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クロス・マーケティンググループのニュース
■ビジネスモデル
1. 収益構造
クロス・マーケティンググループ<3675>の収益源を分解すると、ディレクターとリサーチャーが売上原価、セールスや本部(共通部分)が販管費に計上される。ビジネスフロー上の流れとそれぞれの役割は、セールスが確保してきた案件に対して、リサーチャーが分析方法を提案し具体的な調査方法に詰め、ディレクターが調査の規模や案件内容によって工程を設計管理しデータを収集してプロダクト化、それをさらにリサーチャーがレポートにする——というものである。収益貢献を分かりやすく単純化すると、ディレクターのスキルと人員のバランスが取れると生産効率が向上し、リサーチャーでノウハウや人材が蓄積されると売上高と売上総利益が伸びる。一方、営業は人員が多いほど受注が増え、間接は企業規模に見合った適正サイズが求められる。
同業大手と直近期の営業利益率を比較すると、マクロミルが19.0%(2018年6月期売上高40,024百万円、営業利益7,607百万円)、インテージが8.0%(2018年3月期売上高50,499百万円、営業利益4,023百万円)、同社が5.5%(2018年12月期売上高17,492百万円、営業利益955百万円)である。マクロミルはネットリサーチの比率が高いため高効率である。インテージはオフラインやパネル調査が主力で労働集約性が高いため、マクロミル比で利益率は低くなる。同社は、ネットリサーチ専業でスタートしたのにさほどの利益率にない。これは、同社がマーケティングリサーチ全般からマーケティングソリューションへと業容拡大するなかで、好採算のネットリサーチの構成比が小さくなっていること、そして、近年進めたM&Aや新規事業開発、海外展開の推進による先行的なコストがやや重くなっていることなどが要因と思われる。前者は戦略上の選択のため仕方ないが、後者については解消が進んでおり、2018年12月期第4四半期には底を打ったと考えられる。このためまずは、2019年12月期に営業利益率を6.3%まで戻す計画になっている。営業利益率はもともと8.4%(2016年12月期)とインテージと同水準にあったことから、将来的に8%台へと回復する可能性は高いと思われる。
横断的なサポート体制に強み
2. 強みと弱み
同社リサーチの特徴は、回答負荷軽減を意識したアンケート画面作り、的確なターゲット選定のための配信設定、精度の高いハイクオリティなデータクリーニング、高機能なアンケートシステムによる画面作成・配信・データ納品などの即応体制、国内最大規模の登録モニター数、基本属性だけでなくレアな対象に限定した調査——ということになるだろうが、こうした機能・サービスは同業大手にもあり、大きな差別化要因とまでは言えない。最大の強みは、機能が分離しがちな他社に対して、セールス、リサーチャー、ディレクターなどすべての担当者が一丸となって顧客に接し、課題解決に当たるサポート体制にある。また、顧客からすると、サポート体制に加え、課題に対し適切に提案・設計するリサーチャーの経験や、グループ内のITソリューションの機能を利用したトータルなマーケティングソリューションの提案などが、差別化につながっているように思われる。同社は今まさに、こうした強みを意識的に強化しているところでもある。
一方、弱みと言えるかわからないが、課題はオフラインリサーチの増加により労働集約が進んで利益率の改善が遅れていること、内外で認知度が不足していること——などと考える。しかし、2018年には東証1部へ上場し、国内で子会社の統廃合を進め、海外では2014年に買収したKadenceの構造改革を進めており、まさに現在、収益性の改善も認知度の向上も進み始めたところと言うことができる。
3回目のターニングポイントで更なる成長に弾み
3. ターニングポイント
同社は2003年の創業で、当時はネットリサーチ業界で最後発の1社と見られていた。それが今やマーケティングリサーチ業界の大手の1社に成長した。その成長のためのターニングポイントが、これまで3回あったと考えられる。
最初のターニングポイントは、2006年にVOYAGE GROUP(当時ECナビ)と資本・業務提携をしたことである。VOYAGE GROUP傘下のリサーチパネルに資本参加することで、リサーチパネルの有する70万人(当時)という大規模なモニターを獲得することができた。これにより電通リサーチ(現電通マクロミルインサイト)やビデオリサーチといったトップクラスのマーケティングリサーチ会社と資本提携することができ、設立後間もなく大きく業容を拡大することができた。2008年の東証マザーズ上場が2つ目のターニングポイントである。上場によって資金力と知名度が付いたことで、楽天リサーチなど大規模なモニターを持つ同業他社と業務提携することでモニター数を確保、一方で専門的な知識がなくてもアンケート画面を作成・カスタマイズできる「pyxis2」を開発し、さらなく業容急拡大の弾みとした。
3つ目のターニングポイントは、持株会社化を機に大型M&Aや海外展開を加速した2013年−2015年である。これによりアジアにおける拠点を加速させているが、単に子会社数を増やすことが目的ではなく、次の成長のため子会社群を収益化し成長させることが重要である。このため、事業の効率化や子会社のガバナンス、機能の高度化・相互利用などを推進することになり、2017年12月期−2018年12月期の業績はやや踊り場を形成した。しかし、足元で海外の体制構築が進み、国内ではマーケティングリサーチとITソリューションを融合したマーケティングソリューションという新たなビジネスステージに入っており、次なる成長への弾みとなりそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<RF>
1. 収益構造
クロス・マーケティンググループ<3675>の収益源を分解すると、ディレクターとリサーチャーが売上原価、セールスや本部(共通部分)が販管費に計上される。ビジネスフロー上の流れとそれぞれの役割は、セールスが確保してきた案件に対して、リサーチャーが分析方法を提案し具体的な調査方法に詰め、ディレクターが調査の規模や案件内容によって工程を設計管理しデータを収集してプロダクト化、それをさらにリサーチャーがレポートにする——というものである。収益貢献を分かりやすく単純化すると、ディレクターのスキルと人員のバランスが取れると生産効率が向上し、リサーチャーでノウハウや人材が蓄積されると売上高と売上総利益が伸びる。一方、営業は人員が多いほど受注が増え、間接は企業規模に見合った適正サイズが求められる。
同業大手と直近期の営業利益率を比較すると、マクロミルが19.0%(2018年6月期売上高40,024百万円、営業利益7,607百万円)、インテージが8.0%(2018年3月期売上高50,499百万円、営業利益4,023百万円)、同社が5.5%(2018年12月期売上高17,492百万円、営業利益955百万円)である。マクロミルはネットリサーチの比率が高いため高効率である。インテージはオフラインやパネル調査が主力で労働集約性が高いため、マクロミル比で利益率は低くなる。同社は、ネットリサーチ専業でスタートしたのにさほどの利益率にない。これは、同社がマーケティングリサーチ全般からマーケティングソリューションへと業容拡大するなかで、好採算のネットリサーチの構成比が小さくなっていること、そして、近年進めたM&Aや新規事業開発、海外展開の推進による先行的なコストがやや重くなっていることなどが要因と思われる。前者は戦略上の選択のため仕方ないが、後者については解消が進んでおり、2018年12月期第4四半期には底を打ったと考えられる。このためまずは、2019年12月期に営業利益率を6.3%まで戻す計画になっている。営業利益率はもともと8.4%(2016年12月期)とインテージと同水準にあったことから、将来的に8%台へと回復する可能性は高いと思われる。
横断的なサポート体制に強み
2. 強みと弱み
同社リサーチの特徴は、回答負荷軽減を意識したアンケート画面作り、的確なターゲット選定のための配信設定、精度の高いハイクオリティなデータクリーニング、高機能なアンケートシステムによる画面作成・配信・データ納品などの即応体制、国内最大規模の登録モニター数、基本属性だけでなくレアな対象に限定した調査——ということになるだろうが、こうした機能・サービスは同業大手にもあり、大きな差別化要因とまでは言えない。最大の強みは、機能が分離しがちな他社に対して、セールス、リサーチャー、ディレクターなどすべての担当者が一丸となって顧客に接し、課題解決に当たるサポート体制にある。また、顧客からすると、サポート体制に加え、課題に対し適切に提案・設計するリサーチャーの経験や、グループ内のITソリューションの機能を利用したトータルなマーケティングソリューションの提案などが、差別化につながっているように思われる。同社は今まさに、こうした強みを意識的に強化しているところでもある。
一方、弱みと言えるかわからないが、課題はオフラインリサーチの増加により労働集約が進んで利益率の改善が遅れていること、内外で認知度が不足していること——などと考える。しかし、2018年には東証1部へ上場し、国内で子会社の統廃合を進め、海外では2014年に買収したKadenceの構造改革を進めており、まさに現在、収益性の改善も認知度の向上も進み始めたところと言うことができる。
3回目のターニングポイントで更なる成長に弾み
3. ターニングポイント
同社は2003年の創業で、当時はネットリサーチ業界で最後発の1社と見られていた。それが今やマーケティングリサーチ業界の大手の1社に成長した。その成長のためのターニングポイントが、これまで3回あったと考えられる。
最初のターニングポイントは、2006年にVOYAGE GROUP(当時ECナビ)と資本・業務提携をしたことである。VOYAGE GROUP傘下のリサーチパネルに資本参加することで、リサーチパネルの有する70万人(当時)という大規模なモニターを獲得することができた。これにより電通リサーチ(現電通マクロミルインサイト)やビデオリサーチといったトップクラスのマーケティングリサーチ会社と資本提携することができ、設立後間もなく大きく業容を拡大することができた。2008年の東証マザーズ上場が2つ目のターニングポイントである。上場によって資金力と知名度が付いたことで、楽天リサーチなど大規模なモニターを持つ同業他社と業務提携することでモニター数を確保、一方で専門的な知識がなくてもアンケート画面を作成・カスタマイズできる「pyxis2」を開発し、さらなく業容急拡大の弾みとした。
3つ目のターニングポイントは、持株会社化を機に大型M&Aや海外展開を加速した2013年−2015年である。これによりアジアにおける拠点を加速させているが、単に子会社数を増やすことが目的ではなく、次の成長のため子会社群を収益化し成長させることが重要である。このため、事業の効率化や子会社のガバナンス、機能の高度化・相互利用などを推進することになり、2017年12月期−2018年12月期の業績はやや踊り場を形成した。しかし、足元で海外の体制構築が進み、国内ではマーケティングリサーチとITソリューションを融合したマーケティングソリューションという新たなビジネスステージに入っており、次なる成長への弾みとなりそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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