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戸田工業のニュース
*13:43JST 戸田工業 Research Memo(3):2023年11月に創業200周年を迎えた老舗の化学素材メーカー(2)
■戸田工業<4100>の会社概要
(b) LIB用材料
2番目に規模の大きい事業としてハイニッケルを中心とする車載用LIB用材料がある。同事業はリチウムイオン電池の正極材と、正極材として焼成される前の化合物である前駆体、前駆体原料などを手掛けている。2024年3月期は売上高36億円(セグメント内での構成比は20%)で、大半が連結対象子会社の前駆体売上で占められる。同社は磁気テープに代表される磁性酸化鉄市場の急激な市場縮小に対し、既存事業の技術を生かしLIB用正極材料の研究に着手、2000年にコバルト酸リチウム(LiCoO2)事業を開始した。その後、買収などでニッケルコバルトアルミン酸リチウム(LiNiCoAlO2)、Ni(OH)2/CoOx、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リチウムリッチのニッケルコバルトマンガン酸リチウム(Li-Rich NCM)のライセンスも取得し、LIB用正極材料3成分系の事業化を迅速に行った。また米国ミシガン州に工場建設を始め、2010年に伊藤忠商事<8001>と前駆体・正極材料製造のJV、2015年には欧州化学大手BASFと日本を拠点にLIB用正極材料を展開するBASF戸田バッテリーマテリアルズ(同)(以下、BTBM)を立ち上げた。NCA、NCMなど様々な正極の研究開発、製造、販売を行い、2017年にはハイニッケル系正極材料生産設備を大幅増強した。LIB用材料は、BTBM(BASFジャパン(株)66%、同社34%出資、持分法適用会社)が展開しており、2023年12月期の売上高は18,453百万円(前期比14.7%減)、当期純利益2,295百万円(同50.8%減)。現在BTBMは2020年4月に設立されたトヨタ自動車<7203>とパナソニックホールディングス<6752>の車載用角型電池製造の合弁会社であるプライムプラネットエネルギー&ソリューションズ(株)(以下「PPES」)へNCM系正極材料の納入を開始した。またハイニッケル系正極材料の年間生産能力をバッテリーセル容量として45GWh分である6万トンに引き上げ、2024年後半に生産を開始する計画である。なお、BTBMは持分適用会社であり、持分利益での連結寄与となるため、開示されている36億円はカナダのリチウムイオン電池用正極材料の前駆体を手掛ける連結子会社の戸田アドバンストマテリアルズinc.(カナダ、以下「戸田アドバンストマテリアルズ」)の前駆体売上分等が示されている。戸田アドバンストマテリアルズの主力ユーザーはEV向けで、前駆体ビジネスが2021年12月をピークに減少、2023年12月期に売上高3,228百万円(同43%減)となっている。
(c) 誘電体材料
2024年3月期の売上高は10億円(前期比横ばい)と小さいが、今後の伸びが期待されるのがMLCC向け誘電体材料事業である。コンデンサーは3大受動部品の1つで、この中でセラミックコンデンサーは国内におけるコンデンサー生産額の8割近くを占める。現在、スマートフォン(500個/台)、xEV(5,000個/台)、PC/タブレット(1,000個/台)、家電など、あらゆる電子機器で利用され、2023年度は国内生産額で7,746億円(前年度比3.3%増)となっている。セラミックコンデンサーの主原料はチタン酸バリウムで、実用化で先陣を切ったのが村田製作所<6981>、その後、太陽誘電<6976>、TDK<6762>など日系企業が続いて基幹事業化に成功し、サムスンが2000年代に入り本格参入するまで日本企業の独断場であった。同社は2004年にチタン酸バリウムの製造設備を新設し、同分野へ本格参入したが、特徴はその製造方法にある。チタン酸バリウムの製法は、原料を焼成する固相反応法が主流で、村田製作所など大半はこの製法で内製化している。なお日本化学工業<4092>、富士チタン工業(株)などは湿式反応と焼成を組み合わせたシュウ酸塩法を利用、固相法に対して細かい粒度が得られることが特徴である。これらに対し同社は独自の湿式合成技術によって原料を高温・高圧下で反応させ、100nm未満の微細な粒子の粒度を均一に制御できる水熱合成法を利用している。現在、セラミックコンデンサーでは、小型化、大容量化、高誘電率が求められ、すでに0603サイズが1005サイズを抜いて最大比率となっている。さらに0402サイズの比率も高まり、0201サイズも通信モジュールやウェアラブル機器などの特定用途での利用が始まっている。同社は主に電極層向け共材用に供給している。現在、スマートフォンの不振から足元の生産が低迷しているものの、今後、超微粒子チタン酸バリウムの需要が急速に高まると見られる。
(d) 軟磁性材料
2024年3月期の売上高は5億円と小さいが、韓国TICの完全子会社化で今後の成長が期待できる事業である。軟磁性材料とは比較的小さい外部磁場で容易に磁化され、磁場が除かれるとほぼ完全に脱磁する特性を持つ材料で、酸化鉄を主成分とするフェライトの他、鉄を主成分とする合金系などの磁性材料がある。同社は高透磁率、低損失、高飽和磁束密度を持つ磁性材料を素材からコンパウンドまでワンストップで提供している。主な用途は積層インダクター(電気と磁気を相互作用させ電流制御を行う電子部品で、電流の安定化、電圧の平準化、交流電圧の変化などの電源用途)や、スマートフォンのRFID機能、非接触給電用途があり、コイルから発生する磁束を通すコア部分やコイルに貼り付けるシート部分に使われる。
(2) 機能性顔料事業
機能性顔料事業は、主に塗料、複写機・プリンター、環境市場を事業フィールドとして、これまで塗料用顔料、複写機・プリンター向けトナー・キャリア用材料などを中心に事業展開してきた。顔料は、創業以来の事業で、塗料市場では建築物や構造物向けの着色材料などで着実に用途が拡大、一方で複写機・プリンター市場は、ペーパーレス化、電子化などの影響で成熟化している。同社はこれまでシェア拡大に努め、化粧品顔料、透明酸化鉄など新製品群の拡大や環境市場向けの土壌・地下水浄化材などで補い、売上を確保してきた。しかし同事業については、将来的な発展を見据え、事業再生、事業転換を図るとして、2022年12月28日に戸田聯合の出資持分を同社持分法適用関連会社である浙江華源顔料股分有限公司(以下、浙江華源)へ移管した。この連結除外した戸田聯合の影響が含まれるため、2024年3月期は大幅減収となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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(b) LIB用材料
2番目に規模の大きい事業としてハイニッケルを中心とする車載用LIB用材料がある。同事業はリチウムイオン電池の正極材と、正極材として焼成される前の化合物である前駆体、前駆体原料などを手掛けている。2024年3月期は売上高36億円(セグメント内での構成比は20%)で、大半が連結対象子会社の前駆体売上で占められる。同社は磁気テープに代表される磁性酸化鉄市場の急激な市場縮小に対し、既存事業の技術を生かしLIB用正極材料の研究に着手、2000年にコバルト酸リチウム(LiCoO2)事業を開始した。その後、買収などでニッケルコバルトアルミン酸リチウム(LiNiCoAlO2)、Ni(OH)2/CoOx、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リチウムリッチのニッケルコバルトマンガン酸リチウム(Li-Rich NCM)のライセンスも取得し、LIB用正極材料3成分系の事業化を迅速に行った。また米国ミシガン州に工場建設を始め、2010年に伊藤忠商事<8001>と前駆体・正極材料製造のJV、2015年には欧州化学大手BASFと日本を拠点にLIB用正極材料を展開するBASF戸田バッテリーマテリアルズ(同)(以下、BTBM)を立ち上げた。NCA、NCMなど様々な正極の研究開発、製造、販売を行い、2017年にはハイニッケル系正極材料生産設備を大幅増強した。LIB用材料は、BTBM(BASFジャパン(株)66%、同社34%出資、持分法適用会社)が展開しており、2023年12月期の売上高は18,453百万円(前期比14.7%減)、当期純利益2,295百万円(同50.8%減)。現在BTBMは2020年4月に設立されたトヨタ自動車<7203>とパナソニックホールディングス<6752>の車載用角型電池製造の合弁会社であるプライムプラネットエネルギー&ソリューションズ(株)(以下「PPES」)へNCM系正極材料の納入を開始した。またハイニッケル系正極材料の年間生産能力をバッテリーセル容量として45GWh分である6万トンに引き上げ、2024年後半に生産を開始する計画である。なお、BTBMは持分適用会社であり、持分利益での連結寄与となるため、開示されている36億円はカナダのリチウムイオン電池用正極材料の前駆体を手掛ける連結子会社の戸田アドバンストマテリアルズinc.(カナダ、以下「戸田アドバンストマテリアルズ」)の前駆体売上分等が示されている。戸田アドバンストマテリアルズの主力ユーザーはEV向けで、前駆体ビジネスが2021年12月をピークに減少、2023年12月期に売上高3,228百万円(同43%減)となっている。
(c) 誘電体材料
2024年3月期の売上高は10億円(前期比横ばい)と小さいが、今後の伸びが期待されるのがMLCC向け誘電体材料事業である。コンデンサーは3大受動部品の1つで、この中でセラミックコンデンサーは国内におけるコンデンサー生産額の8割近くを占める。現在、スマートフォン(500個/台)、xEV(5,000個/台)、PC/タブレット(1,000個/台)、家電など、あらゆる電子機器で利用され、2023年度は国内生産額で7,746億円(前年度比3.3%増)となっている。セラミックコンデンサーの主原料はチタン酸バリウムで、実用化で先陣を切ったのが村田製作所<6981>、その後、太陽誘電<6976>、TDK<6762>など日系企業が続いて基幹事業化に成功し、サムスンが2000年代に入り本格参入するまで日本企業の独断場であった。同社は2004年にチタン酸バリウムの製造設備を新設し、同分野へ本格参入したが、特徴はその製造方法にある。チタン酸バリウムの製法は、原料を焼成する固相反応法が主流で、村田製作所など大半はこの製法で内製化している。なお日本化学工業<4092>、富士チタン工業(株)などは湿式反応と焼成を組み合わせたシュウ酸塩法を利用、固相法に対して細かい粒度が得られることが特徴である。これらに対し同社は独自の湿式合成技術によって原料を高温・高圧下で反応させ、100nm未満の微細な粒子の粒度を均一に制御できる水熱合成法を利用している。現在、セラミックコンデンサーでは、小型化、大容量化、高誘電率が求められ、すでに0603サイズが1005サイズを抜いて最大比率となっている。さらに0402サイズの比率も高まり、0201サイズも通信モジュールやウェアラブル機器などの特定用途での利用が始まっている。同社は主に電極層向け共材用に供給している。現在、スマートフォンの不振から足元の生産が低迷しているものの、今後、超微粒子チタン酸バリウムの需要が急速に高まると見られる。
(d) 軟磁性材料
2024年3月期の売上高は5億円と小さいが、韓国TICの完全子会社化で今後の成長が期待できる事業である。軟磁性材料とは比較的小さい外部磁場で容易に磁化され、磁場が除かれるとほぼ完全に脱磁する特性を持つ材料で、酸化鉄を主成分とするフェライトの他、鉄を主成分とする合金系などの磁性材料がある。同社は高透磁率、低損失、高飽和磁束密度を持つ磁性材料を素材からコンパウンドまでワンストップで提供している。主な用途は積層インダクター(電気と磁気を相互作用させ電流制御を行う電子部品で、電流の安定化、電圧の平準化、交流電圧の変化などの電源用途)や、スマートフォンのRFID機能、非接触給電用途があり、コイルから発生する磁束を通すコア部分やコイルに貼り付けるシート部分に使われる。
(2) 機能性顔料事業
機能性顔料事業は、主に塗料、複写機・プリンター、環境市場を事業フィールドとして、これまで塗料用顔料、複写機・プリンター向けトナー・キャリア用材料などを中心に事業展開してきた。顔料は、創業以来の事業で、塗料市場では建築物や構造物向けの着色材料などで着実に用途が拡大、一方で複写機・プリンター市場は、ペーパーレス化、電子化などの影響で成熟化している。同社はこれまでシェア拡大に努め、化粧品顔料、透明酸化鉄など新製品群の拡大や環境市場向けの土壌・地下水浄化材などで補い、売上を確保してきた。しかし同事業については、将来的な発展を見据え、事業再生、事業転換を図るとして、2022年12月28日に戸田聯合の出資持分を同社持分法適用関連会社である浙江華源顔料股分有限公司(以下、浙江華源)へ移管した。この連結除外した戸田聯合の影響が含まれるため、2024年3月期は大幅減収となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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