懐かしの「トリプルメリット」相場が再来?

著者:冨田康夫
投稿:2014/12/01 19:55

アベノミクス版「トリプルメリット」

 ベテランの個人投資家なら懐かしさ感じる人もいるだろう。ここにきて「トリプルメリット」という言葉が、市場関係者から頻繁に聞かれるようになった。

 株式市場で1980年代後半のバブル経済期に盛んに使われたトリプルメリットという言葉は「円高・低金利・原油安」を表したもの。これによって過剰流動性が生じ、地価の高騰を誘発、バブル経済発生の一因になったとされている。

 今回市場で取りざたされているトリプルメリットは、「円安・低金利・原油安」の3点で、1980年代の「円高」が逆に「円安」となっていることが大きく異なる。

 2回にわたる「黒田バズーカ」という異次元の量的金融緩和により、「低金利」と「円安」の二つのメリットは既に備わっていた。

 これに、中東などの主要な産油国12カ国が加盟する石油輸出国機構(OPEC)が11月27日の総会で、原油の生産目標を現行の日量3000万バレルに据え置くことを決定。減産を見送ったことで、原油価格が大幅下落となっている。

 米国の原油指標油種であるニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の先物価格が日本時間1日午前10時過ぎに、1バレル当たり65ドルを割り込み、2009年7月以来の安値を付けた。

 円安は、当然ながら輸入物価の上昇を招く。東日本大震災に伴う原発の大惨事以降、天然ガスなどの石油資源の輸入を増加させている日本にとっては大きな打撃となる。そこに、原油安という強力な追い風が吹き始めたというわけだ。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想