ギリシャ問題、今後のスケジュールは?

投稿:2015/06/29 17:20

ギリシャ問題、今後のスケジュールは?

ギリシャ議会は7月5日に国際通貨基金(IMF)やECBなどの債権団が金融支援の継続の見返りに要求している財政改革案を受け入れるかどうかについて国民投票を行うことを決めました。

このため、ユーロ圏財務相会合はギリシャが求めた1ヶ月の金融支援延長を拒否し、ECBもギリシャの銀行向け緊急流動性支援(ELA)の増額見送りを決定しました。これにより、銀行からの資金流出を防ぐためにギリシャ政府は6月29日からの銀行の一時閉鎖を決定。なお、6月30日が返済期限となる債務(15億4000万ユーロ)が債務不履行(デフォルト)するのはほぼ確実になっていますが、IMFへの返済延滞はIMFが延滞を認定するまでに一定の時間をかけることなどから、格付けなどには即座に影響せず、これは連鎖的な危機にはつながりません。

それでは、今後のスケジュールはどうなるのでしょうか? これは7月5日のギリシャの国民投票の結果次第となります。

1、国民投票の結果=支援策(改革案)を受け入れる場合

この場合、債権団と支援交渉が再開されることになると思います。次の大きなポイントは7月20日の国債償還日までに合意にいたるかどうかですが、反緊縮を旗印としていたチプラス政権も、今回は国民の同意があり、ある程度の妥協を受け入られるため、話しは順調に進むと思います。この場合、おそらくECBもギリシャの銀行向け緊急融資の増額を認め、ギリシャの銀行は翌日から営業再開が出来るようになると思います。つまり、7月6日にマーケットはリスクオンの姿勢に戻ると思います。

おそらくこのシナリオが一番可能性が高いと思います。

2、国民投票の結果=支援策(改革案)の受け入れを拒否した場合

この場合、ECBはギリシャの銀行向け緊急融資の打ち切りを決定します。キプロスの例を見ると、そうするとギリシャの銀行は破綻を防ぐために、預金封鎖を行い、ベイルイン(金融機関の破たん処理の際、株主に加えて、債権者や預金者に負担を強いる措置)を行うことが考えられます。つまり預金に税金をかけたり、預金を強制的に銀行の株式に転換することを行うわけです。

ちなみに日本では金融機関の危機時にベイルアウト<税金を使った救済>の手法が採られてきましたが、ギリシャの銀行が資金調達の大きな部分を欧州中央銀行(ECB)の緊急流動性支援(ELA)に頼っている部分があることなどからユーロ各国にも大きな負担がかかることになり、認められないと思います。

つまりギリシャの銀行は預金に税金をかけたり、預金を強制的に銀行の株式に転換することを行う可能性が高いように思います(それは当然ギリシャの国民に大きな負担がかかります)。

もちろん、ユーロ紙幣を暴落するドラクマに替える難業、ハイパーインフレ、倒産ラッシュなども予想されるところです。

このような背景を考えると、国民投票で支援策(改革案)の受け入れが拒否されるシナリオは考えにくいと思います。

もちろん最終的にはどうなるかわかりませんが、マーケットは、今週はリスクオフの姿勢が続くものの、調査で選挙の事前予想があらかたわかれば週後半、あるいは、選挙結果が出る7月6日には再びリスクオンの姿勢に転じるのではないかと考えます。そう思えば、現在の下落は投資チャンスのように思います。
小池麻千子
グローバルリンクアドバイザーズ 株式アナリスト
配信元: 達人の予想