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ウイルプラスホールディングスのニュース
■会社概要
(3) ウイルプラスホールディングス<3538>の強み
前述のように、同社は2004年に現社長の成瀬氏が福岡クライスラーの全株式を取得して実質的にスタートしたが、事業の本格的な拡大は2007年10月に同社が設立されて持株会社体制となってからだ。当該期の期末(2008年6月期末)時点では4店舗体制で売上高は30億円だった。その後M&Aにより店舗を拡大し、2018年6月期末時点では26店舗で約257億円の売上を計上するに至っている。この間、1店舗当たりの売上高も拡大してきている。
これまでの実績や、今後の成長戦略の1つとして“M&A戦略”を掲げていることもあって、同社はM&Aによって業容を拡大してきた企業とみられがちだが、それは同社の半分しか見ていないことになる。
同社の歴史において、新たな取扱ブランドの獲得においてM&Aが重要な役割を果たしてきたことは事実だが、企業としての着実な成長をもたらしたのは、自社による新規出店であったというのが弊社の評価だ。すなわち、M&Aと新規出店の両輪がうまくかみ合って今日の同社があるということだ。
このことは過去の店舗異動の実績をみると明白だ。同社は店舗数を建屋ベースで把握している。建屋ベースでは、複数の異なるブランドが同一の建屋に存在している場合でも1店舗と数える。同一店舗内にある複数のブランドは出店時期が異なることも多いため、ブランド別に店舗の異動をトラックしたのが下の表だ。同社は創業から2018年6月末までに35店舗をM&Aもしくは自社新規出店により展開してきた。それらのうち9店舗がこれまでに閉鎖もしくは統合されている。閉鎖・統合された店舗のうち7店舗はM&Aにより獲得された店舗となっている。一方、自社新規出店による17店舗については2店舗が閉鎖・統合されたにとどまっている。M&Aと自社新規出店との間で、店舗の生き残りの実績において大きな差があることは一目瞭然と言える。
注:前述のように同社の店舗数の把握法は建屋ベースとなっている。2018年6月末時点の店舗数は26店舗であるが、その一覧は当レポートの巻末を参照
こうした店舗異動の実績となった理由は、同社が店舗収益に対して非常に高い意識を持って経営してきたことにあると弊社では考えている。後述するようにM&Aは同社の成長戦略の重要な一角を占めるが、そもそもそれを可能とする企業体力があることが前提だ。M&A自体が目的なのではなく、M&Aを通じて何を成し遂げるかという意識を忘れることなく、同社は買収した店舗についても冷徹に収益性をフォローしている。その結果として、現状の26店舗のほとんどが、店舗収益が黒字となっており、次の展開を進めるための企業体力をしっかり保持できていると言える。
このように同社はスクラップ&ビルドのサイクルを速めていくという意識を持って経営に臨んでいるが、その判断基準については、一定の時間をかけて店舗収益の推移を見守り、その上で閉店を決断するケースもあれば、環境変化によってもはや先行きがないと判断すれば間髪を入れずに撤退を決断することもあるようだ。こうした判断ができるのは、同社の事業戦略の1つであるドミナント戦略の効果と言える。同社は近隣に複数の店舗を展開しており、ある店舗を閉鎖した場合でも、近隣の同社の店舗に顧客を移管してサービス低下を防ぎ、顧客を囲い込む体制が構築されている。
一方、同社自身による新規出店が安定的に成功を収めている大きな要因は、ローコストオペレーションの徹底にある。まず新規出店に際しては、既存の自動車ディーラーの土地建物を居抜きで賃借することを基本としている。その上でインポーターから求められるブランドCIに準拠した改装を行い、出店コストの削減に努めている。これはバランスシートを軽くするという経営理念にもつながっている。同社によれば国産車ディーラーと比べても大幅に低い出店コストを実現できているもようだ。またオペレーションにおいても、人員を販売状況に応じて柔軟に配置することで運営コストの最適化を図っている。これもまたドミナント戦略の大きな効果と言える。
M&Aと自社による新規出店とを問わず、同社自身が新たに店舗運営に乗り出す場合、早期黒字化が最大の目標である点は共通している。M&Aにより獲得した店舗の場合は既存客が存在するため、その関係の維持・強化に努めることが基本になる。その際には、例えばまず低価格の中古車を拡販して信頼・実績や顧客基盤を作り、それをタテ・ヨコに展開しながら新車販売に繋げるといったアプローチがなされる。一方、新規出店の場合は顧客作りから始める必要があるため、広告等により認知度を向上させ、ストック型ビジネスの着実な積み上げといった地道な努力の積み重ねで営業基盤を作っていくことになる。
以上のように、同社の成長は単なるM&Aによる店舗拡大ではなく、その後の店舗単位での高い経営力によって実現されてきた。その結果、現在では既存店舗網におけるM&A店舗と自社出店の店舗の構成比がおよそ半々となっているが、これは立地選定や出店コスト、ランニングコスト等のコスト構造全般を含めた総合的な店舗運営力という点で、同社が優れていることの証左と言える。こうした実績と、M&Aから店舗再編の一連の流れの中で被買収企業の雇用を維持してきたことが、インポーターや同業他社からの信頼獲得につながり、M&Aの案件紹介や事業エリア拡大という形で同社の3つの成長戦略へとつながる好循環が生み出されている。この循環こそが同社の最大の強みと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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(3) ウイルプラスホールディングス<3538>の強み
前述のように、同社は2004年に現社長の成瀬氏が福岡クライスラーの全株式を取得して実質的にスタートしたが、事業の本格的な拡大は2007年10月に同社が設立されて持株会社体制となってからだ。当該期の期末(2008年6月期末)時点では4店舗体制で売上高は30億円だった。その後M&Aにより店舗を拡大し、2018年6月期末時点では26店舗で約257億円の売上を計上するに至っている。この間、1店舗当たりの売上高も拡大してきている。
これまでの実績や、今後の成長戦略の1つとして“M&A戦略”を掲げていることもあって、同社はM&Aによって業容を拡大してきた企業とみられがちだが、それは同社の半分しか見ていないことになる。
同社の歴史において、新たな取扱ブランドの獲得においてM&Aが重要な役割を果たしてきたことは事実だが、企業としての着実な成長をもたらしたのは、自社による新規出店であったというのが弊社の評価だ。すなわち、M&Aと新規出店の両輪がうまくかみ合って今日の同社があるということだ。
このことは過去の店舗異動の実績をみると明白だ。同社は店舗数を建屋ベースで把握している。建屋ベースでは、複数の異なるブランドが同一の建屋に存在している場合でも1店舗と数える。同一店舗内にある複数のブランドは出店時期が異なることも多いため、ブランド別に店舗の異動をトラックしたのが下の表だ。同社は創業から2018年6月末までに35店舗をM&Aもしくは自社新規出店により展開してきた。それらのうち9店舗がこれまでに閉鎖もしくは統合されている。閉鎖・統合された店舗のうち7店舗はM&Aにより獲得された店舗となっている。一方、自社新規出店による17店舗については2店舗が閉鎖・統合されたにとどまっている。M&Aと自社新規出店との間で、店舗の生き残りの実績において大きな差があることは一目瞭然と言える。
注:前述のように同社の店舗数の把握法は建屋ベースとなっている。2018年6月末時点の店舗数は26店舗であるが、その一覧は当レポートの巻末を参照
こうした店舗異動の実績となった理由は、同社が店舗収益に対して非常に高い意識を持って経営してきたことにあると弊社では考えている。後述するようにM&Aは同社の成長戦略の重要な一角を占めるが、そもそもそれを可能とする企業体力があることが前提だ。M&A自体が目的なのではなく、M&Aを通じて何を成し遂げるかという意識を忘れることなく、同社は買収した店舗についても冷徹に収益性をフォローしている。その結果として、現状の26店舗のほとんどが、店舗収益が黒字となっており、次の展開を進めるための企業体力をしっかり保持できていると言える。
このように同社はスクラップ&ビルドのサイクルを速めていくという意識を持って経営に臨んでいるが、その判断基準については、一定の時間をかけて店舗収益の推移を見守り、その上で閉店を決断するケースもあれば、環境変化によってもはや先行きがないと判断すれば間髪を入れずに撤退を決断することもあるようだ。こうした判断ができるのは、同社の事業戦略の1つであるドミナント戦略の効果と言える。同社は近隣に複数の店舗を展開しており、ある店舗を閉鎖した場合でも、近隣の同社の店舗に顧客を移管してサービス低下を防ぎ、顧客を囲い込む体制が構築されている。
一方、同社自身による新規出店が安定的に成功を収めている大きな要因は、ローコストオペレーションの徹底にある。まず新規出店に際しては、既存の自動車ディーラーの土地建物を居抜きで賃借することを基本としている。その上でインポーターから求められるブランドCIに準拠した改装を行い、出店コストの削減に努めている。これはバランスシートを軽くするという経営理念にもつながっている。同社によれば国産車ディーラーと比べても大幅に低い出店コストを実現できているもようだ。またオペレーションにおいても、人員を販売状況に応じて柔軟に配置することで運営コストの最適化を図っている。これもまたドミナント戦略の大きな効果と言える。
M&Aと自社による新規出店とを問わず、同社自身が新たに店舗運営に乗り出す場合、早期黒字化が最大の目標である点は共通している。M&Aにより獲得した店舗の場合は既存客が存在するため、その関係の維持・強化に努めることが基本になる。その際には、例えばまず低価格の中古車を拡販して信頼・実績や顧客基盤を作り、それをタテ・ヨコに展開しながら新車販売に繋げるといったアプローチがなされる。一方、新規出店の場合は顧客作りから始める必要があるため、広告等により認知度を向上させ、ストック型ビジネスの着実な積み上げといった地道な努力の積み重ねで営業基盤を作っていくことになる。
以上のように、同社の成長は単なるM&Aによる店舗拡大ではなく、その後の店舗単位での高い経営力によって実現されてきた。その結果、現在では既存店舗網におけるM&A店舗と自社出店の店舗の構成比がおよそ半々となっているが、これは立地選定や出店コスト、ランニングコスト等のコスト構造全般を含めた総合的な店舗運営力という点で、同社が優れていることの証左と言える。こうした実績と、M&Aから店舗再編の一連の流れの中で被買収企業の雇用を維持してきたことが、インポーターや同業他社からの信頼獲得につながり、M&Aの案件紹介や事業エリア拡大という形で同社の3つの成長戦略へとつながる好循環が生み出されている。この循環こそが同社の最大の強みと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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