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メディネットのニュース
■会社概要
2. 事業概要
(1) 事業ポートフォリオ
メディネット<2370>では木村・江川体制のもと、瀬田クリニック東京をがん免疫細胞治療の拠点として「免疫細胞療法総合支援サービス」の単体事業を推進してきた。2014年11月「再生医療等安全性確保法」及び「医薬品医療機器等法」が施行されたことにより、従来事業のコアを成していた「免疫細胞療法総合支援サービス」から細胞加工業へ転換し、さらに再生・細胞医療分野の再生医療等製品開発に乗り出した。背景には、免疫細胞療法総合支援サービスだけでは事業拡大の限界を感じており、再生医療等製品の開発が不可欠という考えがあったためだという。同社の“両利きの経営”は緒に就いたばかりでこれからいくつも高い壁を乗り越えて行かねばならない。これからの同社の手腕に注目したい。
(2) コア事業としての細胞加工業
細胞加工業では、主な顧客(医療機関、大学、研究機関などのアカデミア、製薬関係企業など)から臨床用、治験用の再生医療等製品や治験用の製品製造受託及び細胞培養加工施設の運営受託などを含めた関連サービスを行ってきた。また、顧客との関係構築のために、細胞加工技術者派遣、細胞培養加工施設の製造品質体制に対する教育、新規細胞培養加工施設の設計・据付のコンサルティングなどを付随サービスとして行っている。この20年間の細胞加工累計件数は約18.8万件(2021年3月末)と膨大な実績を有する。
2014年に施行された「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、2015年5月に品川細胞培養加工施設は「特定細胞加工物製造許可」を取得した。免疫細胞治療にかかる細胞加工に加え、体細胞・幹細胞・iPS 細胞などの多様な細胞加工の製造開発を受託することを視野に入れた特定細胞加工物の製造受託や、再生・細胞医療製品の開発から商業生産まで対応が可能となった。これに伴い、同社は医療法人社団滉志会※に対して3つの細胞培養加工施設(新横浜、大阪、福岡)を提供し、免疫細胞療法総合支援サービスを行っていたが、従来の「免疫細胞療法総合支援サービス」契約を終了し、2017年9月に「特定細胞加工物製造委受託」契約に切り替えた。医家向けの細胞加工から再生医療等製品の製造まで実施することとなり、細胞加工業における製造体制の効率化を図るため、2019年4月までに各細胞培養加工施設を品川細胞培養加工施設に統合した。
※国内初のがん免疫細胞治療の専門機関である瀬田クリニックグループの組織。
(3) 「がん免疫細胞治療」が越えなければならない壁
がん免疫細胞治療は現段階で保険適用になっておらず“自費診療”となっている。保険適用に至るためのエビデンスデータの不足・未整備は否めない。実際に、同社の業績にも医師の自費診療に対する拒否反応が大きく影響している。「保険で認められていない治療は良くない」という見解によるもののようだ。
抗がん剤(保険適用)は患者の費用負担を軽減させることができる。しかしリスクもあり、治療に用いれば腫瘍は小さくできるものの、抗がん剤治療を継続するとがんに耐性ができることがある。耐性ができると徐々に治療の効果が薄くなり、がんは完全消滅せずまた腫瘍が大きくなってしまう。すると2nd、3rdラインの抗がん剤投与が始まり、最後には使用できる抗がん剤がなくなってしまう。一般的に標準治療では腫瘍が細胞レベルで完全に消失することはないと言われている。しかし、がん免疫細胞治療は体内に残存するがん細胞を細胞レベルで攻撃し、再発・転移を抑制させることを目的とする治療法で、標準治療(手術、放射線治療、抗がん剤)と併用すれば相乗効果も得られる。
前述のとおり、がん治療法の選択は主治医が行う。主治医の判断により、患者は手術、抗がん剤や放射線治療を受けるが、患者自身ががん免疫細胞治療も取り入れたいと思っているケースもあるようだ。しかし、保険適用外となる治療は行わない方針の主治医もいる。がん免疫細胞治療は現時点では“自費診療”であるが、これから保険承認されるために有償で臨床試験し、エビデンスデータを出していく必要がある。ただし、エビデンスデータの収集・蓄積には数年間に及ぶ時間を要することも事実である。最新の治療を保険診療として誰もが受けられるものとするためには、越えなければならない壁と言える。
(4) 戦略事業としての再生医療等製品事業
一般論として、「深化」は企業の事業収益の屋台骨を支えるものだが、「深化」だけを追求するとやがて成長の限界を迎えてしまう。そこに「探索」が加われば、自社が限界を迎える前に持続的成長を推進する選択肢を得やすくなる。企業総体としては、「深化」「探索」の両方(“両利きの経営”)があると良い。
同社でも、2003年東証マザーズ株式上場のころから再生・細胞医療の研究開発に着手、2017年には「再生医療等製品の製造販売承認」の取得を目指し、自家細胞培養軟骨(開発番号MDNT01)の日本国内での製造と販売のライセンス契約締結の事業化を目指すこととなり、再生医療等製品事業の原型が出来上がっている。現在は自家細胞培養軟骨を筆頭に、研究段階であるが「糖鎖修飾・代謝制御による免疫細胞の新規培養技術」で培養した免疫細胞を用いた再生医療等製品の開発(大阪大学との共同研究開発)、「慢性心不全治療に用いる再生医療等製品の実用化」(九州大学との共同研究開発)、「HSP105に関連したがん免疫療法」(国立がん研究センターとの共同研究開発)、「キメラ受容体遺伝子を導入した免疫細胞の開発」(京都府立医科大学との共同研究開発)などの研究開発を進めている。同社は、早期に製品化が可能な開発候補の選定を進める方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<EY>
2. 事業概要
(1) 事業ポートフォリオ
メディネット<2370>では木村・江川体制のもと、瀬田クリニック東京をがん免疫細胞治療の拠点として「免疫細胞療法総合支援サービス」の単体事業を推進してきた。2014年11月「再生医療等安全性確保法」及び「医薬品医療機器等法」が施行されたことにより、従来事業のコアを成していた「免疫細胞療法総合支援サービス」から細胞加工業へ転換し、さらに再生・細胞医療分野の再生医療等製品開発に乗り出した。背景には、免疫細胞療法総合支援サービスだけでは事業拡大の限界を感じており、再生医療等製品の開発が不可欠という考えがあったためだという。同社の“両利きの経営”は緒に就いたばかりでこれからいくつも高い壁を乗り越えて行かねばならない。これからの同社の手腕に注目したい。
(2) コア事業としての細胞加工業
細胞加工業では、主な顧客(医療機関、大学、研究機関などのアカデミア、製薬関係企業など)から臨床用、治験用の再生医療等製品や治験用の製品製造受託及び細胞培養加工施設の運営受託などを含めた関連サービスを行ってきた。また、顧客との関係構築のために、細胞加工技術者派遣、細胞培養加工施設の製造品質体制に対する教育、新規細胞培養加工施設の設計・据付のコンサルティングなどを付随サービスとして行っている。この20年間の細胞加工累計件数は約18.8万件(2021年3月末)と膨大な実績を有する。
2014年に施行された「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、2015年5月に品川細胞培養加工施設は「特定細胞加工物製造許可」を取得した。免疫細胞治療にかかる細胞加工に加え、体細胞・幹細胞・iPS 細胞などの多様な細胞加工の製造開発を受託することを視野に入れた特定細胞加工物の製造受託や、再生・細胞医療製品の開発から商業生産まで対応が可能となった。これに伴い、同社は医療法人社団滉志会※に対して3つの細胞培養加工施設(新横浜、大阪、福岡)を提供し、免疫細胞療法総合支援サービスを行っていたが、従来の「免疫細胞療法総合支援サービス」契約を終了し、2017年9月に「特定細胞加工物製造委受託」契約に切り替えた。医家向けの細胞加工から再生医療等製品の製造まで実施することとなり、細胞加工業における製造体制の効率化を図るため、2019年4月までに各細胞培養加工施設を品川細胞培養加工施設に統合した。
※国内初のがん免疫細胞治療の専門機関である瀬田クリニックグループの組織。
(3) 「がん免疫細胞治療」が越えなければならない壁
がん免疫細胞治療は現段階で保険適用になっておらず“自費診療”となっている。保険適用に至るためのエビデンスデータの不足・未整備は否めない。実際に、同社の業績にも医師の自費診療に対する拒否反応が大きく影響している。「保険で認められていない治療は良くない」という見解によるもののようだ。
抗がん剤(保険適用)は患者の費用負担を軽減させることができる。しかしリスクもあり、治療に用いれば腫瘍は小さくできるものの、抗がん剤治療を継続するとがんに耐性ができることがある。耐性ができると徐々に治療の効果が薄くなり、がんは完全消滅せずまた腫瘍が大きくなってしまう。すると2nd、3rdラインの抗がん剤投与が始まり、最後には使用できる抗がん剤がなくなってしまう。一般的に標準治療では腫瘍が細胞レベルで完全に消失することはないと言われている。しかし、がん免疫細胞治療は体内に残存するがん細胞を細胞レベルで攻撃し、再発・転移を抑制させることを目的とする治療法で、標準治療(手術、放射線治療、抗がん剤)と併用すれば相乗効果も得られる。
前述のとおり、がん治療法の選択は主治医が行う。主治医の判断により、患者は手術、抗がん剤や放射線治療を受けるが、患者自身ががん免疫細胞治療も取り入れたいと思っているケースもあるようだ。しかし、保険適用外となる治療は行わない方針の主治医もいる。がん免疫細胞治療は現時点では“自費診療”であるが、これから保険承認されるために有償で臨床試験し、エビデンスデータを出していく必要がある。ただし、エビデンスデータの収集・蓄積には数年間に及ぶ時間を要することも事実である。最新の治療を保険診療として誰もが受けられるものとするためには、越えなければならない壁と言える。
(4) 戦略事業としての再生医療等製品事業
一般論として、「深化」は企業の事業収益の屋台骨を支えるものだが、「深化」だけを追求するとやがて成長の限界を迎えてしまう。そこに「探索」が加われば、自社が限界を迎える前に持続的成長を推進する選択肢を得やすくなる。企業総体としては、「深化」「探索」の両方(“両利きの経営”)があると良い。
同社でも、2003年東証マザーズ株式上場のころから再生・細胞医療の研究開発に着手、2017年には「再生医療等製品の製造販売承認」の取得を目指し、自家細胞培養軟骨(開発番号MDNT01)の日本国内での製造と販売のライセンス契約締結の事業化を目指すこととなり、再生医療等製品事業の原型が出来上がっている。現在は自家細胞培養軟骨を筆頭に、研究段階であるが「糖鎖修飾・代謝制御による免疫細胞の新規培養技術」で培養した免疫細胞を用いた再生医療等製品の開発(大阪大学との共同研究開発)、「慢性心不全治療に用いる再生医療等製品の実用化」(九州大学との共同研究開発)、「HSP105に関連したがん免疫療法」(国立がん研究センターとの共同研究開発)、「キメラ受容体遺伝子を導入した免疫細胞の開発」(京都府立医科大学との共同研究開発)などの研究開発を進めている。同社は、早期に製品化が可能な開発候補の選定を進める方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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