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シンバイオ製薬のニュース
*13:11JST シンバイオ製薬 Research Memo(1):BCVのPOC確立により2025年に複数の臨床試験を開始し、開発を加速
■要約
シンバイオ製薬<4582>は、アンメットメディカルニーズ※1の高い「がん、血液、ウイルス感染症」領域をターゲットに、臨床試験段階からの開発を進めるバイオベンチャーで、ラボレス・ファブレス戦略により効率的な事業運営を推進している。パイプラインには、既に製品化済みの「トレアキシン(R)」(悪性リンパ腫向け治療薬)のほか、米国Chimerix(以下、キメリックス)から導入した抗ウイルス薬「ブリンシドフォビル(以下、BCV)」、同Onconova Therapeutics, Inc※2から導入した「リゴセルチブ」がある。
※1 患者や医師から強く望まれているにも関わらず有効な既存薬や治療法がない領域。
※2 2024年4月2日付でOnconovaとインフルエンザ等の感染症領域における次世代抗ウイルス薬を開発するバイオベンチャーのTrawsfynydd Therapeutics, Inc.が経営統合し、新会社Traws Pharma, Inc.を設立した。
1. BCVの開発動向
BCV(注射剤)は、広範囲のDNAウイルスに対して高い抗ウイルス活性を持つほか、抗腫瘍活性を持つことが研究から明らかとなっており、現在アンメットメディカルニーズの高いウイルス感染症やがん疾患、脳神経変性疾患など複数の領域で研究開発が進められている。2023年に造血幹細胞移植後のアデノウイルス(AdV)感染症を対象とした国際共同第2相臨床試験においてPOC※を確立したことを発表し、今後国際共同第3相臨床試験を実施し、順調に進めば2028年後半にも販売承認を取得できる可能性がある。また、造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染症を対象とした第2相臨床試験も米国で開始したことを2024年5月に発表した。そのほか、CMV感染の膠芽腫やNK/T細胞リンパ腫を対象とした臨床試験も2025年以降に開始される見込みだ。さらに、米国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)で実施しているEBV感染による多発性硬化症を対象とした動物実験で良好な結果が得られれば、同適応症でも臨床試験の開始を検討すると見られる。同社はグローバル製薬企業とプロジェクトごとにパートナー契約を締結し、資金負担を軽減しながら開発を進めていく戦略で、2030年までに少なくとも2つの適応症で承認取得を目指す。これらの開発に成功すればBCVの事業価値は1,000億円を超える可能性があるだけに、パートナー交渉も含めて今後の動向が注目される。
※POC(Proof of Concept):研究開発中である新薬候補物質の有用性・効果が、動物もしくはヒトに投与することによって認められること。
2. 2023年12月期実績と2024年12月期計画
2023年12月期の売上高は前期比44.1%減の5,589百万円、営業損失は811百万円(前期は1,963百万円の利益)となった。2022年6月に「トレアキシン(R)」の後発医薬品が発売され、市場シェアの低下と薬価下落が業績悪化要因となった。市場シェアは2023年12月期の期中平均で70%台、期末時点で約60%に低下したと見られる。2024年12月期の計画は売上高で同53.1%減の2,623百万円、営業損失で3,702百万円を見込む。売上高は薬価下落と後発医薬品浸透の影響により2ケタ減収が続く見通しだ。また、研究開発費は3,409百万円と同770百万円増を見込んでいる。同社はBCVの開発ステージが続くことから、「トレアキシン(R)」以外の収益獲得を目的に国内市場を対象とした新規ライセンスの導入交渉を進めており、2024年秋頃の締結を目指している。
3. 2030年に向けた成長戦略
2030年に向けた成長戦略として、国内で「トレアキシン(R)」と今後導入する新規薬剤により一定の収益を獲得しながら、BCVのプラットフォーム展開(複数の適応症での開発)による事業価値の最大化に取り組む。AdV感染症でPOCを確立し、最適な用法・用量を確認できたことから、他の適応症での開発リスク低減と、開発期間の大幅短縮が可能になると同社では見ている。2030年までに少なくとも2つの適応症で承認を得ることを最優先目標としており、BCVの承認取得・上市及びパートナリング収入の獲得によって黒字化を実現し、グローバル製薬企業として中長期的な企業価値向上を目指す。なお、今後の資金調達方針としては、手元キャッシュ55~65億円を保持することを目安に、グローバルパートナーシップ収入や機関投資家等からの調達を検討している。
■Key Points
・BCVは移植後のウイルス感染症や難治性腫瘍、脳神経変性疾患など複数の疾患で治療効果が期待できる「ゲームチェンジャー」となる可能性を秘める
・ヒトでのPOC確立によりBCVの開発リスクが低減、開発期間の短縮も見込め、2030年までに2つの適応症で承認取得を目指す
・2024年12月期は「トレアキシン(R)」の減収が続くなか、新規導入品やBCVのパートナー契約の交渉を進める
・BCVのプラットフォーム展開により、グローバル・スペシャリティファーマとして成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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シンバイオ製薬<4582>は、アンメットメディカルニーズ※1の高い「がん、血液、ウイルス感染症」領域をターゲットに、臨床試験段階からの開発を進めるバイオベンチャーで、ラボレス・ファブレス戦略により効率的な事業運営を推進している。パイプラインには、既に製品化済みの「トレアキシン(R)」(悪性リンパ腫向け治療薬)のほか、米国Chimerix(以下、キメリックス)から導入した抗ウイルス薬「ブリンシドフォビル(以下、BCV)」、同Onconova Therapeutics, Inc※2から導入した「リゴセルチブ」がある。
※1 患者や医師から強く望まれているにも関わらず有効な既存薬や治療法がない領域。
※2 2024年4月2日付でOnconovaとインフルエンザ等の感染症領域における次世代抗ウイルス薬を開発するバイオベンチャーのTrawsfynydd Therapeutics, Inc.が経営統合し、新会社Traws Pharma, Inc.を設立した。
1. BCVの開発動向
BCV(注射剤)は、広範囲のDNAウイルスに対して高い抗ウイルス活性を持つほか、抗腫瘍活性を持つことが研究から明らかとなっており、現在アンメットメディカルニーズの高いウイルス感染症やがん疾患、脳神経変性疾患など複数の領域で研究開発が進められている。2023年に造血幹細胞移植後のアデノウイルス(AdV)感染症を対象とした国際共同第2相臨床試験においてPOC※を確立したことを発表し、今後国際共同第3相臨床試験を実施し、順調に進めば2028年後半にも販売承認を取得できる可能性がある。また、造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染症を対象とした第2相臨床試験も米国で開始したことを2024年5月に発表した。そのほか、CMV感染の膠芽腫やNK/T細胞リンパ腫を対象とした臨床試験も2025年以降に開始される見込みだ。さらに、米国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)で実施しているEBV感染による多発性硬化症を対象とした動物実験で良好な結果が得られれば、同適応症でも臨床試験の開始を検討すると見られる。同社はグローバル製薬企業とプロジェクトごとにパートナー契約を締結し、資金負担を軽減しながら開発を進めていく戦略で、2030年までに少なくとも2つの適応症で承認取得を目指す。これらの開発に成功すればBCVの事業価値は1,000億円を超える可能性があるだけに、パートナー交渉も含めて今後の動向が注目される。
※POC(Proof of Concept):研究開発中である新薬候補物質の有用性・効果が、動物もしくはヒトに投与することによって認められること。
2. 2023年12月期実績と2024年12月期計画
2023年12月期の売上高は前期比44.1%減の5,589百万円、営業損失は811百万円(前期は1,963百万円の利益)となった。2022年6月に「トレアキシン(R)」の後発医薬品が発売され、市場シェアの低下と薬価下落が業績悪化要因となった。市場シェアは2023年12月期の期中平均で70%台、期末時点で約60%に低下したと見られる。2024年12月期の計画は売上高で同53.1%減の2,623百万円、営業損失で3,702百万円を見込む。売上高は薬価下落と後発医薬品浸透の影響により2ケタ減収が続く見通しだ。また、研究開発費は3,409百万円と同770百万円増を見込んでいる。同社はBCVの開発ステージが続くことから、「トレアキシン(R)」以外の収益獲得を目的に国内市場を対象とした新規ライセンスの導入交渉を進めており、2024年秋頃の締結を目指している。
3. 2030年に向けた成長戦略
2030年に向けた成長戦略として、国内で「トレアキシン(R)」と今後導入する新規薬剤により一定の収益を獲得しながら、BCVのプラットフォーム展開(複数の適応症での開発)による事業価値の最大化に取り組む。AdV感染症でPOCを確立し、最適な用法・用量を確認できたことから、他の適応症での開発リスク低減と、開発期間の大幅短縮が可能になると同社では見ている。2030年までに少なくとも2つの適応症で承認を得ることを最優先目標としており、BCVの承認取得・上市及びパートナリング収入の獲得によって黒字化を実現し、グローバル製薬企業として中長期的な企業価値向上を目指す。なお、今後の資金調達方針としては、手元キャッシュ55~65億円を保持することを目安に、グローバルパートナーシップ収入や機関投資家等からの調達を検討している。
■Key Points
・BCVは移植後のウイルス感染症や難治性腫瘍、脳神経変性疾患など複数の疾患で治療効果が期待できる「ゲームチェンジャー」となる可能性を秘める
・ヒトでのPOC確立によりBCVの開発リスクが低減、開発期間の短縮も見込め、2030年までに2つの適応症で承認取得を目指す
・2024年12月期は「トレアキシン(R)」の減収が続くなか、新規導入品やBCVのパートナー契約の交渉を進める
・BCVのプラットフォーム展開により、グローバル・スペシャリティファーマとして成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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