ホーチキ、2Qは売上・利益ともに過去最高 システム販売拡大施策が奏功し海外事業の売上高は前年同期比23%増
目次
細井元氏:代表取締役社長執行役員の細井です。本日はお忙しい中、当社の中間期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
本日のご説明内容です。まず本年度第2四半期の連結決算概要について、次に通期連結業績予想、最後にホーチキグループが本年度から取り組んでいる中長期経営ビジョン「GLOBAL VISION 2030」の状況についてご説明します。
決算ハイライト
本年度中間期の決算ハイライトです。スライドに示したとおり、中間期は、売上高・利益ともに過去最高を更新しました。新しい中期経営計画のスタート年度の上期としては、順調な滑り出しになりました。
内容としては、システム販売拡大施策の奏功により、当社が成長ドライバーと位置づけている海外事業の売上高が前年同期比で23パーセント増加しました。後ほど、地域別の詳細についてもご説明します。
国内事業は、当社が注力部門と位置づけているストックビジネス(リニューアル・メンテナンス)では、売上高が前年同期比で5.7パーセント伸長しました。
収益性の高いストックビジネスが国内でも伸長したことに加え、昨年度より機器の価格改定を行い、本年度からは労務費の価格改定も実施しており、これらの影響により、営業利益率は前年同期比で3.1ポイントプラスと、採算性が大きく改善しました。
エグゼクティブサマリ
具体的な数字はこちらのスライドに示したとおりです。売上高は455億3,100万円で、前年同期比39億6,300万円の増収でした。増減率は9.5パーセント増です。
営業利益は33億7,600万円で、前年同期比15億8,900万円の増益でした。増減率は88.9パーセント増です。
親会社株主に帰属する中間純利益は22億8,400万円で、前年同期比7億7,100万円の増益、増減率は51パーセント増となりました。
スライドの表の括弧内に、為替の影響を除いた数字を示しています。本中間期は為替の影響を少なからず受けていますが、為替の影響を除いても、売上および営業利益の両面で増収増益を達成しています。
スライドの上段右側には、セグメント別の損益を示しています。当社では、主力の火災報知設備に加え、保守、消火設備、防犯設備の4つのセグメントで構成されていますが、そのすべてのセグメントにおいて増収増益となりました。
特に、売上の62パーセント相当を占める主力の火災報知設備が、前年同期比で9.5パーセント増と大幅に伸びています。セグメント利益についても、火災報知設備が約10億円の増益となり、全体の収益改善に大きく寄与しています。
当社は海外のセグメント情報を単独では開示していないため、主要な海外グループ5社の単純合算の売上数値と、営業利益の単純合算の数値を参考までに記載しています。グループ会社の5社は前年同期比で売上高が大きく伸び、利益も2桁伸びています。
スライド左下は主要指標として、ストックビジネス、当社が注力するストックビジネスのリニューアル+メンテナンス部門、海外の3つの注力部門についての数字を記載しています。ストックビジネスについても、冒頭でお伝えしたとおり、売上高が5.7パーセント伸長しています。海外売上高は、為替の影響も含めて23パーセント増と、大きく数字が伸びました。
スライド右下には地域別売上高を示しています。地域別で見ると、全体として海外は大幅に伸びていますが、北米・中南米は前年同期比で減収となりました。
アジア・パシフィック、特に東南アジアや、当社において最もボリュームがある地域である欧州・中東・インドが大きく数字を伸ばしたことで、全体の海外売上高を押し上げました。
以上が、ハイライトと業績面のサマリです。
事業概要
本日の説明会には初めてご参加いただいている方もいらっしゃいますので、あらためてホーチキグループの事業概要について簡潔にご説明します。
スライド中央のグラフのとおり、当社の事業は火災報知設備、保守、消火設備、防犯設備の4つのセグメントで構成されています。
全体の62パーセントを占めるのが、スライドの円グラフで赤色で示されている火災報知設備です。火災報知設備は国内と海外で展開しており、全体のうち、国内が37.1パーセント、海外が24.9パーセントを占めています。
保守は全体のうち20.9パーセント、消火設備が11.3パーセント、防犯設備は5.8パーセントとなっています。
ホーチキのビジネスタイプ
当社のビジネスの特徴をご理解いただくために、こちらのスライドを作成しました。当社のビジネスは防災に関わる分野ですが、販売の仕方は大きく3つに分かれます。
1つは、現在ホーチキ本体が国内においてメインで行っている、工事付きのタイプです。このタイプは商流の中でゼネコンやサブコンを通じて、直接的にはサブコンの下請けとして、新築の防災設備システムの設置から試験調整までを工事付きで行います。
もう1つは、保守です。消防法の規定により、システム導入後、年2回の法定点検が義務付けられています。保守には、点検作業と、点検により整備が必要と判明した不具合に対する補修工事が含まれます。
最後に、機器販売です。日本では、当社の代理店が約100社あり、これらの代理店に対して当社のシステムを機器販売しています。また、海外では、現在のビジネスモデルとしては100パーセントが機器販売になっています。
スライド右側の円グラフは3つのビジネスタイプについての構成比を示しています。工事付きが37.8パーセント、機器販売が41.3パーセント、保守が20.9パーセントという割合になっています。
スライド下段に「建物のライフサイクルに沿ったホーチキの価値提供」という見出しをつけていますが、当社は、開発から生産、販売、施工、メンテナンスまでの一貫したソリューションを国内で展開しています。
建物の計画や建設計画が始まると、当社は防災システムの設計提案を行います。実際に建物の着工が始まると、次は新築工事を受託します。
工事におけるシステム導入が完了した後は、保守点検を実施します。建物の維持保全のために、定期的な点検や設備維持・保全のための整備工事を行っていきます。
このように長期にわたってお客さまと関係を築きながら、設備の老朽化に応じて、設備を一新するリニューアル工事を行います。その後も、維持管理のための点検整備工事を継続します。要するに、このように建物のライフサイクル・需要に合わせてトータルでサービスを提供できることが、当社のビジネスモデルの特徴の1つです。
火災報知システムのリニューアル更新の目安は、おおむね15年から20年とされています。現在の鉄筋コンクリート造の寿命を考えると、大規模物件ではリニューアルのサイクルが2回から3回訪れることになります。この間、長期的にお客さまとのリレーションが構築できる事業モデルが、当社のストックビジネスの特徴の1つであると考えています。
セグメント別実績 火災報知設備
このような事業概要や特徴をご理解いただいた上で、セグメントごとの実績および状況についてご説明します。まずは火災報知設備についてです。
スライド左上のグラフのとおり、売上高は中間期ベースではありますが、過去から順調に売上を伸ばしています。右側のグラフのセグメント利益およびセグメント利益率は、2022年の3月期でいったん落ち込みましたが、昨年度から本年度にかけて利益を大幅に押し上げて、利益率も向上しています。
スライド下部に国内と海外の具体的な数値を記載しています。売上については、国内は微増に留まりましたが、海外は為替の影響も含めて大きく伸びました。
セグメント利益は大幅に伸びていますが、スライド右側の営業利益の増減要因を表した滝グラフをご覧いただくと、営業利益を最も増進した項目となっているのは原価率の改善です。
価格改定や、人手不足の中での選別受注、採算性を重視した営業を徹底したことにより、原価率が改善しました。その結果、営業収益を大きく押し上げました。
足元の受注状況は、国内および海外ともに、前年同期比で順調に伸びています。将来に持ち越している受注残高も、現在181億8,700万円で、前年同期比3.2パーセント増となっています。
以上が火災報知設備セグメント全体の状況です。
セグメント別実績 火災報知設備・うち国内
火災報知設備セグメントのうち国内のみを抜き出したスライドです。スライド下部にポイントを記載しています。2024年度から、当社業界における2024年問題、すなわち残業上限規制への対応が始まっています。
この対応に加え、当社グループの施工キャパシティの観点から、選別受注を進めざるを得ない状況となり、その結果、新築工事はわずかに減少しました。
一方で、過去に納入した設備の更新需要が非常に高まっており、施工負荷を平準化するためのさまざまな取り組み、つまり下期偏重であった工事を上期に前倒しする工期調整の施策を実施したことで、中間期の業績は好調に推移したといえます。
機器販売についても、価格改定の効果に加え、代理店・販売店との営業連携を強化することで、数字を伸ばすことができています。
特にスライド右上の表に示したリニューアル項目にあるとおり、過去4年連続で、中間期ではありますが数字が着実に伸びています。これは、リニューアル需要の高まりを確実に取り込んでいる結果だと思っています。
スライドの表の火報工事付構成比にあるとおり、新築とリニューアルの構成比については、リニューアルの比率が年々高まってきています。したがって、国内のビジネスについては、2030年くらいまでは首都圏をはじめとした大型再開発の計画があり、トレンドとしてまだ需要はあると見ています。
昨今、人手不足や部材の高騰による再開発計画の変更、遅延もありますが、大きなトレンドとしてはまだ需要はあると見ています。
その中で、施工キャパシティの観点から新築も受注制限せざるを得ず、現在社内では事業体制を強化する取り組みを進め、確実に需要を取り込んでいく方針です。
セグメント別実績 火災報知設備・うち海外
火災報知設備のセグメントのうち海外を抜き出したものです。地域別では、残念ながら米国だけが前年同期比で減収となってしまいました。
スライド右側に地域別売上高ポイントについて記載しています。まず、北米・中南米では、主力の北米で、上期に私どものシステムを構成している受信機ファームウェアの不具合が発生しました。少なからず要因の1つとなり、低調に推移したといえます。
現在、不具合は解消されており、下期に向けてリカバリーを図っていきますが、上期での失速は通期にも少なからず影響を及ぼすため、米国については今年度は苦戦が予想されている状況です。
一方、アジア・パシフィック地域、特に東南アジアについては、昨年度は部品調達難による製品供給の制約があり、経済成長に伴う需要を確実に取り込めませんでした。本年度は調達問題が解消され、需要に応じて製品を供給できており、好調に推移しています。
特に東南アジアで事業規模が最大のベトナムでは、不動産投資が活発に行われており、その影響でベトナムの大手代理店からも当社製品に対する需要が高まっています。アジア・パシフィック地域については、上期に続き下期も業績の好調が期待されます。
欧州・中東・インドは当社で最もボリュームのある地域です。こちらは主力の販売先となっている英国を中心に増収となりました。昨年度は英国の大手販売店が在庫をかなり抱えたために調整を行っていましたが、今期に入ってからは在庫調整が解消され、反動増として大きく売上が伸びました。
中東でも販売が増加しています。当社のグループ会社であるパネルメーカーのケンテック社が、消火ガスパネルで中東に対して販売数量が大幅に増加し、数字も伸びました。
イスラエルとハマスの軍事衝突の影響については、同地域に直接販売しているわけではないものの、少なからず影響が出てきているという報告も受けています。今後の動向を引き続き注視していきたいと思っています。
全体として、海外はおおむね好調に推移しています。
セグメント別実績 保守
保守事業です。こちらも昨年に続いて大きく売上を伸ばしました。セグメント利益についても2年連続で増益となり、利益率も上がってきています。
先ほどご説明したとおり、保守事業は年2回の法定点検と、点検から派生する整備工事の2つに区分されています。当中間期は、点検は微増、整備工事が10.6パーセント増と大きく伸びています。セグメント利益も10.7パーセント増の結果となっています。
足元の受注高・受注残高についても前年同期比で伸びており、順調にマーケットが動いていると認識しています。
スライド右上にポイントを記載しています。保守の事業環境においては、我々の新規点検の営業母数となる防火対象物は年々増加しています。
当社が施工した物件で、保守点検の契約に結びつく契約率は現状では決して高くありません。したがって、営業強化により市場の開拓余地はまだ十分にあると見ています。
売上高について、点検がそれほど大きく伸びていませんが、採算性を評価軸として既存契約物件の見直しを行い、点検契約数および契約売上高が一定程度減少しています。減少分を採算性の良い新規案件獲得でカバーした結果、数字は微増となりました。
セグメント利益については、価格改定の影響や、本年度からスタートしている外注労務費の価格転嫁を推し進めた結果、増益に寄与しています。
保守事業は、建物のライフサイクルにおいてトータルソリューションを提供する要の位置づけとなるため、今後もDXを使ったスマート点検化の推進、事業人員の増強による体制強化などを進め、ストックビジネスの基盤をより強固に確立していきたいと考えています。
セグメント別実績 消火設備
消火設備です。スライド左上のグラフを見ていただくと、売上高は前期までは減少していましたが、今期は大きく伸ばしています。セグメント利益についても、今年度は売上の上昇と併せて利益が上がり、利益率も向上しました。
消火設備は、一般的なビルのスプリンクラーなどの一般消火設備と、トンネル向け非常用設備の大きく2つに分かれています。
スライド左下の表を見ていただくと、一般建物向けの売上は前年同期比16.6パーセント増、トンネル向けが前年同期比50.8パーセント増となっています。中間期における消火設備セグメントの増収増益は、トンネル向け非常用設備の影響によるものです。受注高・受注残高については前年同期比で減少しています。
事業環境においては、先ほど火災報知設備・うち国内でお伝えしたとおり、大型再開発も含めて2030年まで建物の需要はあると見込んでいます。しかし、当社の施工キャパシティにまだ制限があり、その需要をすべて取り込めていないのが実態です。
消火設備については、1物件当たりの受注単価が非常に高く、工期も長いことから、どうしても受注動向によって年度ごとの売上が増減してしまいます。したがって、先ほどの保守と同様に、需要を確実に取り込むためには事業基盤の確立と強化策が必要になってきます。
消火設備においては、業界全体で需要と供給のギャップが生じています。大手ゼネコン、消火設備を担うサブコン、あるいは我々のようなメーカーの供給が追いつかず、工期の変更や遅延が起きているため、会社としても事業体制の強化を図っていきたいと考えています。
セグメント別実績 防犯設備
防犯設備です。昨年度はセグメント利益が中間期ベースで赤字でしたが、今期は一転して黒字となりました。
足元の受注高や受注残高の状況は決して悪くありません。コロナ禍からの社会経済正常化による労働場所のオフィス回帰が始まり、需要は大きく伸びてきている実感を持っています。
加えて、セキュリティ性や利便性を重視した生体認証のニーズが高まっており、我々がメインで手掛ける防犯設備の入退室管理の需要は今後も高まっていくと想定しています。
昨年度赤字になった要因として、実は新型コロナウイルスも含めて部材供給難の影響を一番受けたのが防犯設備の製品機器でした。したがって、昨年度は十分な営業もできず、利益ベースでも減少しています。
部品が正規ルートで入ってこなければ、市場から高い価格で買わざるを得ないため、前期ではそのような部分がセグメント利益を押し下げてしまいました。今期は通常ルートと正規金額で部品が調達できており、利益率、収益性も改善しています。
連結貸借対照表・連結キャッシュフロー計算書
連結のB/Sと連結キャッシュフローの状況です。連結のB/Sについては、スライドのとおり、現金及び預金が前年同期比で44億円減少しています。要因として、仕入債務が46億円減少している影響が大きいと見ています。
仕入債務の減収要因として、サプライヤーに対する支払いサイトを120日から60日に短縮しました。短縮は公正取引委員会や中小企業庁から要請を受けて行ったもので、この結果が連結のB/Sに表れていることになります。
また、キャッシュフローについても、税金等調整前純利益は増加しているものの、仕入債務の減少が影響し、営業キャッシュフローは前年同期比で減少しています。キャッシュフローの増加策として、売上債権回転期間、棚卸資産回転期間の圧縮に努めていきたいと考えています。
中間期についてのご説明は以上となります。
2025年3月期予想 エグゼクティブサマリ
通期業績予想についてご説明します。市場環境については、中間期から下期においても大きな変化はなく、堅調に推移すると予想しています。その観点から、上期と同じように通期業績も上振れする可能性は十分にあると考えていますが、いくつかの理由により、今回、期初の予想を据え置いています。
理由の1点目は、当初想定した以上に工期の上期前倒しが進展しており、すでに受注済みの大型物件における建設工程の変動、また不確定要素が多い部分を、まだ正確な根拠をもって数値としてはじき出せていないためです。
2点目はやはり為替です。上期も相当為替の影響が業績に寄与しましたが、現時点においてはなかなか下期の為替の影響が見えないということです。
3点目として、昨年度まで積み上がった在庫の資産性を適正に再評価する取り組みを進めています。その影響がまだ正確に見積れないため、こちらも不確定要素があることです。
したがって、まだみなさまに通期の業績予想として正しい根拠に基づいた数字をお出しできる段階にないため、今回は通期予想を据え置かせていただいています。
ただし、社内でさまざまな精査を進めています。これらの影響度が適切な数値として見通しが立ちましたら、速やかに公表したいと考えているため、ご理解いただければと思います。
配当方針
配当の方針についてです。当社グループは、スライドにあるとおり、株主のみなさまへの利益還元は重要な経営課題の1つと認識しています。
安定した株主配当の維持を原則とした上で、財務の状況と利益水準を総合的に勘案することを基本の考えとしているため、これはこれからも変わらないと考えています。
配当金については、中間期で29円をお支払いすることをすでに決議しています。
期末配当について、現在は29円を予想していますが、今後の業績動向や今期の業績着地予想を十分に勘案した上で、見直しが必要な場合には速やかにお知らせをする予定です。こちらもご理解いただければと思います。
GLOBAL VISION2030 エグゼクティブサマリ
私どもの中長期経営計画の取り組み状況です。まだスタート年度の上期ですので、大きな進捗はありませんが、今取り組んでいる内容について簡潔にご説明します。
スライドは私どもの「GLOBAL VISION 2030」のサマリです。「人と技術の力で世界中にLife Safetyを創造する」企業になりたいというビジョンのもと、グループ一丸となってこの目標に向かって取り組んでいます。
今回のビジョンは、2030年までの7年をターゲットにしています。中長期の経営計画は、Phase 1とPhase 2の2段階構成となっています。今年度から2026年度までの3年間をPhase 1、2027年から2030年度までの4年間をPhase 2と設定しています。
Phase 1の3年間は、今後の当社グループの持続的な成長と、中長期的な企業価値の向上に必要な事業構造改革を実行していくステージと位置づけています。言い換えれば、未来に向けた投資をしっかりとこの3年間で行いたいと考えています。
重点方針は3項目挙げています。1つ目として、事業ポートフォリオの最適化によって資本収益性の向上を目指していきます。2つ目として、私どものビジネスは人的資本の価値をいかに最大化させるかがカギになっているため、人的資本経営を強力に推進していきます。3つ目はDXによるイノベーションの推進です。この3つを掲げて、現在社内の中ではさまざまな取り組みを鋭意展開しています。
事業ポートフォリオ最適化による資本収益性向上
本日は3つの重点方針について、現在の当社の取り組み状況を少しお話しします。1つ目の「事業ポートフォリオ最適化による資本収益性の向上」についてです。
私どもの事業ポートフォリオは、評価の結果として、先ほどからお伝えしている、海外、保守、リニューアルの3つを注力部門と位置づけています。これに対し、戦略的な事業計画と経営資源配分を実行することで、事業全体の収益性を向上させていくところがポイントになっています。
それぞれ計画を立てています。海外については、より事業拡大を目指すために現在の商品領域を周辺領域まで拡張するような取り組みを行っています。また、ブランドを複数持つことにより販売網を拡大してお客さまへのリーチを増やしていきます。
加えて、海外事業の今後の拡大を見た時に、現在の海外の生産、サプライチェーン体制、R&Dの体制では不十分ですので、この強靱化を計画しています。海外のこの3つの取り組みについては、今のところ計画どおりに進んでいます。数字についても順調に推移したのは、先ほどお伝えしたとおりです。
保守事業については、採算性を評価軸として、現在持っている契約の保有物件の見直しを行っています。どうしても低採算の契約物件がまだ多数あるため、ここを選別していく取り組みを進めています。
また、点検についてはどうしても労働集約型のモデルになっているため、DXなどを使って極力スマート化を進めていく計画を立てて推進中です。どれだけスマート化を進めても、最後はやはり人の力で事業が左右されます。そのため、社内、社外を含めて、事業の人員体制や基盤体制を強化していきます。現在はこのような取り組みを進めています。
リニューアル事業については、需要は旺盛で、今後も増えてくることが想定されるため、基本的にはその需要を確実に取り込める事業体制を作っていくことを目指します。事業体制は保守事業と同様に、社内の物件の施工管理する人員と、実際に工事を行う協力業者の人員の強化を、事業強化策として取り組み、進めていきます。
事業全体として営業利益が中間期で大きく伸びましたが、海外、保守、リニューアルの3部門で、増益となった部分の6割程度を占めています。したがって、今後もこの3つの事業に注力し、これらの事業基盤を強化した上でさらに成長させることで、事業ポートフォリオ、事業全体の中での収益性も上がっていくと考えています。
人的資本経営の推進・DXによるイノベーション推進
人的資本経営の推進・DXによるイノベーションの推進についてです。当社のビジネスは人によるところが非常に大きくなっています。
人的資本経営の推進について、現在の中期3ヶ年計画におけるPhase 1段階では、前3ヶ年の約2.5倍にあたる26億円相当を使用する計画を立てています。具体的には、新しい人事制度の改定費用や優秀な人材を投入するための人件費の増額、教育機会の充実に充てていく考えです。
DXについては、デジタイゼーションとデジタライゼーションの両面をにらんで推進しています。
特にデジタイゼーションは、まだ従業員のDXにかかる基礎知識も向上不可欠となっています。そのための教育や選抜したメンバーによる応用的な教育を今年度から加速して進めています。また、業務においてもRPAや生成AIの活用を推進しています。まだ導入時期ではありますが、さまざまな取り組みをカットアンドトライで進めている最中です。
デジタライゼーションについても、当社クラウドシステムを利用して新たな付加価値をお客さまに提供するビジネスのソリューションのリリースに向けた準備を進めています。近々新しいサービスをリリースできると考えています。
3つの方針の取り組み状況は以上となります。
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
東証から要請を受けている「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の推進に対する、現在の取り組み状況についてです。
課題認識として、資本効率の低下と、株式市場との対話が不十分であり、この課題認識に基づいた取り組みを進めています。
上半期の取り組みについては、スライド左下に記載しています。まずはしっかりと「成長戦略と成長投資を明示」していくことに取り組んでいます。注力事業の強化が収益性の改善に結びつくのは、先ほどお伝えしたとおりです。
戦略投資についても計画中で、実行については、詳細をプランニングしている最中です。かかげた投資計画をこの3年間で確実に実行していくということを進めています。
3年間で225億円相当の投資を計画しています。これを確実に実行できるか否かが、次のステージに登れるか、登れないかというところの、1つのポイントだろうと考えています。
「株式市場の対話強化」については、4月から9月の時点でIR面談を26社と行い、かなり充実させています。前年同期比では14社ほど増やすことができています。加えて、IR担当だけではなく、私をはじめとした経営者が直接投資家のみなさまと対話する機会を増やすために、スモールミーティングを行っています。
「その他の取り組み」については、やはり株主層の拡大と多様化に向けて、さらなる流動性の向上が求められています。その一環として、先般、株式の売出を行いました。
売出によって、株主数は16.1パーセント増加し、流動株比率も5.5ポイント上昇しました。売出によっていったん株価が下落しましたが現在は回復基調にあるため、そのような意味では売出の成果も結果としてきちんと表れてきていると認識しています。
事業ポートフォリオの最適化について
資本収益性を改善する、資本コストと株価を意識する、という取り組みの一環として、私どもは中期経営計画にもとづき、3つの事業ポートフォリオマネジメント体制を構築する中で3つのポイントを挙げています。
1つ目として、社内の中で事業ポートフォリオ委員会を設置し、ROICに基づく事業評価、資源配分、戦略的な投資判断を実現するための社内の体制構築を進めています。
2つ目として、社内の組織再編を行い、事業部門制を導入し、これにより事業は営業から開発、生産までを含めて一気通貫でマネジメントできるような組織体制を目指して進めています。
3つ目として、報告する際のセグメントの区分も、4つのセグメントに合わせて今回変更しました。事業責任と外部への開示を一致させることによって、より責任の明確化を図りながら取り組みを進めています。
まだ初年度の取り組みであり道半ばのところもありますが、現在、事業別のROIC算出方法のロジックも含めて固まってきたため、今後はその事業別のROIC、もしくは事業別のB/Sをマネジメントの仕組みとして活かしながら、事業ポートフォリオの組み替えを含めた収益性の改善に挑んでいきたいと考えています。
現在は、この4つのセグメントにおいて、P/LとB/Sを事業別に分解して、従来のP/Lだけではなく、各事業部門についてもここに書かれているような事業性の資本回転期間を圧縮させる取り組みを進めています。
本日のご説明は以上となります。ありがとうございました。
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