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戸田工業のニュース
以下は、フィスコソーシャルレポーターの個人ブロガー三竿郁夫氏(ブログ「IA工房」を運営)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。
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2022年は、2020年から続くコロナ禍と新たな惨劇“ロシアのウクライナ侵攻”に世界の国々が翻弄され経済活動にも大きな影響が生じた年であった。2021年まで、“カーボンニュートラル”をキーワードに国連やIPCCからの情報発信、各国のCO2削減目標設定の動きが多いに加速し、重点項目である再生エネルギーやEV関連企業からも続々とアグレッシブな発表が相次いだ。しかし、2022年“ロシアのウクライナ侵攻”がもたらしたエネルギー危機や経済制裁が、グローバル物流の停滞・混乱をひき起こし多くの産業がさらなる激動の時代に入った。2022年石油や天然ガス不足問題を抱えた国々は、CO2削減を棚に置き、あらゆる手段でエネルギー危機を乗り越えようとする動きに出た。
地球環境問題を代表する温暖化抑制対策の重要性とその対策の方向性は本質的には変わっていないのだが、最近は“カーボンニュートラル”という言葉よりも “GX(グリーントランスフォーメーション)”という言葉が多く使われるようになった。どの産業もデジタル技術を駆使した変革に期待がかかり、DX関連株に続きGX関連株という言葉も使われ始めている。環境問題解決のための世界経済の大きな流れとして、ESG投資、SDG投資、GX投資等々、いろいろな言葉が乱れ飛び、2023年度の政府予算では、DX・GXという言葉が重要枠になっている。
“カーボンニュートラル”の実現や“エネルギー安全保障”の問題は、複雑でグローバルな課題が山積みで2023以降、どの業界の企業もGXの動向に大なり小なり業績が影響されていくことは間違いなく、それぞれの企業がこの新しい動きの中でどの立ち位置にあり、どう対処していくべきかの模索が続くだろう。ロシアへのエネルギー依存率の高いヨーロッパに比べれば日本への影響は少ないように思えるが、これからの株式市場を予測する上で、ヨーロッパ、米国、アジアのそれぞれの状況の複雑な絡み合いやそれぞれの地政学的なインフラ・プロセスの大きな変革とそのリスクをしっかりと見極め“DXを活用したGX”がどのような企業で動き出しているかに注目したい。“GXを牽引する動き”という視点で最前線の情報を集めてみる。
< GXを牽引する動き (DXの活用にも注目) >
1.地球を覆うCO2の吸収・回収を目指す動き
・戸田工業<4100>は、CO2を吸収する特殊材料ナトリウムフェライトを活用したCO2吸収装置のビジネスに取り組もうとしている。現在1日1トンの吸収能力を持つ装置が開発されているが、その1トン回収経費は、現在6000円程度。そのビジネスの行方は、その経費の削減が、CO21トンあたりの炭素税やカーボンプライシングの金額 (1トン当たりの着地点)に見合うかどうかにかかっている。
・膨大な熱処理を行う基幹産業では、多量のCO2を排出している。自責として回収・貯蔵するCCS/CCUS技術の導入が求められている。日本製鉄<5401>は、年間CO2排出量約1億トンを、2030年までに30%(2013年比)の削減を目指してきた。その一つ“COURSE50”プロジェクトでCO2分離回収技術の開発と実用化を目指している。ここでも1トンあたりの分離回収コストが重要となるが、1トン2000円程度の見通しを得たようだ。
・森林はCO2を吸収するが、政府が予算を組んでいるスマート林業の取り組みにも期待したい。
住友林業<1911>は、ICTプラットフォーム会社 ASロカス株式会社<未上場>と提携して、航空レーザー計測を基に森林の資源量解析、森林管理、森林計画を支援している。
・こういったCO2吸収/回収の動きとDXはどう関連するのか? CO2吸収・回収関連のビジネス化には、カーボンプライシングやカーボンオフセットの可視化や取引マッチングのインフラの構築が重要となってくる。そこに目をつけた株式会社Linkhora<未上場>のようなプラットフォーム会社も出現している。
2.需要側の必要エネルギーを減らす省エネルギーおよび需給調整最適化の動き
・ ロシアのウクライナ侵攻により引き起こされたヨーロッパでのガス危機で、ロシアのガスに頼らない暖房が見直され、ダイキン工業<6367>の省エネ機器、ヒートポンプ暖房の需要が増えている。
・再生エネルギー比率が向上すると電力の需要と供給のバランスが大きな課題になる。そこで注目されているDXが自動デマンドレスポンス(ADR)や仮想発電所(VPP)だ。NEC<6701>や富士通<6702>、東京電力HD<9501>グループの東京電力ベンチャー<未上場>がその開発に取り組んでいる。
・Jパワー<9513>は、愛知県春日井市の水道施設での電力需要を制御するデマンドレスポンスによる電力の有効利用を開始している。
3.石炭・石油・ガスをクリーンエネルギーに代替えすることを推進する動き
・海運大手は、重油に変わる代替燃料で運行する船への切り替えを推進する。川崎汽船<9107>は、
GoodFuels社(オランダ)からバイオ燃料を調達し、試験航行を行なった。
・ユーグレナ<2931>は、バイオ燃料“サステオ”を開発製造し、東京都とバイオ燃料導入促進事業に係る協定を締結した。
・住友商事<8053>は、タイの化学メーカーGGCと提携し、農産物の搾りかすなどを活用しバイオエタノールの量産を検討している。
・ANA<9202>は、代替燃料も推進しているが、それに加えて、IT技術を駆使して、飛行ルートや運行方式を入念に修正し、CO2の低減に努めている。
代替燃料を使用する場合、一般的にその混合比率を評価しながら徐々に変えていく。
その時のプロセスデータや品質データの評価にはIoT/AI技術を活用したDXが有用である。
4.再生エネルギー比率向上のためのコストや効率の難題に挑戦する動き
・太陽光発電では、設置効率を上げていくフィルム型ペロブスカイトの実用化が重要技術だ。積水化学<4204>は、発電効率15%のフィルム型太陽電池の製造に成功し、東京都の下水道施設への適用性検証に入った。
・NEC<6701>は、分散するエネルギーリソースをICTで統合制御する技術を活用した「NEC Energy Resource Aggregation クラウドサービス」で企業や自治体に自己託送(*1)する新メニューを2023年4月から提供開始する。
(*1) 自己託送 : 自家用発電設備を保有する者が、自家用発電設備を用いて発電した電力を一般送配電事業者が保有する送配電ネットワークを介して、別の場所にある事業所等に供給すること
5.“ひと”と“もの”の移動に変革をもたらす“顧客中心のサービス”MaaSの動き
フィンランドの環境政策とITS戦略から生まれた“MaaS”Whim(*2)が世界的に注目され、日本のMaaSも動き始めた。EV比率を高めることもCO2削減には重要だが、MaaSの登場で自動車という巨大産業が他の産業と連携して産業構造・社会構造に変化をもたらすことが予想され、“シェアエコノミー”にもつながるGXの大きなテーマともなっている。
(*2)Whim: 1つのアプリでバス、タクシー、自転車シェア、カーシェアなど様々な交通手段を組み合わせて、最適な移動体験を提供するフィンランドで生まれたサービス。
・ソフトバンクG<9984>とトヨタ<7203>の共同出資会社MOMETは、顧客中心のモビリティサービス
(医療MaaSや行政MaaS等)の事業を開始している。
・三井不動産<8801>は、Whimアプリを提供するMaaS Global (フィンランド)と提携し、“不動産+MaaS”のサービス「&Move」を三井不動産グループが開発・運営する商業施設・ホテル・マンションへ導入する。
・ENEOS<5020>は、EV化/MaaSの流れに沿ってガソリンステーションの立地を生かし、電動自転車、スクーター、超小型 EV の貸出返却拠点となるシェア型マルチモビリシティステーションを埼玉県で展開している。
日本のMaaSの動きは、まだほんの入り口で、2030年のMaaS市場規模は400億米ドルとの予測も出ている(2022年3月リサーチステーションの予測)。
上記で挙げた“GXを牽引する動き”の例のように重要な課題に挑戦している会社に期待をかけ、今後もその動向に着目した情報を発信していきたい。
執筆者名:三竿郁夫 IA工房代表
ブログ名:「IA工房」
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2022年は、2020年から続くコロナ禍と新たな惨劇“ロシアのウクライナ侵攻”に世界の国々が翻弄され経済活動にも大きな影響が生じた年であった。2021年まで、“カーボンニュートラル”をキーワードに国連やIPCCからの情報発信、各国のCO2削減目標設定の動きが多いに加速し、重点項目である再生エネルギーやEV関連企業からも続々とアグレッシブな発表が相次いだ。しかし、2022年“ロシアのウクライナ侵攻”がもたらしたエネルギー危機や経済制裁が、グローバル物流の停滞・混乱をひき起こし多くの産業がさらなる激動の時代に入った。2022年石油や天然ガス不足問題を抱えた国々は、CO2削減を棚に置き、あらゆる手段でエネルギー危機を乗り越えようとする動きに出た。
地球環境問題を代表する温暖化抑制対策の重要性とその対策の方向性は本質的には変わっていないのだが、最近は“カーボンニュートラル”という言葉よりも “GX(グリーントランスフォーメーション)”という言葉が多く使われるようになった。どの産業もデジタル技術を駆使した変革に期待がかかり、DX関連株に続きGX関連株という言葉も使われ始めている。環境問題解決のための世界経済の大きな流れとして、ESG投資、SDG投資、GX投資等々、いろいろな言葉が乱れ飛び、2023年度の政府予算では、DX・GXという言葉が重要枠になっている。
“カーボンニュートラル”の実現や“エネルギー安全保障”の問題は、複雑でグローバルな課題が山積みで2023以降、どの業界の企業もGXの動向に大なり小なり業績が影響されていくことは間違いなく、それぞれの企業がこの新しい動きの中でどの立ち位置にあり、どう対処していくべきかの模索が続くだろう。ロシアへのエネルギー依存率の高いヨーロッパに比べれば日本への影響は少ないように思えるが、これからの株式市場を予測する上で、ヨーロッパ、米国、アジアのそれぞれの状況の複雑な絡み合いやそれぞれの地政学的なインフラ・プロセスの大きな変革とそのリスクをしっかりと見極め“DXを活用したGX”がどのような企業で動き出しているかに注目したい。“GXを牽引する動き”という視点で最前線の情報を集めてみる。
< GXを牽引する動き (DXの活用にも注目) >
1.地球を覆うCO2の吸収・回収を目指す動き
・戸田工業<4100>は、CO2を吸収する特殊材料ナトリウムフェライトを活用したCO2吸収装置のビジネスに取り組もうとしている。現在1日1トンの吸収能力を持つ装置が開発されているが、その1トン回収経費は、現在6000円程度。そのビジネスの行方は、その経費の削減が、CO21トンあたりの炭素税やカーボンプライシングの金額 (1トン当たりの着地点)に見合うかどうかにかかっている。
・膨大な熱処理を行う基幹産業では、多量のCO2を排出している。自責として回収・貯蔵するCCS/CCUS技術の導入が求められている。日本製鉄<5401>は、年間CO2排出量約1億トンを、2030年までに30%(2013年比)の削減を目指してきた。その一つ“COURSE50”プロジェクトでCO2分離回収技術の開発と実用化を目指している。ここでも1トンあたりの分離回収コストが重要となるが、1トン2000円程度の見通しを得たようだ。
・森林はCO2を吸収するが、政府が予算を組んでいるスマート林業の取り組みにも期待したい。
住友林業<1911>は、ICTプラットフォーム会社 ASロカス株式会社<未上場>と提携して、航空レーザー計測を基に森林の資源量解析、森林管理、森林計画を支援している。
・こういったCO2吸収/回収の動きとDXはどう関連するのか? CO2吸収・回収関連のビジネス化には、カーボンプライシングやカーボンオフセットの可視化や取引マッチングのインフラの構築が重要となってくる。そこに目をつけた株式会社Linkhora<未上場>のようなプラットフォーム会社も出現している。
2.需要側の必要エネルギーを減らす省エネルギーおよび需給調整最適化の動き
・ ロシアのウクライナ侵攻により引き起こされたヨーロッパでのガス危機で、ロシアのガスに頼らない暖房が見直され、ダイキン工業<6367>の省エネ機器、ヒートポンプ暖房の需要が増えている。
・再生エネルギー比率が向上すると電力の需要と供給のバランスが大きな課題になる。そこで注目されているDXが自動デマンドレスポンス(ADR)や仮想発電所(VPP)だ。NEC<6701>や富士通<6702>、東京電力HD<9501>グループの東京電力ベンチャー<未上場>がその開発に取り組んでいる。
・Jパワー<9513>は、愛知県春日井市の水道施設での電力需要を制御するデマンドレスポンスによる電力の有効利用を開始している。
3.石炭・石油・ガスをクリーンエネルギーに代替えすることを推進する動き
・海運大手は、重油に変わる代替燃料で運行する船への切り替えを推進する。川崎汽船<9107>は、
GoodFuels社(オランダ)からバイオ燃料を調達し、試験航行を行なった。
・ユーグレナ<2931>は、バイオ燃料“サステオ”を開発製造し、東京都とバイオ燃料導入促進事業に係る協定を締結した。
・住友商事<8053>は、タイの化学メーカーGGCと提携し、農産物の搾りかすなどを活用しバイオエタノールの量産を検討している。
・ANA<9202>は、代替燃料も推進しているが、それに加えて、IT技術を駆使して、飛行ルートや運行方式を入念に修正し、CO2の低減に努めている。
代替燃料を使用する場合、一般的にその混合比率を評価しながら徐々に変えていく。
その時のプロセスデータや品質データの評価にはIoT/AI技術を活用したDXが有用である。
4.再生エネルギー比率向上のためのコストや効率の難題に挑戦する動き
・太陽光発電では、設置効率を上げていくフィルム型ペロブスカイトの実用化が重要技術だ。積水化学<4204>は、発電効率15%のフィルム型太陽電池の製造に成功し、東京都の下水道施設への適用性検証に入った。
・NEC<6701>は、分散するエネルギーリソースをICTで統合制御する技術を活用した「NEC Energy Resource Aggregation クラウドサービス」で企業や自治体に自己託送(*1)する新メニューを2023年4月から提供開始する。
(*1) 自己託送 : 自家用発電設備を保有する者が、自家用発電設備を用いて発電した電力を一般送配電事業者が保有する送配電ネットワークを介して、別の場所にある事業所等に供給すること
5.“ひと”と“もの”の移動に変革をもたらす“顧客中心のサービス”MaaSの動き
フィンランドの環境政策とITS戦略から生まれた“MaaS”Whim(*2)が世界的に注目され、日本のMaaSも動き始めた。EV比率を高めることもCO2削減には重要だが、MaaSの登場で自動車という巨大産業が他の産業と連携して産業構造・社会構造に変化をもたらすことが予想され、“シェアエコノミー”にもつながるGXの大きなテーマともなっている。
(*2)Whim: 1つのアプリでバス、タクシー、自転車シェア、カーシェアなど様々な交通手段を組み合わせて、最適な移動体験を提供するフィンランドで生まれたサービス。
・ソフトバンクG<9984>とトヨタ<7203>の共同出資会社MOMETは、顧客中心のモビリティサービス
(医療MaaSや行政MaaS等)の事業を開始している。
・三井不動産<8801>は、Whimアプリを提供するMaaS Global (フィンランド)と提携し、“不動産+MaaS”のサービス「&Move」を三井不動産グループが開発・運営する商業施設・ホテル・マンションへ導入する。
・ENEOS<5020>は、EV化/MaaSの流れに沿ってガソリンステーションの立地を生かし、電動自転車、スクーター、超小型 EV の貸出返却拠点となるシェア型マルチモビリシティステーションを埼玉県で展開している。
日本のMaaSの動きは、まだほんの入り口で、2030年のMaaS市場規模は400億米ドルとの予測も出ている(2022年3月リサーチステーションの予測)。
上記で挙げた“GXを牽引する動き”の例のように重要な課題に挑戦している会社に期待をかけ、今後もその動向に着目した情報を発信していきたい。
執筆者名:三竿郁夫 IA工房代表
ブログ名:「IA工房」
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