25日線割れで調整へ、海外要因に懸念強まる

著者:冨田康夫
投稿:2015/06/09 20:58

明日の東京株式市場見通し

 10日の東京株式市場は、きょうの日経平均株価大幅下落が尾を引くかたちで、売り優勢の推移となりそうだ。きょうの終値で、日経平均株価は5月15日以来約3週間ぶりに25日移動平均線(2万104円=9日)を割り込んでおり、調整色が強まる可能性がある。

 市場関係者からは「米連邦準備制度理事会(FRB)が早ければ9月にも利上げに踏み切るとの見方が強まり、米株式相場が下落トレンドを鮮明にしている。さらに、これまで日本株の上昇を支えていた外国為替市場での円安・ドル高進行が一服傾向を強めていることも、先行きの不安感につながっている」との見方も出ている。

 9日の東京株式市場は、前日の欧米株安を引き継ぎ朝方から売り優勢となった。後場後半になって、内閣府が午後2時に発表した5月の消費動向調査で消費者心理の判断を下方修正したのをきっかけに、先物主導で裁定解消売りが誘発され一気に下げが加速し、日経平均株価終値は前日比360円89銭安の2万96円30銭と大幅安で3日続落。今年3番目の下落幅となった。

日経平均は今年3番目の下げ幅で25日線を割り込む

 今年1番の下落幅は、4月30日の538円安で、この時も25日移動平均線を割り込んだ。3月期決算企業の決算発表がスタートして、ちょうど大型連休谷間の日に当たり、利益確定売りの出やすい地合いとなっていた。さらに、その時点で16年3月期の業績見通しを発表した主要企業のなかで、利益の伸び悩みや減益予想を公表するケースが目立っており、ガイダンスリスク(会社側の慎重な業績見通しを嫌気して株価が下落するリスク)に対する警戒感が広がったことが、急落の背景とされた。

 ところが、大型連休明けの5月7日には、早くも底打ち(1万9257円)し、短期間で25日移動平均線を奪回。同月28日には年初来高値の2万655円まで急ピッチの上昇となった。

 市場関係者からは「4月30日の急落は、直後に大型連休という“冷却期間”があったのに加え、それ以降好調な業績見通しが相次ぎ、5月半ばからは円安が加速した。きょうの急落は、直接の要因が「消費者心理の判断の下方修正」とされるものの、背景には欧米の金利上昇と株価下落傾向がある。今回は短期間での底入れ反転上昇を期待過ぎないほうがいい」との声が聞かれた。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想