが、眼科医やメガネ店を通じて販売されている。「クボタメガネ」は能動的に光を与えることでこれら先行品よりも効果的に眼軸長を短縮できる可能性があり、性能面の優位性からシェアを獲得できるチャンスは大きいと弊社では見ている。製薬・医療デバイスメーカーなどからも問い合わせがあるようで、今後はこれらの中からパートナー契約を締結して、商業化に向けた臨床試験を進めていくものと予想される。

なお、コンタクトレンズタイプのウェアラブル近視デバイスについても開発を進めている。将来的にはAR(拡張現実)/VR(仮想現実)機器への応用も考えられ、眼科領域におけるウェアラブルデバイスとして大きく飛躍することが期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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配信元: フィスコ
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