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ランドコンピュータのニュース
■ランドコンピュータ<3924>の中長期の成長戦略
1. 中長期の成長戦略「Attack100」
中長期の成長戦略「Attack100」では、最終年度となる2021年3月期の売上高を100億円、売上高営業利益率を10%としている。プロジェクトごとに利益率はばらつきがあり、不採算プロジェクトを皆無とすることは現実的ではないものの、内部管理体制を改善すれば、10%の営業利益率の実現は可能とみている。安定成長事業であるシステムインテグレーション・サービスやインフラソリューション・サービスに比べて、高成長事業であるパッケージベースSI・サービスは取り組みいかんではより高い収益性を実現できる。
2. サービスライン別事業戦略
2021年3月期の目標売上高100億円のサービスライン別内訳は、システムインテグレーション・サービスが58億円、インフラソリューション・サービスが12億円、パッケージベースSI・サービスが30億円を計画している。
(1) 安定成長サービスラインの戦略
同社は、システムインテグレーション・サービスとインフラソリューション・サービスを既存・安定成長分野と位置付けている。同分野では得意分野の更なる強化を事業戦略とする。金融・公共のレガシー型システム開発では、同社が創業以来培ってきた業務経験と実績を生かし、同業他社を凌駕する。最大の顧客基盤であるメーカー系システムインテグレータとの関係を強化する。富士通グループに続く柱として、日立グループ及びNTTデータグループとのビジネスを深耕する。ITサービス業界の主要顧客となる金融機関の案件をさらに拡大する。システムインテグレーション・サービスでは、業種別ターゲットとして公共分野を10%までに拡大し、競争の激しい産業・流通のウエイトを落とす。産業、流通、医療、公共の分野では、直ユーザと一括請負化を拡大する。責任は重くなるが、収益性の向上が狙える。
インフラソリューション・サービスは、ネットワークの多様化と仮想化技術へ積極的に対応する。インフラ人材育成と確保、及びSIサービスと連携して商機を創出する。
東証1部に上場し、人材育成を強化
(2) IT業界の人手不足への対応
厚生労働省の労働経済動向調査における「労働者の過不足状況指数(D.I.)」は、2018年2月時点ですべての産業が不足超過(=不足−過剰)の状況にあり、調査産業計は27四半期連続して上昇し44となった。情報通信業の指数は、リーマンショック前の2008年2月調査の39を大きく上回る52となり人手不足感が一層強まった。経済産業省は、現在のIT人材数の約90万人に対し、不足数は約17万人と推計している。人材供給が2019年にピークを付ける一方、IT需要は拡大し続けるため、不足数は2020年に36.9万人、2030年に78.9万人に達すると推計している。
同社にとっても人手があればいくらでも受注が増やせる状況にあるが、業界における人材争奪戦が激化している。新卒採用に関しては、2015年末に東証2部に上場したメリットを享受し、2018年5月の東証1部への指定替えによる好影響が期待できそうだ。さらに、従業員のリテンションを高めるため、給与制度の見直しに着手し、今10月から移行する予定でいる。次期事業部長候補の育成・研修を行う課長制を採り入れたのに続き、主任制の導入によりチーム—リーダーを育成し、きめ細かいプロジェクトマネジメントが行えるようにする。戦略的な採用計画に基づく優秀な人材の確保をする一方、ワークライフバランス推進による働きがいのある職場づくりに努める。
(3) 高成長サービスラインの事業戦略
高成長サービスラインは、人月に依存しないビジネスに注力する。高成長の実現を目指すパッケージベースSI・サービスは、Salesforce関連の導入支援やカスタマイズの大型案件を開拓する。新たなシステム・パッケージベンダのシステムインテグレータの開拓では、クラウドコンピューティングを利用したパッケージを検討している。また、自社アプリケーション開発による課金ビジネスをスタートする。人員にリンクしないビジネスの拡大を図る。
3. マネジメント改革
収益向上のため、マネジメント改革を行う。それらは、見積り精度向上、プロジェクト品質向上、不採算プロジェクト撲滅、組織強化により構成される。見積り精度の向上を最重要課題としており、プロジェクト完了時の見積り精度評価を実施し、見積り実績データの蓄積と今後の見積りへのフィードバックをする。プロジェクト品質の向上では、プロジェクトの品質管理とプロセスの標準化を推進する。プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)主導により、品質管理や標準化及びプロジェクトマネージャ育成を行った。上級プロジェクトマネージャの知見を同社の管理システムに組み込むことができた。プロジェクトマネジメント力の強化のため、PMP資格の取得推進、ロードマップに沿った組織的なプロジェクトマネージャやプロジェクトリーダーの育成を行う。アジャイル型のパッケージベースSI・サービスであっても、大口案件に関してはウォーターフォール型と同様に要件定義をきっちり行い、不採算プロジェクトの撲滅を図る。
4. 独自性に関する戦略
独自性に関する成長戦略は、優秀な人材確保と育成である。同社資産(2018年3月期)の91.5%を流動資産が占め、固定資産は8.5%でしかない。人材こそがアセットであり、売上高と利益を生み出す源泉となる。プロジェクトマネジメント力の強化の一環として、PMP資格の取得推進をしている。人材強化に対する投資として、プロジェクトマネジメント力の強化、スペシャリストの育成、人材の確保、パートナー制度の強化に取り組む。
ITサービス業界では顧客ニーズがウォーターフォール開発の「受託開発物の納品」からアジャイル開発の「顧客価値の創造」にシフトしつつあり、「受託システム開発型」から「提案サービス提供型」へのビジネスモデルの転換が求められる。顧客は、ITシステムに関して「ハードウェアの所有」や「システムの開発」から、クラウドコンピューティングの浸透もあり、システムを所有せずに「利用する」に移行しつつある。同社は、IT技術と顧客業務ノウハウの両面について高度な専門知識を持つスペシャリストの育成に努める。そのような人材が市場競争力の源泉となる。優れた要件定義ができ、顧客満足度も高めることができる。
業容拡大には、自社の人材確保のみならずパートナー企業の囲い込みが不可欠となる。優良なパートナー企業の拡充とコアパートナー制度を導入して、長期的な協力体制を強化する。戦略的に選定したコアパートナーに対しては、経営者と常時コンタクトを取り、安定的なビジネスの発注に心掛ける。同社は、目標売上高100億円の達成には、M&Aなしでも、パートナー制度の強化で可能とみている。新人研修に当たっては、自社社員だけでなく、パートナー企業の新人も参加させている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<NB>
1. 中長期の成長戦略「Attack100」
中長期の成長戦略「Attack100」では、最終年度となる2021年3月期の売上高を100億円、売上高営業利益率を10%としている。プロジェクトごとに利益率はばらつきがあり、不採算プロジェクトを皆無とすることは現実的ではないものの、内部管理体制を改善すれば、10%の営業利益率の実現は可能とみている。安定成長事業であるシステムインテグレーション・サービスやインフラソリューション・サービスに比べて、高成長事業であるパッケージベースSI・サービスは取り組みいかんではより高い収益性を実現できる。
2. サービスライン別事業戦略
2021年3月期の目標売上高100億円のサービスライン別内訳は、システムインテグレーション・サービスが58億円、インフラソリューション・サービスが12億円、パッケージベースSI・サービスが30億円を計画している。
(1) 安定成長サービスラインの戦略
同社は、システムインテグレーション・サービスとインフラソリューション・サービスを既存・安定成長分野と位置付けている。同分野では得意分野の更なる強化を事業戦略とする。金融・公共のレガシー型システム開発では、同社が創業以来培ってきた業務経験と実績を生かし、同業他社を凌駕する。最大の顧客基盤であるメーカー系システムインテグレータとの関係を強化する。富士通グループに続く柱として、日立グループ及びNTTデータグループとのビジネスを深耕する。ITサービス業界の主要顧客となる金融機関の案件をさらに拡大する。システムインテグレーション・サービスでは、業種別ターゲットとして公共分野を10%までに拡大し、競争の激しい産業・流通のウエイトを落とす。産業、流通、医療、公共の分野では、直ユーザと一括請負化を拡大する。責任は重くなるが、収益性の向上が狙える。
インフラソリューション・サービスは、ネットワークの多様化と仮想化技術へ積極的に対応する。インフラ人材育成と確保、及びSIサービスと連携して商機を創出する。
東証1部に上場し、人材育成を強化
(2) IT業界の人手不足への対応
厚生労働省の労働経済動向調査における「労働者の過不足状況指数(D.I.)」は、2018年2月時点ですべての産業が不足超過(=不足−過剰)の状況にあり、調査産業計は27四半期連続して上昇し44となった。情報通信業の指数は、リーマンショック前の2008年2月調査の39を大きく上回る52となり人手不足感が一層強まった。経済産業省は、現在のIT人材数の約90万人に対し、不足数は約17万人と推計している。人材供給が2019年にピークを付ける一方、IT需要は拡大し続けるため、不足数は2020年に36.9万人、2030年に78.9万人に達すると推計している。
同社にとっても人手があればいくらでも受注が増やせる状況にあるが、業界における人材争奪戦が激化している。新卒採用に関しては、2015年末に東証2部に上場したメリットを享受し、2018年5月の東証1部への指定替えによる好影響が期待できそうだ。さらに、従業員のリテンションを高めるため、給与制度の見直しに着手し、今10月から移行する予定でいる。次期事業部長候補の育成・研修を行う課長制を採り入れたのに続き、主任制の導入によりチーム—リーダーを育成し、きめ細かいプロジェクトマネジメントが行えるようにする。戦略的な採用計画に基づく優秀な人材の確保をする一方、ワークライフバランス推進による働きがいのある職場づくりに努める。
(3) 高成長サービスラインの事業戦略
高成長サービスラインは、人月に依存しないビジネスに注力する。高成長の実現を目指すパッケージベースSI・サービスは、Salesforce関連の導入支援やカスタマイズの大型案件を開拓する。新たなシステム・パッケージベンダのシステムインテグレータの開拓では、クラウドコンピューティングを利用したパッケージを検討している。また、自社アプリケーション開発による課金ビジネスをスタートする。人員にリンクしないビジネスの拡大を図る。
3. マネジメント改革
収益向上のため、マネジメント改革を行う。それらは、見積り精度向上、プロジェクト品質向上、不採算プロジェクト撲滅、組織強化により構成される。見積り精度の向上を最重要課題としており、プロジェクト完了時の見積り精度評価を実施し、見積り実績データの蓄積と今後の見積りへのフィードバックをする。プロジェクト品質の向上では、プロジェクトの品質管理とプロセスの標準化を推進する。プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)主導により、品質管理や標準化及びプロジェクトマネージャ育成を行った。上級プロジェクトマネージャの知見を同社の管理システムに組み込むことができた。プロジェクトマネジメント力の強化のため、PMP資格の取得推進、ロードマップに沿った組織的なプロジェクトマネージャやプロジェクトリーダーの育成を行う。アジャイル型のパッケージベースSI・サービスであっても、大口案件に関してはウォーターフォール型と同様に要件定義をきっちり行い、不採算プロジェクトの撲滅を図る。
4. 独自性に関する戦略
独自性に関する成長戦略は、優秀な人材確保と育成である。同社資産(2018年3月期)の91.5%を流動資産が占め、固定資産は8.5%でしかない。人材こそがアセットであり、売上高と利益を生み出す源泉となる。プロジェクトマネジメント力の強化の一環として、PMP資格の取得推進をしている。人材強化に対する投資として、プロジェクトマネジメント力の強化、スペシャリストの育成、人材の確保、パートナー制度の強化に取り組む。
ITサービス業界では顧客ニーズがウォーターフォール開発の「受託開発物の納品」からアジャイル開発の「顧客価値の創造」にシフトしつつあり、「受託システム開発型」から「提案サービス提供型」へのビジネスモデルの転換が求められる。顧客は、ITシステムに関して「ハードウェアの所有」や「システムの開発」から、クラウドコンピューティングの浸透もあり、システムを所有せずに「利用する」に移行しつつある。同社は、IT技術と顧客業務ノウハウの両面について高度な専門知識を持つスペシャリストの育成に努める。そのような人材が市場競争力の源泉となる。優れた要件定義ができ、顧客満足度も高めることができる。
業容拡大には、自社の人材確保のみならずパートナー企業の囲い込みが不可欠となる。優良なパートナー企業の拡充とコアパートナー制度を導入して、長期的な協力体制を強化する。戦略的に選定したコアパートナーに対しては、経営者と常時コンタクトを取り、安定的なビジネスの発注に心掛ける。同社は、目標売上高100億円の達成には、M&Aなしでも、パートナー制度の強化で可能とみている。新人研修に当たっては、自社社員だけでなく、パートナー企業の新人も参加させている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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