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ビックカメラのニュース
*16:03JST 上新電機 Research Memo(3):大阪を基盤とした地域密着型のサービス展開を強みとする家電量販店(1)
■会社概要
2. 事業内容、市場動向、競合比較
上新電機<8173>は家電製品等の小売業やそれに付随する業務の単一事業となっている。以下で販売チャネル、商品カテゴリー別売上高、都道府県別売上高や出店戦略について、他の大手家電量販店との違いについて考察したい。
(1) 販売チャネル(家電EC市場への対応)
同社の2024年3月期の販売チャネル別の売上高をみると、店頭販売が82.1%、インターネット販売が16.0%、その他が1.9%となっている。同社ではインターネットショップ「Joshin web」を2000年10月に開設しており、競合他社と比べても早期からEC販売に積極的に取り組んできた。同社のインターネット販売比率(EC比率)の推移をみると、特にコロナ禍でリアル店舗への来客が滞った2021年3月期、2022年3月期と同社の売上高に占めるEC比率は18.5%へと大きく上昇し、2024年3月期はコロナ禍の収束によるリアル店舗への顧客回帰の動きもあり16.0%へとやや低下した。同社は新物流センターの稼働やバイヤーなどの専門人材の拡充、顧客へのアフターサービスの強化、ロイヤルティプログラムにおいて新たなステージプログラムの導入、取り扱いアイテム数の拡大(掲載商品は2024年3月期の70万アイテムに対して、2025年3月期は75万アイテムへの拡大を目指す)などの施策を実行することで中長期的なEC事業の拡大を目指している。
数値面については、同社は中期経営計画において2031年3月期にEC比率を25%まで引き上げるという具体的目標を設定していたが、ECにおいては高付加価値商品が売れにくく、EC比率の上昇が粗利率の低下につながるため、同社ではEC比率の具体的な目標を設けない方針へ転換した。家電製品は商品単価が高く、消費者が実店舗とECを往来して慎重に価格を検討する傾向があり、規格が統一されているため商品型番などからの比較もしやすい。店舗とECの両面で顧客との接点を持ち、囲い込みを図ることが家電量販店にとっては重要であるとし、同社が得意とするリアル店舗での付加価値の高いサービスの拡充に最も力点を置きつつ、ECにおける利便性の高さを生かした拡販を進め、将来的にはリアル店舗とECのさらなる融合を進めていきたい構えだ。
一方、2022年の家電EC市場は約2.5兆円、EC化率は42.0%であった(経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」)。これは家電量販店以外の販売チャネルが含まれており、単純な量販店ECとの比較は難しいが、EC市場拡大の牽引役はAmazon等のECと推測される。また、小売業全体のEC化率は9.1%に過ぎないことから、EC化率が4割を超える家電業界においてはEC利用が非常に進んでいると言えよう。
なお、競合の家電量販店各社のECへの取り組みをみると、ECへの参入時期が遅れ先行企業に勝てるサイトを作りにくいことや、リアル店舗が主体でECに本腰を入れてこなかったことなどから、売上高に占めるEC比率が10%程度かそれにも満たない企業が多い。一方、非上場のため正確なデータは入手できないが、(株)ヨドバシカメラは実店舗をショールームに見立てて販売員による商品説明などの接客サービス提供、ユーザーが実店舗と公式オンラインショップのどちらでも購入できる仕組みの構築、そして食品や書籍、日用雑貨など取扱店数をAmazon並みに取りそろえたことでEC化率は40%近くに達しているとみられる。上場している家電量販店においては、同社はECへ最も積極的に取り組んでいるうちの1社であり、同社の直近のEC比率16.0%は、ビックカメラ<3048>やヤマダホールディングス<9831>など同業他社と比べても相対的に高いのが特徴だ。一方、ヤマダホールディングスやケーズホールディングス<8282>など相対的にEC比率の低い家電量販店がEC比率の高い同社のような家電量販店と比較して売上の伸びが明確に劣後するような傾向はここ数年でも見えておらず、売上拡大のための施策が必ずしもECだけに寄らず、リアル店舗におけるサービス力の強化も重要であることも忘れてはならない。それでもコロナ禍を契機にECの利用者が増加し、今後さらにEC化率が増加することは中長期的に避けられない流れであること、そして生成AIの普及によりIoT家電のさらなる高機能化が進むとみられることから、店頭で製品の説明を聞いたうえで購入したいという消費者のニーズに応え、店舗とECの両面で顧客との接点を持ち、囲い込みを図ることが同社も含めた家電量販店にとって今後ますます重要になると同社は考えている。
一方、ECの発展・拡大により、消費者が実店舗で店員から商品等の説明を受けつつ、そこでは当該商品を購入せず、より価格の安いオンライン販売で当該商品を購入するという、いわゆる「ショールーミング現象」、また、反対に消費者がウェブサイトを見た後、実店舗に行き商品等を確認したうえで商品を購入する「ウェブルーミング現象」がみられるようになった。特にECに馴染みやすく、実際に製品をみてから消費者が購入したいという意向の強い家電製品においてはショールーミング、ウェブルーミングともに家具などの他の高単価製品と比べても高く、特に実店舗で商品を確かめた後に他ECで購入されてしまうショールーミングへの対応が重要な経営戦略上のカギである。この点において、例えば米国ではウォルマートはデジタル部門「Walmart Labs」の規模を拡大するなどのデジタル投資を進め、家電量販店大手ベストバイはオンライン販売でのダイナミックプライシングを活用するなどで売上高の拡大を進めてきた。なかでもベストバイは2017年に電子棚札※の導入を開始した。現在は日本でも同社も含めて、ほとんどの家電量販店で電子棚札を導入している。
※基幹システムやPOSと連動した価格情報の一括変更や在庫情報の表示ができる商品。従来の紙の棚札の運用では時間や人員が必要だった作業が一元管理される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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2. 事業内容、市場動向、競合比較
上新電機<8173>は家電製品等の小売業やそれに付随する業務の単一事業となっている。以下で販売チャネル、商品カテゴリー別売上高、都道府県別売上高や出店戦略について、他の大手家電量販店との違いについて考察したい。
(1) 販売チャネル(家電EC市場への対応)
同社の2024年3月期の販売チャネル別の売上高をみると、店頭販売が82.1%、インターネット販売が16.0%、その他が1.9%となっている。同社ではインターネットショップ「Joshin web」を2000年10月に開設しており、競合他社と比べても早期からEC販売に積極的に取り組んできた。同社のインターネット販売比率(EC比率)の推移をみると、特にコロナ禍でリアル店舗への来客が滞った2021年3月期、2022年3月期と同社の売上高に占めるEC比率は18.5%へと大きく上昇し、2024年3月期はコロナ禍の収束によるリアル店舗への顧客回帰の動きもあり16.0%へとやや低下した。同社は新物流センターの稼働やバイヤーなどの専門人材の拡充、顧客へのアフターサービスの強化、ロイヤルティプログラムにおいて新たなステージプログラムの導入、取り扱いアイテム数の拡大(掲載商品は2024年3月期の70万アイテムに対して、2025年3月期は75万アイテムへの拡大を目指す)などの施策を実行することで中長期的なEC事業の拡大を目指している。
数値面については、同社は中期経営計画において2031年3月期にEC比率を25%まで引き上げるという具体的目標を設定していたが、ECにおいては高付加価値商品が売れにくく、EC比率の上昇が粗利率の低下につながるため、同社ではEC比率の具体的な目標を設けない方針へ転換した。家電製品は商品単価が高く、消費者が実店舗とECを往来して慎重に価格を検討する傾向があり、規格が統一されているため商品型番などからの比較もしやすい。店舗とECの両面で顧客との接点を持ち、囲い込みを図ることが家電量販店にとっては重要であるとし、同社が得意とするリアル店舗での付加価値の高いサービスの拡充に最も力点を置きつつ、ECにおける利便性の高さを生かした拡販を進め、将来的にはリアル店舗とECのさらなる融合を進めていきたい構えだ。
一方、2022年の家電EC市場は約2.5兆円、EC化率は42.0%であった(経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」)。これは家電量販店以外の販売チャネルが含まれており、単純な量販店ECとの比較は難しいが、EC市場拡大の牽引役はAmazon等のECと推測される。また、小売業全体のEC化率は9.1%に過ぎないことから、EC化率が4割を超える家電業界においてはEC利用が非常に進んでいると言えよう。
なお、競合の家電量販店各社のECへの取り組みをみると、ECへの参入時期が遅れ先行企業に勝てるサイトを作りにくいことや、リアル店舗が主体でECに本腰を入れてこなかったことなどから、売上高に占めるEC比率が10%程度かそれにも満たない企業が多い。一方、非上場のため正確なデータは入手できないが、(株)ヨドバシカメラは実店舗をショールームに見立てて販売員による商品説明などの接客サービス提供、ユーザーが実店舗と公式オンラインショップのどちらでも購入できる仕組みの構築、そして食品や書籍、日用雑貨など取扱店数をAmazon並みに取りそろえたことでEC化率は40%近くに達しているとみられる。上場している家電量販店においては、同社はECへ最も積極的に取り組んでいるうちの1社であり、同社の直近のEC比率16.0%は、ビックカメラ<3048>やヤマダホールディングス<9831>など同業他社と比べても相対的に高いのが特徴だ。一方、ヤマダホールディングスやケーズホールディングス<8282>など相対的にEC比率の低い家電量販店がEC比率の高い同社のような家電量販店と比較して売上の伸びが明確に劣後するような傾向はここ数年でも見えておらず、売上拡大のための施策が必ずしもECだけに寄らず、リアル店舗におけるサービス力の強化も重要であることも忘れてはならない。それでもコロナ禍を契機にECの利用者が増加し、今後さらにEC化率が増加することは中長期的に避けられない流れであること、そして生成AIの普及によりIoT家電のさらなる高機能化が進むとみられることから、店頭で製品の説明を聞いたうえで購入したいという消費者のニーズに応え、店舗とECの両面で顧客との接点を持ち、囲い込みを図ることが同社も含めた家電量販店にとって今後ますます重要になると同社は考えている。
一方、ECの発展・拡大により、消費者が実店舗で店員から商品等の説明を受けつつ、そこでは当該商品を購入せず、より価格の安いオンライン販売で当該商品を購入するという、いわゆる「ショールーミング現象」、また、反対に消費者がウェブサイトを見た後、実店舗に行き商品等を確認したうえで商品を購入する「ウェブルーミング現象」がみられるようになった。特にECに馴染みやすく、実際に製品をみてから消費者が購入したいという意向の強い家電製品においてはショールーミング、ウェブルーミングともに家具などの他の高単価製品と比べても高く、特に実店舗で商品を確かめた後に他ECで購入されてしまうショールーミングへの対応が重要な経営戦略上のカギである。この点において、例えば米国ではウォルマートはデジタル部門「Walmart Labs」の規模を拡大するなどのデジタル投資を進め、家電量販店大手ベストバイはオンライン販売でのダイナミックプライシングを活用するなどで売上高の拡大を進めてきた。なかでもベストバイは2017年に電子棚札※の導入を開始した。現在は日本でも同社も含めて、ほとんどの家電量販店で電子棚札を導入している。
※基幹システムやPOSと連動した価格情報の一括変更や在庫情報の表示ができる商品。従来の紙の棚札の運用では時間や人員が必要だった作業が一元管理される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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