自律反発も上値重い、外部環境の波乱継続

著者:冨田康夫
投稿:2015/08/21 20:09

来週の東京株式市場見通し

 来週の東京株式市場は、今週末の全体相場急落に対する反動から、ある程度の自律反発の動きは想定されるものの、中国、米国など外部環境の急速な改善が想定し難いことから、戻りの上値余地は限定的となりそうだ。一方、当面の下値メドは7月9日の取引時間中の安値(1万9115円)前後の水準とする見方が多い。来週の日経平均株価の想定レンジは1万9100~1万9900円とする。

 市場関係者からは「日本株の反転上昇には、中国株の落ち着きがまず求められるが、経済減速懸念を短期間に払拭するような画期的な対策は期待薄だ。原油など商品市況と米国株の戻りも日本株上昇軌道復帰の条件となる。また、世界景気の減速傾向を受け、9月半ばの米利上げ先送り観測が強まることで円高・ドル安が進行することへの警戒が必要」との見方が出ていた。

21日の動意株

 東邦金属<5781>=一時ストップ高。
熊本大学が20日、同社と共同で、世界で最も細い耐熱マグネシウム合金の極細ワイヤーの開発に成功したと発表しており、これを好感した買いにより全般相場悪の中にあっても買いが集中して入っている。今回開発したワイヤーは線径0.05ミリメートルで、日本人の平均的な頭髪の半分近い細さ。これまでマグネシウム合金のワイヤーは線径0.1ミリメートルが限界とされていたが、一気にこれの半分ほどの細線化に成功したことになる。合金は、熊大が開発した世界最強の機械的強度と耐熱性、難燃性を併せ持つマグネシウム合金で、これまでワイヤーに加工するのは困難だったが、東邦金との共同研究によって実現したという。

 田中化学研究所<4080>=ストップ高。
きょう付の化学工業日報で、住友化学<4005>がリチウムイオン2次電池の正極材市場に本格参入すると報じており、そのなかで「資本・業務提携を結んでいる田中化学研究所(福井県)と、従来品に比べて電池容量を最大で7割高められる次世代正極材を共同開発した」としていることを好材料視した買いが入っている。電池容量の拡大は電気自動車などの走行距離の拡大につながるだけに、需要の広がりに期待した買いが入っているようだ。

 石川製作所<6208>=動意。
北朝鮮の韓国への砲撃が伝えられるなかで、地政学リスクの高まりから、防衛機器を手掛けている同社株には防衛関連株としての思惑買いが流入している。全般手詰まり感が高まるなかで、100円トビ台の時価には値ごろ感から個人投資家を中心に目先的な買いを誘っているようだ。

 テクマトリックス<3762>=ストップ高。
同社は20日、発行済み株式の31.24%相当の380万株、35億円を上限とする自社株取得枠の設定を発表、今朝の立会外取引取得することを発表した。これを材料視する短期筋の買いが流入している。同社はネット証券向け負荷分散装置などで実績を持つシステム構築会社で、筆頭株主が3割強の株式を保有する楽天<4755>。今回、楽天から株式売却の要請があったことを受けて、これを買い取るかたちとなる。

 シグマクシス<6088>=ストップ高。
同社は20日に、サイバーセキュリティーソリューションを提供する米イージー・ソリューションズと包括的提携契約を結んだと発表。これが材料視されているようだ。同社は、米イージーが手掛ける各種ソリューションの国内販売を行うとともに、金融機関の顧客預金の不正引き出しを防御する不正行動検知の領域で共同サービスの提供を開始した。

 ネクスト<2120>=大幅高。
同社は不動産情報サイトを運営しており、同業界では最大手。不動産市況の回復を背景に物件掲載数の増加や広告宣伝効果で手数料収入が好調に拡大している。20日取引終了後に発表した7月度の月次売上高は前年同月比58.1%増と大幅な伸びを示した。主力の国内不動産情報サービス事業が伸びたほか、賃貸・不動産売買も収益を押し上げている状況で、これを好感する買いが集中している。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想