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サイバーリンクスのニュース
■業績動向
1. 2020年12月期の業績概要
サイバーリンクス<3683>の2020年12月期の連結業績は、売上高12,777百万円(前期比22.3%増)、営業利益924百万円(同105.5%増)、経常利益951百万円(同106.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益644百万円(同130.0%増)となり、過去最高益を更新した。セグメント別では、ITクラウド事業では、流通クラウド分野において、主力サービスの@rms等の提供が拡大したことで定常収入が着実に増加し、また官公庁クラウド分野においても、防災行政無線デジタル化等の工事が堅調に推移した。加えて、連結を開始した子会社の業績が寄与したことなどから前期比で大幅な増収増益となった。モバイルネットワーク事業では、上期にコロナ禍による緊急事態宣言発出を受け店舗の営業時間を短縮したことなどから、端末の販売台数が大幅に減少した。なお、下期は通常営業となり端末販売は復調したものの、上期の落ち込みを補うに至らず、通期では減収減益となった。
経常利益(前期比490百万円増)の増減要因を分析すると、主な増加要因は流通クラウド分野の収入増(「@rms」等のサービス提供拡大)77百万円、官公庁クラウド分野の収入増(防災行政無線デジタル化工事の増加)270百万円、販管費等の減少(コスト削減、前期計上の補償費用の減少など)109百万円、ソフトウェア償却費の減少13百万円、連結子会社の利益寄与92百万円などであった。一方で主な減少要因は、モバイルネットワーク事業の利益減(端末販売の落ち込み)25百万円、その他費用の増加46百万円などであった。
2. セグメント別状況
各セグメントの状況は以下のとおり。
(1) ITクラウド事業
セグメント売上高は前期比42.3%増の10,015百万円、セグメント利益は同183.4%増の869百万円となった。
a) 流通クラウド分野
主力サービスである「@rms」やクラウド型EDIサービスの提供が順調に拡大したことで定常収入が着実に増加した。その一方で、定常収入以外の売上は、中大企業向け「@rms」基幹の導入や消費税制改正対応などを行った前年同期に比べ相対的に減少した。この結果、売上高は減収となった。
利益面では、のれん償却の終了に加え、中大企業向け「@rms」の一部機能の償却終了によるソフトウェア償却費の減少、コロナ禍による展示会中止に伴う費用減や顧客訪問自粛による出張費の減、前期に発生したシステム導入の解除に伴う補償費用の消失等により販管費は大幅に減少した。この結果、サブセグメント利益は増益となった。
b) 官公庁クラウド分野
防災行政無線デジタル化等の工事の売上が増加した。連結子会社が寄与したこともあり売上高は前期比で大幅増となった。利益面では、原価削減努力などにより粗利率が改善し、サブセグメント利益は増益となった。
c) ITクラウド事業の主なトピックス
1) 総務省及び経済産業省より「電子委任状取扱業務」の認定を取得
政府は様々な手続きが電子的に行われる「デジタルファースト」を推進しているが、電子委任状の普及もその一環である。電子委任状の記録方式には、「電子証明書方式」「委任者記録ファイル方式」「取扱事業者記録ファイル方式」の3つがある。「電子証明書方式」は2020年12月時点で4事業者5業務が認定されており、電子署名及び認証業務に関する法律による認定認証業務を認定された業者が行うが、利用開始にあたっての手続きの手間やコストの課題がある。これに対し、「委任者記録ファイル方式」及び「取扱事業者記録ファイル方式」は、安価で利用することができ、効果的な活用が期待されている。
一方、企業間の電子契約等においては、「認定認証局発行方式」「事業者署名(立会人型)方式」「公的個人認証基盤利用方式」の3つの電子署名方式がある。「認定認証局発行方式」は認定認証局による厳格な本人確認が必要なため、手間や時間がかかることに加えてコストの課題がある。また、「事業者署名(立会人型)方式」は十分な本人確認が行われない可能性もあり、なりすましのリスクがある。これに対して「公的個人認証基盤利用方式」は、国民の誰もが無料で持つことができるマイナンバーカードで本人確認を行うことで、「認定認証局発行方式」より安価で「事業者署名(立会人型)方式」よりも確実に本人確認ができる。
2020年7月に同社は、「委任者記録ファイル方式」及び「取扱事業者記録ファイル方式」での「電子委任状取扱業務※」の認定を取得した。同社においては、国民の誰もが持つことのできるマイナンバーカードに搭載された電子証明書を電子委任状と組み合わせることで、企業の従業員等が業務上作成する電子書類のやり取りに必要な情報を全て電子的に証明するとともに、その電子委任状を保管する。これにより、マイナンバーカードを利用して、本人に代わって電子的に手続を行う者の代理権を簡易かつ確実に証明することが可能となる。
※「電子委任状」とは、法人の代表者等が従業員等に代理権を与えた旨を表示する電磁的記録のことで、「電子委任状取扱業務」とは、代理権授与を表示する目的で、法人等の委託を受けて電子委任状を保管し、関係者に対し当該電子委任状を提示し又は提出する業務のことをいう。
同社が「電子委任状取扱業務」の認定を取得したことは、同社の技術力が認められた証左でもあり、一方で「公的個人認証サービス プラットフォーム事業者」の認定取得(2017年)、「時刻認証業務認定事業者」の認定取得(同)と合わせて、トラストサービスを提供するための準備が整ったと言える。現時点ではまだ開発投資が先行しているが、今後の成長が期待できる分野であることから、2021年12月期より当該事業を「トラスト事業」と再編成する。
2) 小売向けクラウドEDIサービスが大手ドラッグストア(ツルハホールディングス)、大手スーパー(オークワ)に採用
既述のとおり、これまで同社の主要顧客は中小規模の食品スーパーであったが、ドラッグストアチェーン大手のツルハホールディングス<3391>及び大手スーパーであるオークワ<8217>に同社システムが採用されている。今後同社事業がこれらの分野へも拡大していく可能性を示唆している。
3) 小中学校向け校務支援サービス「Clarinet」が高槻市統合型校務支援システムに採用
2020年8月に採用され、2021年から稼働予定である。同システムは大阪府では初めての採用となり、今後も全国展開を推進する。
(2) モバイルネットワーク事業
セグメント売上高は前期比19.1%減の2,762百万円、セグメント利益は同6.9%減の349百万円となった。
コロナ禍に伴う緊急事態宣言発出を受け、2020年4月から5月にかけてドコモショップの営業時間短縮及び業務縮小の措置を講じたことから、一時的に端末の販売台数が大幅に減少した。なお、下期は通常営業となり端末販売は復調したものの、上期の落ち込みを補うに至らず、通期では減収減益となった。利益面では、重点目標達成によるインセンティブ収入や通信キャリアからの感染症対策支援金等により一定の利益は確保したが、端末販売の落ち込みが響いてセグメント利益は減益となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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1. 2020年12月期の業績概要
サイバーリンクス<3683>の2020年12月期の連結業績は、売上高12,777百万円(前期比22.3%増)、営業利益924百万円(同105.5%増)、経常利益951百万円(同106.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益644百万円(同130.0%増)となり、過去最高益を更新した。セグメント別では、ITクラウド事業では、流通クラウド分野において、主力サービスの@rms等の提供が拡大したことで定常収入が着実に増加し、また官公庁クラウド分野においても、防災行政無線デジタル化等の工事が堅調に推移した。加えて、連結を開始した子会社の業績が寄与したことなどから前期比で大幅な増収増益となった。モバイルネットワーク事業では、上期にコロナ禍による緊急事態宣言発出を受け店舗の営業時間を短縮したことなどから、端末の販売台数が大幅に減少した。なお、下期は通常営業となり端末販売は復調したものの、上期の落ち込みを補うに至らず、通期では減収減益となった。
経常利益(前期比490百万円増)の増減要因を分析すると、主な増加要因は流通クラウド分野の収入増(「@rms」等のサービス提供拡大)77百万円、官公庁クラウド分野の収入増(防災行政無線デジタル化工事の増加)270百万円、販管費等の減少(コスト削減、前期計上の補償費用の減少など)109百万円、ソフトウェア償却費の減少13百万円、連結子会社の利益寄与92百万円などであった。一方で主な減少要因は、モバイルネットワーク事業の利益減(端末販売の落ち込み)25百万円、その他費用の増加46百万円などであった。
2. セグメント別状況
各セグメントの状況は以下のとおり。
(1) ITクラウド事業
セグメント売上高は前期比42.3%増の10,015百万円、セグメント利益は同183.4%増の869百万円となった。
a) 流通クラウド分野
主力サービスである「@rms」やクラウド型EDIサービスの提供が順調に拡大したことで定常収入が着実に増加した。その一方で、定常収入以外の売上は、中大企業向け「@rms」基幹の導入や消費税制改正対応などを行った前年同期に比べ相対的に減少した。この結果、売上高は減収となった。
利益面では、のれん償却の終了に加え、中大企業向け「@rms」の一部機能の償却終了によるソフトウェア償却費の減少、コロナ禍による展示会中止に伴う費用減や顧客訪問自粛による出張費の減、前期に発生したシステム導入の解除に伴う補償費用の消失等により販管費は大幅に減少した。この結果、サブセグメント利益は増益となった。
b) 官公庁クラウド分野
防災行政無線デジタル化等の工事の売上が増加した。連結子会社が寄与したこともあり売上高は前期比で大幅増となった。利益面では、原価削減努力などにより粗利率が改善し、サブセグメント利益は増益となった。
c) ITクラウド事業の主なトピックス
1) 総務省及び経済産業省より「電子委任状取扱業務」の認定を取得
政府は様々な手続きが電子的に行われる「デジタルファースト」を推進しているが、電子委任状の普及もその一環である。電子委任状の記録方式には、「電子証明書方式」「委任者記録ファイル方式」「取扱事業者記録ファイル方式」の3つがある。「電子証明書方式」は2020年12月時点で4事業者5業務が認定されており、電子署名及び認証業務に関する法律による認定認証業務を認定された業者が行うが、利用開始にあたっての手続きの手間やコストの課題がある。これに対し、「委任者記録ファイル方式」及び「取扱事業者記録ファイル方式」は、安価で利用することができ、効果的な活用が期待されている。
一方、企業間の電子契約等においては、「認定認証局発行方式」「事業者署名(立会人型)方式」「公的個人認証基盤利用方式」の3つの電子署名方式がある。「認定認証局発行方式」は認定認証局による厳格な本人確認が必要なため、手間や時間がかかることに加えてコストの課題がある。また、「事業者署名(立会人型)方式」は十分な本人確認が行われない可能性もあり、なりすましのリスクがある。これに対して「公的個人認証基盤利用方式」は、国民の誰もが無料で持つことができるマイナンバーカードで本人確認を行うことで、「認定認証局発行方式」より安価で「事業者署名(立会人型)方式」よりも確実に本人確認ができる。
2020年7月に同社は、「委任者記録ファイル方式」及び「取扱事業者記録ファイル方式」での「電子委任状取扱業務※」の認定を取得した。同社においては、国民の誰もが持つことのできるマイナンバーカードに搭載された電子証明書を電子委任状と組み合わせることで、企業の従業員等が業務上作成する電子書類のやり取りに必要な情報を全て電子的に証明するとともに、その電子委任状を保管する。これにより、マイナンバーカードを利用して、本人に代わって電子的に手続を行う者の代理権を簡易かつ確実に証明することが可能となる。
※「電子委任状」とは、法人の代表者等が従業員等に代理権を与えた旨を表示する電磁的記録のことで、「電子委任状取扱業務」とは、代理権授与を表示する目的で、法人等の委託を受けて電子委任状を保管し、関係者に対し当該電子委任状を提示し又は提出する業務のことをいう。
同社が「電子委任状取扱業務」の認定を取得したことは、同社の技術力が認められた証左でもあり、一方で「公的個人認証サービス プラットフォーム事業者」の認定取得(2017年)、「時刻認証業務認定事業者」の認定取得(同)と合わせて、トラストサービスを提供するための準備が整ったと言える。現時点ではまだ開発投資が先行しているが、今後の成長が期待できる分野であることから、2021年12月期より当該事業を「トラスト事業」と再編成する。
2) 小売向けクラウドEDIサービスが大手ドラッグストア(ツルハホールディングス)、大手スーパー(オークワ)に採用
既述のとおり、これまで同社の主要顧客は中小規模の食品スーパーであったが、ドラッグストアチェーン大手のツルハホールディングス<3391>及び大手スーパーであるオークワ<8217>に同社システムが採用されている。今後同社事業がこれらの分野へも拡大していく可能性を示唆している。
3) 小中学校向け校務支援サービス「Clarinet」が高槻市統合型校務支援システムに採用
2020年8月に採用され、2021年から稼働予定である。同システムは大阪府では初めての採用となり、今後も全国展開を推進する。
(2) モバイルネットワーク事業
セグメント売上高は前期比19.1%減の2,762百万円、セグメント利益は同6.9%減の349百万円となった。
コロナ禍に伴う緊急事態宣言発出を受け、2020年4月から5月にかけてドコモショップの営業時間短縮及び業務縮小の措置を講じたことから、一時的に端末の販売台数が大幅に減少した。なお、下期は通常営業となり端末販売は復調したものの、上期の落ち込みを補うに至らず、通期では減収減益となった。利益面では、重点目標達成によるインセンティブ収入や通信キャリアからの感染症対策支援金等により一定の利益は確保したが、端末販売の落ち込みが響いてセグメント利益は減益となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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