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ビックカメラのニュース
*14:02JST BS11 Research Memo(2):衛星放送業界のなかで信用度と存在感を着実に高める
■会社概要
1. 沿革
日本BS放送<9414>は1999年8月、ビックカメラ<3048>により、日本ビーエス放送企画(株)として設立された。1999年12月に郵政省(現 総務省)からBSデジタルデータ放送の委託放送業務の認定を受けたことを皮切りに、各種認可を取得しながら試験的なデータ放送等の準備を進め、2007年12月にBSデジタルハイビジョン放送(現行の「BS11」)の本放送を開始した。
2010年に(一社)日本民間放送連盟に加入したほか、2011年には(株)ビデオリサーチが行う接触率調査(BSパワー調査。現在はBS視聴世帯数調査)に参加する等、衛星放送業界において信用度と存在感を着実に高めてきた。株式市場には、2014年3月に東京証券取引所(以下、東証)第2部に上場したのち2015年3月に第1部に指定替えとなり、2022年4月からは、東証の市場区分の変更により東証スタンダード市場に移行した。放送の公共的使命と社会的責任を深く認識し、質の高い情報を提供することで人々に感動を与え、幸せな社会づくりに貢献することを経営理念に掲げている。また、豊かで癒される教養・娯楽番組と、中立公正な報道・情報番組を発信することにより、視聴者に「価値ある時間」を約束することを経営ビジョンとして掲げている。なお、親会社のビックカメラは同社株式を10,930,136株(持株比率61.37%)保有している。
2. 事業モデルと収益構造
BS放送のチャンネルには無料放送と有料放送があるが、同社は無料放送を展開している。無料放送を行っているBS放送局は、同社のほかには民放キー局系列の5社とワールド・ハイビジョン・チャンネル(株)(BS12トゥエルビ)、放送大学、BS松竹東急、BSよしもと、BSJapanextがある。同社は無料放送であることに加え、キー局系列に属さない独立系であるという特徴を併せ持つため、独立系ならではの強みを生かした全国のテレビ局及び制作会社との自由なコンテンツ制作・展開が可能である。
同社の収益の柱である競馬中継、アニメ、ドラマ、通信販売(以下、通販番組)は、コアとなる視聴者を確保している。競馬中継においては1千万人規模の公営ギャンブルファンの間で認知度が高く、また、アニメはBS業界随一の放送時間を誇り、アニメ業界で同社は高い評価を受けている。一方、ドラマの視聴者ターゲットはF3層(50歳以上の女性)及びF4層(65歳以上の女性)となり、通販番組とターゲットが重なるため、通販番組の放送時間をドラマと近接することで宣伝効果の最大化を図っている。さらに、主要視聴者となるシニア層の知的好奇心を満たす自社制作番組として、文化・教養、紀行物を中心とした番組が充実しているのも特長である。同社では曜日・時間帯ごとで視聴者ターゲットを明確に分けて番組編成しているため、他の民放BS局と比較しても幅広い年齢層の視聴が見受けられる。さらに、家電量販店である(株)ビックカメラを親会社に持つため、番組・CMの放送に加えて、消費者へのダイレクトなコンタクトポイントを活用した企画が可能である。
(1) 収入の構造
無料放送を行っている同社の収益構造は広告収入(スポンサー収入)が基本となっており、この点では地上波のテレビ局と同様である。同社を含むBS放送局では、広告主のニーズに応じてターゲットを絞り、商品やサービスを中心に捉えた「説明型」のCMにより、商品の魅力をじっくりアピールできるという特長がある。すなわち「広告枠」が同社の商品であるが、それらをタイム枠、持込枠、通販番組枠等に細分化することができる。同社本体では個別売上高の内訳を、タイム収入、スポット収入、その他事業収入に分類しており、2024年8月期第2四半期はタイム収入が72.3%、スポット収入が21.0%、その他事業収入が6.7%であった。なお、その他事業収入には、コンテンツ販売収入や、「BS11」公式YouTubeチャンネル、「BS11+」のほか、FOD、U-NEXT、Tver等の配信プラットフォームの拡大による収入等が含まれている。
同社は創業以来、同社本体がBS放送という単独セグメントで事業を営んできていたが、2018年1月に児童書特化型の出版社である(株)理論社と(株)国土社の全株式を取得して連結子会社化した。これに伴い2018年8月期第2四半期決算から連結決算へ移行した。連結子会社2社の合計売上高は一定の規模があることから、BS放送事業の動向を正確かつ時系列的に把握するために、同社本体の個別業績を対象として分析するのが適切である。同社も情報開示においては、個別業績を中心に分析結果を開示している。
BS放送事業の収入源である広告枠の販売動向を左右するのは、広告市況のほか、認知度や視聴率とされる。実際、広告主はより高い広告効果を求めて、BS世帯普及率調査や全国BS視聴率調査等の結果を参考にしながら、出稿先のBS局や番組を選定している。また2017年以降は、レギュラー番組や特番に関するYouTube配信に加えて、「BS11」で放送している番組の見逃し配信や過去に放送した人気番組、イベントのライブ配信、オリジナルコンテンツ等、様々な動画コンテンツ(無料・有料)を提供できるプラットフォーム「BS11+」を運営する等、ユーザーを引き付ける戦略を採っている。
(2) 費用の構造
BS放送では放送衛星を通じて日本全国に電波を送ることができるため、1) 全時間帯において全国約4,512.4万世帯(2019年度:全国の総世帯数5,852万世帯のうち77.1%にあたる約4,512.4万世帯がBSデジタル放送視聴可能世帯と言われている)で同時に同一の放送が視聴可能であること、2) 地上波とは全く異なるコスト構造により高効率の広告ビジネスが可能となっていること、の2つを大きな特長として挙げることができる。
コスト構造の面では、BS放送と地上波放送とで大きな違いがある。地上波放送の場合、各地に放送用電波塔を建設し中継基地等を経由する、いわゆるバケツリレー方式によって電波を届ける仕組みであるため、ネットワーク維持費が原価の中で大きな割合を占める。BS放送の場合は、放送衛星から直接全国の視聴世帯に電波を送るためネットワーク維持費は存在しない。一方で放送委託費や技術費等の放送関連費用が発生するが、地上波とBS放送とでは放送コストの面では相当の差があることになる。
BS局と地上波局のコスト構造の違いは、放送局の“商品”である広告枠の価格の差にストレートに反映されている。一般論として、広告単価がBS放送と地上波放送とでは10~20倍の差があると言われている。しかしBS放送は放送コストが低いため、広告単価がこれだけ低くてもBS放送局の利益率は地上波放送局のそれを上回っていると見られる。
費用に関する特長として、コストコントロールが厳格に行われているという点がある。同社の主要な費用科目は「番組関連費用」「放送関連費用」「広告関連費用」の3つであり、このうち「放送関連費用」は、BS放送の特長として極めて低位かつ安定的に推移している。「番組関連費用」と「広告関連費用」については、売上高に対する一定水準を目安として定め、その範囲内でコントロールしている。こうした厳格なコストコントロールが可能であることも、BS放送特有の低コスト構造に起因していると言える。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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1. 沿革
日本BS放送<9414>は1999年8月、ビックカメラ<3048>により、日本ビーエス放送企画(株)として設立された。1999年12月に郵政省(現 総務省)からBSデジタルデータ放送の委託放送業務の認定を受けたことを皮切りに、各種認可を取得しながら試験的なデータ放送等の準備を進め、2007年12月にBSデジタルハイビジョン放送(現行の「BS11」)の本放送を開始した。
2010年に(一社)日本民間放送連盟に加入したほか、2011年には(株)ビデオリサーチが行う接触率調査(BSパワー調査。現在はBS視聴世帯数調査)に参加する等、衛星放送業界において信用度と存在感を着実に高めてきた。株式市場には、2014年3月に東京証券取引所(以下、東証)第2部に上場したのち2015年3月に第1部に指定替えとなり、2022年4月からは、東証の市場区分の変更により東証スタンダード市場に移行した。放送の公共的使命と社会的責任を深く認識し、質の高い情報を提供することで人々に感動を与え、幸せな社会づくりに貢献することを経営理念に掲げている。また、豊かで癒される教養・娯楽番組と、中立公正な報道・情報番組を発信することにより、視聴者に「価値ある時間」を約束することを経営ビジョンとして掲げている。なお、親会社のビックカメラは同社株式を10,930,136株(持株比率61.37%)保有している。
2. 事業モデルと収益構造
BS放送のチャンネルには無料放送と有料放送があるが、同社は無料放送を展開している。無料放送を行っているBS放送局は、同社のほかには民放キー局系列の5社とワールド・ハイビジョン・チャンネル(株)(BS12トゥエルビ)、放送大学、BS松竹東急、BSよしもと、BSJapanextがある。同社は無料放送であることに加え、キー局系列に属さない独立系であるという特徴を併せ持つため、独立系ならではの強みを生かした全国のテレビ局及び制作会社との自由なコンテンツ制作・展開が可能である。
同社の収益の柱である競馬中継、アニメ、ドラマ、通信販売(以下、通販番組)は、コアとなる視聴者を確保している。競馬中継においては1千万人規模の公営ギャンブルファンの間で認知度が高く、また、アニメはBS業界随一の放送時間を誇り、アニメ業界で同社は高い評価を受けている。一方、ドラマの視聴者ターゲットはF3層(50歳以上の女性)及びF4層(65歳以上の女性)となり、通販番組とターゲットが重なるため、通販番組の放送時間をドラマと近接することで宣伝効果の最大化を図っている。さらに、主要視聴者となるシニア層の知的好奇心を満たす自社制作番組として、文化・教養、紀行物を中心とした番組が充実しているのも特長である。同社では曜日・時間帯ごとで視聴者ターゲットを明確に分けて番組編成しているため、他の民放BS局と比較しても幅広い年齢層の視聴が見受けられる。さらに、家電量販店である(株)ビックカメラを親会社に持つため、番組・CMの放送に加えて、消費者へのダイレクトなコンタクトポイントを活用した企画が可能である。
(1) 収入の構造
無料放送を行っている同社の収益構造は広告収入(スポンサー収入)が基本となっており、この点では地上波のテレビ局と同様である。同社を含むBS放送局では、広告主のニーズに応じてターゲットを絞り、商品やサービスを中心に捉えた「説明型」のCMにより、商品の魅力をじっくりアピールできるという特長がある。すなわち「広告枠」が同社の商品であるが、それらをタイム枠、持込枠、通販番組枠等に細分化することができる。同社本体では個別売上高の内訳を、タイム収入、スポット収入、その他事業収入に分類しており、2024年8月期第2四半期はタイム収入が72.3%、スポット収入が21.0%、その他事業収入が6.7%であった。なお、その他事業収入には、コンテンツ販売収入や、「BS11」公式YouTubeチャンネル、「BS11+」のほか、FOD、U-NEXT、Tver等の配信プラットフォームの拡大による収入等が含まれている。
同社は創業以来、同社本体がBS放送という単独セグメントで事業を営んできていたが、2018年1月に児童書特化型の出版社である(株)理論社と(株)国土社の全株式を取得して連結子会社化した。これに伴い2018年8月期第2四半期決算から連結決算へ移行した。連結子会社2社の合計売上高は一定の規模があることから、BS放送事業の動向を正確かつ時系列的に把握するために、同社本体の個別業績を対象として分析するのが適切である。同社も情報開示においては、個別業績を中心に分析結果を開示している。
BS放送事業の収入源である広告枠の販売動向を左右するのは、広告市況のほか、認知度や視聴率とされる。実際、広告主はより高い広告効果を求めて、BS世帯普及率調査や全国BS視聴率調査等の結果を参考にしながら、出稿先のBS局や番組を選定している。また2017年以降は、レギュラー番組や特番に関するYouTube配信に加えて、「BS11」で放送している番組の見逃し配信や過去に放送した人気番組、イベントのライブ配信、オリジナルコンテンツ等、様々な動画コンテンツ(無料・有料)を提供できるプラットフォーム「BS11+」を運営する等、ユーザーを引き付ける戦略を採っている。
(2) 費用の構造
BS放送では放送衛星を通じて日本全国に電波を送ることができるため、1) 全時間帯において全国約4,512.4万世帯(2019年度:全国の総世帯数5,852万世帯のうち77.1%にあたる約4,512.4万世帯がBSデジタル放送視聴可能世帯と言われている)で同時に同一の放送が視聴可能であること、2) 地上波とは全く異なるコスト構造により高効率の広告ビジネスが可能となっていること、の2つを大きな特長として挙げることができる。
コスト構造の面では、BS放送と地上波放送とで大きな違いがある。地上波放送の場合、各地に放送用電波塔を建設し中継基地等を経由する、いわゆるバケツリレー方式によって電波を届ける仕組みであるため、ネットワーク維持費が原価の中で大きな割合を占める。BS放送の場合は、放送衛星から直接全国の視聴世帯に電波を送るためネットワーク維持費は存在しない。一方で放送委託費や技術費等の放送関連費用が発生するが、地上波とBS放送とでは放送コストの面では相当の差があることになる。
BS局と地上波局のコスト構造の違いは、放送局の“商品”である広告枠の価格の差にストレートに反映されている。一般論として、広告単価がBS放送と地上波放送とでは10~20倍の差があると言われている。しかしBS放送は放送コストが低いため、広告単価がこれだけ低くてもBS放送局の利益率は地上波放送局のそれを上回っていると見られる。
費用に関する特長として、コストコントロールが厳格に行われているという点がある。同社の主要な費用科目は「番組関連費用」「放送関連費用」「広告関連費用」の3つであり、このうち「放送関連費用」は、BS放送の特長として極めて低位かつ安定的に推移している。「番組関連費用」と「広告関連費用」については、売上高に対する一定水準を目安として定め、その範囲内でコントロールしている。こうした厳格なコストコントロールが可能であることも、BS放送特有の低コスト構造に起因していると言える。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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