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セックのニュース
―配膳、調理、清掃ロボなどニーズ急拡大で成長ロードまっしぐら―
人手不足が深刻だ。リオープン(経済再開)が急速に進むなか、インバウンド需要も急拡大。ここにきては、待ちに待った中国人団体客の訪日も解禁され、飲食を始めとする店舗などでは、もはや猫の手を借りても間に合わない状況となりそうだ。そもそも猫の手は役に立ちそうにもないが、そうなると、ここはやはり新時代を牽引するロボットの出番となる。人手不足解消のカギを握る「サービスロボ 」のいまを追った。
●てんてこ舞い加速へ
今月10日、観光業界にとって待望の中国人観光客の日本への団体旅行が解禁された。株式市場でも敏感に反応し、インバウンド関連株が動意する場面があった。ただ、迎え入れる側としては喜んでばかりもいられない。それでなくとも深刻な人手不足が叫ばれていた状況で、5月から新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「5類感染症」に変更され急速に人流が回復し、加えて訪日客が急増したことで、飲食店、宿泊施設などではてんてこ舞いの状況となっている。
16日に日本政府観光局が発表した7月の訪日外客数(推計)は、232万600人となりコロナ禍前の2019年同月比でおおよそ8割の水準まで回復。韓国を始め東アジア地域において訪日客数が増加したことや、米国やカナダにおいて19年の同時期を超える実績となったことが要因だという。目に見える形で訪日客が増加していることを実感する日々だが、これに中国人団体観光客が上乗せされることで、インバウンド消費の拡大に拍車がかかることが期待されている。
●配膳・下げ膳用途で導入進む
しかし、喜んでばかりはいられない。中国経済の低迷が露見するなか、かつて目を見張った“爆買い”への期待感は剥落し始めている。そうなると、日本食や文化体験といった、いわゆる「コト消費」へ訪日客の関心が向かうことが予想され、つれて人手不足がいっそう深刻化するとの懸念が出ているのだ。こうしたなか「配膳ロボ」や「調理ロボ」「業務用清掃ロボ」などサービスロボの活用で、難局を乗り越えようとする動きが強まっている。
市場調査の富士経済が発表した「配膳ロボットや業務用清掃ロボットなどサービスロボットの国内市場」の調査でも、人手不足を背景にロボットの活用が急速に進むと予測する。同調査によると、配膳ロボについて「飲食店、宿泊施設などでの採用が増えている。人手不足が課題となっている飲食店、小売店ではショッピングセンターのフードコートにおいて、配膳・下げ膳用途で費用対効果が見えやすいことから導入が進んでいる」と分析。「配膳ロボ」累計稼働台数は、飲食店・小売店・宿泊施設の合計で、23年見込みが22年比で48.2%増の9252台、30年には同年比4.9倍となる3万890台を予測する。
●NEC、4年間で3000台の店舗導入へ
急速に注目を集める配膳ロボなどのサービスロボだが、ここでも中国製品の躍進が目立つ。ただ、需要が急拡大するなか日本勢もさまざまな施策で攻勢を強めている。
10日には、NEC <6701> [東証P]のグループ企業が料理の注文から会計まで一連の店舗運営機能と、複数機種の配膳ロボの連携を実現するサービス「マルチ配膳ロボット連携」の提供を開始した。端末からの遠隔操作や会計機能との連携により、配膳ロボの効率的な運用で下げ膳の所要時間が1回あたり約40%削減可能になるという。また、従来は1機種でしか対応できなかった配膳ロボ連携だが、同サービスでは4機種に対応しており、飲食店の店舗規模に合ったロボを選択することが可能だ。同サービスを通じて今後4年間で3000台の配膳ロボの店舗導入を目指すという。
●USENHD、配膳ロボやPOSレジ分野で攻勢
USEN-NEXT HOLDINGS <9418> [東証P]は動画有料配信が主力だが、配膳ロボやPOSレジ分野でも活躍領域を広げている。子会社のUSENはデジタルトランスフォーメーション(DX)を活用し、店舗運営の業務効率化、省人化を推進。特に配膳ロボでは、人手不足の解消、生産性の向上という顧客の課題解決に向け取り組み、飲食店への導入に積極的に注力している。7月には、グループ会社が運営するインバウンド向け飲食店予約サービス「SAVOR JAPAN」が中国最大のライフスタイルプラットフォーム「Alipay(アリペイ)」と連携すると発表。これにより中国から日本の飲食店予約が可能になり、拡大一途の中国人観光客への備えも万全だ。23年8月期通期連結業績予想は、営業利益段階で前期比18.3%増の205億円を計画する。
●セック、「アールタクト」に活躍期待
宇宙分野でも注目を集めるセック <3741> [東証P]だが、さまざまな種類の自律移動型ロボを一括管理するためのソフトウェア「RTakt(アールタクト)」を手掛ける。RTaktは、特定のメーカーやクラウドサービスに依存することなく、異なるメーカー・異なる用途の自律移動型ロボを一括管理・運用できる環境を実現するという。例えば、A社の配膳ロボを運用していた店舗にB社の配膳ロボを追加したり、C社の搬送ロボとD社の清掃ロボを一括管理したりすることが容易になる。更なる人手不足が予想されるなか、飲食だけではなく工場などさまざまなシーンでの活用が期待される。24年3月期第1四半期(4-6月)の単独営業利益は前年同期比59.3%増の2億5700万円と順調な滑り出しとなっている。
●ホシザキ、スタートアップと強力タッグ
業務用厨房機器大手のホシザキ <6465> [東証P]も、同社の手掛ける食器洗浄機などで店舗の省力化に尽力しており、目が離せない存在だ。7月には、自社シリーズ最小となる卓上に置ける業務用小形食器洗浄機を9月初旬から販売すると発表。導入障壁を解決し、コロナ禍後の人手不足に悩む現場の省力化を推し進めている。昨年10月には、食産業向けロボサービスの研究開発及び販売を行うスタートアップのコネクテッドロボティクス(CR、東京都小金井市)と資本・業務提携を締結しており、飲食業界における省力化へのニーズに対応する製品開発で協業している。ホシザキの23年12月期第2四半期累計(1-6月)の連結営業利益は、前年同期比73.4%増の229億9400万円に伸長。通期計画は同利益で前期比32.5%増の370億円を見込み最高益を更新する見通しだ。
●調理ロボで鈴茂器工、レオン
調理ロボにも熱い視線が向かう。前述のCRもさまざまな調理ロボで注目を集めるスタートアップだが、今月7日には味の素 <2802> [東証P]と調理ロボ事業を展開するTechMagic(東京都江東区)が資本・業務提携を締結したと発表。両社は、フードテックにおける最先端技術や知見を活用し、フードサービス業界における人手不足解消や生産性を改善する新しいソリューションを共創するとしている。加速する少子高齢化、それに伴う人材の減少、そして増加する訪日客、調理ロボへのニーズは高まる一方だ。
鈴茂器工 <6405> [東証S]は米飯加工機械の製造販売を行い、すしロボで高シェアを誇る。国内では大手回転すしチェーンからのすしロボの入替需要が牽引していることに加え、レストラン・食堂業態及びホテル・旅館・給食業態からのご飯盛付けロボの製品需要が拡大している。ただ、欧州でのウクライナ情勢によるエネルギー価格高騰や供給懸念の深刻化に伴う設備投資計画の中止や延期などが響き、24年3月期第1四半期(4-6月)の連結営業利益は前年同期比31.9%減で着地した。とはいえ、加速するリオープンの動きや旺盛なインバウンド需要を背景に、外食・小売業における機械化や省人化の動きはもはや待ったなしの状況にある。株価は下値模索が続くが、中期的視点に立てば見直し場面はいずれ訪れそうだ。
食品加工機械大手のレオン自動機 <6272> [東証P]の24年3月期第1四半期(4-6月)の連結営業利益は前年同期比4.5倍の8億200万円に拡大。通期計画の同利益は前期比14.7%増の34億5000万円を見込む。スーパー・コンビニ業界では、他社との差別化を図る商品開発や一層の省人化を目指した設備投資案件が引き続き堅調に推移。インバウンド需要の復活で、それに合わせた設備投資案件も回復している。株価は、5月23日に1637円まで買われ年初来高値を更新しその後は調整局面にあるが、1300円近辺では押し目買いニーズも。
●清掃ロボでも輝き増すアマノ
訪日客の増加は、宿泊施設や小売店にも大きな追い風になるが、清掃スタッフの人手不足が深刻ななか、清掃ロボ への期待も高い。前述の富士経済の調査でも、人手不足に加え作業負荷軽減、清掃品質の向上を目的に「業務用清掃ロボ」について30年には22年比4.7倍まで拡大するとみている。まだまだ株式市場では注目度が低いが、目を配っておきたい分野だ。
アマノ <6436> [東証P]は、就業時間管理システム大手で駐車場管理システムでも知られるが、清掃ロボ分野でも活躍領域を広げている。同社の清掃ロボは、ホテルや空港、商業施設などのインバウンドに絡む施設や、オフィスビル、工場などさまざまな施設で活躍中だ。同社が7月27日の取引終了後に発表した24年3月期第1四半期(4-6月)は、連結営業利益が前年同期比68.1%増の28億4400万円、最終利益は同2.0倍の15億5700万円で着地。アマノ単体のパーキングシステムが大きく伸長したほか、清掃ロボが好調のクリーンシステムも増収となった。株価は、この決算発表を好感し翌28日に急伸、3263円まで買われ年初来高値を更新した。現在は上昇一服も3000円近辺で頑強展開となっている。
また、装着型のロボットスーツ「HAL」を展開するCYBERDYNE <7779> [東証G]は、次世代型清掃ロボ「CL02」で頭角を現している。同ロボは高速自律走行を実現し、今までにない高い吸引力により圧倒的な清掃能力を実現。人工知能(AI)で最大3000平方メートルを自在に走行し清掃を行う。更に、エレベーターの自動昇降も可能だ。人が介入せず自動昇降できるため、大きな施設でもロボットが全フロアを自動清掃できるという。ゼネコンなどと協力して、オフィスビル中心に導入を進めている。株価は低迷するが、深刻化する人手不足を背景に今後の展開には目を配っておきたい。
株探ニュース
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