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紀文食品のニュース
*15:59JST 紀文食品 Research Memo(9):定性面の成長戦略は比較的順調に進行
■紀文食品<2933>の中期経営計画
3. 現中期経営計画の成長戦略
現中期経営計画では、成長戦略に基づいて各事業の成長性と収益性の基盤を構築することとしていたが、マクロ的な状況変化により定量目標の達成が難しい項目が出る可能性が高まっている。しかし、シェアが拡大するなど、定性面の成長戦略は比較的順調に進行していると考える。ただし、次期中期経営計画においては、海外食品事業で各地域に適した商品開発やプロモーションを再考する必要があるだろう。また、配当方針は大きく変わらないと思われるが、設備投資の内訳や数値目標達成のスケジュールを見直す可能性はあると考える。
(1) 国内食品事業
シェア拡大、商品拡充及び販売チャネル拡大、生産設備の増強、ウィズコロナへの適合を推進する。シェア拡大としては、水産練り製品や惣菜などの健康価値の訴求や、正月など和食文化の保護継承の推進とともに、顧客とのコミュニケーションの充実を図る。また、簡便性による付加価値向上や顕在・潜在ニーズに対応した商品開発、原材料調達力や製品供給力の強化に取り組む。商品拡充及び販売チャネル拡大としては、減塩・糖質オフなどの健康志向商品やタンパク加工技術による商品、新規カテゴリー商品を拡充する。また、ECなど伸長の著しい流通形態への展開に加え、水産品や食品原材料の取引ノウハウを生かした調達と、国内卸販売、輸出を強化する。生産設備の増強としては、ライン集約による定番商品の生産性向上、商品のロングライフ化による生産の平準化、自動化・省人化・省エネルギー化・食品ロス削減など環境負荷低減設備への更新、品質向上や労働安全対策設備への更新を進める。様々なコスト増が同時に発現し高止まりする中で、グループ企業の連携強化による業務プロセスの見直し、共通業務の集約化などによるコスト削減を目指す。
(2) 海外食品事業
和食や水産練り製品の現地食文化への展開拡大、市場トレンドとなっている健康志向ニーズに対する商品展開、マーケティングや商品開発の機能強化、グローバルワイドでの供給能力の強化を推進することで、グローバル市場での同社ポジションの確立を目指す。また、地域に合った商品を投入することで新規顧客を開拓するほか、各地の販売体制を強化しローカルマーケットを拡大する。タイでは生産能力の増強を図る。
(3) 食品関連事業
ITとチルド物流サービスの連動を強化し、より高い鮮度・品質・スピードで納品することで、荷主や運送パートナーとの信頼関係を一層高め、物流事業の高付加価値化を図る。また、共同配送や仕分サービス、在庫管理といった多様な機能で外部売上を伸ばす一方、配送ネットワークやコストの見直しによって効率化を図り、高品質かつ環境負荷の低いチルド物流サービスを実現する。ほかにも食品安全衛生管理に関するノウハウの外販も考えているようだ。
(4) 経営基盤の整備
社会や株式市場に配慮し、社是である「感謝 即 実行」に基づきESG経営を推進して、SDGsを達成する。環境(E)については、省エネルギー、環境負荷軽減、商品ロングライフ化、フードロス削減、持続性資源の調達と研究開発により、自然への感謝を示しながら持続性を追求する。社会(S)については、人材育成と職場環境の整備、健康と安全・安心の提供、伝統文化・和食文化の保護と継承により、人材の活性化と文化社会貢献を進める。統治(G)については、内部通報制度や法令遵守強化、危機管理対策(BCP策定、ものづくりDX2.0など)、誠実なIR、指名報酬委員会設置を通じて、内部統制強化と透明性の確保を図る。
(5) 中期的なキャッシュ・フローと配当政策
現中期経営計画策定時は、上場時の増資資金と3年間で創出する予定の営業キャッシュ・フローの合計126億円を、設備投資や借入返済、配当などに充てる方針であった。設備投資は3年間で63億円程度を予定しており、内訳は国内食品事業の成長戦略に17億円、生産設備の刷新に32億円、その他2億円、海外食品事業の世界戦略商品の増産に12億円としていた。また、借入金依存度35%以下を目指して借入返済に44億円、20%程度を当面の配当性向目標として残額を配当などに充当する計画だった。しかし設備投資に関しては、生産能力増強を中心に2023年3月期が遅れたため、3年間で60億円弱になる見込みである。
現中期経営計画の目標への再チャレンジに期待
4. 次期中期経営計画のイメージ
同社は、2022年2月からの1年間に実施した3回の価格改定によって、良い商品であれば価格改定後もそれに見合った支持が得られること、商品力や体力などトップ企業としての強みが改めて明確になったとしている。しかし、現状これ以上の価格改定は難しいと同社では考えられており、次期中期経営計画では、引き続き収益性向上と財務体質改善による「持続的成長サイクルの確立」を目指した取り組みを着実に進めることが重要だと思われる。そのため、従来の成長戦略に加え、特に国内で市場を深掘りするとともに新たなチャネルを開拓、人員を増強しブランドを浸透させつつ、スーパーマーケットとコンビニエンスストアで占める8割という高いシェアの分散を図ることになると弊社では考える。次期中期経営計画では現中期経営計画の定量目標に再チャレンジし、さらにそれを超えていってほしいと期待する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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3. 現中期経営計画の成長戦略
現中期経営計画では、成長戦略に基づいて各事業の成長性と収益性の基盤を構築することとしていたが、マクロ的な状況変化により定量目標の達成が難しい項目が出る可能性が高まっている。しかし、シェアが拡大するなど、定性面の成長戦略は比較的順調に進行していると考える。ただし、次期中期経営計画においては、海外食品事業で各地域に適した商品開発やプロモーションを再考する必要があるだろう。また、配当方針は大きく変わらないと思われるが、設備投資の内訳や数値目標達成のスケジュールを見直す可能性はあると考える。
(1) 国内食品事業
シェア拡大、商品拡充及び販売チャネル拡大、生産設備の増強、ウィズコロナへの適合を推進する。シェア拡大としては、水産練り製品や惣菜などの健康価値の訴求や、正月など和食文化の保護継承の推進とともに、顧客とのコミュニケーションの充実を図る。また、簡便性による付加価値向上や顕在・潜在ニーズに対応した商品開発、原材料調達力や製品供給力の強化に取り組む。商品拡充及び販売チャネル拡大としては、減塩・糖質オフなどの健康志向商品やタンパク加工技術による商品、新規カテゴリー商品を拡充する。また、ECなど伸長の著しい流通形態への展開に加え、水産品や食品原材料の取引ノウハウを生かした調達と、国内卸販売、輸出を強化する。生産設備の増強としては、ライン集約による定番商品の生産性向上、商品のロングライフ化による生産の平準化、自動化・省人化・省エネルギー化・食品ロス削減など環境負荷低減設備への更新、品質向上や労働安全対策設備への更新を進める。様々なコスト増が同時に発現し高止まりする中で、グループ企業の連携強化による業務プロセスの見直し、共通業務の集約化などによるコスト削減を目指す。
(2) 海外食品事業
和食や水産練り製品の現地食文化への展開拡大、市場トレンドとなっている健康志向ニーズに対する商品展開、マーケティングや商品開発の機能強化、グローバルワイドでの供給能力の強化を推進することで、グローバル市場での同社ポジションの確立を目指す。また、地域に合った商品を投入することで新規顧客を開拓するほか、各地の販売体制を強化しローカルマーケットを拡大する。タイでは生産能力の増強を図る。
(3) 食品関連事業
ITとチルド物流サービスの連動を強化し、より高い鮮度・品質・スピードで納品することで、荷主や運送パートナーとの信頼関係を一層高め、物流事業の高付加価値化を図る。また、共同配送や仕分サービス、在庫管理といった多様な機能で外部売上を伸ばす一方、配送ネットワークやコストの見直しによって効率化を図り、高品質かつ環境負荷の低いチルド物流サービスを実現する。ほかにも食品安全衛生管理に関するノウハウの外販も考えているようだ。
(4) 経営基盤の整備
社会や株式市場に配慮し、社是である「感謝 即 実行」に基づきESG経営を推進して、SDGsを達成する。環境(E)については、省エネルギー、環境負荷軽減、商品ロングライフ化、フードロス削減、持続性資源の調達と研究開発により、自然への感謝を示しながら持続性を追求する。社会(S)については、人材育成と職場環境の整備、健康と安全・安心の提供、伝統文化・和食文化の保護と継承により、人材の活性化と文化社会貢献を進める。統治(G)については、内部通報制度や法令遵守強化、危機管理対策(BCP策定、ものづくりDX2.0など)、誠実なIR、指名報酬委員会設置を通じて、内部統制強化と透明性の確保を図る。
(5) 中期的なキャッシュ・フローと配当政策
現中期経営計画策定時は、上場時の増資資金と3年間で創出する予定の営業キャッシュ・フローの合計126億円を、設備投資や借入返済、配当などに充てる方針であった。設備投資は3年間で63億円程度を予定しており、内訳は国内食品事業の成長戦略に17億円、生産設備の刷新に32億円、その他2億円、海外食品事業の世界戦略商品の増産に12億円としていた。また、借入金依存度35%以下を目指して借入返済に44億円、20%程度を当面の配当性向目標として残額を配当などに充当する計画だった。しかし設備投資に関しては、生産能力増強を中心に2023年3月期が遅れたため、3年間で60億円弱になる見込みである。
現中期経営計画の目標への再チャレンジに期待
4. 次期中期経営計画のイメージ
同社は、2022年2月からの1年間に実施した3回の価格改定によって、良い商品であれば価格改定後もそれに見合った支持が得られること、商品力や体力などトップ企業としての強みが改めて明確になったとしている。しかし、現状これ以上の価格改定は難しいと同社では考えられており、次期中期経営計画では、引き続き収益性向上と財務体質改善による「持続的成長サイクルの確立」を目指した取り組みを着実に進めることが重要だと思われる。そのため、従来の成長戦略に加え、特に国内で市場を深掘りするとともに新たなチャネルを開拓、人員を増強しブランドを浸透させつつ、スーパーマーケットとコンビニエンスストアで占める8割という高いシェアの分散を図ることになると弊社では考える。次期中期経営計画では現中期経営計画の定量目標に再チャレンジし、さらにそれを超えていってほしいと期待する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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