“ポスト鉄火場マネー”に見える先は、ギリシャの果てしなき暗雲

著者:津田隆光
投稿:2015/05/14 18:32

Dead Cat Bounce

昨今のユーロ/ドル相場は、プロの鉄火場相場と化しているような様相。
新旧債券王と呼ばれるビル・グロスとジェフリー・ガンドラック両人が、独国債の空売りを推奨したことで俄然巻き返しの展開に。

4月21日に“旧”債券王のビル・グロスがそのツイッターで「独国債は空前絶後の空売りチャンス。問題はタイミングだけ。」と呟くや否や、独国債価格が急落(利回りは急上昇)。
一時史上初の利回り0.10%割れを示現した独10年債が、その“呟き”効果もあり0.70%を超えるような状態に。(国債価格は急落)
これを基点に、各国長期金利も急上昇し足並みを揃えたものの、米独金利差の縮小もあり、足元ではユーロ買い・ドル売りの動きとなり、先週・今週と1.1400ドル台を示現。
“官製相場”ならぬ“呟き相場”とも言えますが、まさにプロの鉄火場マネーが雪崩れ込んでいる状態なのが今のユーロ/ドル相場なのかも知れません。

そんな中、我々の視線の先は“ポスト・鉄火場マネー”の足元に存在するギリシャ債務問題。
今週12日にIMFに対して7.5億ユーロ(約1000億円)の支払いを何とか終えたギリシャですが、一部にはSDR(特別引き出し権)6.5億ユーロ(約880億円)を行使したのでは?との噂も。
ギリシャのSDR残高が払底したとの噂も出る中、“崖っぷち”ギリギリの綱渡り状態であることは想像に難くありません。

ちなみに今後の“借金返済計画”を挙げてみると・・・5月末:年金支払い+給与支払い25億ユーロ(約3400億円)、6月末:対IMF、15.5億ユーロ(約2100億円)、7-8月:ECB保有のギリシャ国債の大量償還100億ユーロ(約1兆3500億円)。

文字通り、一難去ってまた一難という状態ですが、目先の重要ポイントは、6月末を以てEU等債権団による第2次金融支援が終了するということ。
7-8月の桁違いの借金返済をクリアするためには第3次金融支援が必要不可欠ですが、これは6月末までの借金を完済して初めて交渉の余地があるということ。

独国債の空売り筋が果実を獲った後に残されるのは、やはりギリシャ絡みの果てしなき暗雲。
現在のユーロ/ドルの反発は、決して底打ちではなく、いわゆる“デッド・キャット・バウンス”(「Dead Cat Bounce」。死んだ猫でも高いところから落とせば弾むというウォール街の格言。) と捉える方が無難と考えますがいかがでしょうか?
津田隆光
マネースクエア チーフマーケットアドバイザー
配信元: 達人の予想