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Shinwa Research Memo(2):美術品オークション業界におけるパイオニア

配信元:フィスコ
投稿:2019/03/13 15:32
■会社概要

1. 事業概要
Shinwa Wise Holdings<2437>は、国内最大級の美術品オークション会社を傘下に持つ純粋持株会社である。1989年の創業以来、業界のパイオニアとして国内のオークション市場をリードするとともに、業界唯一の上場会社でもある。日本の近代美術を中心として、近代陶芸やブランド雑貨、時計、宝飾品なども手掛けている。特に、同社は2,000万円以上の高額落札作品を得意として扱っている。

美術品に対する専門性の高さや富裕層マーケティングによる人的ネットワーク、実績に裏打ちされた信用力やブランド力などを強みとして、業界のリーディングカンパニーとしての地位を確保してきた。

また、2014年5月期からは、これまで積み上げてきた富裕層マーケティングとのシナジー効果が期待できる事業として、医療機関向け支援事業及び太陽光発電によるエネルギー関連事業にも参入。「アートから始まる富裕層向けのセレクトサービスカンパニー」へと事業ドメインを拡張することにより、安定収益源の確保と財務基盤の強化に取組んでいる。

2017年12月1日には、ホールディングス体制へと移行し、シンワアートオークション(株)からShinwa Wise Holdings(株)(シンワワイズホールディングス)へと社名変更。各事業の強化や連携、新規事業の育成などを通じて、Shinwa Wiseグループとして富裕層向けビジネスの更なる発展を目指すところに狙いがある。

事業セグメントは、中核の「オークション関連事業」や太陽光発電施設の販売等による「エネルギー関連事業」のほか、ウェルスマネジメント、ミャンマーでのマイクロファイナンスなどを含む「その他」の3つに区分される。事業別売上構成比率では、「オークション関連事業」が69.8%、「エネルギー関連事業」が27.8%、「その他」が2.4%となっている(2019年5月期上期実績)。

各事業の概要は以下のとおりである。

(1) オークション関連事業
オークション関連事業は、大きく「オークション事業」と「オークション関連その他事業」に分けられる。

a) オークション事業
オークション事業は、取扱作品・価格帯により、近代美術オークション、近代陶芸オークション、近代美術Part2オークションを定期的に開催するほか、ワイン・西洋美術・コンテンポラリーアート等のオークションも随時開催する。また、ブランド雑貨、時計、宝飾品については、2013年10月に設立した連結子会社Shinwa Market(株)(旧Jオークション(株))が開催するオークションで取扱っている。オークション関連事業の売上高は、主に落札価額によって異なり、対する手数料収入(落札手数料及び出品手数料)で構成される。落札手数料(税別)は落札価額の200万円以下に対して15.0%、200万円超5,000万円以下に対して12.0%、5,000万円超に対して10.0%、出品手数料は落札価額の10.0%と設定されている。ほかにもカタログ収入や会費収入などで構成される。

b) オークション関連その他事業
オークション以外の相対取引であるプライベートセールを中心に構成されている。オークション取引と同様に、販売価格をベースに販売委託者及び購入者から手数料を徴収する場合と、同社が作品を買い取り、その在庫商品を購入希望者に販売する場合とがある。

同社は、美術品市場全体の安定化と規模の拡大を目的として、いわゆる近代美術の巨匠と言われる作家の名品(マスターピース)クラスの作品を数点購入し、戦略在庫として保有するとともに、作品ごとに販売時期、価格及び販売先などを含め、最も合理的な販売を実現することにより、販売益の獲得や効果的なマーケットメイクを目指している。また、2018年9月には子会社Shinwa Priveが新たに画廊スペースを設け、顧客のニーズに細やかに対応できる体制を整えた。さらには富裕層向けビジネスの一環として、資産防衛を目的としたダイヤモンド販売(詳細は後述)も開始している。

なお、手数料収入と商品売上高は、売上高に対する量的なインパクトが異なるため注意が必要である。オークション関連事業の業績を判断するためには、取扱高及びセグメント利益を見るのが妥当と言える。

(2) エネルギー関連事業
富裕層向けに50kW級の低圧型太陽光発電施設の分譲販売を行うとともに、高圧型太陽光発電施設※を自社保有することによる売電事業も展開している。太陽光発電施設の販売については、利回りに着目した根強い需要が続いているものの、2017年3月末に優遇税制措置が終了したことや政府による電力買取価格(FIT)の継続的な引き下げにより、収益目線で投資対象となる新たな案件の確保は難しい状況となってきた。また、2017年4月には、マレーシアにおいて新たにPKS事業(詳細は後述)を開始している。

※兵庫県西脇市(800kW級)と埼玉県秩父市(約2,300kW級)に大型太陽光発電施設を保有。


(3) その他
2017年7月からは、優遇税制措置の終了した太陽光発電施設に代わり、富裕層の節税ニーズに対応する商品として、海外不動産販売の紹介事業を開始(詳細は後述)。2017年8月には、ミャンマーにおいてマイクロファイナンス事業(詳細は後述)にも参入している。

その他、医療機関向け支援事業として、日本を含めたアジアの富裕層に日本の最先端の医療技術やより良い品質の医療サービスを紹介する医療ツーリズム、アンチエイジングなどの健康食品(サプリメント)の販売等を行っている。

2. 企業グループの状況
2017年12月1日からホールディングス体制へと移行し、連結子会社9社(孫会社5社を含む)、非連結子会社2社及び持分法適用関連会社1社により構成されている。特に、Shinwa Auction(株)(オークション事業)、Shinwa Prive(株)(アートディーリング、画廊業)、Shinwa Market(宝石オークション、インターネットオークション開発)のほか、新規事業を束ねる戦略子会社Shinwa ARTEX(株)を合わせた4社を中核とする体制となっており、各事業の強化と連携、新規事業の育成に取組んでいる。

3. 新規事業の概要
(1) PKS輸入販売事業
エネルギー関連事業の新たな収益の柱の1つとして、マレーシアにおいて、バイオマス発電の燃料となるPKS(パーム椰子殻)の輸入販売事業を開始(2017年4月)。Shinwa ARTEX(旧エーペック(株))の100%子会社(SHINWA APEC MALAYSIA SDN. BHD.)が展開している。バイオマス発電は、政府の長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)でも重要な電源として位置付けられているが、その燃料としてPKSへの注目度は高く、取扱量もここ数年で急速に伸びてきた。今後、バイオマス発電所の建設が急速に進むものと予想されており、PKS需要の拡大余地は大きい。初年度となる前期(2018年5月期)は大幅な赤字となったものの、現地での直接仕入れやストックヤードの自社保有により、低コストで安定供給ができる体制を構築しつつあり、それによって長期契約を取るための差別化を図っていく戦略を描いている。今後については、販売先(発電事業者)の稼働に向けた進捗状況によるところが大きいが、事業拡大に向けての手応えはつかんできたようだ。

(2) ウェルスマネジメント事業
富裕層ネットワークの更なる拡大を目的として、ウェルスマネジメント分野にも新たに参入した(2017年7月)。Shinwa ARTEXが展開している。米国テキサス州の中古不動産物件紹介から開始し、これまで30棟以上の実績を上げてきたが、事業としての効率性等を勘案の上、今後は不動産リソースを国内にシフトしていく方針である。

(3) ミャンマーでのマイクロファイナンス事業
2017年8月には、ミャンマーにてマイクロファイナンス事業にも参入した。Shinwa ARTEXの100%子会社(Shinwa Microfinance Co., Ltd)が展開している。21世紀のソーシャルビジネスのあり方を模索するなかで、これまでもミャンマーでの植林事業や文化支援事業などを手掛けてきた。本件についても、少額資金を融資することによりミャンマーの多くの農業従事者及び小規模事業主の生活水準の向上を図るところに目的(意義)がある。グラミン銀行のマイクロファイナンス事業モデル「グループレンディング」※を原型とした「グループギャランティ」という制度を採用しており、事業としての安定性や発展性も実証されている。ミャンマーに2支店を開業(2019年1月にはさらに2支店を開業)し、初年度となる前期(2018年5月期)には約5,000名へ少額融資を実行した。

※ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏が提唱した事業モデル。


(4)「シンワダイヤモンド倶楽部」の発足
富裕層向けビジネスの一環として、資産防衛を目的とした「シンワダイヤモンド倶楽部」を発足させた。Shinwa ARTEXが展開している。資産防衛の手段として最適※1と言われるダイヤモンド取引の最大の課題は、購入価格の透明性にあるが、同社グループでは、これまで15年以上の宝石オークションとダイヤモンド取引で培った世界のネットワークを活用し、ダイヤモンドホルダーとなる富裕層が、適正な価格※2で購入できる仕組みを提供する。Shinwa Marketの運営する宝石オークションとの連携はもちろん、「ダイヤモンドを組み込む資産ポートフォリオ革命」を提唱することにより、これからの富裕層向けビジネスの柱にしていく方針である。

※1 価値の安定性はもちろん、持ち運びや換金が容易な現物資産であるところにメリットがある。
※2 業者取引価格(ラパポート価格)に近い水準での提供を目指す。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

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配信元: フィスコ
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