*13:07JST システム ディ Research Memo(7):山口県、岩手県の県全域の小・中学校に校務支援システムを導入(2)
■システム ディ<3804>の業績動向
(3) 公教育ソリューション事業
公教育ソリューション事業は公立の小・中・高校向けに統合型校務支援システム※「School Engine」をクラウドサービスで提供している。同じ学校向けでも、私立学校法人や独立行政法人である国公立大学を対象とする学園ソリューション事業とは事業環境が大きく異なる。違いの1つは自治体予算制度というもので、公立学校は各自治体の教育委員会の管理下にあり、エリア内の学校は共通予算で運営されている。このため、1校当たりの予算は私立学校と比較すると小さく、こうした状況に適合するため同社は「School Engine」を初期投資負担の少ないクラウドサービスでいち早く提供することでシェアを拡大してきた。
※統合型校務支援システムとは、教務系(成績処理、出欠管理、時数管理等)・保健系(健康診断票、保健室来室管理等)、学籍系(指導要録等)、学校事務系などを統合した機能を有するシステムのこと。同社の「School Engine」はこれらの機能のほかに生徒や保護者とのメール連絡網、グループウェア機能などがオプションで用意されている。
営業先も学園ソリューション事業とは異なり、高校は各都道府県、小・中学校は各市町村の教育委員会が窓口となる。案件を落札できれば当該教育委員会の管轄下にある学校すべてに導入されるケースが多い※。入札公示時期は自治体によって異なるが、7~8月公示の場合は9~10月に落札事業者が決まり、翌年4月までに導入して運用開始となる。
※高校については、市立、県・府立、特別支援学校など導入対象を細分化して決めている自治体もある。例えば、同社が導入実績のある京都府では市立高校のみ、滋賀県では特別支援学校のみの導入となっている。
2024年4月末の累計導入校数は前年同期比653校増加の4,571校(現役ユーザー数は4,134校)で、このうち公立高校の導入校数は1,700校を超え市場シェアで約5割※1とトップの地位を盤石なものとしている。公立高校で高シェアを確立した背景としては、約10年前に業界で初めてクラウド型校務支援システムの開発・提供を行ったことが大きい。ほかの自治体は導入実績を見て製品の採用可否を判断する傾向にあり、同社製品の利便性やコストパフォーマンスの高さが評価され採用が広がったものと考えられる。一方、小・中学校向けに関しては後発だったこともあり、市場シェアは1割強で業界3~4番手となる※2。
※1 文部科学省「学校基本調査」(令和5年度)によると、全国の公立高校数は3,455校、小・中学校数は27,764校。競合はSATT(株)、(株)エフワン、テクノコーポレーション(株)等。
※2 小・中学校向けは(株)EDUCOMが約36%とトップシェアを握り(約1万校、2023年12月)、スズキ教育ソフト(株)が約23%と2番手に続く。そのほか文溪堂<9471>、(株)両備システムズなどがある。
2024年10月期第2四半期累計の売上高は前年同期比1.7%減の788百万円となった。2024年4月に小・中学校を対象とした岩手県及び山口県の県域大型案件の本稼働を開始したほか、大阪府の高校入試オンライン出願システムも府立中学校選抜で稼働を開始するなど見込み案件は当初予定どおりに推移したが、新規導入校の売上寄与は4月からのため、売上が本格寄与するのは下期からとなる。
(4) 公会計ソリューション事業
公会計ソリューション事業では、地方自治体向けの公会計システム「PPP(トリプルピー)」※をパッケージ製品及びクラウドサービスで提供している。「統一的な基準」による地方公会計制度に完全準拠する「PPP(トリプル・ピー)Ver.5新統一基準対応版」を2015年10月にリリース以降、改善を重ねながら導入先を拡大し、現在は全国の過半数を超える自治体で利用されるまでになっている。また、2021年3月にリリースした「Common財務会計システム」は「PPP」の開発ノウハウをもとに、適用範囲を予算編成・執行から決算、出納管理、公会計まで広げたシステムである。地方公共団体が行う「歳入歳出決算」「地方財政状況調査(決算統計)」「統一的な基準による財務書類」の3つの決算を同時に処理することで早期の決算確定が可能となるほか、予算編成の際にPDCAサイクルを実現する各種分析ツールを標準装備するなど、決算処理や予算編成の業務省力化・効率化を支援する。既存製品にはない先進的な考え方を取り入れた製品となっているため自治体への導入実績はまだないが、公共団体で複数導入実績が出始めている。直近では、2023年10月に地方自治体向けに「公有財産管理システム」をリリースした。庁舎や学校、公園など地方公共団体が所有する財産の保有状況をまとめた「公有財産台帳」を管理するシステムで、「PPP」の「固定資産台帳」とも完全連携しているため「PPP」ユーザーにとっては財産管理業務の負担が大幅に軽減されるメリットがある。「公有財産台帳」に関してはExcelなど市販ソフトで管理する自治体も多く、「固定資産台帳」との二重管理により情報が食い違うなど問題も多かったが、同システムを導入することでこうした問題も解消されることになる。
※自治体会計(現金主義・単式簿記会計)を発生主義・複式簿記に基づいて公会計財務諸表と固定資産台帳を作成する機能を持つ。会計制度の新統一基準に完全対応したソフトウェア製品として業界に先駆けて開発したことで、トップシェアを握るまでに成長した。競合先としては、TKC<9746>のほか未上場のジャパンシステム(株)や(株)ぎょうせい、そのほか各地域に開発ベンダーがある。
2024年10月期第2四半期累計の売上高は前年同期比10.0%減の268百万円となった。2022年3月でサービスを終了した国策の競合製品(市場シェア約25%)からのリプレイス需要が2022年10月期で一巡し、その反動減が続いている。2024年4月末の累計導入自治体・関連公共団体数は前年同期比29団体増加の1,336団体(現役ユーザー数1,138団体)となった。「Common財務会計システム」の導入が公共団体向けで進んでいるほか、「公有財産管理システム」のファーストユーザーへの導入が決定した。
(5) ソフトエンジニアリング事業
ソフトエンジニアリング事業では、民間企業や金融機関、公益法人、学校法人等に、文書・契約書等の管理システム等を開発・販売している。具体的には「規程管理システム」や「契約書作成・管理システム」など社内のコンプライアンスやコーポレートガバナンスの強化を支援するためのソフトウェア製品で、高機能かつコストパフォーマンスに優れている点が高く評価されている。2024年4月末の累計顧客数は前年同期比41法人増加の659法人(現役ユーザー数439施設)と順調に拡大しており、競合先としては、ぎょうせい、第一法規(株)などがある。2024年10月期第2四半期累計売上高は、前年同期比9.4%増の155百万円と過去最高を連続更新した。コンプライアンス意識の高まりを背景に、大手民間企業や学校法人向けに導入が進んだ。
(6) 薬局ソリューション事業・その他
薬局ソリューション事業は連結子会社のシンクが手掛けている事業で、大阪府内の小規模の独立系調剤薬局に対してレセプトコンピュータ(レセコン)の「GOHL2」/「OKISS」を中心に各種業務システムを提供している。2024年4月末の累計顧客数は前年同期比3店舗増加の1,232店舗(現役ユーザー数370店舗)となっている。その他、中村牧場よるAI関連のコンサルティング事業も含まれる。
2024年10月期第2四半期累計の売上高は、前年同期比30.9%増の107百万円となった。薬局へのオンライン資格確認のためのシステム導入が一巡したものの、中村牧場の売上が上乗せ要因となった。オンライン資格確認とは、患者がマイナンバーカードを利用して医療機関や薬局を利用する際に、マイナンバーカードの個人情報と加入する医療保険の資格が一致しているかを確認することを指し、顔認証付きカードリーダーなどの設置やレセプトコンピュータの再設定作業などの特需が発生していた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(3) 公教育ソリューション事業
公教育ソリューション事業は公立の小・中・高校向けに統合型校務支援システム※「School Engine」をクラウドサービスで提供している。同じ学校向けでも、私立学校法人や独立行政法人である国公立大学を対象とする学園ソリューション事業とは事業環境が大きく異なる。違いの1つは自治体予算制度というもので、公立学校は各自治体の教育委員会の管理下にあり、エリア内の学校は共通予算で運営されている。このため、1校当たりの予算は私立学校と比較すると小さく、こうした状況に適合するため同社は「School Engine」を初期投資負担の少ないクラウドサービスでいち早く提供することでシェアを拡大してきた。
※統合型校務支援システムとは、教務系(成績処理、出欠管理、時数管理等)・保健系(健康診断票、保健室来室管理等)、学籍系(指導要録等)、学校事務系などを統合した機能を有するシステムのこと。同社の「School Engine」はこれらの機能のほかに生徒や保護者とのメール連絡網、グループウェア機能などがオプションで用意されている。
営業先も学園ソリューション事業とは異なり、高校は各都道府県、小・中学校は各市町村の教育委員会が窓口となる。案件を落札できれば当該教育委員会の管轄下にある学校すべてに導入されるケースが多い※。入札公示時期は自治体によって異なるが、7~8月公示の場合は9~10月に落札事業者が決まり、翌年4月までに導入して運用開始となる。
※高校については、市立、県・府立、特別支援学校など導入対象を細分化して決めている自治体もある。例えば、同社が導入実績のある京都府では市立高校のみ、滋賀県では特別支援学校のみの導入となっている。
2024年4月末の累計導入校数は前年同期比653校増加の4,571校(現役ユーザー数は4,134校)で、このうち公立高校の導入校数は1,700校を超え市場シェアで約5割※1とトップの地位を盤石なものとしている。公立高校で高シェアを確立した背景としては、約10年前に業界で初めてクラウド型校務支援システムの開発・提供を行ったことが大きい。ほかの自治体は導入実績を見て製品の採用可否を判断する傾向にあり、同社製品の利便性やコストパフォーマンスの高さが評価され採用が広がったものと考えられる。一方、小・中学校向けに関しては後発だったこともあり、市場シェアは1割強で業界3~4番手となる※2。
※1 文部科学省「学校基本調査」(令和5年度)によると、全国の公立高校数は3,455校、小・中学校数は27,764校。競合はSATT(株)、(株)エフワン、テクノコーポレーション(株)等。
※2 小・中学校向けは(株)EDUCOMが約36%とトップシェアを握り(約1万校、2023年12月)、スズキ教育ソフト(株)が約23%と2番手に続く。そのほか文溪堂<9471>、(株)両備システムズなどがある。
2024年10月期第2四半期累計の売上高は前年同期比1.7%減の788百万円となった。2024年4月に小・中学校を対象とした岩手県及び山口県の県域大型案件の本稼働を開始したほか、大阪府の高校入試オンライン出願システムも府立中学校選抜で稼働を開始するなど見込み案件は当初予定どおりに推移したが、新規導入校の売上寄与は4月からのため、売上が本格寄与するのは下期からとなる。
(4) 公会計ソリューション事業
公会計ソリューション事業では、地方自治体向けの公会計システム「PPP(トリプルピー)」※をパッケージ製品及びクラウドサービスで提供している。「統一的な基準」による地方公会計制度に完全準拠する「PPP(トリプル・ピー)Ver.5新統一基準対応版」を2015年10月にリリース以降、改善を重ねながら導入先を拡大し、現在は全国の過半数を超える自治体で利用されるまでになっている。また、2021年3月にリリースした「Common財務会計システム」は「PPP」の開発ノウハウをもとに、適用範囲を予算編成・執行から決算、出納管理、公会計まで広げたシステムである。地方公共団体が行う「歳入歳出決算」「地方財政状況調査(決算統計)」「統一的な基準による財務書類」の3つの決算を同時に処理することで早期の決算確定が可能となるほか、予算編成の際にPDCAサイクルを実現する各種分析ツールを標準装備するなど、決算処理や予算編成の業務省力化・効率化を支援する。既存製品にはない先進的な考え方を取り入れた製品となっているため自治体への導入実績はまだないが、公共団体で複数導入実績が出始めている。直近では、2023年10月に地方自治体向けに「公有財産管理システム」をリリースした。庁舎や学校、公園など地方公共団体が所有する財産の保有状況をまとめた「公有財産台帳」を管理するシステムで、「PPP」の「固定資産台帳」とも完全連携しているため「PPP」ユーザーにとっては財産管理業務の負担が大幅に軽減されるメリットがある。「公有財産台帳」に関してはExcelなど市販ソフトで管理する自治体も多く、「固定資産台帳」との二重管理により情報が食い違うなど問題も多かったが、同システムを導入することでこうした問題も解消されることになる。
※自治体会計(現金主義・単式簿記会計)を発生主義・複式簿記に基づいて公会計財務諸表と固定資産台帳を作成する機能を持つ。会計制度の新統一基準に完全対応したソフトウェア製品として業界に先駆けて開発したことで、トップシェアを握るまでに成長した。競合先としては、TKC<9746>のほか未上場のジャパンシステム(株)や(株)ぎょうせい、そのほか各地域に開発ベンダーがある。
2024年10月期第2四半期累計の売上高は前年同期比10.0%減の268百万円となった。2022年3月でサービスを終了した国策の競合製品(市場シェア約25%)からのリプレイス需要が2022年10月期で一巡し、その反動減が続いている。2024年4月末の累計導入自治体・関連公共団体数は前年同期比29団体増加の1,336団体(現役ユーザー数1,138団体)となった。「Common財務会計システム」の導入が公共団体向けで進んでいるほか、「公有財産管理システム」のファーストユーザーへの導入が決定した。
(5) ソフトエンジニアリング事業
ソフトエンジニアリング事業では、民間企業や金融機関、公益法人、学校法人等に、文書・契約書等の管理システム等を開発・販売している。具体的には「規程管理システム」や「契約書作成・管理システム」など社内のコンプライアンスやコーポレートガバナンスの強化を支援するためのソフトウェア製品で、高機能かつコストパフォーマンスに優れている点が高く評価されている。2024年4月末の累計顧客数は前年同期比41法人増加の659法人(現役ユーザー数439施設)と順調に拡大しており、競合先としては、ぎょうせい、第一法規(株)などがある。2024年10月期第2四半期累計売上高は、前年同期比9.4%増の155百万円と過去最高を連続更新した。コンプライアンス意識の高まりを背景に、大手民間企業や学校法人向けに導入が進んだ。
(6) 薬局ソリューション事業・その他
薬局ソリューション事業は連結子会社のシンクが手掛けている事業で、大阪府内の小規模の独立系調剤薬局に対してレセプトコンピュータ(レセコン)の「GOHL2」/「OKISS」を中心に各種業務システムを提供している。2024年4月末の累計顧客数は前年同期比3店舗増加の1,232店舗(現役ユーザー数370店舗)となっている。その他、中村牧場よるAI関連のコンサルティング事業も含まれる。
2024年10月期第2四半期累計の売上高は、前年同期比30.9%増の107百万円となった。薬局へのオンライン資格確認のためのシステム導入が一巡したものの、中村牧場の売上が上乗せ要因となった。オンライン資格確認とは、患者がマイナンバーカードを利用して医療機関や薬局を利用する際に、マイナンバーカードの個人情報と加入する医療保険の資格が一致しているかを確認することを指し、顔認証付きカードリーダーなどの設置やレセプトコンピュータの再設定作業などの特需が発生していた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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