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メディネットのニュース
■要約
メディネット<2370>は、「がん免疫細胞治療」領域のパイオニアとして走り続けてきた、創業26年を迎えるバイオベンチャーである。創業者である木村佳司(きむらよしじ)氏(現 代表取締役社長)と東京大学医科学研究所において、がんと分子免疫学の研究者であった故 江川滉二(えがわこうじ)氏(東京大学名誉教授)が出会い、当時認知されていなかったがん免疫細胞治療を、“患者さんのため”に新しい治療法を提供すべく、「免疫細胞療法総合支援サービス」(当時)という画期的な新しいビジネスモデルをデザインし、事業化するに至った。
1. 2021年9月期通期の業績概要及び2022年9月期通期の業績見通し
2021年9月期通期の業績は、売上高が前期比12.8%減の683百万円、営業損失が1,080百万円(前期は926百万円の損失)、経常損失が870百万円(同836百万円の損失)、当期純損失が843百万円(同842百万円の損失)となった。細胞加工業において、CDMO事業の新規受託案件の製造を開始し売上増加に寄与したが、一方で新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)の長期化による取引先医療機関における患者数の低迷で減収となった。損益面では、減収等により売上総利益は180百万円(前期比38.1%減)、販管費は1,261百万円(同3.6%増)となったことで営業損失は拡大した。
2022年9月期通期の業績見通しは、売上高は752百万円(前期比10.1%増)、営業損失が1,755百万円(前期は1,080百万円の損失)、経常損失が1,755百万円(同870百万円の損失)、当期純損失が1,761百万円(同843百万円の損失)を見込んでいる。今後は感染防止策の徹底並びにワクチン接種の普及が進み、緊急事態宣言等の解除による経済活動の持ち直しが期待されるものの、コロナ禍の収束時期はいまだ見通せず、依然として先行きは不透明な状況が続くものと思われる。
2. 細胞加工業はがん免疫細胞加工の“1本足打法”から、事業環境に左右されないバランスのとれた事業構造を構築
細胞加工業における「CDMO※1」事業は、かねてより進めていたヤンセンファーマ(株)※2との治験製品受託製造に関する契約を、2021年5月に締結し、製造受託を開始した。これにより、「CDMO」事業は業績拡大に向け進むことになる。また細胞加工業の事業目標として、2023年9月期黒字化を目指す。一時的な黒字化だけにとどめずインバウンド患者依存の事業体質を改め、同社のコア事業として持続的安定成長型事業構造を確立することに主眼を置いている。そのため、細胞培養加工の環境・体制整備として、専門人材の採用(細胞加工技術者等40名程度)、資金調達(第18回新株発行)を実施した。
※1 CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)とはバイオ医薬品の受託開発・製造企業を指す。
※2 世界最大のトータルヘルスケアカンパニーのジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門。
3. 再生医療等製品は「慢性心不全治療薬」と「新型コロナウイルスワクチン」に資源集中
再生医療等製品事業における開発パイプラインでは、「慢性心不全治療に用いる再生医療等製品の実用化」と 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防を目的とした自家樹状細胞ワクチンの開発」に優先的に資源集中して取り組んでいる。
最も期待されているのは、「慢性心不全治療薬」である。九州大学医学部の筒井教授主導のもと、第I/IIa相臨床試験を実施し同社は治験製造面で支援している。第IIb治験届出の準備が整い次第、2022年9月期中(できるだけ早い時期)に治験開始と見られる。同研究は市場や投資家からの関心が高く、臨床試験結果に注目が集まっている。
また同社は、がん治療分野で独自開発した「自家樹状細胞ワクチン」のメカニズムを新型コロナウイルス向けに応用開発し、現在国立がん研究センターや慶応義塾大学と共同研究を進め、治験前に必要な非臨床安全性試験を実施、2022年以降の治験届の提出を予定している。また、同社では「樹状細胞ワクチンプラットホーム」構想を描いている。ワクチンは、体内に侵入してきた”異物”(抗原)の“目印”を樹状細胞に記憶させることで、実際にターゲット(特定のウイルスや細菌)が侵入した場合に攻撃する。ターゲットを切り替えれば、新型コロナウイルスの変異種(直近のオミクロン株が好例)をはじめ、いまだ有効なワクチンや治療薬が確立していない感染症や多様な疾病に対応したワクチンや治療薬の迅速な開発が可能となる。同社のコア技術は「免疫細胞」であり、同技術をベースに既存のがん細胞治療分野から感染症分野、さらにアンメット・メディカルニーズ対応新薬開発への道筋が開かれ、このビジネスモデルが国内外の医療機関や製薬業界に高く評価されれば、同社の企業価値がさらに高まるものと弊社では期待している。
■Key Points
・2021年9月期は「CDMO」事業でヤンセンファーマより製造受託を獲得。これにより細胞加工業はがん免疫細胞加工の“1本足打法”から事業環境に左右されないバランスのとれた事業構造を構築
・細胞加工業は2023年9月期黒字化を目指す。2022年9月期は足場固めの段階
・再生医療等製品(研究開発・事業化)は「慢性心不全治療薬」と「新型コロナウイルスワクチン」に資源集中
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<EY>
メディネット<2370>は、「がん免疫細胞治療」領域のパイオニアとして走り続けてきた、創業26年を迎えるバイオベンチャーである。創業者である木村佳司(きむらよしじ)氏(現 代表取締役社長)と東京大学医科学研究所において、がんと分子免疫学の研究者であった故 江川滉二(えがわこうじ)氏(東京大学名誉教授)が出会い、当時認知されていなかったがん免疫細胞治療を、“患者さんのため”に新しい治療法を提供すべく、「免疫細胞療法総合支援サービス」(当時)という画期的な新しいビジネスモデルをデザインし、事業化するに至った。
1. 2021年9月期通期の業績概要及び2022年9月期通期の業績見通し
2021年9月期通期の業績は、売上高が前期比12.8%減の683百万円、営業損失が1,080百万円(前期は926百万円の損失)、経常損失が870百万円(同836百万円の損失)、当期純損失が843百万円(同842百万円の損失)となった。細胞加工業において、CDMO事業の新規受託案件の製造を開始し売上増加に寄与したが、一方で新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)の長期化による取引先医療機関における患者数の低迷で減収となった。損益面では、減収等により売上総利益は180百万円(前期比38.1%減)、販管費は1,261百万円(同3.6%増)となったことで営業損失は拡大した。
2022年9月期通期の業績見通しは、売上高は752百万円(前期比10.1%増)、営業損失が1,755百万円(前期は1,080百万円の損失)、経常損失が1,755百万円(同870百万円の損失)、当期純損失が1,761百万円(同843百万円の損失)を見込んでいる。今後は感染防止策の徹底並びにワクチン接種の普及が進み、緊急事態宣言等の解除による経済活動の持ち直しが期待されるものの、コロナ禍の収束時期はいまだ見通せず、依然として先行きは不透明な状況が続くものと思われる。
2. 細胞加工業はがん免疫細胞加工の“1本足打法”から、事業環境に左右されないバランスのとれた事業構造を構築
細胞加工業における「CDMO※1」事業は、かねてより進めていたヤンセンファーマ(株)※2との治験製品受託製造に関する契約を、2021年5月に締結し、製造受託を開始した。これにより、「CDMO」事業は業績拡大に向け進むことになる。また細胞加工業の事業目標として、2023年9月期黒字化を目指す。一時的な黒字化だけにとどめずインバウンド患者依存の事業体質を改め、同社のコア事業として持続的安定成長型事業構造を確立することに主眼を置いている。そのため、細胞培養加工の環境・体制整備として、専門人材の採用(細胞加工技術者等40名程度)、資金調達(第18回新株発行)を実施した。
※1 CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)とはバイオ医薬品の受託開発・製造企業を指す。
※2 世界最大のトータルヘルスケアカンパニーのジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門。
3. 再生医療等製品は「慢性心不全治療薬」と「新型コロナウイルスワクチン」に資源集中
再生医療等製品事業における開発パイプラインでは、「慢性心不全治療に用いる再生医療等製品の実用化」と 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防を目的とした自家樹状細胞ワクチンの開発」に優先的に資源集中して取り組んでいる。
最も期待されているのは、「慢性心不全治療薬」である。九州大学医学部の筒井教授主導のもと、第I/IIa相臨床試験を実施し同社は治験製造面で支援している。第IIb治験届出の準備が整い次第、2022年9月期中(できるだけ早い時期)に治験開始と見られる。同研究は市場や投資家からの関心が高く、臨床試験結果に注目が集まっている。
また同社は、がん治療分野で独自開発した「自家樹状細胞ワクチン」のメカニズムを新型コロナウイルス向けに応用開発し、現在国立がん研究センターや慶応義塾大学と共同研究を進め、治験前に必要な非臨床安全性試験を実施、2022年以降の治験届の提出を予定している。また、同社では「樹状細胞ワクチンプラットホーム」構想を描いている。ワクチンは、体内に侵入してきた”異物”(抗原)の“目印”を樹状細胞に記憶させることで、実際にターゲット(特定のウイルスや細菌)が侵入した場合に攻撃する。ターゲットを切り替えれば、新型コロナウイルスの変異種(直近のオミクロン株が好例)をはじめ、いまだ有効なワクチンや治療薬が確立していない感染症や多様な疾病に対応したワクチンや治療薬の迅速な開発が可能となる。同社のコア技術は「免疫細胞」であり、同技術をベースに既存のがん細胞治療分野から感染症分野、さらにアンメット・メディカルニーズ対応新薬開発への道筋が開かれ、このビジネスモデルが国内外の医療機関や製薬業界に高く評価されれば、同社の企業価値がさらに高まるものと弊社では期待している。
■Key Points
・2021年9月期は「CDMO」事業でヤンセンファーマより製造受託を獲得。これにより細胞加工業はがん免疫細胞加工の“1本足打法”から事業環境に左右されないバランスのとれた事業構造を構築
・細胞加工業は2023年9月期黒字化を目指す。2022年9月期は足場固めの段階
・再生医療等製品(研究開発・事業化)は「慢性心不全治療薬」と「新型コロナウイルスワクチン」に資源集中
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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