明日の株式相場に向けて=AI大相場終局のセレナーデは聞こえるか
きょう(20日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比841円安の6万4075円と大幅続落。投資家にとっては何とも戦いづらい相場つきとなってきた。今は空売りがあまり乗せられていない下げ相場であり、それだけに表現に語弊はあるがタチの悪い地合いである。下ヒゲを形成して淡い期待を抱かせながら、ダラダラと水準を切り下げるダッチロール的な軌道で、気が付けば傷口が広がっているような状態に陥りがちだ。国内ネット証券大手のデータでは、直近の信用評価損益率が全体でマイナス10%という水準で、需給バランスとしてはほぼ中立的なレベル。他方、信用買い残の方は膨張したままである。これが弾けて追い証の投げが出てくれば底入れも早まるが、現状は全くそこに至っていない。喜ぶべき話ではなく、今は短期的なリバウンドはあっても下降トレンド途上にあるという認識を持つ必要がある。信用評価損益率がマイナス15%を下回り、20%くらいまでくれば投げ売りを誘発するが、そこまでは本気モードの買いは温存しておくのが、リスクを鑑みて正しい選択肢といえる。
AI関連相場にピリオドが打たれたとは言わないものの、基本的に株式市場の中期目線では終了形に近い。今はまだ激しさを伴ってはいないが、終局のセレナーデがBGMに流れ始めたような時間帯といえる。9月末に発表された米メモリー大手マイクロン・テクノロジー<MU>の好決算発表を受けて、日米の株式市場ともにAI・半導体関連株が大きく切り返し、復活の狼煙を上げたようにも見えたが、振り返ればそこが逃げ場、つまり結果的に徒花であった。
ネオクラウド事業者のフロントランナーと言ってもよい米コアウィーブ<CRWV>の社債利回りが急上昇し、データセンター建設ラッシュのシナリオ自体が怪しくなった。コアウィーブの資金調達難は個別の問題であり、AIインフラ投資(データセンター投資)の全体像を揺るがすものではないとする市場関係者も少なくないのだが、これはそう言い切る根拠が希薄と言わざるを得ない部分もある。このコアウィーブ・ショックは相場にパニックこそもたらさなかったが、炭鉱のカナリアよろしく鳴き声が聞こえない現状を最大限憂慮しなければならない事例であるはずだ。同業のネオクラウドでは豪州のファーマスや英国のエンスケールのIPOがいずれも暗礁に乗り上げている。ネオクラウドに限らず、ブラックストーン<BX>傘下のハイパースケーラーであるエアトランクもシンガポールでのIPOが延期される方向となった。更に言えば、11月中旬以降に上場計画が後ずれしたAI相場の新星アンソロピックも、現時点で年内のIPOが事実上難しくなってきたという観測が強まっている。生成AI時代に必要不可欠かつ加速度的な整備進捗が既定路線となっていたAIエコシステム投資だが、その筋書きに不都合な現実が雨後の筍のように後を絶たない状況となっている。
一度は米マイクロンの好決算がAI相場を反転させる起爆剤となったが、長続きしなかった。これから予定される日米のAI・半導体関連の主要企業の好決算発表が流れを引き戻す可能性に期待したいが、今は業績がどんなに好調でも既に焦点はそこから外れており、シビアな反応を株式市場は示す可能性がある。投資家をドライバーに例えれば、バックミラーに映る景色(絶景)を評価する段階は過ぎ、遥か前方に見える黒雲に視線が集中している。AI開発の危険性を本格的に俎上に載せるまでもなく、マーケットが経済的観点からブレーキを踏む状況が想定される。すべてが砂上の楼閣ということはない。しかし、そのブレーキを踏み込む状況を株価が反映するのはこれからである。ホルダーにとってポジションを軽くするのは難しい作業だが、少なくとも全力で買い向かう場面ではない。
また、もう一つ気になる点がある。これまではAI一極集中相場の反動という見方で、金利上昇に強い非AI株へのリターンリバーサルに移行するという副次的なシナリオがあった。欧州はフランスの政情不安が尾を引いているが、米国も長期金利上昇が顕著で世界的な金利高は現在進行形である。そうしたなかで東京市場では銀行株も崩れだした。とりわけ、財務が脆弱な地銀は運用環境よりも保有債券の評価損が警戒される雰囲気となっている。この流れは何を意味するのか。AI相場の終局とは次元が異なるが、マネーフローの受け皿も市場から失われている可能性を考えた場合、想定以上の深押しにつながる。市場では「TOPIXの月足が不気味。NT倍率縮小というテーマ性も機能しない下げ相場となった場合は怖い」(ネット証券マーケットアナリスト)という声も聞かれる。
あすのスケジュールでは、9月の貿易統計が朝方取引開始前に公表されるほか、後場取引時間中に日比野日証協会長の記者会見が予定されている。また、後場取引時間中に「21世紀金融行動原則の預貸WG(ワーキンググループ)主催セミナー」がハイブリッド開催(リアル&オンライン)される。後場取引終了後に日本政府観光局が開示する9月の訪日外国人客数も注目される。海外ではインドネシア中銀が政策金利を決定するほか、9月の英消費者物価指数(CPI)にもマーケットの関心が高い。米国では20年国債の入札が予定されている。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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