200日移動平均線の攻防戦へ!!

著者:菊川弘之
投稿:2015/08/24 13:56

NY金の動きも注視

 8月7日に寄稿した当コラムで『過去の季節傾向を振りかえると、ここ20年間では8月の円高傾向が確認される。8月月間の平均値幅は約4.2円である事から、雇用統計で期待感が高まった噴き値が今月の高値となり、その後にリスク回避が高まれば月末にかけて「高値-4円」程度が下値の目処となる可能性も想定しておきたい』と書いたが、雇用統計後の高値が125.28円。今回のショック安で平均的な下げ幅を達成した。足元は200日移動平均線(8/24:120.70円)攻防がテクニカル面からのの焦点だ。

 200日移動平均線を維持できれば長期上昇トレンド内での調整安との判断だが、同水準や7月8日安値(120.39円)、心理的節目120円~52週移動平均線(8/24:118.43円)水準を割り込んでくると、長期上昇トレンドの終了、戻り売り基調の始まりが意識されてくる。パターン分析でもダブルトップ完成となる。この場合は、アベノミクスが始まって以降の上昇相場の38.2%押しと重なる115円水準も意識されるだろう。

 週明けのアジア市場は株価続落で始まって下げ幅を拡大しているが、日銀によるETF買い付けコストを割り込んでくると、忘れた頃の「バズーガ砲」や「牽制発言・口先介入」などの対策が飛び出してくるリスクには注意したい。また、今週は過去に相場の転換となった事もあるジャクソンホールでの講演会がある。イエレン議長が不参加と言うことで、注目されていなかったが、急遽フィッシャー副議長のスピーチが決まっており、相場の値位置次第では、トレンド加速・反転いずれも可能性はありそうだ。

 一方、中国・天津の事故を始めとして、事故なのか事件なのか不明な事故が本邦でも相次いでおり要注意だ。事故と事件ではマーケットに与える影響は大きく異なる。天津の件は政治的な権力闘争絡みの事件との見方も強く、朝鮮半島情勢と合わせて、アジア地区の地政学リスクの高まりが、米利上げ観測を後退させ、「安全資産」としての金(GOLD)に資金が向かっている。ただし、NY金(12月限)は上昇しているものの、200日移動平均線(8/21:1189.26ドル)を上抜いておらず、抵抗を受けるようなら、一旦は、株安・ドル安の流れが一服するかもしれない。NY金の200日移動平均線の攻防にも注意を払いたい。ただし、NY金は安値圏での保合いを上に放れたばかりで、高値圏での保合いを下に放れたばかりのドルやNYダウと比べると、調整安には押し目買い意欲が高まりそうな予感がする。
菊川弘之
日産証券調査部 主席アナリスト
配信元: 達人の予想