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三洋化成工業のニュース
■成長戦略
三洋化成工業<4471>は2022年3月、さらなる持続的成長に向けて、2030年におけるありたい姿を定め、それに向けた経営方針として「WakuWaku Explosion 2030」を策定した。グループスローガンを「変える。」から「WakuWaku」へ刷新するとともに、不連続な成長を目指すという強い想いを「Explosion」という言葉に込め、環境に調和した循環型社会、健康・安心にくらせる社会、一人ひとりがかがやく社会を目指している。
また、2030年のありたい姿に基づいて、その道程である2024年のあるべき姿を策定し、現在の事業活動を「新たな成長軌道」「基盤事業からの展開」「基盤事業の見直し」の3つに再整理した。「新たな成長軌道」では、化学の枠を越えたイノベーションで環境・社会課題の解決に貢献する。「基盤事業からの展開」では、強みを活かした事業領域の拡大や深耕による成長を目指す。「基盤事業の見直し」では、構造改革の加速と環境視点での事業転換を推進する方針だ。事業ポートフォリオの再編、強化に取り組み、ありたい姿に向けた変革を進めることで、2025年3月期の営業利益で200億円、2031年3月期の営業利益で500億円(ROIC約10%)を目指す。具体的な施策としては、2025年3月期までは徹底的な無駄の排除、既存事業の高付加価値製品の増産・拡販、低利益製品の利益性改善(品種統合、製造プロセス改善)など、2031年3月期の目標達成に向けては新製品・新事業の創出、生産設備リノベーション等による設備保守費用の削減など、中長期的な利益性改善施策を推進する。このほかにも、海外拠点や生産現場、コーポレート機能など、「あらゆる立場の多様な従業員一人ひとりが主役」との考えのもと、全従業員が誇りを持ち、働きがいを感じる、グローバルでユニークな高収益企業に成長することを目指している。
1. 中期成長に向けた戦略
中期成長に向けた戦略としては、全樹脂電池用被覆活物質、慢性創傷治療、外科手術用止血材、アグリ・ニュートリション、匂いセンサーなど、独自技術やアライアンスを活用した新製品開発・新規事業創出を積極的に推進していく。事業を通じて持続可能な経済成長と社会的課題の解決に貢献するスペシャリティ・ケミカル企業として、ブルーオーシャン戦略で新規事業を創出する方針だ。
(1) 全樹脂電池
新型リチウムイオン電池「全樹脂電池」は、従来の電池構造とは異なるバイポーラ構造により、異常時に信頼性を発揮する。2019年2月に「全樹脂電池」の開発を行うAPBと資本業務提携し、APBに「全樹脂電池」のキーマテリアルとなる被覆活物質を供給している。2020年12月にはHAPS(High Altitude Platform Station:成層圏の通信プラットフォーム)向け蓄電池としての開発に向けて基本合意した。2021年5月には全樹脂電池量産のための第1工場であるAPB福井センター武生工場が竣工し、同年10月にサンプル製造を開始している。なお、APBについては、2022年12月に保有株式の一部を譲渡し、持分法適用関連会社から除外したが、被覆活物質の供給は継続している。
同社は電池関連について、界面制御技術をコアテクノロジーとして新素材開発を多角的に推進している。一例を挙げると、リチウムイオン電池用有機正極材料の開発を他社(社名非公開)との協業によって推進している。正極部材を無機物から有機物にすることで、さらなる軽量化を図る方針だ。
(2) バイオ・メディカル事業分野
バイオ・メディカル事業分野については、QOL(Quality of Life)向上の実現に向けて事業拡大を図っていく方針だ。慢性創傷治療を目的とする新規治療材料「シルクエラスチン(R)」は、京都大学大学院医学研究科形成外科学講座森本尚樹教授らと共同開発しており、有効性確認を目的として、同社が中心となり、京都大学及び広陵化学工業(株)とともに2021年7月に企業主導治験を開始(国内5医療機関で実施)した。2022年8月には、広島大学病院で半月板損傷患者(半月板縫合術)を対象とした新たな治療法の医師主導治験を開始した。このほかにも、2023年3月期に日本初の遺伝子組み換え技術を用いた医療機器として薬事承認申請を予定しており、医療機器として2024年3月期の国内上市を目指している。
外科手術用止血材「マツダイト」は、水と反応して柔軟な皮膜をつくるウレタン素材の外科手術用止血材である。胸部大動脈や弓部分岐動脈の人工血管への置換手術の際の吻合部に使用される。同社が製造し、テルモ<4543>に販売委託している。2014年2月に同社初の医療機器として国内で発売開始し、2019年7月にCEマーキングを取得して欧州市場への展開を開始、2020年3月に脳血管を除く血管全体吻合部の止血材へ適応を拡大した。2021年7月には香港での発売を開始したほか、台湾でも医療機器の薬事承認を取得し、同年12月に臨床使用を開始した。
2022年1月には、植物の難防除病害であるリゾクトニア病の発病を抑制する環状ペプチド剤の開発に向けて、岡山大学学術研究院環境生命科学学域の能年義輝研究教授らのグループと共同研究を開始した。抵抗性誘導効果を用いて、世界初となるリゾクトニア病の効果的な発病抑制法の確立を目指す研究で、生物系特定産業技術研究支援センター「令和3年度イノベーション創出強化研究推進事業」の支援を受け、令和5年度までを基礎研究ステージとして開発を進める。
2022年6月には富士フイルム(株)と共同で富士フイルム三洋化成ヘルスケア(株)を設立し、同年10月には富士フイルム和光純薬(株)の自動化学発光酵素免疫分析装置「Accuraseed(R)(アキュラシード)」の専用試薬として使用される体外診断用医薬品の製造を開始した。また、これに伴い富士フイルム三洋化成ヘルスケアに製造を集約する体制に変更した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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三洋化成工業<4471>は2022年3月、さらなる持続的成長に向けて、2030年におけるありたい姿を定め、それに向けた経営方針として「WakuWaku Explosion 2030」を策定した。グループスローガンを「変える。」から「WakuWaku」へ刷新するとともに、不連続な成長を目指すという強い想いを「Explosion」という言葉に込め、環境に調和した循環型社会、健康・安心にくらせる社会、一人ひとりがかがやく社会を目指している。
また、2030年のありたい姿に基づいて、その道程である2024年のあるべき姿を策定し、現在の事業活動を「新たな成長軌道」「基盤事業からの展開」「基盤事業の見直し」の3つに再整理した。「新たな成長軌道」では、化学の枠を越えたイノベーションで環境・社会課題の解決に貢献する。「基盤事業からの展開」では、強みを活かした事業領域の拡大や深耕による成長を目指す。「基盤事業の見直し」では、構造改革の加速と環境視点での事業転換を推進する方針だ。事業ポートフォリオの再編、強化に取り組み、ありたい姿に向けた変革を進めることで、2025年3月期の営業利益で200億円、2031年3月期の営業利益で500億円(ROIC約10%)を目指す。具体的な施策としては、2025年3月期までは徹底的な無駄の排除、既存事業の高付加価値製品の増産・拡販、低利益製品の利益性改善(品種統合、製造プロセス改善)など、2031年3月期の目標達成に向けては新製品・新事業の創出、生産設備リノベーション等による設備保守費用の削減など、中長期的な利益性改善施策を推進する。このほかにも、海外拠点や生産現場、コーポレート機能など、「あらゆる立場の多様な従業員一人ひとりが主役」との考えのもと、全従業員が誇りを持ち、働きがいを感じる、グローバルでユニークな高収益企業に成長することを目指している。
1. 中期成長に向けた戦略
中期成長に向けた戦略としては、全樹脂電池用被覆活物質、慢性創傷治療、外科手術用止血材、アグリ・ニュートリション、匂いセンサーなど、独自技術やアライアンスを活用した新製品開発・新規事業創出を積極的に推進していく。事業を通じて持続可能な経済成長と社会的課題の解決に貢献するスペシャリティ・ケミカル企業として、ブルーオーシャン戦略で新規事業を創出する方針だ。
(1) 全樹脂電池
新型リチウムイオン電池「全樹脂電池」は、従来の電池構造とは異なるバイポーラ構造により、異常時に信頼性を発揮する。2019年2月に「全樹脂電池」の開発を行うAPBと資本業務提携し、APBに「全樹脂電池」のキーマテリアルとなる被覆活物質を供給している。2020年12月にはHAPS(High Altitude Platform Station:成層圏の通信プラットフォーム)向け蓄電池としての開発に向けて基本合意した。2021年5月には全樹脂電池量産のための第1工場であるAPB福井センター武生工場が竣工し、同年10月にサンプル製造を開始している。なお、APBについては、2022年12月に保有株式の一部を譲渡し、持分法適用関連会社から除外したが、被覆活物質の供給は継続している。
同社は電池関連について、界面制御技術をコアテクノロジーとして新素材開発を多角的に推進している。一例を挙げると、リチウムイオン電池用有機正極材料の開発を他社(社名非公開)との協業によって推進している。正極部材を無機物から有機物にすることで、さらなる軽量化を図る方針だ。
(2) バイオ・メディカル事業分野
バイオ・メディカル事業分野については、QOL(Quality of Life)向上の実現に向けて事業拡大を図っていく方針だ。慢性創傷治療を目的とする新規治療材料「シルクエラスチン(R)」は、京都大学大学院医学研究科形成外科学講座森本尚樹教授らと共同開発しており、有効性確認を目的として、同社が中心となり、京都大学及び広陵化学工業(株)とともに2021年7月に企業主導治験を開始(国内5医療機関で実施)した。2022年8月には、広島大学病院で半月板損傷患者(半月板縫合術)を対象とした新たな治療法の医師主導治験を開始した。このほかにも、2023年3月期に日本初の遺伝子組み換え技術を用いた医療機器として薬事承認申請を予定しており、医療機器として2024年3月期の国内上市を目指している。
外科手術用止血材「マツダイト」は、水と反応して柔軟な皮膜をつくるウレタン素材の外科手術用止血材である。胸部大動脈や弓部分岐動脈の人工血管への置換手術の際の吻合部に使用される。同社が製造し、テルモ<4543>に販売委託している。2014年2月に同社初の医療機器として国内で発売開始し、2019年7月にCEマーキングを取得して欧州市場への展開を開始、2020年3月に脳血管を除く血管全体吻合部の止血材へ適応を拡大した。2021年7月には香港での発売を開始したほか、台湾でも医療機器の薬事承認を取得し、同年12月に臨床使用を開始した。
2022年1月には、植物の難防除病害であるリゾクトニア病の発病を抑制する環状ペプチド剤の開発に向けて、岡山大学学術研究院環境生命科学学域の能年義輝研究教授らのグループと共同研究を開始した。抵抗性誘導効果を用いて、世界初となるリゾクトニア病の効果的な発病抑制法の確立を目指す研究で、生物系特定産業技術研究支援センター「令和3年度イノベーション創出強化研究推進事業」の支援を受け、令和5年度までを基礎研究ステージとして開発を進める。
2022年6月には富士フイルム(株)と共同で富士フイルム三洋化成ヘルスケア(株)を設立し、同年10月には富士フイルム和光純薬(株)の自動化学発光酵素免疫分析装置「Accuraseed(R)(アキュラシード)」の専用試薬として使用される体外診断用医薬品の製造を開始した。また、これに伴い富士フイルム三洋化成ヘルスケアに製造を集約する体制に変更した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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