リスクオン高まるか?

著者:菊川弘之
投稿:2014/06/04 17:19

テクニカル的な信頼性は落ち込む時間帯

 5月21日付の当欄で「今週から月末にかけてリスクオフが高まっても、5月29日からのワシントンで日米実務者協議、6月4日~5日のブリュッセルでのG7サミット辺りで、リスクオンに突然変わってしまうと言うシナリオもあるかもしれない。この場合は、円安・株高のスタートとなるだろう。」と指摘したが、ドル円は、5月の雲のねじれで200日移動平均線を割り込んだものの、長い下ヒゲを付けて値を戻し、その後も200日移動平均線を割ることなく、同水準での下値支持感を確認。6月入り後は、90日移動平均線を上抜き、基準線と転換線は好転、本日には一目均衡表の雲を上抜きかけている。5日のECB理事会での追加緩和期待からユーロが売られており、ドルの下値支持要因だ。6月発表の米雇用統計は、過去データーからは当日のドル円の変動率が高い傾向があり、今回も波乱含みとなる点は注意だが、予想以上の強気となった場合は、リスクオンからのドル買いが意識されやすいだろう。
 
 既に、株式市場と逆相関のNY金は保合いを下に放れている。1929年前夜と2012年以降のNYダウを比べてみると、年末・年始まで自己相関の強い形状となっていたが、足もとは相関が崩れている。テクニカル分析では、自己相関が崩れた場合は、崩れた方向に大きく動意付くと言われるが、今回は、NYダウの上方リスクが高まっていると見た方が良いだろう。NY金が先行指標として機能したのかもしれない。「相場は相場に聞け」である。史上最高値圏と言うことで高値警戒感が強く、5月13日に三角保合い上放れた時はダマシに終わったが、6月入りで改めて5月13日高値を更新してきた。ダウ以外の株価指数も堅調であり、基準線~転換線を下値支持帯として、心理的節目17000ドル、N=17061.49ドル、V=17129.72ドルなどを試す流れへ向かうかもしれない。今週末の雇用統計を受けて、良い金利上昇と共に、株価・ドルが買われる流れとなるのか否かが目先の焦点だ。

 週末にかけてドル円の一目均衡表では、雲の厚みが薄くなっており、上値抵抗としても、下値支持としてもテクニカル的な信頼性は落ち込む時間帯になる。上も下もダマシが多くなりやすい点にも注意したい。

 ウクライナ情勢は、プーチン大統領の訪仏(6日のノルマンディー上陸作戦70周年記念式典に出席)に合わせた首脳会談の可能性も浮上している。ロシアとウクライナのガス代金支払いに関する協議は2日に再開。ロシアは6月分のガス供給の前払い期限を先送りしており、ウクライナ新政権とロシアとの間で、建設的な話し合いが行われると、こちらもリスクオンの材料となるだろう。決して問題解決には繋がらないと思われるが、マーケットの材料としては、一時的に後退する可能性はあろう。
菊川弘之
日産証券調査部 主席アナリスト
配信元: 達人の予想