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ADワークスグループのニュース
*15:09JST ADワークスグループ Research Memo(9):第2次中期計画では毎期10%以上のEPS成長を目指す(2)
■中期経営計画
(2) 事業環境及び重点施策
ADワークスグループ<2982>は国内の不動産市場の環境について、人口減少傾向の継続やリモートワーク定着によるオフィス需要の減少、マイナス金利解除による市況悪化リスクなどがマイナス要因となる一方で、都市部の不動産物件に関しては人口集中により一定の需要が見込まれること、また直接金融の整備による個人投資家資金の不動産市場への流入や、日本の不動産に対する割安感により海外投資家からの資金流入が続くことがプラス要因になると考えている。
また、同社独自の強みとしては不動産物件のソーシング・選定力と商品組成力、商品に対する高い信頼(遵法性/誠実性)、海外不動産事業の実績と展開力を挙げ、一方で弱みとして収益不動産販売事業への依存度が高いこと、自己資本比率が30%弱程度であり財務レバレッジを高める余地が限られること、細分化された業務プロセスなどを挙げている。これら外部環境と内部要因を踏まえて、同社では以下の6つの重点施策に取り組んでいく方針だ。
a) 大都市圏の不動産投資を継続
収益不動産販売事業において、国内では東京や大阪など大都市圏を対象に投資を継続していく考えだ。人口集中が続く傾向にある大都市圏では投資利回りが他の地域と比較して低い(不動産価格が高い)ものが安定して推移する傾向にあり、2024年以降にマイナス金利政策が解除されたとしても、不動産価格への影響は相対的に小さいと見ているためだ。また、大都市圏では賃料も上昇傾向にあるため、長期保有目的の購入を検討しやすい。同社では、長期保有用の収益不動産の割合を増やし賃料収入をも増やすことで安定収益基盤を拡大していくことにしている。
b) 不動産小口化事業の拡大
国内における不動産小口化商品(任意組合型)の市場規模(募集額)は、2014年度の65億円から2022年度は437億円と8年間で6.7倍に急拡大している。良質な不動産に対して、少額から投資できること(同社の場合、1口100万円から)、相続対策にも利用できることなどが人気を集めている要因と見られる。今後も国民の投資意識が高まるなかで、リスクが小さく安定した利回りが期待できる同商品に対する需要は拡大していくものと予想され、同社においても積極的に商品化を進めていく方針だ。
不動産小口化商品については競合も多いが、一棟再販事業との親和性が強く、仕入力と商品企画力を生かして付加価値の高い商品を販売することで競争優位性を確保している。実際、2023年の運用商品の平均稼働率(=入居率)は99.9%と極めて高く、「ARISTOシリーズ」のブランド力も向上している。2024年には営業企画部を新設し、さらなる組織体制の強化を図っており販売の生産性向上にも取り組んでいく。販売に関しては金融機関等も含めた提携パートナーが約470社まで拡大しているが、今後もパートナー数やオーナー数※をさらに拡大していくとともに、これらのノウハウを海外不動産事業や他の新規事業に活用できる可能性についても模索していくことにしている。
※2023年までに合計9商品(総額139.2億円)を累計約900人に販売した。
c) 海外不動産の積極的な仕入
米国ではインフレ抑制のためFRBが政策金利を引き上げてきたことにより、収益不動産価格が下落傾向となり同社も仕入を抑制してきたが、2024年は政策金利を引き下げるとの見方が強まっており、市況の好転が期待される。同社では状況を慎重に見極めつつ、好機と判断した段階で積極的な仕入方針に転換し、事業拡大を目指していく。海外事業の売上高は2023年12月期で約30億円と2020年3月期の約61億円から半分の水準に留まっており、市場環境が好転すれば早期に同水準まで回復を目指す考えだ。
d) 海外投資家とのリレーション強化
アジア太平洋地域を投資対象とする不動産ファンドの未投資資金は2017年から増加傾向にあり、クロスボーダー投資家にとって、東京は魅力的な都市として常にランキング上位に位置している。こうした状況に照らし、収益不動産事業における取引先、特に販売先として海外投資家とのリレーション強化を図っていく。
e) 金融機関とのリレーション強化とオルタナティブファイナンスの活用
同社は国内外の約40行から、ピークで約400億円規模の借入れを行っており、今後のさらなる規模拡大に備え、資金力を持つメガバンクとの取引の比重を高めていく考えだ。このため、金融機関の融資基準(行内格付け/自己査定)を意識した財務戦略を推進していく。具体的には、賃料収入を目的とした長期保有不動産を100億円規模にまで増やし(前期末約63億円)、販管費等の固定費を賃料収入など安定収益で賄い、固定費カバー率を引き上げていく。
また、金融機関からの借入れを補完する位置付けとして、クラウドファンディングなどのオルタナティブファイナンスや、コマーシャルペーパー及び社債発行などを活用していく。
f) ノンアセットビジネスの探索
第1次中期経営計画にて、2025年12月期に“脱”不動産事業の収益比率3割を目標に掲げたが、これを「ノンアセット事業シェア30%」とし、期限は定めずに取り組んでいく方針だ。FA事業にて4件のアドバイザリー収入を獲得するなど実績も徐々に出始めており、フィービジネスの基盤を固めていく。また、その他にも新規事業を創出すべく様々なグループ全体で組織面及び人材面から取り組んでいる。
具体的な取り組みとして、2023年10月よりAI利活用による新規事業(非不動産分野含む)の創造を目指した共同研究を慶應義塾大学の岩尾俊兵准教授と開始した。2024年1月には学生が作成した複数の新規事業計画案のプレゼンテーションを同社社員も参加して開催し、同計画書をブラッシュアップして同年3月までに新規事業の企画書を策定する予定となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(2) 事業環境及び重点施策
ADワークスグループ<2982>は国内の不動産市場の環境について、人口減少傾向の継続やリモートワーク定着によるオフィス需要の減少、マイナス金利解除による市況悪化リスクなどがマイナス要因となる一方で、都市部の不動産物件に関しては人口集中により一定の需要が見込まれること、また直接金融の整備による個人投資家資金の不動産市場への流入や、日本の不動産に対する割安感により海外投資家からの資金流入が続くことがプラス要因になると考えている。
また、同社独自の強みとしては不動産物件のソーシング・選定力と商品組成力、商品に対する高い信頼(遵法性/誠実性)、海外不動産事業の実績と展開力を挙げ、一方で弱みとして収益不動産販売事業への依存度が高いこと、自己資本比率が30%弱程度であり財務レバレッジを高める余地が限られること、細分化された業務プロセスなどを挙げている。これら外部環境と内部要因を踏まえて、同社では以下の6つの重点施策に取り組んでいく方針だ。
a) 大都市圏の不動産投資を継続
収益不動産販売事業において、国内では東京や大阪など大都市圏を対象に投資を継続していく考えだ。人口集中が続く傾向にある大都市圏では投資利回りが他の地域と比較して低い(不動産価格が高い)ものが安定して推移する傾向にあり、2024年以降にマイナス金利政策が解除されたとしても、不動産価格への影響は相対的に小さいと見ているためだ。また、大都市圏では賃料も上昇傾向にあるため、長期保有目的の購入を検討しやすい。同社では、長期保有用の収益不動産の割合を増やし賃料収入をも増やすことで安定収益基盤を拡大していくことにしている。
b) 不動産小口化事業の拡大
国内における不動産小口化商品(任意組合型)の市場規模(募集額)は、2014年度の65億円から2022年度は437億円と8年間で6.7倍に急拡大している。良質な不動産に対して、少額から投資できること(同社の場合、1口100万円から)、相続対策にも利用できることなどが人気を集めている要因と見られる。今後も国民の投資意識が高まるなかで、リスクが小さく安定した利回りが期待できる同商品に対する需要は拡大していくものと予想され、同社においても積極的に商品化を進めていく方針だ。
不動産小口化商品については競合も多いが、一棟再販事業との親和性が強く、仕入力と商品企画力を生かして付加価値の高い商品を販売することで競争優位性を確保している。実際、2023年の運用商品の平均稼働率(=入居率)は99.9%と極めて高く、「ARISTOシリーズ」のブランド力も向上している。2024年には営業企画部を新設し、さらなる組織体制の強化を図っており販売の生産性向上にも取り組んでいく。販売に関しては金融機関等も含めた提携パートナーが約470社まで拡大しているが、今後もパートナー数やオーナー数※をさらに拡大していくとともに、これらのノウハウを海外不動産事業や他の新規事業に活用できる可能性についても模索していくことにしている。
※2023年までに合計9商品(総額139.2億円)を累計約900人に販売した。
c) 海外不動産の積極的な仕入
米国ではインフレ抑制のためFRBが政策金利を引き上げてきたことにより、収益不動産価格が下落傾向となり同社も仕入を抑制してきたが、2024年は政策金利を引き下げるとの見方が強まっており、市況の好転が期待される。同社では状況を慎重に見極めつつ、好機と判断した段階で積極的な仕入方針に転換し、事業拡大を目指していく。海外事業の売上高は2023年12月期で約30億円と2020年3月期の約61億円から半分の水準に留まっており、市場環境が好転すれば早期に同水準まで回復を目指す考えだ。
d) 海外投資家とのリレーション強化
アジア太平洋地域を投資対象とする不動産ファンドの未投資資金は2017年から増加傾向にあり、クロスボーダー投資家にとって、東京は魅力的な都市として常にランキング上位に位置している。こうした状況に照らし、収益不動産事業における取引先、特に販売先として海外投資家とのリレーション強化を図っていく。
e) 金融機関とのリレーション強化とオルタナティブファイナンスの活用
同社は国内外の約40行から、ピークで約400億円規模の借入れを行っており、今後のさらなる規模拡大に備え、資金力を持つメガバンクとの取引の比重を高めていく考えだ。このため、金融機関の融資基準(行内格付け/自己査定)を意識した財務戦略を推進していく。具体的には、賃料収入を目的とした長期保有不動産を100億円規模にまで増やし(前期末約63億円)、販管費等の固定費を賃料収入など安定収益で賄い、固定費カバー率を引き上げていく。
また、金融機関からの借入れを補完する位置付けとして、クラウドファンディングなどのオルタナティブファイナンスや、コマーシャルペーパー及び社債発行などを活用していく。
f) ノンアセットビジネスの探索
第1次中期経営計画にて、2025年12月期に“脱”不動産事業の収益比率3割を目標に掲げたが、これを「ノンアセット事業シェア30%」とし、期限は定めずに取り組んでいく方針だ。FA事業にて4件のアドバイザリー収入を獲得するなど実績も徐々に出始めており、フィービジネスの基盤を固めていく。また、その他にも新規事業を創出すべく様々なグループ全体で組織面及び人材面から取り組んでいる。
具体的な取り組みとして、2023年10月よりAI利活用による新規事業(非不動産分野含む)の創造を目指した共同研究を慶應義塾大学の岩尾俊兵准教授と開始した。2024年1月には学生が作成した複数の新規事業計画案のプレゼンテーションを同社社員も参加して開催し、同計画書をブラッシュアップして同年3月までに新規事業の企画書を策定する予定となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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