11月5日から空売り規制が5年ぶりに緩和

著者:冨田康夫
投稿:2013/10/22 20:52

<10月22日予想>米雇用統計の内容で波乱も、決算注視で神経質な展開

 あす(23日)の東京株式市場は、きょう日本時間午後9時30分に発表される米9月の雇用統計の内容によって大きな影響を受けることになりそうだ。米政府機関が一時閉鎖に追い込まれる前段階の集計で、内容が想定しづらいとの見方が出ている。非農業部門の雇用者数増加は、事前の市場予想で18万人程度と見込まれている。市場関係者の見方では、20万人に接近すれば米株式の上昇および円売り・ドル買いの可能性が高く、18万人を大きく下回れば、日本株にとって厳しい結果となりそうだ。

 22日の東京株式市場は、利益確定売り圧力も表面化したが、下値は頑強で日経平均株価終値は前日比19円高の1万4713円と小幅ながら続伸。ただ、様子見ムードの中で売買代金は前日に続き1兆4000億円台と低調が続いた。今後も決算内容に敏感に反応する神経質な地合いが続きそうだ。

<トピックス>空売り規制が5年ぶりに緩和

 来月5日に、リーマン・ショック直後の2008年10月に導入された「空売り規制」が緩和されることになる。

 空売りは、株価の下落局面で借り入れた株を売り、下がったところで買い戻して利益を得るもの。リーマン・ショックによる世界的な株価急落を受けて、空売りが株安を助長する取引として、緊急避難措置として規制がスタートした。

 具体的には、直近の価格を下回る価格での空売り注文を原則禁止したのをはじめ、発行済み株数の0.25%以上の株式を空売りした場合は公表が義務づけられた。

 空売り規制実施後、東日本大震災の影響などもあり4年余りは株価が低迷状態。規制緩和を求める声は挙がらなかった。ところが、昨年11月の野田佳彦前首相の衆院解散宣言以降、株価が上昇軌道に突入。選挙に圧勝した安倍晋三政権が掲げた経済政策「アベノミクス三本の矢」などにより株価が急上昇したこを受けて、金融庁は規制緩和に踏み切る決断をした。緩和により、直近より低い価格での空売り注文を解禁するのをはじめ、公表義務が生じる株数の基準も発行済み株数の0.5%以上に引き上げる。

 思い起こせば、リーマン・ショック直後の世界規模で株価が急落する局面の中で、ヘッジファンドなど一部のプロの投資家が、エクイティファイナンス実施などのネガッティブ材料を事前に察知して、複数の大型の個別銘柄に空売りを仕掛ける動きが頻発。そうした動きに個人投資家は翻弄されたという記憶がある。

 空売り規制が存在していても、今年5月23日の日経平均株価1143円安のように、株価指数先物主導で大波乱相場となることが実証されている。したがって、空売り規制が緩和されても、それが原因で一気に売りが増加することにはなりそうもない。

 個人投資家にとって関係ありそうなのは、これまで禁じられていた株数50単元超での直近公表価格以下の価格での発注(成行含む)について、緩和後は株数制限がなくなるため、低位株のまとまった株数での新規売りが可能になる点だ。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想