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窪田製薬ホールディングスのニュース
■窪田製薬ホールディングス<4596>の主要開発パイプラインの概要と進捗状況
5. 宇宙飛行士向け超小型眼科診断装置「SS-OCT」
2019年3月に発表したNASAとの開発受託契約により、宇宙飛行で発症する眼疾患に関する研究を行うための超小型眼科診断装置「Swept Source-OCT※(以下、SS-OCT)」の開発を進めている。2020年2月で第1フェーズの開発を終了し、同年4月に開発報告書をNASA及びTRISHに提出、開発受託収入37百万円を2020年12月期第2四半期に事業収益として計上した。
※OCT(Optical Coherence Tomography):赤外線を利用して網膜の断面を精密に撮影する検査機器のこと。緑内障や加齢黄斑変性等の網膜疾患患者の診断用として使用される。
今回の共同開発契約では、長期的な宇宙飛行を経験した宇宙飛行士の約69%が、視力障害や失明の恐れがある神経眼症候群を患っているという研究報告※をもとに、宇宙飛行が眼領域に与える影響を研究することが目的となっている。現在、国際宇宙ステーション(International Space Station、以下、ISS)で使用されている市販のOCTは据え置き型で操作が複雑であり、数ヶ月間の宇宙ステーション滞在中に宇宙飛行士は3回しか検査できていなかった。今回、開発する超小型SS-OCTは携帯可能で、1人でも手軽に測定することができるため、毎日測定して保存しておくことが可能となる。
※かすみ目や視神経乳頭浮腫、眼球後部平坦症、綿花状白斑等の眼疾患症状が報告されている。
開発フェーズは3ステップに分かれており、第1フェーズのミッションは、耐久性があり、安価な光源であるレーザーを使用した概念実証(POC)の確認で、複数のレーザーを用いて視神経乳頭の形状を高解像度で測定する装置を開発することであった。2020年1月にNASAでデモンストレーションを行ったが、NASAのプロジェクト担当者からも高い評価を受けた※。第2フェーズでは同装置を用いて、どのような画像解析手法で宇宙飛行に起因する眼疾患の検証を行うか、運用上で必要となる要件定義を固める工程となる。最終の第3フェーズでは、実際に宇宙飛行環境において使用可能な装置の開発を行う工程となる。宇宙放射線被ばくに対する耐久性を持ち、かつ無重力環境下で宇宙飛行士自身が操作できるハードウェアの開発を提携企業と共同で進めていくことになる。なお、第2フェーズの開始時期についてはNASAの予算が付き次第となるが、現状は国家予算の中でヘルスケア関連の予算削減の動きがあるほか、新型コロナウイルス感染症対策に予算が充当されていることもあり、開始時期については未定となっている。
※NASA担当者から、次のようなコメントが寄せられている。「小型でありながら操作が簡単で、データ処理が早い。宇宙飛行中の眼球への影響を研究するために、ISSで大いに役立つと信じている」「フェーズ1の使用条件を満たしているだけでなく、期待以上の完成度であった。外見も洗練され、軽くて持ちやすい。フェーズ2での仕上がりが楽しみである」
今回の開発プロジェクトが業績に与える影響については軽微と考えられるが、NASAとの共同開発契約を発表したことで同社の認知度が向上し、「PBOS」への注目度も上がっている。また、同社は今回のプロジェクトで蓄積したノウハウを基に「PBOS」の機能拡張を進めていくことも視野に入れている。具体的には、緑内障などの視神経乳頭に影響のある疾患のモニタリングデバイス用としての応用展開が可能と考えている。
VAP-1阻害剤については共同研究パートナーのLeo Pharmaで評価中
6. VAP-1阻害剤
2020年4月に子会社のクボタビジョンと皮膚科領域におけるグルーバル製薬企業であるLeo Pharma(レオファーマ)が、VAP-1阻害剤の治療薬候補の探索に向けた共同研究契約を締結したことを発表した。同社はエミクススタト塩酸塩の基礎研究を進める過程において多くの低分子化合物のライブラリを作成してきたが、その中でアトピー性皮膚炎や変形性関節症などの炎症性疾患に関わっているとされるVAP-1※の働きを阻害する化合物を数十種類発見しており、今回はこれら化合物の中から有望な化合物をさらに絞り込むため、LEO Pharmaの研究ツールと予算を用いて探索していく取り組みとなる。
※VAP-1(Vascular adhesion protein-1):血管内皮表面に存在する白血球接着分子のこと。アトピー性皮膚炎や乾癬、変形性関節症、糖尿病性腎疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの炎症性疾患では、VAP-1の異常な活性化が認められている。このため、VAP-1の働きを阻害することで、これら炎症性疾患の症状を和らげる効果があると考えられている。
同社の候補化合物は、他社の候補化合物と比較して、VAP-1の阻害効果が高く、かつ選択制が高いこと(副作用リスクが低い)がin vitro試験で確認されており、今後、LEO Pharmaでのスクリーニング評価によって、有望な治療薬候補化合物が絞り込まれれば、前臨床試験や臨床試験に向けた共同開発契約につながっていく可能性がある。スクリーニング評価に関しては半年から1年程度かかる見通しで、2021年の前半には結果は判明するものと思われる。
VAP-1阻害剤については、適応範囲が広く潜在的な市場価値が大きいため大手製薬企業でも活発に開発を進めているが、上市実績はまだないだけに今後の動向が注目される。また、皮膚科領域以外についてはほかのパートナー企業との共同開発の可能性についても検討していく。米国では新型コロナウイルス感染症の重症患者において一定数が、ARDSを発症し死に至ると言われている。VAP-1阻害剤は、ARDSにも薬効の可能性があることから、現在、米国の研究機関と協議を進めており、補助金を活用した開発を進めていく可能性もある。また、2020年12月には米国国立がん研究所のDTP(Developmental Therapeutics Program)にもVAP-1阻害剤を提出し、抗がん活性のスクリーニング評価を行うことを発表している。同スクリーニングにより候補化合物の抗腫瘍活性で有効なデータが得られた場合は、がん領域で新たな治療としての開発が進む可能性もある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>
5. 宇宙飛行士向け超小型眼科診断装置「SS-OCT」
2019年3月に発表したNASAとの開発受託契約により、宇宙飛行で発症する眼疾患に関する研究を行うための超小型眼科診断装置「Swept Source-OCT※(以下、SS-OCT)」の開発を進めている。2020年2月で第1フェーズの開発を終了し、同年4月に開発報告書をNASA及びTRISHに提出、開発受託収入37百万円を2020年12月期第2四半期に事業収益として計上した。
※OCT(Optical Coherence Tomography):赤外線を利用して網膜の断面を精密に撮影する検査機器のこと。緑内障や加齢黄斑変性等の網膜疾患患者の診断用として使用される。
今回の共同開発契約では、長期的な宇宙飛行を経験した宇宙飛行士の約69%が、視力障害や失明の恐れがある神経眼症候群を患っているという研究報告※をもとに、宇宙飛行が眼領域に与える影響を研究することが目的となっている。現在、国際宇宙ステーション(International Space Station、以下、ISS)で使用されている市販のOCTは据え置き型で操作が複雑であり、数ヶ月間の宇宙ステーション滞在中に宇宙飛行士は3回しか検査できていなかった。今回、開発する超小型SS-OCTは携帯可能で、1人でも手軽に測定することができるため、毎日測定して保存しておくことが可能となる。
※かすみ目や視神経乳頭浮腫、眼球後部平坦症、綿花状白斑等の眼疾患症状が報告されている。
開発フェーズは3ステップに分かれており、第1フェーズのミッションは、耐久性があり、安価な光源であるレーザーを使用した概念実証(POC)の確認で、複数のレーザーを用いて視神経乳頭の形状を高解像度で測定する装置を開発することであった。2020年1月にNASAでデモンストレーションを行ったが、NASAのプロジェクト担当者からも高い評価を受けた※。第2フェーズでは同装置を用いて、どのような画像解析手法で宇宙飛行に起因する眼疾患の検証を行うか、運用上で必要となる要件定義を固める工程となる。最終の第3フェーズでは、実際に宇宙飛行環境において使用可能な装置の開発を行う工程となる。宇宙放射線被ばくに対する耐久性を持ち、かつ無重力環境下で宇宙飛行士自身が操作できるハードウェアの開発を提携企業と共同で進めていくことになる。なお、第2フェーズの開始時期についてはNASAの予算が付き次第となるが、現状は国家予算の中でヘルスケア関連の予算削減の動きがあるほか、新型コロナウイルス感染症対策に予算が充当されていることもあり、開始時期については未定となっている。
※NASA担当者から、次のようなコメントが寄せられている。「小型でありながら操作が簡単で、データ処理が早い。宇宙飛行中の眼球への影響を研究するために、ISSで大いに役立つと信じている」「フェーズ1の使用条件を満たしているだけでなく、期待以上の完成度であった。外見も洗練され、軽くて持ちやすい。フェーズ2での仕上がりが楽しみである」
今回の開発プロジェクトが業績に与える影響については軽微と考えられるが、NASAとの共同開発契約を発表したことで同社の認知度が向上し、「PBOS」への注目度も上がっている。また、同社は今回のプロジェクトで蓄積したノウハウを基に「PBOS」の機能拡張を進めていくことも視野に入れている。具体的には、緑内障などの視神経乳頭に影響のある疾患のモニタリングデバイス用としての応用展開が可能と考えている。
VAP-1阻害剤については共同研究パートナーのLeo Pharmaで評価中
6. VAP-1阻害剤
2020年4月に子会社のクボタビジョンと皮膚科領域におけるグルーバル製薬企業であるLeo Pharma(レオファーマ)が、VAP-1阻害剤の治療薬候補の探索に向けた共同研究契約を締結したことを発表した。同社はエミクススタト塩酸塩の基礎研究を進める過程において多くの低分子化合物のライブラリを作成してきたが、その中でアトピー性皮膚炎や変形性関節症などの炎症性疾患に関わっているとされるVAP-1※の働きを阻害する化合物を数十種類発見しており、今回はこれら化合物の中から有望な化合物をさらに絞り込むため、LEO Pharmaの研究ツールと予算を用いて探索していく取り組みとなる。
※VAP-1(Vascular adhesion protein-1):血管内皮表面に存在する白血球接着分子のこと。アトピー性皮膚炎や乾癬、変形性関節症、糖尿病性腎疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの炎症性疾患では、VAP-1の異常な活性化が認められている。このため、VAP-1の働きを阻害することで、これら炎症性疾患の症状を和らげる効果があると考えられている。
同社の候補化合物は、他社の候補化合物と比較して、VAP-1の阻害効果が高く、かつ選択制が高いこと(副作用リスクが低い)がin vitro試験で確認されており、今後、LEO Pharmaでのスクリーニング評価によって、有望な治療薬候補化合物が絞り込まれれば、前臨床試験や臨床試験に向けた共同開発契約につながっていく可能性がある。スクリーニング評価に関しては半年から1年程度かかる見通しで、2021年の前半には結果は判明するものと思われる。
VAP-1阻害剤については、適応範囲が広く潜在的な市場価値が大きいため大手製薬企業でも活発に開発を進めているが、上市実績はまだないだけに今後の動向が注目される。また、皮膚科領域以外についてはほかのパートナー企業との共同開発の可能性についても検討していく。米国では新型コロナウイルス感染症の重症患者において一定数が、ARDSを発症し死に至ると言われている。VAP-1阻害剤は、ARDSにも薬効の可能性があることから、現在、米国の研究機関と協議を進めており、補助金を活用した開発を進めていく可能性もある。また、2020年12月には米国国立がん研究所のDTP(Developmental Therapeutics Program)にもVAP-1阻害剤を提出し、抗がん活性のスクリーニング評価を行うことを発表している。同スクリーニングにより候補化合物の抗腫瘍活性で有効なデータが得られた場合は、がん領域で新たな治療としての開発が進む可能性もある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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