*12:46JST ヤマノHD Research Memo(6):2024年3月期は減収減益、教育事業はM&Aにより順調に成長
■ヤマノホールディングス<7571>の業績動向
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の業績は、売上高13,837百万円(前期比0.5%減)、営業利益100百万円(同66.2%減)、経常利益102百万円(同64.4%減)、親会社株主に帰属する当期純損失28百万円(前期は173百万円の利益)の減収減益となった。コロナ禍明けの本格的な景気回復を見込んでいたが、物価上昇が続く中で消費者心理が低下し、売上高は美容、和装宝飾、DSMの3事業で減収となった。一方、教育事業、その他事業は伸長し全体では微減となった。売上高の約7割を占める和装宝飾事業の減収に伴う減益の影響が大きく、減益幅も大きくなった格好である。ただし、前期は給付金の支給を受けるために、コロナ禍における操業・営業停止中の人件費、家賃等固定費257百万円を販管費から特別損失に振り替えており、実質的な営業利益は40百万円である。これを踏まえると実質的な販管費は店舗の閉鎖や従業員の離職等により118百万円減少しており、粗利の減少58百万円をカバーして実質60百万円の増益とも言えよう(雇用調整助成金160百万円は加味せず)。コロナ禍特別損失への振り替え前の営業利益率は、2022年3月期の0.6%減から2023年3月期は0.3%、2024年3月期は0.7%と着実に改善している。店舗の固定費削減、業態転換等による利益改善等、同社の徹底した店舗採算管理による体質改善、並びに2023年12月に灯学舎のM&Aにより教育事業が1つの柱に成長する等、M&Aによる事業基盤の拡充は着実に進展していると評価できるが、人財不足によりトップラインが上がらないことが課題であろう。
2022年6月に子会社化した古着販売のOLD FLIPについては、期初より売上高は寄与したものの、コロナ禍明けの古着に対する消費者購買意欲の減退、テナントコストや仕入単価の上昇、仕入商品の不足等により損益が悪化した。そのため、OLD FLIPに係るのれんの減損損失34百万円を特別損失に、繰延税金資産の取崩し、法人税等調整額47百万円を計上した。その結果、親会社株主に帰属する当期純損失を計上することとなり無配となった。
2. 事業セグメント別動向
(1) 美容事業
美容事業の売上高は1,931百万円(前期比1.5%減)、セグメント利益は6百万円(同69.7%減)となった。指名制度の導入やメニュー提案等の強化により顧客単価は上昇したが、前期の7店舗に続き当期も2店舗の不採算店舗を閉鎖したことにより来店客数の減少等の影響が生じ減収となった。ただし、閉鎖店舗を除いた既存店の売上は前期比100.3%と売上水準を維持している。損益面では不採算店舗を2店舗を閉鎖するとともに、ホットペッパー等のネット広告媒体の費用対効果を店舗ごとに見直し、店舗ごとに最適な投資額を算定することで閉店分も含め広告費を2割弱削減した。しかし、従業員の採用及び育成強化による人件費等の増加もあり減益となった。
(2) 和装宝飾事業
和装宝飾事業の売上高は9,579百万円(前期比2.5%減)、セグメント利益は138百万円(同53.3%減)となった。来店客数及び合同大型展示販売会の来場者数は増加した。一方、コロナ禍明けの本格的な回復を見込んでいたが、物価上昇が続く中で消費者心理が低下し、顧客単価が低下したため減収となった。損益面では、不採算店舗を1店舗閉鎖したが、利益率の高い同事業において単価が下がったため粗利率が低下したこと、販売員の高齢化やコロナ禍の影響により離職が多かった人財の採用強化による採用費及び人件費の増加、販売施策の強化による販促費の増加等もあり大幅な減益となった。
(3) DSM事業
DSM事業の売上高は868百万円(前期比8.2%減)、セグメント損失は49百万円(前期は9百万円の損失)となった。前期に拠点の統廃合を実施した影響や、高齢化した販売員の減少等もあり減収となった。損益面においては、不採算店舗を3店舗閉鎖する等、経営基盤の整備やコスト管理強化の推進は継続しているが、売上高減少による売上総利益の減少は補えず損失となった。
(4) 教育事業
教育事業の売上高は1,150百万円(前期比22.2%増)、セグメント利益は94百万円(同116.8%増)となった。マンツーマンアカデミーの安定した学習塾運営による増収に加え、東京ガイダンスが通期で寄与するとともに、2023年12月に灯学舎がグループ入りした結果、増収となった。損益面では、マンツーマンアカデミー、東京ガイダンスがともに順調に推移したことで、セグメント利益は伸長した。特に利益規模の小さかったマンツーマンアカデミーは、同社の多店舗展開のノウハウ、経営管理機能等を活かすことで管理業務の効率化を進め、捻出した時間を新規生徒の確保や社内研修に充当していくことで、教室数を減らしたものの、1教室当たり売上高は2024年2月期で18.8百万円と2022年2月期比1.8百万円増、EBITDAは48百万円と同5倍超と成長した。
(5) その他の事業
その他事業の売上高は307百万円(前期比31.0%増)、セグメント損失は69百万円(前期は40百万円の損失)となった。既述のとおり、OLD FLIPの売上が期初より貢献したが、損益が悪化し損失が膨らんだ。現在、店舗の入替等によるテナントコスト引下げ、仕入先の拡充による商品の安定調達、同社グループと連携した新ブランド立ち上げ、キャンペーン販売やWEBを活用した集客力の強化を図り、収益の改善に取り組んでいる。
3. 財務状況と経営指標
2024年3月期末の総資産は前期末比710百万円減少し8,647百万円となった。現金及び預金が587百万円減少したほか、繰延税金資産がOLD FLIPの損失計上等により55百万円減少した。219百万円のフリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)が生まれ、財務活動によるキャッシュ・フローにおいて長短借入金の返済に充てる等、806百万円を支出したため現金及び預金が減少した。税金等調整前当期純利益が33百万円と前期比115百万円減少したものの、「集金保証型ショッピングクレジット」※に伴う売掛金が平準化したことに加え、仕入債務が増加したこともあり必要な運転資金が減少し、営業活動によるキャッシュ・フローは209百万円の収入となり、2019年3月期以降初めて収入に転じた。投資活動によるキャッシュ・フローにおいても、灯学舎が株式取得原価の75百万円を上回る現金及び預金を保有していたこと等もあり、9百万円の収入となった。
※「集金保証型ショッピングクレジット」は2018年10月から導入した。和装宝飾事業におけるカード・割賦販売の売掛債権の回収方法を、信販会社の一括立替払いの方式から、顧客の分割払いに合わせて回収する方式に変更したもの。回収に伴う運転資金は同社が負担するが、割賦手数料を同社が受け取る形態。以降、毎期売掛債権の増加に伴い運転資金が増加し、営業活動によるキャッシュ・フローは2019年3月期より支出に転じていたもの。
長短借入金をネットで626百万円返済し、負債合計は前期末比602百万円減少した。純資産は、配当52百万円、利益剰余金28百万円、その他有価証券評価差額金26百万円がそれぞれ減少したことにより前期末比107百万円減少し1,223百万円となったが、総資産も減少したため自己資本比率は14.1%と0.1ptの低下にとどまった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の業績は、売上高13,837百万円(前期比0.5%減)、営業利益100百万円(同66.2%減)、経常利益102百万円(同64.4%減)、親会社株主に帰属する当期純損失28百万円(前期は173百万円の利益)の減収減益となった。コロナ禍明けの本格的な景気回復を見込んでいたが、物価上昇が続く中で消費者心理が低下し、売上高は美容、和装宝飾、DSMの3事業で減収となった。一方、教育事業、その他事業は伸長し全体では微減となった。売上高の約7割を占める和装宝飾事業の減収に伴う減益の影響が大きく、減益幅も大きくなった格好である。ただし、前期は給付金の支給を受けるために、コロナ禍における操業・営業停止中の人件費、家賃等固定費257百万円を販管費から特別損失に振り替えており、実質的な営業利益は40百万円である。これを踏まえると実質的な販管費は店舗の閉鎖や従業員の離職等により118百万円減少しており、粗利の減少58百万円をカバーして実質60百万円の増益とも言えよう(雇用調整助成金160百万円は加味せず)。コロナ禍特別損失への振り替え前の営業利益率は、2022年3月期の0.6%減から2023年3月期は0.3%、2024年3月期は0.7%と着実に改善している。店舗の固定費削減、業態転換等による利益改善等、同社の徹底した店舗採算管理による体質改善、並びに2023年12月に灯学舎のM&Aにより教育事業が1つの柱に成長する等、M&Aによる事業基盤の拡充は着実に進展していると評価できるが、人財不足によりトップラインが上がらないことが課題であろう。
2022年6月に子会社化した古着販売のOLD FLIPについては、期初より売上高は寄与したものの、コロナ禍明けの古着に対する消費者購買意欲の減退、テナントコストや仕入単価の上昇、仕入商品の不足等により損益が悪化した。そのため、OLD FLIPに係るのれんの減損損失34百万円を特別損失に、繰延税金資産の取崩し、法人税等調整額47百万円を計上した。その結果、親会社株主に帰属する当期純損失を計上することとなり無配となった。
2. 事業セグメント別動向
(1) 美容事業
美容事業の売上高は1,931百万円(前期比1.5%減)、セグメント利益は6百万円(同69.7%減)となった。指名制度の導入やメニュー提案等の強化により顧客単価は上昇したが、前期の7店舗に続き当期も2店舗の不採算店舗を閉鎖したことにより来店客数の減少等の影響が生じ減収となった。ただし、閉鎖店舗を除いた既存店の売上は前期比100.3%と売上水準を維持している。損益面では不採算店舗を2店舗を閉鎖するとともに、ホットペッパー等のネット広告媒体の費用対効果を店舗ごとに見直し、店舗ごとに最適な投資額を算定することで閉店分も含め広告費を2割弱削減した。しかし、従業員の採用及び育成強化による人件費等の増加もあり減益となった。
(2) 和装宝飾事業
和装宝飾事業の売上高は9,579百万円(前期比2.5%減)、セグメント利益は138百万円(同53.3%減)となった。来店客数及び合同大型展示販売会の来場者数は増加した。一方、コロナ禍明けの本格的な回復を見込んでいたが、物価上昇が続く中で消費者心理が低下し、顧客単価が低下したため減収となった。損益面では、不採算店舗を1店舗閉鎖したが、利益率の高い同事業において単価が下がったため粗利率が低下したこと、販売員の高齢化やコロナ禍の影響により離職が多かった人財の採用強化による採用費及び人件費の増加、販売施策の強化による販促費の増加等もあり大幅な減益となった。
(3) DSM事業
DSM事業の売上高は868百万円(前期比8.2%減)、セグメント損失は49百万円(前期は9百万円の損失)となった。前期に拠点の統廃合を実施した影響や、高齢化した販売員の減少等もあり減収となった。損益面においては、不採算店舗を3店舗閉鎖する等、経営基盤の整備やコスト管理強化の推進は継続しているが、売上高減少による売上総利益の減少は補えず損失となった。
(4) 教育事業
教育事業の売上高は1,150百万円(前期比22.2%増)、セグメント利益は94百万円(同116.8%増)となった。マンツーマンアカデミーの安定した学習塾運営による増収に加え、東京ガイダンスが通期で寄与するとともに、2023年12月に灯学舎がグループ入りした結果、増収となった。損益面では、マンツーマンアカデミー、東京ガイダンスがともに順調に推移したことで、セグメント利益は伸長した。特に利益規模の小さかったマンツーマンアカデミーは、同社の多店舗展開のノウハウ、経営管理機能等を活かすことで管理業務の効率化を進め、捻出した時間を新規生徒の確保や社内研修に充当していくことで、教室数を減らしたものの、1教室当たり売上高は2024年2月期で18.8百万円と2022年2月期比1.8百万円増、EBITDAは48百万円と同5倍超と成長した。
(5) その他の事業
その他事業の売上高は307百万円(前期比31.0%増)、セグメント損失は69百万円(前期は40百万円の損失)となった。既述のとおり、OLD FLIPの売上が期初より貢献したが、損益が悪化し損失が膨らんだ。現在、店舗の入替等によるテナントコスト引下げ、仕入先の拡充による商品の安定調達、同社グループと連携した新ブランド立ち上げ、キャンペーン販売やWEBを活用した集客力の強化を図り、収益の改善に取り組んでいる。
3. 財務状況と経営指標
2024年3月期末の総資産は前期末比710百万円減少し8,647百万円となった。現金及び預金が587百万円減少したほか、繰延税金資産がOLD FLIPの損失計上等により55百万円減少した。219百万円のフリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)が生まれ、財務活動によるキャッシュ・フローにおいて長短借入金の返済に充てる等、806百万円を支出したため現金及び預金が減少した。税金等調整前当期純利益が33百万円と前期比115百万円減少したものの、「集金保証型ショッピングクレジット」※に伴う売掛金が平準化したことに加え、仕入債務が増加したこともあり必要な運転資金が減少し、営業活動によるキャッシュ・フローは209百万円の収入となり、2019年3月期以降初めて収入に転じた。投資活動によるキャッシュ・フローにおいても、灯学舎が株式取得原価の75百万円を上回る現金及び預金を保有していたこと等もあり、9百万円の収入となった。
※「集金保証型ショッピングクレジット」は2018年10月から導入した。和装宝飾事業におけるカード・割賦販売の売掛債権の回収方法を、信販会社の一括立替払いの方式から、顧客の分割払いに合わせて回収する方式に変更したもの。回収に伴う運転資金は同社が負担するが、割賦手数料を同社が受け取る形態。以降、毎期売掛債権の増加に伴い運転資金が増加し、営業活動によるキャッシュ・フローは2019年3月期より支出に転じていたもの。
長短借入金をネットで626百万円返済し、負債合計は前期末比602百万円減少した。純資産は、配当52百万円、利益剰余金28百万円、その他有価証券評価差額金26百万円がそれぞれ減少したことにより前期末比107百万円減少し1,223百万円となったが、総資産も減少したため自己資本比率は14.1%と0.1ptの低下にとどまった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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