連騰の警戒感から反落、小型株に底上げの動き

著者:冨田康夫
投稿:2015/06/01 20:35

明日の東京株式市場見通し

 2日の東京株式市場は、きょうまでの日経平均株価12日続伸を受けて、連騰記録に対する心理的な警戒感から、利益確定の売りが先行して反落となりそうだ。

 全体相場の過熱感が極端に強まらない背景について、市場関係者からは「毎日の上昇幅が小刻みになってきたことに加え、物色対象に広がりが出てきたことに特徴がある。例えばきょうは、東証1部でも小型株指数の上昇が顕著で、日経225指数には反映しない銘柄群の底上げが進んでいるようだ」との見方が出ていた。

 今後もこうした底上げタイプの循環物色が続くと、全般相場の反落場面があっても押し幅が軽微にとどまることになりそうだ。

 1日の東京株式市場は、前週末の米株安などを受けて、前場は売りが先行し、日経平均株価は一時、前週末比150円を超える下落幅となった。ただ、後場に入って下げ渋りが加速し、終値は前週末比6円72銭高の2万569円87銭と小幅ながら12日続伸となった。

日経平均12日続伸を支えた日銀のETF買い

 きょう市場で話題となったのは、後場に入って「日銀によるETF(株価指数連動型上場投資信託)買い観測が広がり、先物主導でプラスに転じた」ことだ。

 過去の実績から判断して、前場に日経平均が前営業日に比べて安く推移している場合に、日銀の買いが入る可能性が高いというのだ。

 実際に日銀はきょうの午後5時過ぎ、ETFを361億円買い入れたと発表した。買い入れは5月22日以来、7営業日ぶりのこと。

 市場参加者からは「きょうは、日銀によるETFの買い入れがなかったら、日経平均株価は続伸記録を持続することができなかったかも知れない」との声があがっていた。

1日の動意株

 インプレス<9479>=急騰。
デジタルメディアに展開するが業績は厳しい環境が続いている。ただ、折に触れ値を飛ばしやすい銘柄で、「きょうは寄り後早々に仕掛け的な買いが流入、これに値動き重視の個人の短期資金が乗っかった格好。業績の長期低迷で機関投資家が保有しておらず、実需の売り圧力が小さいことも、ここ最近の突発高する材料株の特長」(国内ネット証券大手)という。3月下旬には電子出版事業に展開する同社子会社がアマゾンジャパンと提携したことを材料に株価を急騰させた経緯があり、この時の残像が個人投資家の脳裏にも刻まれている。

 東京個別指導学院<4745>=大幅高。
学習塾業界は少子化の流れのなかでシェアを争う動きが活発化、先月下旬には増進会出版社の子会社であるZEホールディングスが栄光ホールディングス<6053>へのTOBを発表するなど再編思惑が改めて浮上している。そのなか、同社はテレビCMの奏功に加え、新校開設が収益を牽引、営業利益は15年2月期の36%増益に続き、16年2月期についても33%増の23億円を見込むなど業績の好調ぶりが目立つ。

 大豊建設<1822>=大幅高。
15年3月期に続き16年3月期の業績についても好調な見通しが多く、「工事利益率の改善が大手ゼネコンを中心に改めて見直し機運が高まっている」(市場関係者)という。国内では国土強靭化やリニア中央新幹線工事、都市再開発や東京五輪を控えた関連特需などが収益を後押ししている。そのなか同社は官公庁向けに強く受注残も豊富、15年3月期営業利益は期初予想21億円から61億4600万円に約3倍に大幅に増額された経緯もあり、16年3月期も営業利益50億円見通しは保守的で増額の可能性が意識されている。

 エイチ・アイ・エス<9603>=大幅反発。
同社は5月29日の取引終了後、今15年10月期第2四半期累計(14年11月~15年4月)の連結決算を発表。売上高2607億9800万円(前年同期比3.2%増)、営業利益100億2900万円(同19.7%増)、純利益51億200万円(同17.0%増)と2ケタ増益を達成、これを好感している。訪日旅行は、旧正月を利用した中国からの受客が大幅増加し、アジア地域からの受客も好調に推移している。

 トリケミカル研究所<4369>=ストップ高。
前週末5月29日の取引終了後に発表した第1四半期(2~4月)単独決算で、売上高12億1700万円(前年同期比29.5%増)、営業利益2億200万円(同2.7倍)、純利益1億3700万円(同3.5倍)と大幅増益で着地したことが好感されている。主にスマートフォンやタブレットなど向けに高純度化学品の需要が高い水準を維持したことに加えて、車載向け需要なども堅調に推移したことが業績を牽引した。

 ACCESS<4813>=急反発。
前週末5月29日の取引終了後に発表した第1四半期(2~4月)連結決算が、売上高16億8000万円(前年同期比23.4%増)、営業損益2億8700万円の赤字(前年同期3億8400万円の赤字)、最終損益1億4600万円の黒字(同4億800万円の赤字)となり、最終損益が黒字転換したことを好感した買いが入っている。位置情報ソリューション「ACCESS Beacon Framework(ABF)」の拡販などIoT分野への取り組み強化や法人向けクラウドサービスが伸長し、主力の国内ソフトウエア事業が売り上げを伸ばしたほか、ネットワークソフトウエアが大幅に伸長し増収を確保したが、営業赤字脱却には至らなかった。なお、最終損益は法人税等の改善で黒字を確保した。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想