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【QAあり】大気社、量産ラインを想定したドライ加飾システムのデモラインが完成 カーボンニュートラル達成と成長戦略を推進

投稿:2024/12/13 13:00

目次

中川正徳氏(以下、中川):取締役専務執行役員の中川です。経営企画とサステナビリティ推進を担当しています。本日はよろしくお願いします。

本日は当社のIRセミナーをご視聴いただき、誠にありがとうございます。当社は、知名度に関しては高くない部分もあり、一般消費者向けの商品やサービスを提供しているわけではありません。この機会にしっかりとご理解いただけたら幸いです。

スライドは目次です。本日は当社の事業内容、業績、株主還元についてご説明します。

会社概要

中川:当社の事業をご紹介する前に、当社の概要をご説明します。当社は大正時代にできた、今期で創業112年目となる老舗企業です。株式は東証プライム市場に上場しており、業種は建設業に属しています。

事業内容としては、大きく分けるとビル空調設備、産業空調設備、そして自動車塗装システムの設計・施工の3つを行っています。

スライド右下の図のように、建物の中でも見えない場所に配置されている設備を手がけています。なかなかイメージが湧かないかと思いますが、人間の体にたとえると、皮膚あるいは骨格に相当するのが建物で、内臓や血管に相当するのが我々の携わっている設備です。

いくら見た目が立派な建物でも、血管である設備が健全でないと、建物として十分に機能しません。当社の事業は、みなさま方の日常生活であまり目に触れる機会がないかもしれませんが、重要な役割を担っています。

長期業績推移

中川:当社の上場以来の業績の推移です。当社はいわゆる受注産業で、市場環境の影響を一定程度受ける傾向にあります。

バブル期には威勢よく業績を伸ばしましたが、バブル崩壊の時に業績が横ばいとなり、その後、リーマンショックがありました。そのため一時期、業績が厳しい面はありましたが、それ以降、国内外における設備投資の積極的な拡大の波に乗ることで、利益水準は上昇基調を保っています。

事業の全体像

中川:スライドは当社の事業の全体像を示しています。当社はエネルギー、空気、水のエンジニアとして、最適な環境作りというキーワードをもとに事業を拡大してきました。それが現在でも当社のコア事業となっています。

ビル空調、産業空調、塗装システムも、112年の歴史の中で、技術の探求を通じてコアビジネスとして確立してきました。そのコアビジネスから、スライドにあるような事業にさらに拡大していきます。

また、当社は早くからグローバルに、世界を相手に挑戦し続ける会社です。当社のビジネスフィールドはさまざまな分野、国、地域にまたがっています。事業の具体的な内容やグローバル展開については、後ほど順にご説明します。

事業分野① ビル空調設備

中川:当社の3つの事業分野についてご説明します。まず、ビル空調分野です。こちらはオフィスビルなどの施設において、人が快適に過ごすための空調設備が対象となります。主にゼネコン、不動産会社などがお客さまです。

競合他社としては、大小さまざまな空調設備会社や、一部の電気設備会社も競合するケースがあります。当社の業界内の立ち位置としては、建築を担うゼネコンの下に入るケースが一般的です。

当社は空調設備の設計・施工管理を行い、選定した機器などはメーカーから調達して、配管、ダクト、機器の据付などは工事業者に依頼しています。

市場環境については、都心の再開発計画など、建設需要は底堅く推移しています。

事業分野② 産業空調設備

中川:続いて産業空調分野です。こちらは電子部品や医薬品などの工場におけるクリーンルームなど、モノづくりのための空調設備が対象です。主に電子部品メーカー、製薬会社などがお客さまとなります。

競合他社は、求められる技術水準が高いことで、当社と同じ規模の空調設備会社に限られます。小規模な空調設備会社や電気設備会社では、技術的なハードルから参入が難しい場合がある点がビル空調分野との大きな違いです。

当社の業界内での立ち位置としては、メーカーから直接仕事を引き受けるケースが多く、その点でもビル空調分野と大きく違います。

市場環境については、半導体関連メーカーや製薬会社において、積極的な設備投資が継続して行われています。また、近年、EV電池メーカーの投資も増加している状況です。

日根野健氏(以下、日根野):産業空調分野は、工場の空調を作るということだと思いますが、この分野の事業環境や将来的な成長性はどのような状況でしょうか? 

中川:まず事業環境は、当社では近年、電気・電子部品などの半導体関連、あるいはEV電池関連の比率が高くなっています。

最終製品の需要にはアップダウンがありますが、お客さまは長期を見据えて積極的な投資を継続しており、我々も長期的視点からその需要を着実に取り込んでいるという背景があります。

日根野:半導体やEVの工場が建設される時に、大気社の空調設備が組み込まれていくのでしょうか? 

中川:そのとおりです。

成長性については、電気・電子部品メーカーや製薬会社の工場空調において、高い技術力と優位性を持っています。参入障壁が高く、採算性を確保しやすいことから、この分野でさらなる技術革新と事業拡大を目指しているところです。

また、当社は台湾の半導体メーカーであるTSMCの熊本県での大きな実績を足がかりとして、九州を中心とする東アジアをメインに事業を拡大しています。その他地域においてもM&A、資本投下、業務提携などを活用し事業を拡大していきます。

事業分野③ 塗装システム

中川:続いて、塗装システム事業です。こちらは国内外の自動車メーカーをはじめとした、さまざまな塗装の工場が対象となっています。当社は同事業において世界第2位の売上高を誇っています。

「空調の会社がなぜ自動車の塗装をしているのか?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。自動車の美しい塗装の仕上がりには、ブース内の空気にほこりや塵がないクリーンな状態であることが必要不可欠なのです。そこに当社の伝統的な空調の技術が活かされているという関係性になります。

当社の業界での立ち位置としては、さまざまなパターンがありますが、当社が建築を含めて塗装工場を一括で請け負える点が空調設備との大きな違いです。

市場環境については、自動車メーカーにおいてさまざまな地域で投資が活発化しています。そのため各地でいろいろと積極的な受注があり、それに対してできるだけ、キャパシティも考えながら対応しているところです。

日根野:世界2位とは、すごいですね。

中川:ただし、世界2位と言いながら、1位とはかなりギャップがあります。

日根野:追い上げていっている状況でしょうか?

中川:なかなか難しい部分もありますが、そのような状況です。

ここで設備投資と塗装システム事業の競合についてご説明します。設備投資に関しては、インドや北米が成長分野で、そのような成長的な地域においてCO2を削減するカーボンニュートラルのようなニーズを捉えながら、地域的な拡大も行っています。

塗装システム事業に関しては、ドイツにDurrという大手エンジンアリング会社があります。こちらは欧州のメーカーに非常に強いネットワークがあるため、Durrは欧州のメーカー、当社は日系メーカーというかたちですみ分けをしてきました。

今、当社も欧州に再上陸しており、今後、そのような欧州のメーカーにも拡大していくことを考えています。

日根野:将来的な事業展開や、事業の成長性はいかがでしょうか? 

中川:成長性については、自動車業界の成長性とリンクしてきます。やはり車だけでは、景気の動向や自動車メーカーのアップダウンに影響を受けるため、ボラティリティが高いです。したがって当社としては、事業ポートフォリオの多様化が命題で、日系だけではなく欧米の非日系のメーカーにも取り組んでいきます。

あるいは車だけではなくて、航空機や鉄道、建設機械のような分野、あるいは二輪車に事業を拡大して多角化しようと、成長性のロードマップを描いているところです。

当社の自動車塗装の特長

中川:当社の特徴について、4点ほどご説明します。

1つ目は、当社が塗装システム事業で世界第2位の売上高を獲得している要因についてです。まずは自動車生産工場の全体像です。建屋ごとに製造工程が分かれており、この工程は各メーカーともほぼ同じ構造になっています。

鉄板を加工するプレス工場、車のボディをつなぎ合わせる溶接工場、車の色を塗る塗装工場、エンジンやタイヤを取り付ける組立工場があり、これらを経てすべての検査に合格した車がお客さまの手に届きます。当社はその中で、塗装工場の設計・施工を行っています。

塗装工場内においては、まずボディ表面の汚れを落とし、塗料の密着性を上げる前処理を行います。次に錆を防ぐための防錆塗装です。その上で、電流を流したプールで均一に塗装する電着塗装工程があります。その次に、色がより美しく見えるための中塗り、最後に実際の色を付ける上塗りという工程です。

この一連の工程を経て、美しい塗装の仕上がりを実現させています。各工程では塗料を乾かすことで塗膜にする乾燥工程もあり、塗装工場1つをとってもさまざまなプロセスがあります。

工場の建設においては、塗装を行う塗装ブースの他に、その中に設置されるコンベヤ、塗装用のロボットなどが含まれており、当社はこれらを一括して請け負うことができます。

このように、当初はトータルエンジニアリングの会社としての優位性をもって、塗装の分野で世界第2位の売上高を誇っています。

高度な技術力による競争優位性①

中川:特徴の2つ目は、高度な技術力による競争優位性です。スライド右の円グラフは、前期の受注工事高における事業分野ごとの内訳です。産業空調分野と塗装システム事業は、ビル空調分野に比べて割合が若干高くなっています。

当社の受注の約9割を占める産業空調分野と塗装システム事業は、高度な技術力が求められるために参入障壁が高く、比較的収益性が高いという特徴があります。当社はスライド左の表に記載のようなメーカーの求める技術において、他社に対して競争優位性を保っています。

お客さまごとにニーズが異なるため、それにきめ細かく応え続けていくことで、両事業分野で高い受注比率を確保しているのです。

日根野:受注高の約半分が産業空調です。こちらは工場の空調だと思いますが、御社の強みとして「他社に比べてここがすごい」というポイントを教えていただけますか? 

中川:半導体や医薬品の製造はやはり、ほこりや塵がないクリーンルームなどの高い技術力が求められる分野です。

例えば半導体においては、ハイレベルな清浄度や、超精密な温度の制御など、最先端の製造環境が必要になります。また、半導体の製造工程では、有機溶剤を使用するために、排気の処理や廃液の処理などのユーティリティ設備をあわせて請け負っています。

一方で医薬品においては、人の命が関わることのため、完全無菌の環境が求められます。そこでは、製造プロセスごとにクリーン度を分けるため、部屋の中の気圧をうまくコントロールする室圧制御技術が必要になります。

当社は以前から、半導体をはじめとした電気・電子関連や製薬などの比較的高い技術を追求してきました。歴史的に長い間、このようなさまざまなお客さまの設備を提供し、継続してきた対応力、そして提案力が当社の強みだろうと思っています。

日根野:空気をきれいに保つこと以外に、温度や排気したものの管理までトータルに求められるのですね。

中川:1つずつというよりトータルでのエンジニアリング、すなわち総合力が1つのキーワードです。何か1つの特許で対応するのではなく、そこには歴史的な背景がDNAとして流れているのかと思います。

日根野:エンジニアリングのため、言われたとおりに作るのではなく、設計する部分まで含まれるのですね。他社にはなかなか真似できなさそうです。

また、売上の約3分の1を占める塗装システム事業に関して、他社と比べた大気社の強みはどのようなところにありますか? 

中川:車の塗装については、日本では実質的に当社ぐらいしか大きく扱っておらず、ニッチでありながら参入障壁のあるところです。

強みとしては、先ほどご説明したプロセスを1つずつではなく、工場全体におけるターンキー受注ができることです。案件によっては分離発注の形態もありますが、そのような場合には競合する会社が多くなります。

また、私はサステナビリティ担当役員で、最近はCO2の削減提案が非常に強く求められていると感じます。そのようなところで付加価値の高い技術を提供し、さらなる優位性を確保するとともに、参入障壁を高めていくことも強みとしてあるかと思います。

日根野:工場全体を受注できるため、発注する側はお願いするのが簡単で、工期が短くなるなどのメリットがありますね。

中川:ただし、お任せいただくために品質保証等の責任も重大になってきます。そこはしっかり行っていかなければいけません。

高度な技術力による競争優位性②

中川:環境システム事業で高度な技術を求められた例をお話しします。半導体の受託生産の世界最大手、TSMCの熊本県菊陽町に建設した日本で初めてとなる生産拠点の建設工事において、当社がサプライヤーとして参画しました。クリーンルームや生産排気処理などの主要設備工事を担当し、工場はすでに完了しており2月24日に開所式が行われました。

過去に類のない大型で短い工期の建設工事において無事、工事を完了でき、当社の可能性が広がりました。また、社員も大きくチャレンジし、それがうまくいったことで自信につながったと思います。

このような経験を活かし、これまで以上に成長を続ける半導体市場において、国内外のお客さまに対する存在感をますます高めていきたいと思っています。

強力なグローバルネットワーク 海外事業への注力

中川:特徴の3つ目は、グローバルなネットワークが強力であることです。海外進出は早く、1971年にタイに初の海外子会社を設立しました。現在は800名から900名と多くの従業員がいます。こちらを含め、19ヶ国に28の海外連結子会社を有しています。

当社は海外拠点数と海外の受注高比率が、建設業の中では極めて高いのが特徴です。また、拠点ごとに現地スタッフを採用しており、多くのナショナルスタッフが活躍できる拠点運営を進めています。それにより、現地の顧客サポート体制と現地化の推進によるコスト競争力を生み出しています。

現在、従業員は連結で5,100名から5,200名で、実は日本人はそのうちの3割です。グローバルに、地球の裏側でもいろいろとマネジメントをしており、特にブラジルなどでのマネジメントはなかなか大変です。そのような意味で、7割を占めるナショナルスタッフの潜在的な力を引き出していくことに成長の可能性があるのではないかと考えています。

昨年から新社長が就任しましたが、ここをいかに我々の成長戦略につなげていくかがキーポイントだろうと思っています。今後はそれを可能にするようなM&Aも積極的に行っていきたく、4月以降にできる新中期経営計画の中での1つの軸になるかと思っています。

日根野:このグローバル展開は、御社の非常に特徴的な部分だと思います。進出する時期が早かったこともあり、建設業はほぼ国内ビジネスばかりという中で、グローバルの売上高がかなり大きいです。かなり早くからグローバル展開に注力されたのには、どのような背景があるのでしょうか? 

中川:グローバルの売上高は半分ぐらいで、多い時は6割ぐらいありました。当社は大正時代に創業し、創業メンバーにはドイツ人がいました。実は主要な技術者はドイツから招いているのです。さらに株主がグローバルだったこともあり、そのようなDNAを持っているのです。

当社の歴史の中で、創業十数年ぐらいの時にヘボン式の複式簿記がドイツ語で出てきたのを見て驚きました。戦後は海外に出ていき、紡績産業や自動車産業のお客さまについていきビジネスを拡大してきています。

直近のM&Aの事例としては、空調の環境システム事業として、2020年7月にインドのハイデラバードにあるNicomac Taikisha Clean Roomsというパネルの製造会社を子会社化しました。現在、100パーセント子会社となっています。同社は大手製薬会社への高いブランド力と、日本で医薬品向け工場の豊富な実績があります。

このような経験・知見を組み合わせて、インドにおいて付加価値が高いクリーンルーム建設事業を行い、事業拡大戦略を一層推進していきます。やはり成長率が高いため、今、日本企業もこぞってインドに行っています。難しいマーケットではありますが、スズキと一緒に塗装事業で行ったこともあり、当社としては20年以上の歴史があります。

塗装システム事業は、北米を中心にインド、中国でも拠点展開をしています。先ほどご紹介したドイツにも拠点を置き、7月にスタートしました。

当社売上高の海外比率は50パーセント前後で、北米やインドについては受注が伸びており、潜在的な成長力もあります。これまで日系企業中心で品質安全を確保してきたのですが、今後はやはり非日系の企業に展開していくことが非常に大事だと思っています。

そのために我々もR&Dを含めた技術開発やグローバルな品質管理、グローバルな調達構造などにおいて、基盤をもう少し整備しながら経営していかなければなりません。次の中期経営計画では、その周辺の基盤の強化、あるいはデジタル化が1つのキーワードとなって検討されているところです。

日根野:海外展開も産業空調と塗装システムの両面から展開していくのですね。

中川:そのとおりです。

市場環境の変化に対する高い柔軟性

中川:市場環境の変化に対する高い柔軟性についてです。環境の変化によって多少のアップダウンはありますが、リスク分散が効いているかと思います。その他、固定費負担が少なく、複数の事業分野を超えてフレキシブルに人を動かすことができる柔軟性があります。

1974年に東証に上場して以来、経常赤字に陥ることは一度もなく、このようなフレキシビリティがあるところが我々の強さかと思っています。

事業領域拡大① 完全人工光型植物工場

中川:成長戦略としての環境貢献についてお話しします。環境システム事業の空調は、産業空調分野で培った空調技術を活かし、完全人工光型の植物工場にも取り組んでいます。栽培エリア内の温度のムラを解消することで、均一な品質の野菜工場を実現でき、天候に左右されずに無菌の野菜を作ることができます。

さらに、水耕栽培で土を使わないため、衛生的で生菌数が少なく日持ちします。したがって食品ロスの削減にも効果的で、これはサステナビリティに通じるものです。

事業を通じた社会・環境貢献①

中川:環境貢献についてです。塗装システム事業では高い環境目標を設定している自動車メーカーの要望に応えるため、やはりカーボンニュートラルは外せません。

1つ目としては、従来行っているCO2を減らす生産技術、2つ目として再生可能エネルギーや水素利用などの一次側のエネルギー革新への対応、そして3つ目として、生産技術の変化に対応するための技術革新、開発R&Dを柱として掲げています。

具体例としては、スライド左側にあるように、自動車の塗装工場の塗料散布を極力抑える塗着効率の高いシステムの開発をしています。また、スライド右側にあるような、従来のスプレー塗装に代わって、ドライ加飾という、車体ボディフィルムを加飾することにより塗ることからの脱却を目指した技術革新を行っています。

ドライ加飾システムは、従来のスプレー塗装であるウェット塗装に代わり、フィルムを貼り付けることで加飾する新しい方式です。自動車外装フィルムの加飾には、空気の圧力を利用して貼り合わせたり、転写したりする方法があります。バンパーのような複雑な形状の部品にもフィルムを貼り付けることができるため、樹脂や鋼板の製品にも対応できるものです。

次に、ドライ加飾システムのイメージ動画をご覧ください。

事業を通じた社会・環境貢献②

中川:このドライ加飾の採用によって、従来に比べてCO2やエネルギーの使用量の大幅な削減が可能であり、環境負荷を低減できます。

また、ウェット塗装に必要なブース、空調、乾燥炉、排水設備、塗料循環設備などの大きな設備が必要でないため、設備のコスト、設置スペースを低減できるとして、各自動車メーカーから大変多くの関心が寄せられています。

2023年には、ドライ加飾に関する当社グループ企業の共同研究が、外部機関の評価を受け、今年11月に自社研究所内に量産ラインを想定したドライ加飾システムのデモラインが完成しました。11月29日付で当社ホームページにてニュースリリースを出しています。

業績推移

中川:業績の推移です。新型コロナウイルス感染症の影響などによる多少のアップダウンはありながらも、右肩上がりの成長をしています。

2025年3月期 第2四半期(中間期)決算ハイライト

中川:2025年3月期の中間決算の業績です。市場環境については、国内市場では半導体関連、自動車メーカーによる投資が継続しています。また、都市圏における再開発の需要も堅調に推移しています。

海外市場では、各メーカーによる設備投資が堅調に推移しています。業績面でも、多少のアップダウンはありましたが、受注工事高は増加しています。

2025年3月期 第2四半期(中間期)事業別 受注工事高

中川:スライドに受注工事高の事業別の推移を前年同期比でまとめています。塗装システム事業では、前年同期に北米で大型案件の受注があったことの反動により減少しましたが、環境システム事業では増加しています。受注工事高合計は前年同期比9億円増の1,281億円となりました。

2025年3月期 第2四半期(中間期)事業別 完成工事高・経常利益

中川:完成工事高・経常利益の事業別の推移です。完成工事高については、塗装システム事業で繰越工事高が非常に順調だったため増加しています。環境システム事業は、前年の反動で減少しています。完成工事高合計は前年同期比157億円減の1,146億円となっています。

経常利益については、完成工事高の増加・減少に伴い、塗装システム事業では利益が増加しました。環境システム事業では利益が減少しています。経常利益合計は前年同期比10億円減の70億円となっています。

2025年3月期 業績予想

中川:通期業績予想です。前期は、TSMCをはじめ大型物件の完成がありましたが、今期はそれらが剥落するため、一時的に減収減益となる見通しです。

一方、受注については、手持ちの工事量の大幅な増加に伴い、前期は受注量の調整を行ってきましたが、今期は大型の受注の手持ち工事量の消化が進んだことと、両事業ともに比較的市場環境が好調であることから、受注に関してはおおむね順調にいくと予測しています。通期の受注工事高は、過去最高の2,886億円に近い、2,800億円を見越しています。

株主還元①過去の配当方針

中川:株主還元についてです。過去の配当方針としては、配当性向による目標を掲げており、2011年から順調に利益を伸ばして10期連続増配となりました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で一時的に減配になった時期もありましたが、2011年3月期の年間配当30円から2022年3月期の100円まで、着実に増配基調を継続してきました。

株主還元②配当方針の新基準DOE

中川:その後、現中期経営計画では、従来の配当性向を基準とした目標から、連結自己資本配当率(DOE)を基準としました。これにより配当額は、自己資本の金額に3.2パーセントを掛ける算定方式に変わっています。

DOEは、当社の事業特性と親和性があると考えています。現在、自己資本比率は2024年3月期の実績で54パーセントと高い水準を維持しています。また、上場以来、経常赤字に陥ったこともありません。よって、DOEについては、当社の事業が全体的に安定しているという特徴と親和性があると思っています。

株主還元額と総還元性向の推移

中川:自己株式の取得についてです。現中期経営計画期間において70億円の自己株式取得を予定しており、2023年3月期に30億円、2024年3月期に20億円、2025年3月期に20億円と順調に実施しています。

本日のまとめ

中川:本日のまとめです。事業の安定性・成長性については、当社には歴史があり、安定した成長を継続しています。その安定したベースの上で新しいことにチャレンジしており、リスク分散が効いた状況で事業拡大をしています。

財務体質としても、経常赤字がなく、自己資本比率が54パーセントという健全な状況です。そのあたりを評価していただければと思います。

株主還元については、自己株式取得・DOE導入と、引き続き高い総還元性向をお約束したいと考えています。ぜひご期待ください。

質疑応答:株式分割について

日根野:「株価水準がおおむね4,000円台から5,000円台で、非常に上昇しています。個人投資家からすると100株単位での売買になるため、株価4,000円の場合は40万円から50万円となり、1単元がやや高く感じます」というご意見です。将来的に株式の分割などを検討される可能性はありますか? 

中川:株式分割に関しては、一般投資家からさまざまな多数のご意見をいただいています。今後、新しい中期経営計画において、そのあたりは十分考慮していきたいと考えています。

質疑応答:サステナビリティ推進について

日根野:「中川さんはサステナビリティ推進担当ですが、具体的に注力している事項があれば教えてください」というご質問です。 

中川:サステナビリティについては、非常に範囲が広いため、いくつかのポイントがあると思います。経営の重要な課題としては、GHG排出量の削減や、そのためのプロセスの明確化です。

加えて、執行役員側で社長をヘッドにして「サステナビリティ推進委員会」を作りました。さらに社外取締役を委員長として「サステナビリティ委員会」を作り、取締役が委員会として推進委員会をモニタリングしています。

当社では、気候変動のリスク、あるいは機会の管理で、GHGの排出量だけでなくエネルギー消費量、水使用量、あるいは廃棄物の排出量などの指標を設定して、さまざまな対応を行っています。

環境システム事業においては、今期、神奈川県愛甲郡愛川町にある当社技術開発センターをリニューアルしました。「TAIKISHA INNOVATION SITE AIkawa」として稼働を開始しており、低炭素化に寄与する研究開発、検証の実験、シミュレーションなどを推進していきます。

一方で、塗装システム事業においては、従来行っているCO2を減らす生産技術であるドライ加飾の開発も進んでおり、カーボンニュートラル達成に向けて邁進していきます。このあたりは統合報告書をご参考にしていただければと思います。

質疑応答:メンテナンス需要について

日根野:「ビル空調分野や産業空調分野における工場の空調、塗装システムなど、それぞれの工事の需要についてお話しいただきました。それらが完成した後、メンテナンスをするという需要はあるのでしょうか?」というご質問です。

中川:メンテナンス需要は当社の収益源となっています。ビル空調、産業空調、塗装システム、いずれの分野においてもリニューアルの需要は発生します。

一般に想像する機器のメンテナンスは、機器メーカーが対応します。そのため、当社はテナントの変更に伴う改修の工事、あるいは生産ラインの変更に伴う改修の工事など、リニューアルの工事を行っていきます。

新築とリニューアルにおいて、当社として特別にその2つの割合を定めているわけではありませんが、一定程度の割合で推移してバランスを取っています。新築時に当社が施工を行うことで、リニューアルの受注につながることが一般的です。産業空調分野では、お客さまの工場の近くにサービス基地を置き、いつでも対応できる体制を構築しています。

質疑応答:工事の期間について

日根野:「産業空調や塗装システムなどの工事を受注してから、竣工するまでの期間としてのリードタイムはどれくらいですか?」というご質問です。 

中川:お客さま、あるいは工場の大きさによって違いますが、ビル空調についてはおよそ2年から3年です。

日根野:かなり長いですね。

中川:産業空調分野については、お客さまの需要、特に半導体は急いで生産を拡大しなくてはいけない場合もあるため、比較的短く、1年から長くても2年くらいです。車の塗装についても、同じく「早くやってほしい」というお客さまの要望が多いため、産業空調分野と同じく1年から2年くらいです。

日根野:ビジネスのフローとしても、ビル空調分野と産業空調分野とでは若干流れが違うと思います。ビル空調分野の場合は、ゼネコンの下に入るケースが多いのですか? 

中川:おっしゃるとおりです。ビル空調分野においてはそちらが一般的です。産業空調分野は、携わる工場において一番重要な生産ラインがあるクリーンルーム部分を担当します。そこでお客さまの生産設備を理解して、最適な提案を行っていきます。したがって、お客さまとの日頃からの関係性が重要です。

質疑応答:塗装システムの受注について

日根野:「塗装システムは、御社が施主から直接受けるかたちで、ビル空調分野のように間にゼネコンが入らない流れが多いのでしょうか?」というご質問です。 

中川:そのとおりです。ただし、分離発注などさまざまな形態があるため、必ずこの立ち位置になるわけではありません。

過去に、日系の自動車メーカーが海外に工場を建設する際に同行して、業者の選定からすべてを請け負うことで知見を高めました。それにより、工場全体の全プロセスを一括で、ターンキーで請け負うことができるような体力、ノウハウが培われてきた背景があります。

日根野:より御社のノウハウが高く評価されているのですか? 

中川:そのとおりです。このあたりはどうしても一過性で、一概には難しいのです。そこが参入障壁となって付加価値の根底につながっていると考えています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:塗装システム事業における欧州への展開はどのくらいのシェアが獲得できるとお考えですか?

回答:今年7月にドイツに拠点を設立し、現在は欧州市場において欧州顧客との関係を構築するフェーズです。具体的なシェア目標を掲げてはいませんが、欧州は今後も成長が見込まれる市場であるため、当社の環境負荷低減技術を始めとした付加価値の高い技術を提案することで、シェア拡大を目指していきます。

<質問2>

質問:塗装工場の建設はどのくらいの期間がかかるものなのでしょうか?

回答:プロジェクトの大きさにもよりますが、1年から2年程度のものが一般的です。

<質問3>

質問:塗装システム事業において事業ポートフォリオの多角化による利益平準化推進をお話しいただきましたが、現時点で売上貢献度、利益貢献度の観点からどの程度進んでいるか教えてください。

回答:航空機、鉄道、建機などの自動車以外の塗装システムの実績もありますが、足元で自動車塗装の市場環境は良好であり、塗装システム事業は過去最高水準の受注高で推移しているため、業績貢献の観点では限定的です。ポートフォリオの多角化は来期より始まる次期中期経営計画から順次図っていきます。

<質問4>

質問:数年後には受注の内訳に変化が起こる可能性はあるのでしょうか? それとも変わらないのでしょうか?

回答:今後も当社の強みである高度な技術力が求められる産業空調分野、塗装システム分野に注力していく方向性は変わらないため、現時点では、ここ数年間の時間軸で大きな変化が起こることは想定していません。過去においても市場が伸びている分野に注力し、市場の変化に対応してきたため、今後も市場環境に合わせて、成長する領域の受注を伸ばしていくことを考えています。

<質問5>

質問:新たな海外進出先は決定しているのでしょうか?

回答:塗装システム事業では今年7月にドイツに拠点を設立し、欧州への拡大を図っていきます。それ以外の海外への事業展開につきましては、伸びる市場・分野・地域を定め事業拡大を図っていきます。

<質問6>

質問:中国車メーカーなど、新興メーカーの実績はあるのでしょうか?

回答:中国車メーカーのほか米国EVメーカーなど新興メーカーについても実績があります。

<質問7>

質問:海外展開を拝見して、「中国」の文字がないことに気づきましたが、中国には需要がないのか規制等の障壁があるのか教えてください。

回答:当社は塗装システム事業において日系自動車メーカーの中国進出に合わせ中国に進出し、拠点を設け事業を継続しています。また、環境システム事業においても大気汚染に対する環境対策として工場排気を無害化する排気処理装置の需要を捉え事業展開をしてきました。足元で経済に減速感がありメーカーの投資控えが起こると考えているため、中国市場の拡大は見込んでいませんが、お客さまが生産拠点を移すことがあれば、当社のグローバルネットワークにより対応が可能でありポジティブな側面もあるとご理解ください。

<質問8>

質問:EV化が進むことの御社のビジネスへの影響を教えてください。

回答:塗装システム事業では、ガソリン車でもEV車でも車体を塗るということには変わりはありません。顧客の多角化につながり、さらに販売台数が増えれば、当社にはポジティブな影響があります。すでにEVメーカーの実績もあります。また、EV電池工場は高い技術が求められるドライクリーンルームが必要であり、環境システム事業でも大きな恩恵が受けられます。こちらもすでに実績があります。

<質問9>

質問:今後数年間の事業環境の見通しを、環境システム事業、塗装システム事業についてそれぞれ教えてください。

回答:日根野さまへの回答と重複する部分がありますが、環境システム事業のビル空調では都心の再開発など、産業空調では電気電子部品を中心に良い状態が続くと考えています。塗装システム事業では、半導体不足等が解消し、欧米やインドにおいて高い水準で設備投資が継続していくと見込んでいます。

<質問10>

質問:受注から竣工までの期間、その間にインフレした場合の価格転嫁はできるのでしょうか?

回答:受注時に、インフレによる資材・労務費の高騰を一定程度織り込んでいます。また、契約締結後に大幅な物価変動があった場合に請負金額の変更を請求できるスライド条項を盛り込む対策を行っています。

<質問11>

質問:ドライ加飾の場合、フィルムが大きく剥がれる心配はないのでしょうか? 今までの技術と変わらないのでしょうか? シールのような塗装イメージなので、そこを懸念しています。

回答:技術的な内容のご説明は控えますが、エンドユーザーと協議を行い、定められたスペックを満たす設計をしています。

また、市場投入前にはエンドユーザー、フィルムメーカーの製品耐久性試験を実施し、エンドユーザーの基準に合致したものを展開しますので、品質上の問題はありません。

<質問12>

質問:新しい加飾システムは環境面、生産設備面から見て魅力的に映りますが、今後自動車以外のビル、宇宙工学、発電、細かな消費財などの用途に広げることは考えられていますか?

回答:塗装システム事業では従来から自動車関連のお客さまが多いため、まずは自動車業界を中心に導入を進めていますが、他の業界のお客さまからも関心を寄せられており、今後は自動車以外の分野へも拡大していきたいと考えています。

<質問13>

質問:売上の国内海外比を教えてください。

回答:決算期により多少ぶれますが、国内海外は50対50程度で推移しています。前期完成工事高実績は国内53.1パーセント、海外46.9パーセントでした。

<質問14>

質問:DOE3.2パーセントを掲げていますが、安定配当のベースとなる収益の安定は確保されていますか? 主軸の環境システム事業の増減収や増減益に塗装システム事業の売上や利益も比例しており、会社全体の収益が一方向にレバレッジがかかって動くように感じます。この状況で安定配当を目指せるのかご教示ください。

回答:当社は受注産業で、市場環境の影響を一定程度受けます。近年環境システム事業と塗装システム事業の市場環境の良さから増収傾向が続いています。短期的には大型案件の影響などで増減収や増減益もありますが、収益のベースは中長期には伸びています。

安定配当の観点では、市場環境の影響により短期的な減収で配当も減配としないために、当中期経営計画で従来の利益に連動した配当性向による配当方針から、安定収益としての利益が確実に積み上がる連結自己資本に連動したDOE基準へ変更しています。これにより、当期のように減収減益が見込まれる状況においても増配を予定しています。

配信元: ログミーファイナンス
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