【QAあり】三井物産、ガバナンスに関する社外取締役とのパネルディスカッションを開催
Governance
田中暁人氏(以下、田中):今回のテーマはガバナンス、特に社外取締役の役割についてです。Walshさん、三井物産は年間を通じて多くの投資をグローバルに行っています。三井物産の社外取締役はこれらの投資、特に大型投資案件をどのように監督しているのでしょうか。
Samuel Walsh氏(以下、Walsh):まず、会場で参加できなかったことをお詫びします。親しい友人が亡くなり、昨日の彼の葬儀で弔辞を述べることを依頼されました。そのため、会場で参加するつもりでしたが、できませんでした。
大型投資案件は通常は2回、場合によってはそれ以上の回数で取締役会に諮られます。もちろん、取締役会では活発な議論が交わされます。さらに、各取締役会の前には、事前ブリーフィングが行われますので、社外取締役は、プロジェクトの内容や財務的なリターン、リスク評価とその軽減策、安全衛生、環境などについて詳しく質問することができます。
私は、取締役会において非常に活発な議論が行われていることを保証します。取締役会に2回諮られることで、取締役会はプロジェクトを洗練し、また改善するための質問をすることができますし、提案者は取締役会が懸念するすべての問題を検討することができます。このように、取締役会に提出されるすべてのプロジェクトは非常にしっかりとした議論が行われています。
江川雅子氏(以下、江川):Walshさんが述べたように、取締役会の事前ブリーフィングは非常に有益です。ここでは、プロジェクトを担当するマネージャーから直接話を聞くことができるので、非常に詳細な質問をすることができますし、また、社外取締役同士の意見交換の場にもなっています。
もうひとつはフォローアップです。大型投資案件について、当社は進捗状況を報告するようにしており、私たちにフォローアップの機会を提供しています。これは、私たちが大型投資案件を監督するためにとても重要なことです。
田中:堀さん、取締役会メンバーからの助言は、三井物産のこれらの投資判断にどのように役立っていますか。
堀健一氏(以下、堀):執行側にとって非常に有益なものと言えます。特に、取締役会はその特定のプロジェクトが会社全体の戦略に完全に合致しているかどうかを議論します。これは重要な論点だと思います。時には、取締役会で議論するほど規模が大きくないプロジェクトもありますが、とにかく取締役会に提案することで、有益な意見を得ることができますし、見落としがないかを確認することもできます。このような自主的な取締役会への提案も意味のあるものだと思います。
田中:経営指標に話を移します。三井物産はここ数年、投下資本利益率(ROIC)を重視しています。江川さん、ROICを重視するようになったことで、どのような変化があったか教えてください。
江川:私は2つの変化を認識しています。1つ目について、私が4年前に取締役会に参加した時、取締役会に提出される投資案件には、純利益、キャッシュ・フロー、内部収益率など、収益性に関連するKPIが主に含まれていました。しかし今日では、ROICも含まれており、資本効率に焦点が当てられています。
2つ目の変化は、ポートフォリオに関する議論の頻度が高まったことです。ポートフォリオ・レビューを定期的に行っており、その中で資本効率に焦点を当てています。当社の投資先は多様な事業分野や地域にまたがっているため、ROICは投資規律の強化だけでなく、経営資源を配分する上でも非常に有用な指標となっています。
Walsh:ROICは重要な指標です。ROICによって、取締役会はプロジェクトの競争力を評価し、プロジェクトがどのような成果を上げるかを正確に判断することができます。また同時に、私たちが最高水準のパフォーマンスを発揮するため、社外に目を向け、他社で達成されたリターンの種類を調べ、当社のプロジェクトと比較することもできます。ROICは良い指標です。取締役のインセンティブの1つであるROEにも関係しています。満足のいくROICを確実に達成するという目線を経営陣はもっています。
田中:堀さん、投資家の目線は、ROICを重視するという会社のビジョンと100パーセント一致していると感じますか。
堀:投資家のみなさまとの日常的な会話の中で、当社の経営陣が活用している主要な指標は、投資家のみなさまがお持ちの分析ツールに沿ったものであるとのご理解をいただいていると思います。
Walshさんと江川さんのコメントからお分かりいただけると思いますが、当社の取締役会では厳格なプロセスが行われています。私たちは自社のプロジェクトを業界最高のグローバル・プロジェクトと比較するようにしていますし、取締役会の議論によって私たちは常に気を引き締めています。
田中:Walshさんの取締役としての在席期間において、三井物産は大型案件の投資を決定しています。執行側または取締役会は、計画どおりに行かなかった過去の投資からどのような教訓を学びましたか。そのような過去の投資案件は将来の投資決定にどのように役立っているでしょうか。
Walsh:プロジェクトを進める前のデューデリジェンスは、プロセスを通じて管理するあらゆる変動要素やリスクを考慮する上で非常に重要です。田中さんの言うとおり、目標を達成できないプロジェクトも時折あります。COVID-19や人々の移動が制限されたことで大きな影響を受けたプロジェクトがありました。
組織にとって重要な教訓は、状況の変化にいかに迅速に対応するか、ということだと思います。収益を改善するために何ができるか、コスト削減のために何ができるかを考え、もし売却を検討するのであれば、迅速に進める必要があります。
窮地に追い込まれたプロジェクトから得た重要な教訓は、不測の事態に備えた計画を迅速に実行に移す必要があるということだと思います。できる限り迅速かつ効果的に実行することで、たとえ残念な結果であったとしても、その結果を改善することができるのです。
江川:取締役会では、計画どおりに進まなかった投資案件から学んだ教訓を長時間議論しています。また、そのような教訓が全社的に共有されるようにしていることも付け加えさせてください。
私が聞いた一例を紹介します。当社が再生可能エネルギーへの投資を始めたタイミングは、まだごく初期の段階でした。黎明期であったこともあり、市場が十分に発展しておらず、いくつかの投資は計画どおり進みませんでした。
こうした経験に基づき、当社は、この種の投資に特化した専門部署を設置し、こうした教訓が全社的に共有されるようにしています。これがエネルギー・ソリューション本部を立ち上げるための基盤ともなりました。私の理解では、当社は学んだ教訓を非常によく共有しています。
田中:堀さん、投資が計画どおりに進まないとき、どのように軌道修正しますか。
堀:数は少ないですが、残念ながらプロジェクトの中には改善が必要なものもあります。例えば、環境が変わった場合には、環境変化に適応する必要があります。このような状況では、私たちは、取締役会に対して非常にオープンになります。
私たちは、何が起きているのか、どのような進展があったのか、マイルストーンをほぼリアルタイムで報告するようにしています。そうすることで、取締役会とともに、損失を削減する、あるいは将来の損失を最小限に抑えるような迅速な決断を下すことができるのです。これは非常に重要なことです。
また、現場の従業員にとっても重要なことです。彼らは、経営陣が自分たちを支えてくれていることを知っていますし、特定の状況において取締役会が自分たちを支えてくれていることも知っています。このことは、窮地に追い込まれた状況で活動する現場のチームの柔軟性と行動力を高めるのに役立ちます。
田中:江川さん、Walshさん、お二人とも三井物産の取締役を長く務めてこられました。社外取締役として、新任の社外取締役に何を期待しますか。また、どのようなアドバイスをされますか。
江川:私が新任の社外取締役に伝えている4つのポイントがあります。1つ目は、当社は社外取締役からの意見やフィードバックを大切にしているということです。したがって、自分の意見を率直に言うべき、ということをアドバイスしています。
2点目は、言動に関する会社からの細かい指導はないということです。例えば、今回のパネルディスカッションでは、事前にトピックは渡されましたが、自分の言葉で自由に回答するよう求められました。社外取締役に回答例を提供する非常に慎重な日本企業も中にはありますが、当社はこれらの企業とは異なります。
3つ目のポイントは、積極的に情報を得るべきだということです。主要なプロジェクトの中には、リードタイムが長いものもあり、5年や10年以上かかるものもあります。そのようなプロジェクトが取締役会に諮られた際、取締役会の資料には詳細な歴史的背景が含まれていないことがあります。このような状況では、背景を完全に理解するために、積極的に情報を取りにいくべきです。
4つ目のポイントは、現地視察が非常に有益だということです。当社では、海外の現場を訪問し、実際にどのような業務に携わっているのかを見ることができます。このような訪問により、現場で働いている人たちやパートナー企業と話す機会を提供し、プロジェクトについて深く理解することができます。
当社は、多様性のある取締役会とすることを心掛けているため、新たに加わる取締役からの多様な意見を期待しています。私は取締役との議論を楽しんでおり、また、彼らから多くのことを学んでいます。
Walsh:江川さんが非常に明快に答えてくれたと思いますが、新任の社外取締役にとって重要な点について追加させてください。それは、新任の社外取締役ができるだけ早く適応し、取締役会の議論に積極的に参加できるようにすることです。
特に私は、新任社外取締役が安心して問題提起できるよう、サポートし、励まし、育てることに重点を置いてきました。各取締役は特定のスキルを持ち、そして当然ながら一般的なスキルも持ち合わせています。活発な議論ができるように、専門知識を発揮できるように促し、また、育成の環境や取締役を支援する体制を確保しています。
通常、取締役会では、社外取締役がそれぞれの意見を述べたり、意見を述べたいと思っています。これは、江川さんがおっしゃったように、プロジェクトについて話したり、財務や労働安全などについて話したりする上で、多様な視点を得る、多様な経験を得るという点で非常に役立っています。実際に専門知識を活用することは重要です。当社の社外取締役は吸収が早く、非常に早い段階から積極的に議論に参加しています。
田中:質疑応答に移る前に、ジャーナリストの立場からも興味深い質問をさせてください。これはグリーン・トランジションに関するもので、私の会社では毎日記事にしていますし、また、関連記事を毎日読んでいます。社外取締役として、GHG削減に貢献する投資と収益性の維持をどのように監督していますか。
Walsh:取締役会に提案された案件を評価するだけでなく、当社の脱炭素化への道筋における全体的な成果を確認するためにも、取り組むべき重要な問題であり、また、成長戦略の一環です。
確かに、取締役会はこのテーマを特に重視し、関心を寄せています。取締役会に提出されるすべてのプロジェクトについて、2030年までにGHGインパクトを半減し、2050年までにネットゼロを達成するまでの道のりを取締役会が実際に評価できるようにするため、プロジェクトがGHGとの関連でどのような影響を及ぼすかという観点からの評価が行われます。
これは当社にとってだけでなく、世界にとっても重要な分野であり、当社がその役割を確実に果たす必要があります。私は、脱炭素化は当社にとって潜在的な利益の源泉になると考えています。風力発電であれ、太陽光発電であれ、あるいは単にGHGの全体的な改善であれ、再生可能エネルギーという点で、私たちは主導権を握ることができます。
江川:Walshさんが非常に明快に説明してくれましたが、一点付け加えるとすれば、役員報酬について、GHGへの影響が長期インセンティブのKPIとして含まれており、私たちはこれを非常に注意深く監視しています。
堀:取締役会は、個々のプロジェクトだけでなく、時折開催するフリーディスカッションを通じて、この重要な気候変動の議論に多くの時間と労力を割いてくれており、大変感謝しています。
私たちは時間をかけて、当社の方向性を示そうとしています。GHG削減のための経済的に実行可能なプロジェクトを追求すると同時に、よりクリーンかつ責任ある方法で従来の燃料を管理する当社の取組みは非常に重要です。
当社はこの2つを両立させたいと考えており、この2つを両立させることは理にかなっています。当社のエネルギー部門、インフラ事業、次世代燃料のための化学分子や生物学的物質を扱う事業の相互補完的な取り組み、このようなすべての取組みは結合過程にあり、この産業横断的アプローチに関する取締役会の議論は非常に有益です。
質疑応答:ダイベストメントに対する取締役会の監督機能について
質問者:取締役会の監督機能について、先ほどの説明にもでてきた大型投資の投資規律は良く話題になります。利益の一部分を占めている資産リサイクル益について、しっかり成功して刈り取る例と、ROICが想定どおり出ずに撤退するケースがあると思います。ダイベストメントの規律について、取締役会でどのような取り組みが行われているかを教えてください。
江川:大型投資に関しては、取締役会でその後の進捗を定期的に報告していただくかたちでモニタリングしています。計画どおりに進んでいない場合には、どのような方策があるのかを話し合っています。
そのタイミングがとても大切で、うまくいかない場合には、例えば売却する、あるいはより良いパートナーを見つけてくる、それ以外にもいろいろな方策を考えて、タイミングを失しないように心がけています。
Walsh:資産リサイクルは会社にとって非常に重要です。利益を最大化するための好機を掴むだけでなく、進捗が不十分なプロジェクトを手放すための手段でもあります。取締役会では、年間を通じて全ポートフォリオの状況を確認しています。取締役会で承認されたプロジェクトだけでなく、取締役会の承認が不要なプロジェクトも含まれています。
そのため、会社全体の事業の進捗状況を把握することができます。資産リサイクルは事業において重要であり、時には後の資産売却において付加価値を付けられるよう、あえて追加投資を行う場合もあり、そういった機会も取締役会で最初に案件レビューを行う際に協議されます。非常に活発なプロセスであり、会社の運営において重要な活動です。
堀:取締役会全体が、資産の組み替えでより成長性の高いポートフォリオに持っていくという方向を向いていますので、それに向けた具体的な検証、ディスカッションを絶えず行っているとお伝えするのが正しいと思います。
質疑応答:企業価値を高めるための取締役会の取り組みについて
質問者:先ほどのWalsh取締役の説明で、大規模投資からの教訓について、いかに環境変化に素早く対応するか、という話がありました。これは取締役会でも同じです。ここ数年、ますます多様性を増した取締役会において、チームとして素早く行動し、企業価値を高めていくために、社外取締役として心がけていることがあれば教えてください。
Walsh:堀さんもお話しされましたが、取締役会では年に3回、戦略的な議論を行っており、これにより迅速に行動できることを確実にしています。執行側から新しいイニシアチブが迅速に提案され、取締役会の意見が求められるだけでなく、取締役からも会社の運営に関する提案やアイデアが出され、議論されます。
私はこれまで多くの取締役会に参加しましたが、当社は非常に迅速に行動できる企業だと感じています。経営判断のプロセスはとてもインクルーシブであり皆が参加しますが、必要な場合は非常に迅速に動くことが可能です。これは、適切なガバナンスや承認プロセスを犠牲にするものではなく、取締役会と執行側が同じ方向性を共有しているため、スムーズに議論や実行が進むのです。もちろん、すべてのプロジェクトが承認されるわけではなく、リスクや収益性、労働安全などにつき取締役会が懸念を抱く場合はプロジェクトが差し戻されることもあります。それは健全なプロセスだと思いますし、執行側もそれをきちんと理解してくれています。
江川:先ほどWalshさんがおっしゃったように、執行側が持ってこられた提案に対して、取締役会として修正意見を出したり、変えてくださいとお伝えしたりしたこともあります。その時に、執行側が非常に真剣に受けとめて修正してくださることが過去に何度もありましたので、それが社外取締役と執行の間の信頼関係を生んでいると思いますし、その過程で心理的安全性が担保されていると思います。
先ほど取締役会の前日にブリーフィングセッションをするとご説明しましたが、社外取締役と社外監査役といった社外のメンバーだけで説明をお聞きするため、エグゼクティブセッションのように執行がいない中でいろいろな議論ができて、お互いをよく知る機会になっています。
そのようなブリーフィングセッションや現地の視察などでは、社外取締役だけで時間を過ごすことが長いので、その時の会話を通じてそれぞれの社外取締役の方とかなり親しくなれるため、その中でチームワークがうまく取れていると感じます。
質疑応答:資産入れ替えが加速したターニングポイントについて
質問者:2023年3月期から資産入れ替えが加速していると思いますが、この変化は取締役会で社外取締役からのアドバイスなど、何かターニングポイントとなるものがあったのかについて教えてください。
堀:この後、社外取締役の2人にコメントをいただきたいと思いますが、執行側及び内部取締役の視点から言うと、当社は絶えず資産の入れ替えを意識してポートフォリオを運営してきました。
この数年間は特に売却案件の機会がより多かったことと、案件がやや大型化している傾向はあると思います。しかし、基軸の方針が大きく変わったわけではなく、そのような機会を捉えることができたと考えています。
この中経では、攻め筋をかなりはっきり打ち立てているため、その攻め筋に沿った資産の入れ替え、成長資産への移行の手数を増やしています。
また、会社全体でモチベーション高く動いていることが案件増加の要因になっている可能性がありますが、底流の基軸は同じだと思っています。執行側はこのように考えておりますが、ぜひ社外取締役の意見を聞いていただければと思います。
江川:資産の入れ替えに関してしっかり考えを持っている、特に執行側が考えているというのは堀さんのお話のとおりだと思います。
私の印象に残ったのは、パイトンの売却です。これは当社にとっても非常に重要で有望なプロジェクトですが、最終的に座礁資産にならないように、まだまだ成長性がある時にあえて売りに出すことを、私が取締役会に加わってすぐの時に執行側は考えていました。
実際の売却の交渉に時間がかかったため最近になって売却完了を公表しましたが、以前からこのようなことを考えているという点で、資産リサイクルの意識がとても高いと思います。
また、先ほどもお話ししたようにポートフォリオのレビューをしっかり行っているため、その中ですべてのアセットに関して、しっかり利益が出ているか、あるいは資産効率、資本の効率がきちんと保たれているのかを一つひとつチェックする過程があります。その中で資産リサイクルを行っていくことになります。
Walsh:堀さんと江川さんのコメントに同意します。方針の変化として挙げられるのは、脱炭素化が石炭火力発電所や関連事業の売却を加速させた点です。これも、ポートフォリオの自然な進化の一環であり、健全なプロセスだと思います。
質疑応答:GHG削減の中での資産リサイクルの考え方について
質問者:先ほど江川取締役がパイトンの例を挙げていましたが、確かにパイトンはGHGの削減という大きな意味があって売却されたと思います。同時に売却された金額も、我々から見ても、ただ削減すればいいだけではなく、売却時の回収額も考えた上でリーズナブルな値段で売られたと思います。
しかし、他社のGHG削減を伴う売却案件に関しては、社外取締役からの「ただ削減しなさい」といった圧力を感じるケースがあります。三井物産はどのような観点でGHG削減の中での資産リサイクルを考えていますか。
江川:先ほど他の件でもご説明したように、投資案件や売却案件といった新しい案件を取締役会で話す時には、純利益やキャッシュ・フローのインパクトに加えて、最近はGHGのインパクトも併せて説明してもらうようになっており、そのバランスの中で考えています。
当然、両方を考えていかなければいけません。GHGインパクトの削減が、次の成長機会につながるプロジェクトもあるため、ただ削減すればいいとは思っていません。そのあたりをバランスよく考えながら取り組んでいます。
多様な地域・事業に投資しているため、リスク分散やバランスを考え、どのタイミングで何を売却したらいいかを話し合っています。
Walsh:社外取締役が執行側に「特定の資産を売却せよ」と不自然な圧力をかけることはありません。ただし、GHG削減目標を達成するための取り組みには積極的に関与しています。具体的には、新規プロジェクトや既存プロジェクトの改善を通じてGHG削減やインパクト削減に取り組んでいます。CCS(炭素回収・貯留)技術もその一例で、LNGプロジェクトでのGHG削減など、現在進行中のさまざまなプロジェクトがあります。
質疑応答:今後の企業価値向上について
質問者:三井物産は、利益成長、ROICへの注力、そして資本配分の改善により、すばらしい業績を上げてきました。私たち株主もその恩恵を受けており、感謝しています。ただし、これまで注目されていなかった分野に取り組むことで改善が始まったため、比較的に手を付けやすい領域における改善だったとも言えます。今後、企業価値を向上させ株価をさらに引き上げるために、特に社外取締役として、どのような要因が重要だとお考えでしょうか。ここでの質問は、気候変動や地政学的リスクといった外的要因ではなく、内部で改善可能な課題に焦点を当てたものです。
Walsh:これまでにも述べたとおり、私にとって重要なのは、自分たちが取り組むあらゆる分野で「世界のベスト」と比較することです。一部では当社を他の総合商社と比較する声がありますが、各商社はポートフォリオが異なるため、単純に比較はできません。
それよりも、各分野でベストプラクティスを実践している企業に目を向け、現行のプロジェクトや将来のプロジェクトがどの位置にあるのかを把握する必要があります。この視点こそが注力すべきポイントであり、収益性や資本配分、リターン、リスク管理、プロジェクトのリスク軽減など、あらゆる面で競争優位性を確保するために重要です。このようなアプローチが、当社の成長に不可欠だと考えています。
江川:今後の成長の可能性について、まず伝えたいのが総合力です。英語ではグループシナジーと言っていますが、商社の場合、いろいろな分野で事業を行っていて、世界中にネットワークがあります。
以前に比べて事業投資が増えているため、各分野でそれぞれの競合相手と競争していかなければいけません。その中で差別化するための要因が競争力だと考えて取り組んでいます。
実際に私も人事の異動などを見ていて思いますが、当社は人を戦略的に動かしたり、地域の中でのいろいろなビジネスのコミュニケーションを良くしたりということを非常に熱心に行っています。おそらく他社よりもうまくできていると思います。その過程でうまくいっているプロジェクトもあるため、今後の成長の柱になっていくと思います。
もう1つはエネルギーソリューションです。もともとエネルギー分野に強いため、いろいろなクライアントとのネットワークを持っています。ビジネスパートナーのネットワークを活かして再生可能エネルギーや新たなエネルギーに対するソリューションを作っていると思います。
先ほど内部的なことと質問がありましたが、ダイバーシティが課題であると思っています。グローバルにビジネスをしていますが、役員レベルに日本人以外の方があまりいないことが今の課題だと思います。実際に話を聞いていると、非常に優秀な方が各地域で働いているため、そのような方々がこれから役員レベルに上がって活躍することで、当社のグローバルネットワークがさらに強くなっていくと思います。
堀:次の成長段階を考える際、私は当社の「産業横断的なアプローチ」がユニークな特徴だと思います。さまざまな分野の知見を組み合わせ、意味のあるソリューションを提供できることが、世界の優れた企業から求められています。この点をさらに強化していきたいと考えています。
また、新興国と先進国のビジネスを組み合わせるというユニークな特性も当社の強みです。この数年間で構築したリスク管理メカニズムは、当社の企業特性の一つだと思います。これをさらに強化していきたいと考えています。
最後に、ある地域で成功したプロジェクトやビジネスモデルを他の地域に展開する能力も、当社のユニークな点です。たとえば、アジアでの病院プラットフォーム事業から得た知見を、日本国内に持ち込むという長期的な視野を持っています。このような地理的な移動、いわゆるアービトラージではありませんが、これが今後の成長において重要な役割を果たすと考えています。
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