「軟調スタート、催促相場の様相か」

著者:黒岩泰
投稿:2012/07/09 08:39

「軟調スタート、催促相場の様相か」

 先週末の米国株式相場は下落。ダウ工業株30種平均は124.20ドル安の12772.47、ナスダック総合指数は38.79ポイント安の2937.33となった。米雇用統計が市場予想を下回ったことで、景気に対する期待感が後退。また、非農業部門の雇用者数が前月の6万人から8万人に増加したことで、追加金融緩和への期待感もそれほど高まらなかった。シカゴ日経平均先物(円建て)は8995円。大証終値と比べて25円安の水準で取引を終了している。したがって本日の東京株式相場はやや軟調なスタートを想定。9000円の大台を割り込んで始まると思われる。

 また、外国為替市場では足下でユーロ安が進行。1ユーロ=97円台へと突入しており、これが輸出関連株の売りを誘うことになりそうだ。

 日経平均の日足チャートでは、引き続き下値を試す動きとなりそうである。「窓理論」では7/4に出現した買いサインが“ダマシ”となっており、軸が下向きの可能性が高いことを示している。短期的には下方の窓(8730.79円―8803.33円)を埋めるパターンであり、最大で290円程度の下落余地がありそうだ。
 
 本日の東京株式相場は全般的にさえない動きとなるだろう。米雇用統計という重要イベントを通過したことで、買い安心感は漂いやすいが、何と言っても買い材料に乏しい。欧英中が金融緩和に踏み切るなか、日米はそれほど金融緩和ムードが高まっていない。経済指標がそこそこ堅調であり、金融緩和する理由に乏しいのだ。これが株価を下落させる要因になっている。

 そして先週、ECBがファシリティー金利(市中銀行がECBに預けている預金の金利)を0%にしたことで、欧州銀の“運用難”が鮮明になっている。消去法的に円債が買われやすくなっており、日本の2年物国債利回りが0.1%割れとなっているのだ。これでは円高が進むわけである。

 一方、日銀は7/12(木)の金融政策決定会合で、「札割れ対策」程度の措置しか打ち出さない方針。資産買入基金を現状維持にするとの見方が有力であり、株式市場は“催促相場”の様相を呈しそうだ。株価が下落することによって、日銀に脅しをかけるということである。

 そして目先、投資家が気にしなければならないのが、尖閣諸島を巡る問題である。野田首相が国有化の方針を示したことで、にわかに中国世論が騒がしくなっている。一部ネット上には「日本製品をボイコットせよ!」という過激な書き込みもあり、日本企業に対する悪影響は少なからずともあるだろう。

 だが、このタイミングで野田首相が国有化を示唆したのは、「ポスト野田」を意識した結果であろう。野田首相にとって至上命題はもちろん「消費税増税」である。現時点ですでに参院での法案可決のメドが立っていることから、次のステージのことを考えるのは至極当然である。

 野田首相のバックについているのは、もちろん財務省や米国。米国の強い意志は「日本の対中関係の悪化」であり、できれが紛争や戦争を起こしたいと考えている。

 最近では日本近海にシェールオイルやレアアースなどの天然資源が発見されており、これが実用化されるとなると、米石油メジャーにとっては都合の悪い話となる。だから、中国との関係をわざと悪化させ、それによって近海での資源採掘をストップさせることができるのだ。日本人の対中感情はマスコミ扇動によって悪化させられている。そのワナにまんまと引っ掛かってはいけないのである。(黒岩の眼より)
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想