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*12:46JST PCNET Research Memo(6):ITサブスクリプション事業の年平均成長率は25.5%(1)
■パシフィックネット<3021>の業績動向
3. セグメント別業績
(1) ITサブスクリプション事業
ITサブスクリプション事業は成長率が高く、市場規模が大きいことに加えて、ストック収益化による持続的成長が可能な事業である。法人向けPC市場はサブスクリプション・リース・購入といった保有形態があるが、サブスクリプション型の認知度が年々高まり、その比率が拡大している。同社のサブスクリプションは故障対応などの保守サービスを含んでいるほか、中途解約は月単位で可能、経理処理はオフバランスで費用も平準化されるため、企業にとってはメリットが大きい。さらに同事業はPC利用後の回収・データ消去までを担うITAD事業と組み合わせワンストップでサービスを提供している。このため、企業にとっては使い勝手のよいサービスであり、利用が拡大している。同事業は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)でも着実に成長し、2019年5月期から2024年5月期までの年平均成長率は25.5%となった。PC更新拡大期に入ることから、成長率は一段と上昇する可能性が高いと弊社では考えている。
ITサブスクリプション事業の2024年5月期の売上高は4,944百万円(前期比10.4%増)、セグメント利益は630百万円(同1.4%減)となった。売上高は順調な増加を見せたが、利益については、前期にサブスクリプション資産売却などにより一時的に売上・利益が増加したことや、サブスクリプション資産の耐用年数変更による減価償却費の変動影響を受けたことから前期比減を示しているが、これら要因を除けば、セグメント利益は前期比27.6%となり、実質的には増収増益で順調に成長したと言える。売上面では好調なサブスクリプション契約の受注積み上げによりストック収益を着実に拡大、前期の一時的な売上高増加の影響をカバーして、前期比増収を確保した。受注積み上げの要因の1つは受注案件規模の拡大である。従来は従業員数100~200人規模の企業からの受注が多かったが、足元では従業員数1,000人を超える規模の企業からの受注が増加している。もう1つは地方企業の積極的な開拓である。同社の新規開拓方法は、基本的には各種展示会に参加してサービスを宣伝し、興味を持った顧客に対して営業活動を行うというものだが、東京、大阪、名古屋などの大都市で開催する大型の展示会には地方から訪れる顧客も多く、その顧客に対しても積極的な営業活動を行い、受注を獲得したようだ。また2025年10月のWindows 10のサポート終了を踏まえた既存顧客の利用PCの入れ替えも進捗している。受注のピークは2025年5月期以降の見込みだが、PCの入れ替えを行い、ITサブスクリプションサービスを継続利用する顧客が増加しており、同サービスの中途解約率の低さから、今後の積み上がりに伴う収益性向上の確度は高い。
セグメント利益が、実質的に前期比27.6%増となった主因は、資産稼働率が高水準を維持したことだ。具体的には、サブスクリプション資産の世代交代を図るなかで、中長期レンタルの顧客には極力ジャストインタイム方式での仕入れを行うと同時に、機器を一括発注した場合であっても、顧客が使用開始するタイミングに出荷を合わせることで、サブスクリプション資産の償却負担を軽減した。短期レンタル利用の顧客には最小限の在庫で円滑に供給できるようにオペレーションの業務を改善するなど、在庫水準を適正化したことで、収益性を向上させた。コスト面では、成長機会に向けた投資として、サブスクリプション資産の継続取得、LCMサービスの需要拡大に対応した東京カスタマーセンターの新設や地域拠点の移転・拡張、IT人材の積極採用、DX推進など、先行コストは引き続き増加したものの、サブスクリプション資産の稼働率向上などにより、先行投資のコスト増をカバーした。
(2) ITAD事業
ITAD事業においては、規模ではなく、収益性の向上や環境変化への対応力強化を基本方針としているため、これに向けた構造改革を実施している。2024年5月期の売上高は1,800百万円(前期比3.6%減)、セグメント利益は573百万円(同18.3%増)となった。国内の新規PC出荷台数の低迷の影響により、法人・官公庁からの使用済みPCの排出は本格回復には至らず、回収台数は前期比で減少した。また、大部分を占める低スペック品については、一時期の国内市場価格の下落は一段落したが、使用済みPCの排出台数減少の影響は大きく、サービス収益以外の売上高は減少した。利益面については、リユース販売において、採算性の高い高スペックのサブスクリプション終了品を優先的に確保して販売することに注力、売上高より利益重視の方針を進め、収益性を向上させた。一方でデータ消去・引取回収・排出管理BPOなどのサービス収益は、サービス範囲拡張や営業強化策により順調に業績を拡大している。中古品の販売が入荷量の減少で苦戦したものの、好調なサービス収益部門に注力したことにより、カバーした。また、収益性重視によりサービス収益部門は今後も積極的に拡大し、使用済みPCのリユース販売については収益性の見込める案件に絞って対応する方針だ。2022年11月に開始した「排出管理BPOサービス」や従来からの機器回収・データ消去サービスにおいては、複数の大企業からの受注獲得や商談が増加しており、このサービスをトリガーとしてITサブスクリプションやLCMサービス全般への展開・拡大が見込めるため、業容拡大が期待される。「排出管理BPOサービス」については、2024年1月から、文部科学省GIGAスクール構想に対応し、教育機関向けにも対象を拡大している。
足元ではメーカーや金融機関など大企業からの案件が出始めており、それら案件自体も大口化してきている。ただし、同社では現状は回復基調にあるものの、本格的な回復には至っていないと見ている。その要因としては、PCの導入から排出までのタイムラグが挙げられる。段階的にPC導入を進めている顧客企業が多く、処分については導入を完全に終えてから一括で行うことが背景にある。そのため、2025年5月期後半辺りから回復が本格化する公算だ。
(3) コミュニケーション・デバイス事業
コミュニケーション・デバイス事業では、ワイヤレスガイド機「イヤホンガイド(R)」の製造販売・レンタル・保守・メンテナンスを手掛けている。観光業界で利用されるワイヤレスガイドでは90%以上の圧倒的シェアを有する。2024年5月期の売上高は241百万円(前期比8.1%増)、セグメント利益は40百万円(同117.4%増)と大幅増益となった。新型コロナウイルス感染症の「5類移行」を受けて観光業界を巡る環境は急速に改善した。特に2024年5月期第4四半期は旅行や観光のハイシーズンに当たるため、大手旅行会社等からの受注件数が前期比で伸長したほか、訪日旅行者向けレンタルが増加し、業績回復への動きが鮮明となった。また国内市場での新規開拓に注力してきたこともあり、大規模工場見学や美術館鑑賞、各種イベント向けなど、非旅行分野での法人利用が拡大した。業績改善を受け、在庫の確保やメンテナンス工場の生産性向上策を実施し、今後の受注増に対応できるよう体制を整備している。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<SO>
3. セグメント別業績
(1) ITサブスクリプション事業
ITサブスクリプション事業は成長率が高く、市場規模が大きいことに加えて、ストック収益化による持続的成長が可能な事業である。法人向けPC市場はサブスクリプション・リース・購入といった保有形態があるが、サブスクリプション型の認知度が年々高まり、その比率が拡大している。同社のサブスクリプションは故障対応などの保守サービスを含んでいるほか、中途解約は月単位で可能、経理処理はオフバランスで費用も平準化されるため、企業にとってはメリットが大きい。さらに同事業はPC利用後の回収・データ消去までを担うITAD事業と組み合わせワンストップでサービスを提供している。このため、企業にとっては使い勝手のよいサービスであり、利用が拡大している。同事業は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)でも着実に成長し、2019年5月期から2024年5月期までの年平均成長率は25.5%となった。PC更新拡大期に入ることから、成長率は一段と上昇する可能性が高いと弊社では考えている。
ITサブスクリプション事業の2024年5月期の売上高は4,944百万円(前期比10.4%増)、セグメント利益は630百万円(同1.4%減)となった。売上高は順調な増加を見せたが、利益については、前期にサブスクリプション資産売却などにより一時的に売上・利益が増加したことや、サブスクリプション資産の耐用年数変更による減価償却費の変動影響を受けたことから前期比減を示しているが、これら要因を除けば、セグメント利益は前期比27.6%となり、実質的には増収増益で順調に成長したと言える。売上面では好調なサブスクリプション契約の受注積み上げによりストック収益を着実に拡大、前期の一時的な売上高増加の影響をカバーして、前期比増収を確保した。受注積み上げの要因の1つは受注案件規模の拡大である。従来は従業員数100~200人規模の企業からの受注が多かったが、足元では従業員数1,000人を超える規模の企業からの受注が増加している。もう1つは地方企業の積極的な開拓である。同社の新規開拓方法は、基本的には各種展示会に参加してサービスを宣伝し、興味を持った顧客に対して営業活動を行うというものだが、東京、大阪、名古屋などの大都市で開催する大型の展示会には地方から訪れる顧客も多く、その顧客に対しても積極的な営業活動を行い、受注を獲得したようだ。また2025年10月のWindows 10のサポート終了を踏まえた既存顧客の利用PCの入れ替えも進捗している。受注のピークは2025年5月期以降の見込みだが、PCの入れ替えを行い、ITサブスクリプションサービスを継続利用する顧客が増加しており、同サービスの中途解約率の低さから、今後の積み上がりに伴う収益性向上の確度は高い。
セグメント利益が、実質的に前期比27.6%増となった主因は、資産稼働率が高水準を維持したことだ。具体的には、サブスクリプション資産の世代交代を図るなかで、中長期レンタルの顧客には極力ジャストインタイム方式での仕入れを行うと同時に、機器を一括発注した場合であっても、顧客が使用開始するタイミングに出荷を合わせることで、サブスクリプション資産の償却負担を軽減した。短期レンタル利用の顧客には最小限の在庫で円滑に供給できるようにオペレーションの業務を改善するなど、在庫水準を適正化したことで、収益性を向上させた。コスト面では、成長機会に向けた投資として、サブスクリプション資産の継続取得、LCMサービスの需要拡大に対応した東京カスタマーセンターの新設や地域拠点の移転・拡張、IT人材の積極採用、DX推進など、先行コストは引き続き増加したものの、サブスクリプション資産の稼働率向上などにより、先行投資のコスト増をカバーした。
(2) ITAD事業
ITAD事業においては、規模ではなく、収益性の向上や環境変化への対応力強化を基本方針としているため、これに向けた構造改革を実施している。2024年5月期の売上高は1,800百万円(前期比3.6%減)、セグメント利益は573百万円(同18.3%増)となった。国内の新規PC出荷台数の低迷の影響により、法人・官公庁からの使用済みPCの排出は本格回復には至らず、回収台数は前期比で減少した。また、大部分を占める低スペック品については、一時期の国内市場価格の下落は一段落したが、使用済みPCの排出台数減少の影響は大きく、サービス収益以外の売上高は減少した。利益面については、リユース販売において、採算性の高い高スペックのサブスクリプション終了品を優先的に確保して販売することに注力、売上高より利益重視の方針を進め、収益性を向上させた。一方でデータ消去・引取回収・排出管理BPOなどのサービス収益は、サービス範囲拡張や営業強化策により順調に業績を拡大している。中古品の販売が入荷量の減少で苦戦したものの、好調なサービス収益部門に注力したことにより、カバーした。また、収益性重視によりサービス収益部門は今後も積極的に拡大し、使用済みPCのリユース販売については収益性の見込める案件に絞って対応する方針だ。2022年11月に開始した「排出管理BPOサービス」や従来からの機器回収・データ消去サービスにおいては、複数の大企業からの受注獲得や商談が増加しており、このサービスをトリガーとしてITサブスクリプションやLCMサービス全般への展開・拡大が見込めるため、業容拡大が期待される。「排出管理BPOサービス」については、2024年1月から、文部科学省GIGAスクール構想に対応し、教育機関向けにも対象を拡大している。
足元ではメーカーや金融機関など大企業からの案件が出始めており、それら案件自体も大口化してきている。ただし、同社では現状は回復基調にあるものの、本格的な回復には至っていないと見ている。その要因としては、PCの導入から排出までのタイムラグが挙げられる。段階的にPC導入を進めている顧客企業が多く、処分については導入を完全に終えてから一括で行うことが背景にある。そのため、2025年5月期後半辺りから回復が本格化する公算だ。
(3) コミュニケーション・デバイス事業
コミュニケーション・デバイス事業では、ワイヤレスガイド機「イヤホンガイド(R)」の製造販売・レンタル・保守・メンテナンスを手掛けている。観光業界で利用されるワイヤレスガイドでは90%以上の圧倒的シェアを有する。2024年5月期の売上高は241百万円(前期比8.1%増)、セグメント利益は40百万円(同117.4%増)と大幅増益となった。新型コロナウイルス感染症の「5類移行」を受けて観光業界を巡る環境は急速に改善した。特に2024年5月期第4四半期は旅行や観光のハイシーズンに当たるため、大手旅行会社等からの受注件数が前期比で伸長したほか、訪日旅行者向けレンタルが増加し、業績回復への動きが鮮明となった。また国内市場での新規開拓に注力してきたこともあり、大規模工場見学や美術館鑑賞、各種イベント向けなど、非旅行分野での法人利用が拡大した。業績改善を受け、在庫の確保やメンテナンス工場の生産性向上策を実施し、今後の受注増に対応できるよう体制を整備している。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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