円高の後遺症で軟調、中国経済指標を注視

著者:冨田康夫
投稿:2015/06/10 21:00

明日の東京株式市場見通し

 11日の東京株式市場は、急速に進行した円高・ドル安の後遺症が尾を引いて、日経平均株価は軟調な推移となりそうだ。

 11日午後、黒田東彦日銀総裁が、実質実効為替レートでかなり円安になっているのは事実との認識を示したうえで「実質実効為替レートがさらに円安になるのは、普通に考えればありそうにない」と発言したのを受け、外国為替市場で1ドル=124円50銭台から同122円50銭台へと一気に2円もの円高・ドル安が進行した。

 市場関係者からは「対ドルで2円幅もの円高が進行し、日経平均株価はこの日の高値から一時240円近く急落する場面があったものの、その後大きく下げ渋った。これをきっかけに、しばらく円安傾向に歯止めがかかれば、株価の下落はこの程度ではおさまりそうにない」との見方が出ていた。

 10日の東京株式市場は、前場から買いが先行し後場寄りから一段高に買われたものの、外国為替市場での円高・ドル安加速を嫌気し、一転して急落。その後下げ渋って日経平均株価終値は、前日比49円94銭安の2万46円36銭と4日続落となった。

10日の動意株

 タダノ<6395>=大幅高。
時価は昨年9月以来となる2000円大台を視界にとらえているが、PER11倍台に割高感はなく、株式需給面でも1750円から上は滞留出来高に乏しくほぼ真空地帯、上値の軽さが意識されている。旺盛な建設投資を受けてクレーンが国内外ともに好調、15年3月期は営業4割増益を達成、16年3月期は前期の発射台の高さを考慮して1.8%増益を会社側では計画しているが上振れ余地も。ROEも17%台と高い。

 アエリア<3758>=後場一段高。
きょう、子会社のリベル・エンタテインメントが手掛ける恋愛リズムアドベンチャー「アイ★チュウ」アンドロイド版の配信開始が6月26日に決まったと発表。iOS版についても同日配信を目指すとしており、期待材料となっているようだ。なお、8日には「アイ★チュウ」の事前登録者数が累計6万人を突破したと発表している。

 アンジェス MG<4563>=後場に入り大幅高。
前引け後に、同社が開発を進めている重症虚血肢を対象としたHGF遺伝子治療薬に関して、大阪大学医学部附属病院が主導となって医師主導型臨床研究が進められているが、神戸大学医学部附属病院および佐賀大学医学部附属病院が協力医療機関として当局から認められ、試験開始のための環境が整ったと発表しており、開発の加速に期待した買いが入っている。

 アスラポート・ダイニング<3069>=急反発。
9日行われた15年3月期決算説明会で、16年3月期連結業績予想にはタコベルの出店や、英国3社の子会社化の影響については反映していないと発表したことを好材料視した買いが入っている。会社側では16年3月期(連結)に売上高151億3500万円(前期比35.5%増)、営業利益7億700万円(同0.9%増)、純利益4億900万円(同5.2%増)を見込んでいるが、上振れへの期待が強まっているようだ。

 GMOクリックホールディングス<7177>=急動意。
同社は9日取引終了後、立会外分売を発表、571万株を24~26日の期間内に実施する方針。同社株は値動きが軽いものの、売買高の乏しさが難点だったが、今回の立会外分売により出来高流動性が高まることが予想される。また、1単元(100株)以上を保有する株主を対象に、GMOクリック証券を利用する際の売買手数料について、10000円を上限に所有株式数に応じ、対象期間中に生じた取引手数料相当額をキャッシュバックするという株主優待も発表しており、目先筋の買いを誘った。

 ペプチドリーム<4587>=急反発。
9日の取引終了後、6月30日を基準日として、1対4株の株式分割を実施すると発表しており、これを好感した買いが入っている。投資単位当たりの投資金額を引き下げることで、株式の流動性の向上を図ることを目的としている。効力発生日は7月1日。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想