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アイル Research Memo(5):中堅・中小企業向けにトータルシステムソリューションを提供(3)

配信元:フィスコ
投稿:2020/04/20 15:05
アイル<3854>の事業概要

5. 売上成長と利益拡大に向けた施策
売上成長と利益拡大に向けた施策として、既存製品のバージョンアップ、様々な分野のビジネスパートナーとのサービス連携などの戦略を推進している。

既存製品のバージョンアップとしては、2020年1月に「アラジンオフィス」に生産管理オプションを追加した。これにより、製造業の顧客は自社に必要な生産管理機能を効率的にシステム化できるようになる。また従来はカスタマイズで対応していた機能をオプションとして提供することで、同社にとってはSE工数削減と品質確保で粗利改善のメリットがある。

ビジネスパートナーとのサービス連携としては、2019年6月に「CROSS MALL」がAmazonのEC事業者向け商品在庫保管・配送代行サービス「FBAマルチチャネルサービス」に対応した。また同年9月には、ファッション商品を取り扱うECサイト運営企業の業務効率化を支援すべく、ロコンド<3558>の「LOCONDO.jp」及び(株)ストライプデパートメントの「smarby」との在庫連携に対応し、またECサイト運営企業の海外販売を支援すべく、ゼンマーケット(株)の「ZenPlus」及びQoo10 PTE.LTD(シンガポール)の「Qoo10.com」との在庫連携にも対応した。

さらに11月には、「CROSS MALL」がZホールディングス<4689>のECモール「PayPayモール」との受注・在庫・商品連携に対応、「アラジンEC」がSBペイメントサービス(株)のオンライン決済サービスと連携、さらに「アラジンオフィス」がラクス<3923>のWeb帳票発行システム「楽楽明細」と帳票データ連携している。

一方で、法改正に伴う人材派遣市場の縮小を見込み、求人・求職情報サイト「@ばる」のサービスを2019年11月に終了させた。

6. ストック型商材
このようにリアルとWebを1社で提案できる優位性や強み、さらにビジネスパートナーとの連携強化などの結果、攻めの力も守りの力も強く顧客企業数は増加基調である。また新規競合商談勝率やユーザーリピート率も高水準(2019年7月期のユーザーリピート率は98.2%)である。

システムソリューション事業におけるシステム保守、Webソリューション事業におけるクラウド型サービスの複数ECサイト一元管理ソフト「CROSS MALL」や実店舗とECの顧客・ポイント一元管理ソフト「CROSS POINT」など、ストック型商材の売上高が拡大基調であり、全社ベースの売上高及び売上総利益に占める比率も上昇基調である。

2020年7月期第2四半期のストック型商材の売上高は前年同期比16.3%増の2,238百万円、全社ベースの売上高に占める比率は32.2%と同8.5ポイント下降した。また2019年7月期におけるストック型商材の売上総利益は同15.1%増の2,073百万円、売上総利益率は52.0%と同0.3ポイント上昇した。そして全社ベース売上総利益4,422百万円に対するストック型商材の比率は46.9%と同0.6ポイント上昇した。全社ベースの固定費のうち給与の大部分をストック型商材の売上総利益で賄える収益体制となり、さらに人件費・固定費を賄える体制を目指す方針としている。

7. 方針の転換
同社では2017年7月期から利益重視の方針を打ち出し、開発・カスタマイズ時の作業手戻りや、想定外の開発工数発生を排除するため、品質管理を強化するとともに、作業工程毎(要件定義/システム設計/プログラミング/テスト)の多段階契約により顧客要件とのズレを排除。多段階契約が売上平準化にもつながっている。また受注段階で営業と開発が連携を強化し、カスタマイズ工数削減やトラブル未然防止に取り組むなど、総合的な品質・生産性向上策と売上総利益率上昇策を推進している。

この結果、ストック型商材の拡大も寄与して、全社ベースの売上総利益率は2016年7月期の38.0%を直近ボトムとして上昇に転じ、2019年7月期には42.0%まで上昇している。

8. リスク要因・収益特性と対策
システム開発関連企業においては開発案件ごとの採算性で利益率が変動しやすく、収益面の一般的なリスク要因として、案件大型化に伴う開発期間の長期化、人件費や外注費の増加、個別プロジェクトの不採算化などがある。ただし同社の場合はパッケージソフト開発・販売が主力のため、受託開発が主力のシステム開発会社に比べて個別プロジェクト不採算化のリスクは小さい。

同社の場合は、顧客に適合した柔軟なカスタマイズによって競合他社との差別化を図っていることが特徴のため、開発・カスタマイズにおける工数増加やバグ発生などが利益率低下要因となるが、この対策としては、既述のとおり利益重視の方針を打ち出し、営業と開発の連携強化によるカスタマイズ工数削減やトラブル未然防止への取り組みに加えて、職場環境改善による品質・生産性向上などにも取り組んでいる。この結果、2019年7月期の売上総利益率は過去最高となった。さらに2020年7月期からは、組織変更によって営業とサポートを一体化(システム営業、システムサポート)し、連携を一段と強化する。カスタマイズの必要のない受注の拡大、品質・生産性向上によるリードタイム短縮などにより、更なる売上総利益率の上昇を推進する方針だ。

またシステム開発関連企業においては、大型案件の売上計上や顧客側の検収の時期によって四半期業績が変動しやすいという収益特性がある。同社(7月期決算)の場合も、上期(8月-1月)よりも下期(2月-7月)に売上高と利益が偏重する傾向がある。このような傾向に対して、受注の平準化及び継続的な保守サービス等の受注拡大により、売上計上時期の偏重の是正に取り組んでおり、徐々に平準化が進展する見込みだ。なお2020年7月期については、2019年10月の消費税率引き上げ、2020年1月のWindows7サポート終了に対応した受注の増加という一時的要因により、上期偏重となった。

またシステム開発会社にとっては人材の確保が課題となるが、技術者の採用・育成については、働き方改革・職場環境改善の施策も奏功して概ね順調に推移している。そして技術者の技術水準を一定水準以上に保つべく、技術者の通年採用を積極的に行うことで、開発効率の変動を解消することに努めるとしている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)


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配信元: フィスコ
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