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メディネットのニュース
■要約
メディネット<2370>は、「がん免疫細胞治療」領域のパイオニアとして走り続けてきた、創業26年を迎えるバイオベンチャーである。創業者である木村佳司(きむらよしじ)氏(現 代表取締役社長)と東京大学医科学研究所において、がんと分子免疫学の研究者であった故 江川滉二(えがわこうじ)氏(東京大学名誉教授)が出会い、当時認知されていなかったがん免疫細胞治療を、“患者さんのため”に新しい治療法を提供すべく、「免疫細胞療法総合支援サービス」(当時)という画期的な新しいビジネスモデルをデザインし、事業化するに至った。
1. 2021年9月期第2四半期の業績概要、2021年9月期通期の業績見通し
2021年9月期第2四半期の業績は、売上高274百万円(前期比45.7%減)、損益面では、営業損失が545百万円(前期は372百万円の損失)、経常損失が536百万円(同360百万円の損失)、四半期純損失が509百万円(同362百万円の損失)となった。細胞加工業において、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)での取引先医療機関におけるインバウンドの患者数が低迷、さらにCDMO案件の売上の期ずれなどがあり減収となった。
細胞加工業は、2019年9月期に初めて黒字化を達成したが、その後コロナ禍に伴い免疫細胞治療を受ける患者(特にインバウンド患者)が激減したため、大幅減収と赤字に逆戻りしてしまった。この先コロナ禍の終息の見通しがつかない現在、インバウンド患者依存の事業体質を改め、新たな市場や顧客創出を図る。「特定細胞加工物」では、細胞種や品目拡大に向けて既に新規の受託製造を開始している。また「CDMO※」では、前期一部の案件が期ずれとなっていたが第3四半期に売上計上が見込まれ、製造受託に向けた技術移転などを実施することにより第3四半期以降に売上回復・拡大を図りながら、早期の黒字回復を目指す。
※CDMO(Contract Development Manufacturing Organization)とはバイオ医薬品の受託開発・製造企業を指す。
2021年9月期通期の業績は売上高が前期比3.4%増の810百万円、営業損失が1,775百万円(前期は926百万円の損失)、経常損失が1,762百万円(同836百万円の損失)、当期純損失が1,768百万円(同842百万円の損失)を見込んでいる。
2. 再生医療等製品事業は「慢性心不全治療薬」と「新型コロナウイルスワクチン」に集中
再生医療等製品事業における開発パイプラインでは、「慢性心不全治療に用いる再生医療等製品の実用化」と 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防を目的とした自家樹状細胞ワクチンの開発」に優先的に資源集中して取り組んでいる。
最も期待されているのは、「慢性心不全治療薬」で九州大学医学部の筒井教授主導のもと、第I/IIa相臨床試験を実施し同社は治験製造面で支援している。次のステップとして、次相IIb試験の共同研究に向けて、治験製品の製造準備及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議(IIb相試験プロトコル、製造場所変更等)を開始した。同研究は市場や投資家からの関心が高く、臨床試験結果に注目が集まっている。
新型コロナウイルス感染症のワクチンは世界で開発競争が繰り広げられている。そのなかで同社はがん治療分野で独自開発した「自家樹状細胞ワクチン」のメカニズムを新型コロナウイルス向けに応用開発し、現在国立がん研究センターや慶応義塾大学と共同研究を進め、2021年中ごろを目途に第I相治験の開始を目指していたが、非臨床安全性試験の必要が出てきたため2022年以降の治験届を予定している。自家樹状細胞ワクチンは、ウイルス(SARS-CoV-2※)抗体の“目印”を記憶し、体内でウイルスに感染した細胞そのものを攻撃する。一部の細胞傷害性リンパ球は、細胞傷害活性を持ったまま宿主に記憶されるため、長期的予防効果が高いとされている。そして、この自家樹状細胞はがん治療分野で十数年前から実地医療現場で使用されており十分な安全性を有している。
※SARS-CoV-2:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスをSARS-CoV-2と言う。
また、同社では今回の新型コロナウイルス感染症だけに限らず、「樹状細胞ワクチンプラットホーム」構想を描いている。その仕組みとしては、体内に侵入してきた異物(抗原)の“目印”を樹状細胞に記憶させそのターゲット(特定のウイルスや細菌)を攻撃させる。ターゲットを切り替えれば、新型コロナウイルスの変異種をはじめ、いまだ有効なワクチンや治療薬が確立していない感染症(「SARS」「MERS」「エボラ出血熱」「ジカ熱」「デング熱」等)や多様な疾病(ウイルス性肝炎、HIV感染症等)に対応した迅速なワクチンや治療薬の開発が可能となる。同社のコア技術は「免疫細胞」であり、免疫細胞技術をベースに既存のがん細胞治療分野から感染症(ウイルスや細菌)分野、さらにアンメット・メディカルニーズ対応新薬開発への道筋が開かれ、このビジネスモデルが国内外の医療機関や製薬業界に高く評価されれば、同社の企業価値が高まるものと弊社では期待している。
3. エグゼクティブ人材登用によるマネジメント力強化
この度、経営力強化の一環として久布白兼直(くぶしろかねなお)氏を迎え入れ、2021年4月付で取締役副社長に就任した。久布白氏は、田辺三菱製薬(株)で天津田辺製薬有限公司の総経理等を歴任しており、グローバル医薬品での幅広い知見とネットワークを持つ。同社においては事業推進のリーダーとして期待されている。また、同社の弱点であった開発パイプライン管理や各開発案件の管理(進捗、資源配分、リスク対策等)なども大手製薬メーカーでのマネジメントノウハウや経験を生かし、マネジメント全般を統括することになる。
■Key Points
・細胞加工業の早期黒字回復
・再生医療等製品事業は「慢性心不全治療薬」と「新型コロナウイルスワクチン」に集中
・大手製薬メーカーで経験豊富なエグゼクティブ人材登用によるマネジメント力強化
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<EY>
メディネット<2370>は、「がん免疫細胞治療」領域のパイオニアとして走り続けてきた、創業26年を迎えるバイオベンチャーである。創業者である木村佳司(きむらよしじ)氏(現 代表取締役社長)と東京大学医科学研究所において、がんと分子免疫学の研究者であった故 江川滉二(えがわこうじ)氏(東京大学名誉教授)が出会い、当時認知されていなかったがん免疫細胞治療を、“患者さんのため”に新しい治療法を提供すべく、「免疫細胞療法総合支援サービス」(当時)という画期的な新しいビジネスモデルをデザインし、事業化するに至った。
1. 2021年9月期第2四半期の業績概要、2021年9月期通期の業績見通し
2021年9月期第2四半期の業績は、売上高274百万円(前期比45.7%減)、損益面では、営業損失が545百万円(前期は372百万円の損失)、経常損失が536百万円(同360百万円の損失)、四半期純損失が509百万円(同362百万円の損失)となった。細胞加工業において、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)での取引先医療機関におけるインバウンドの患者数が低迷、さらにCDMO案件の売上の期ずれなどがあり減収となった。
細胞加工業は、2019年9月期に初めて黒字化を達成したが、その後コロナ禍に伴い免疫細胞治療を受ける患者(特にインバウンド患者)が激減したため、大幅減収と赤字に逆戻りしてしまった。この先コロナ禍の終息の見通しがつかない現在、インバウンド患者依存の事業体質を改め、新たな市場や顧客創出を図る。「特定細胞加工物」では、細胞種や品目拡大に向けて既に新規の受託製造を開始している。また「CDMO※」では、前期一部の案件が期ずれとなっていたが第3四半期に売上計上が見込まれ、製造受託に向けた技術移転などを実施することにより第3四半期以降に売上回復・拡大を図りながら、早期の黒字回復を目指す。
※CDMO(Contract Development Manufacturing Organization)とはバイオ医薬品の受託開発・製造企業を指す。
2021年9月期通期の業績は売上高が前期比3.4%増の810百万円、営業損失が1,775百万円(前期は926百万円の損失)、経常損失が1,762百万円(同836百万円の損失)、当期純損失が1,768百万円(同842百万円の損失)を見込んでいる。
2. 再生医療等製品事業は「慢性心不全治療薬」と「新型コロナウイルスワクチン」に集中
再生医療等製品事業における開発パイプラインでは、「慢性心不全治療に用いる再生医療等製品の実用化」と 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防を目的とした自家樹状細胞ワクチンの開発」に優先的に資源集中して取り組んでいる。
最も期待されているのは、「慢性心不全治療薬」で九州大学医学部の筒井教授主導のもと、第I/IIa相臨床試験を実施し同社は治験製造面で支援している。次のステップとして、次相IIb試験の共同研究に向けて、治験製品の製造準備及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議(IIb相試験プロトコル、製造場所変更等)を開始した。同研究は市場や投資家からの関心が高く、臨床試験結果に注目が集まっている。
新型コロナウイルス感染症のワクチンは世界で開発競争が繰り広げられている。そのなかで同社はがん治療分野で独自開発した「自家樹状細胞ワクチン」のメカニズムを新型コロナウイルス向けに応用開発し、現在国立がん研究センターや慶応義塾大学と共同研究を進め、2021年中ごろを目途に第I相治験の開始を目指していたが、非臨床安全性試験の必要が出てきたため2022年以降の治験届を予定している。自家樹状細胞ワクチンは、ウイルス(SARS-CoV-2※)抗体の“目印”を記憶し、体内でウイルスに感染した細胞そのものを攻撃する。一部の細胞傷害性リンパ球は、細胞傷害活性を持ったまま宿主に記憶されるため、長期的予防効果が高いとされている。そして、この自家樹状細胞はがん治療分野で十数年前から実地医療現場で使用されており十分な安全性を有している。
※SARS-CoV-2:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスをSARS-CoV-2と言う。
また、同社では今回の新型コロナウイルス感染症だけに限らず、「樹状細胞ワクチンプラットホーム」構想を描いている。その仕組みとしては、体内に侵入してきた異物(抗原)の“目印”を樹状細胞に記憶させそのターゲット(特定のウイルスや細菌)を攻撃させる。ターゲットを切り替えれば、新型コロナウイルスの変異種をはじめ、いまだ有効なワクチンや治療薬が確立していない感染症(「SARS」「MERS」「エボラ出血熱」「ジカ熱」「デング熱」等)や多様な疾病(ウイルス性肝炎、HIV感染症等)に対応した迅速なワクチンや治療薬の開発が可能となる。同社のコア技術は「免疫細胞」であり、免疫細胞技術をベースに既存のがん細胞治療分野から感染症(ウイルスや細菌)分野、さらにアンメット・メディカルニーズ対応新薬開発への道筋が開かれ、このビジネスモデルが国内外の医療機関や製薬業界に高く評価されれば、同社の企業価値が高まるものと弊社では期待している。
3. エグゼクティブ人材登用によるマネジメント力強化
この度、経営力強化の一環として久布白兼直(くぶしろかねなお)氏を迎え入れ、2021年4月付で取締役副社長に就任した。久布白氏は、田辺三菱製薬(株)で天津田辺製薬有限公司の総経理等を歴任しており、グローバル医薬品での幅広い知見とネットワークを持つ。同社においては事業推進のリーダーとして期待されている。また、同社の弱点であった開発パイプライン管理や各開発案件の管理(進捗、資源配分、リスク対策等)なども大手製薬メーカーでのマネジメントノウハウや経験を生かし、マネジメント全般を統括することになる。
■Key Points
・細胞加工業の早期黒字回復
・再生医療等製品事業は「慢性心不全治療薬」と「新型コロナウイルスワクチン」に集中
・大手製薬メーカーで経験豊富なエグゼクティブ人材登用によるマネジメント力強化
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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