新興国経済不安、商社株などに警戒感

著者:冨田康夫
投稿:2015/10/01 17:10

ブラジルではスタグフレーションが進行

 新興国の通貨安や景気低迷が、メーカーや商社、プラントといった企業の業績悪化要因として浮上している。

 中国の景気減速は原油・非鉄など商品価格の下落をもたらし、資源国の景気低迷要因となっている。また、米国の利上げ観測が強まるとともに一部の新興国からは資本が流出し通貨安が進行している。

 こうしたなかブラジル・レアルやトルコ・リラ、マレーシア・リンギといった一部の新興国通貨は最安値圏に落ち込んでいる。

 例えば、ブラジル・レアルは今月には1ドル=4.24レアルと最安値をつけた。レアルは対ドルで、今年に入り約4割下落。ブラジルでは、景気減速とインフレが進むスタグフレーションが進行しており、一部格付会社は国債格付けを「投機的」水準に引き下げている。

 このブラジル・レアル安の影響で、アシックス<7936>は今月に入り15年12月期の業績を下方修正した。通貨安でブラジル子会社の業績が悪化したことなどが響いた。

 また、景気低迷や政治混乱の影響も大きく、IHI<7013>は前期にブラジルの海洋事業で特別損失を計上。ブラジルの国営石油会社ペトロブラスを巡る汚職事件で同国経済が混乱した影響などが出ている。

 さらに、三井物産<8031>丸紅<8002>といった商社や東洋エンジニアリング<6330>千代田化工建設<6366>といったプラントなどのエネルギー関連企業にも、新興国不安が業績悪化の要因となるとの懸念が出ている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想