【QAあり】アートネイチャー、国内毛髪業市場においてトップシェアを記録 業界をリードする商品開発力を活かす

投稿:2024/07/16 13:00

目次

千光士敦是氏(以下、千光士):株式会社アートネイチャー、経営企画部IR室長の千光士です。よろしくお願いします。

先ほどCMを流しましたが、社名は知っているものの、事業の特徴などはあまりわからない方が非常に多いのではないかと思います。本日は当社の特徴をしっかりとご説明したいと思います。

本日の目次です。当社の概要、事業の特徴、競争優位性、中期経営計画、通期業績見通し、株主還元の順にご説明します。

会社概要 -総合毛髪企業-

千光士:当社の概要です。設立は昭和42年で、オーダーメイドウィッグを中心とした総合毛髪企業のパイオニアとして、約60年取り組んでいます。

スライド上段に記載のとおり、当社のモットーは「ふやしたいのは、笑顔です。」です。髪にお悩みの方々の役に立ちたい、笑顔を増やしたいという思いを込めて、このようなモットーを描いています。

また、スライド中段あたりには、事業内容を記載しています。オーダーメイドウィッグや増毛商品の販売、そして育毛ケア・サービス、アフターサービスの提供を行っています。

従業員数はグループ全体で約3,900名、国内単体では約2,300名です。店舗数は、全国約280店舗になりました。既製品のウィッグを取り扱うジュリア・オージェというブランドも、約90店舗展開しています。

子会社について、ここでは海外のみをご説明します。オーダーメイドウィッグを製造する工場がフィリピンに2社あります。今年の初めにバングラディッシュにも設立しましたが、そちらはまだ稼働していません。その他、東南アジア周辺国に販売子会社があります。

沿革

千光士:当社の沿革をご説明します。スライド上段のメッセージにも記載のとおり、当社は業歴55年超の老舗ウィッグメーカーです。沿革をご説明するにあたっては、大きく4つのステージがあると思っています。

まず、1967年から男性市場を開拓し、その20年後、1987年に女性市場へ進出しました。そして、さらに20年後、2008年からは女性向けの既製品市場へ進出しています。

2019年以降は、より低価格なウィッグを取り扱う子会社の買収や、医薬品の販売スタートといった展開を実施しています。なお、上場市場については、現在、東証スタンダード市場に属しています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):沿革をご説明いただきましたが、創業のきっかけとして、どのようなことがあったのかを教えてください。

千光士:スライド左側に「1967年から男性市場がスタートした」とあります。当時はウィッグ、いわゆる「かつら」がポピュラーではなく、そこに創業者が着目しました。

あまり人に見られたくないものだったため、どのように販売すべきかを考える中で、「街の理美容室にプライベートな空間、つまり相談室のようなところを併設してビジネスをスタートしてはどうか」といったところから着想を得て、今のビジネスをスタートしています。

これにより、顧客の心理的な不安なども解消され、「プライバシーを守る」という現在のスタイルが確立されました。

坂本:このようなビジネスモデルは、日本では御社が初めて実行されたと思います。一方で、ウィッグ自体は海外などにもあったのでしょうか? 

千光士:おっしゃるとおりです。

商品・サービス別売上

千光士:商品・サービス別の売上とその構成比です。まず、スライド左側の円グラフの中央部分をご覧ください。2023年度の連結売上高は428億円でした。

その下の括弧内には、新しく購入されたお客さまの売上と、リピートされたお客さまの売上を分けて記載しています。ご覧のとおり、リピートの売上が約300億円と、全体の7割くらいを占めています。この円グラフの中身については後ほどご説明しますが、青色のオーダーメイドウィッグが52パーセントと、売上高の大半を占めている状況です。

次いでアフターサービスが多く、16パーセントを占めています。ウィッグは購入して終わりではなく、定期的にお店に通って、自毛のカットやウィッグのメンテナンスなどを行います。そのようなサービスの売上がここに集約されています。また、既製品のウィッグと増毛商品がそれぞれ約10パーセントを占めています。

オーダーメイドウィッグとは

千光士:主力のオーダーメイドウィッグをご紹介します。こちらは、頭のかたちやつむじの位置、分け目、白髪の割合などを、お客さま一人ひとりの特徴に合わせてオーダーメイドで作る商品になります。

また、男性向けと女性向けでは商品の特徴も違います。例えば、男性向けの商品では、お客さまの大半が「悩み」を抱えていますので、生え際から薄い部分をカバーする商品が一般的です。日常生活で常時着用されるため、自然さやフィット感などがニーズとして求められています。

一方、女性向けの商品は「悩み」以外にも「おしゃれ」を目的に使われる方が多く、冒頭で流したCMでも、森山良子さんがおしゃれのために使っています。外出やイベントなどでつけるケースを考えると、ニーズとしては、軽さやつけやすさが求められます。

坂本:大きさやオーダーメイドかどうかによって、金額に差が出てくるかと思います。ウィッグ1つあたりの金額はどの程度なのでしょうか? 

千光士:単価は仕様によってさまざまですが、目安として、オーダーメイドウィッグの場合は男性向け・女性向けともに50万円から60万円くらいです。現地の工場で、一人ひとりが手作業で約2ヶ月かけて製作するため、それなりの金額になります。

既製品のウィッグに関しては、ハイエンドなものであれば10万円から20万円、スタンダードなものであれば5万円から10万円で取り揃えています。

坂本:オーダーメイドで作る場合は3桁万円くらいかと思っていましたので、意外です。

千光士:仕様によっては、さらに金額が上がります。

坂本:そのようなのもあるということですね。

千光士:おっしゃるとおりです。

増毛商品とは

千光士:増毛商品の特徴をご紹介します。増毛商品は、ウィッグのように頭に装着するのではなく、自分の髪の毛に人工の毛髪をつけ、増やしたい場所に増やしたい分だけ増やせる商品となっています。

スライド右側にイメージ図がありますが、増やす本数は幅広く選べます。また、自毛に結びつける部分の太さが細くなり、結び目がより小さくなったことで、より自然に見えるようになりました。このように、増毛商品はきめ細かい特徴を有しています。

自毛がある程度ある方が購入されるため、30代から40代の若年層のお客さまが多い印象です。

坂本:途中で髪が伸びてくると、結び目も伸びてくるかと思います。カットなどのメンテナンスも行われているのでしょうか? 

千光士:先ほど、全国に280店舗あるとお伝えしましたが、基本的にはそこで、つけた後に自毛となじませるカットなどをセットで行っています。

坂本:そして、また増毛するイメージでしょうか? 

千光士:おっしゃるとおりです。

坂本:まつ毛エクステなど、最近は美容師の資格がなければ施術できないものもあるかと思います。増毛のこの処置は、資格のある方が行うのでしょうか? 

千光士:はい。頭を触る行為に関しては、理美容師の資格を持っている方でなければできないため、理美容師の資格保有者がすべて行っています。

坂本:増毛商品の売上を見ると、若干落ちてきています。これは、やはり新型コロナウイルスの影響なのでしょうか?

千光士:売上低迷については前期の決算時にもお伝えしていますが、新規販売に苦戦しているところが、今、結果として出ています。

昨年5月に、新型コロナウイルスによる感染症の分類が5類に移行し、個人消費もしっかりと増えてくると見ていました。しかし、そこを十分に新規販売へとつなげることができなかったところが課題です。

収益構造

千光士:収益構造についてです。スライドの円グラフは、売上に占める費目の割合を示しています。青色の売上原価が全体の33パーセントで、最も多い費目となっています。この売上原価は、お客さまに提供する商品の原価とスタイリストの人件費で構成されています。

次いで広告費と人件費が多く、ともに15パーセントくらいの割合を占めています。広告費は、新規のお客さまを獲得するために必要だと考え、それなりに費用をかけています。人件費に関しては、当社の事業が労働集約型であり、スタイリスト以外にも相応の人員が必要であるためだとご理解ください。

その他の経費は固定費の要素が強いものが多く、前期ベースの営業利益は約6パーセントです。

市場規模(国内ヘアケア市場規模推移)

千光士:ここからは、市場規模についてご説明します。

まずは、国内ヘアケア市場の推移です。スライドのグラフは、グレーがヘアケア剤市場、オレンジ色が発毛剤・育毛剤市場、緑色が植毛市場、そして青色が当社の属する毛髪業市場を示しています。

ご覧のとおり、直近の市場規模は5,166億円で、発毛剤・育毛剤市場の伸びを中心に成長している状況です。

次のページでは、青色のグラフにフォーカスした内容をご説明します。

市場規模(国内毛髪業市場規模推移)

千光士:スライドのグラフは、当社の属する国内毛髪業市場の推移です。ご覧のとおり、市場規模は横ばい、あるいは微減となっています。2020年度の新型コロナウイルス感染症拡大のタイミングで1,100億円台にまで減少しましたが、現在は徐々に回復してきています。

荒井沙織氏(以下、荒井):コロナ禍のタイミングでは、みなさまが外に出る機会が少なくなったと思います。このあたりは、どのような影響がどの程度あったのでしょうか?

千光士:コロナ禍で、ウィッグについてあらためて理解できた部分がありました。

男性のお客さまの多くは常に着用しているため、パンデミックや地震などの災害が起きた時でも、非常に多くの方が定期的に来店されました。したがって、男性向けに関しては、そこまでダメージを受けませんでした。

一方、女性のお客さまで、おしゃれのために使っている方は、外出自粛によってイベントなどがなくなったため、そのような部分で相応の影響を受けました。

荒井:女性向けは、化粧品と同じような影響があったということですね。

千光士:おっしゃるとおりです。

国内マーケットシェア(男女別)

千光士:男女別の国内マーケットシェアについてです。

スライド左側のグラフは、男性市場を表しています。当社のシェアは約3割を超え、国内No.1となっています。一方で、中央の女性市場No.1は、みなさまもご存じのアデランス社です。当社も徐々に増え、No.2のシェアとなっており、直近は3割近くまで伸ばしています。

なお、男女合算で見ると当社が国内No.1のシェアです。当社とアデランス社で市場全体の約6割を占めている状態であり、ここ数年、大きな変化はありません。

業績推移(売上高)

千光士:ここからは、売上高の推移をご説明します。スライドには、過去10年以上遡ったグラフを表示しています。

グラフの下に矢印がありますが、2015年3月期までは413億円まで徐々に増加してきたものの、そこから下がってきていることがわかるかと思います。その背景には、このタイミングで女性市場において競合が激化したことがあります。

例えば街のドラッグストアなどでも、非常に安いウィッグなどが販売されていた時期がありました。そのような影響があったという印象です。

ただし2018年3月期を底として、徐々に売上が上がってきました。その後、新型コロナウイルス感染症が拡大したタイミングで落ち込みましたが、コロナ禍前の水準を上回り、2023年3月期には430億円を超えることができました。

このように、業績は非常に安定して推移している状況です。

業績推移(経営指標推移)

千光士:経常利益、ROEの推移をご説明します。経常利益は2014年3月期の50億円超がピークとなっています。当社は男性向け事業の利益率が一番高く、そちらが伸びていたこともあり、利益率が非常に高かったということです。

そこからまた下がっているのは、女性向け事業の業績拡大に注力し、イベントや出店、販促費を増やしたためです。その結果、固定費が膨らんで減益傾向となりました。

新型コロナウイルスのタイミングで大きく減少しましたが、最近はコロナ禍前の利益水準に戻ってきている印象です。

特徴① ニーズに対応したラインアップ

千光士:事業の特徴をご説明します。1つ目の特徴は、ニーズに対応した幅広いラインアップです。

当社のイメージは、「ウィッグを販売している会社」かと思いますが、スライドでお示ししたとおり、「髪を増やしたい」「髪を育てたい」「髪をととのえたい」「美しく健康でありたい」など、お客さまのさまざまなニーズに対応できるサービスがあります。

特徴② 製造小売業

千光士:2つ目の特徴です。スライドに「製造小売業」と記載しているとおり、当社の主力商品であるオーダーメイドウィッグに関しては、商品の企画・開発から製造、販売まで、一気通貫した製造小売業の形態を取っています。

これにより、お客さまのニーズから出来上がったクオリティの高い商品を、定期的に販売できる体制が整っています。

特徴③ 反響営業とリピート営業

千光士:3つ目の特徴は、営業活動を「反響営業」と「リピート営業」に分けているところです。

当社は足を使って「ウィッグを買いませんか?」という営業活動をしているわけではありません。冒頭のCMにあったとおり、まずはさまざまな媒体に広告活動を展開し、潜在需要にアプローチします。そして、「お悩み層」「おしゃれ層」から当社にコンタクトを取っていただき、カウンセリングや試着などを経て契約に至ります。このような流れを、私どもは「反響営業」と呼んでいます。

特徴④ ストック型ビジネス

千光士:「リピート営業」の流れは、スライドの図でお示ししているとおりです。こちらが4つ目の特徴となる、ストック型ビジネスです。

お客さまになっていただいた後は、お客さま一人ひとりに担当スタイリストがつきます。定期的な来店のタイミングで、カットやメンテナンスなどのサービスを実施しながら信頼関係を構築し、しかるべきタイミングでお客さまのニーズに合った商品をリピートでご購入いただく流れです。

冒頭でご説明したとおり、このリピート営業に伴う売上高が売上全体の約7割を占めています。いかにしてお客さまにアートネイチャーのファンになっていただくかが、業績を安定させるための鍵だと思っています。

当社の競争優位性

千光士:当社の競争優位性について、スライドに記載の内容を、一つひとつご説明します。

アートネイチャーブランドの知名度

千光士:競争優位性の1つ目は、ブランドです。50年以上にわたって培ってきたブランドに加え、上場企業であることの社会的信用度の高さが業容拡大の推進力になっていると認識しています。

業界をリードする「商品開発力」

千光士:2つ目は、商品開発力です。当社は製造小売業として、企画から販売までを一気通貫で行っていますが、ここでは、スライド右側に記載している「新技術 ネイティブフロント加工」についてご説明したいと思います。

例えば左側の「従来品」は、ウィッグのベースとなるネットに毛髪を植えつけているため、結び目が目立ちます。しかしネイティブフロント加工では、この結び目が地肌に馴染むような特殊加工技術として、日華化学社の技術を採用しています。

自分の髪の毛がある方は、それほど気にならない部分ですが、自然さを追求する中でこのようなところに着目し、開発していくことが、当社の開発力の強みだと思っています。

全国をカバーする店舗ネットワーク

千光士:3つ目は、全国をカバーする店舗ネットワークです。当社は全国に280店舗以上を展開しており、どこでも同じクオリティのサービスが受けられるところがポイントとなっています。

以上のことから、他社が同様の商売を展開しようとしても、参入障壁が非常に高いのではないかと思います。

専門技術をもった数多くの理美容資格取得者を保有

千光士:4つ目は、当社に在籍する国内従業員の約8割(1,800名)が理美容資格取得者であることです。

先ほど、増毛商品やウィッグを取り扱えるのはスタイリストだとお伝えしました。多くのスタイリストが街の理美容室から転職してきますが、当社のビジネスはすぐにできるものではなく、さまざまな専門技術が必要です。スライド左側に記載しているとおり、ウィッグの取り扱いであるブローやセット、メンテナンスなどを半年から1年かけて学び、現場に出るかたちです。

当然ながら、現場に出した後も、階層別の研修などをしっかりと行いながら、技術力を日々向上させています。

強固な財務状況

千光士:5つ目は、強固な財務状況です。バランスシートなどからわかる内容だと思いますが、スライド左側の営業キャッシュフローは、常に20億円以上を獲得できています。フリーキャッシュフローに関しても、子会社の買収やシステム投資以外のところでは、安定してプラスとなっています。

この強固な財務体質を活かし、今後の成長に向けて、引き続き経営資源を有効活用していきたいと思っています。

当社の目指す姿

千光士:中期経営計画(以下、中計)についてご説明します。ボリュームが大きいため、今回は一部のみのご説明となりますが、当社IRサイトにて詳細を閲覧できますので、興味のある方はご覧ください。

まずは、当社の目指す姿です。当社は2017年から2026年までの10年間の長期ビジョンとして、「新しい未来を切り開く10年、Open the Future」を掲げ、3年ごとに中計を策定しています。現在は、3rd STEP「次代を切り拓くアートネイチャーの飛躍」のステージです。

中期経営計画の概要

千光士:スライドは、過去2回の中計の結果と今回の中計の概要を一覧にまとめたものです。

今回の中計の名称は「アートネイチャー Advance プラン」です。先ほど、「次代を切り拓くアートネイチャーの飛躍」とお話ししましたが、売上高は次の大台である「500億円超」を目指します。また、経常利益率およびROEは2桁成長を目指します。

中期経営計画の方針

千光士:スライドは、「アートネイチャー Advance プラン」の戦略方針についてです。

まずは環境認識です。当社のメイン顧客はシニア層ですが、最近はアクティブシニアも増えてきているため、消費行動が活発になっています。

また、国内の毛髪市場規模も回復しつつあります。そこに対して当社の強みを活かし、女性向け事業を中心にしっかりと拡大させていきます。そして、国内のマーケットリーダーとしてのポジションを確立することが、戦略方針の1つです。

もう1つの方針は、新たな領域の獲得と拡充です。

坂本:シェアの向上は、御社が長らく目指されているところだと思います。戦略としては、差別化や顧客の接点の創出、出店戦略などが非常に大事だと考えていますが、このあたりの取り組みも含めて、もう少し詳しく教えてください。

千光士:先ほど、差別化戦略の特徴をお伝えしましたが、やはり当社の強みは開発力であり、他社にはない強さだと思っています。高付加価値の商品を定期的にしっかりと市場に出すところは、差別化戦略の注力すべき点になります。

プロモーションについては、冒頭でお話ししたとおり、キャラクターなどを用いながら取り組んでいます。現在も試行錯誤しながら、CMのシチュエーションやタレントなど、さまざまな反響を見ながら作っています。差別化戦略として、これらにしっかりと取り組んでいくかたちになるかと思います。

顧客接点の創出に関しては、これまでもイベントや催事などを実施していますが、より効率的、かつ積極的に取り組んでいきます。

受け入れ体制について、「反響営業」のかたちでCMからお問い合わせいただく流れがありましたが、スマートフォンの利用者が増え、この流れが難しくなってきています。したがって、ふらっと来店することが可能な受け入れ体制にできるよう、試行錯誤しているところです。

出店戦略は、オーダーメイドを取り扱う店舗は、全都道府県にあるため、移転やリニューアルが中心になります。一方で既製品のウィッグを取り扱うジュリア・オージェは、まだ出店していないエリアがあるため、出店の余地があると思っています。

主要テーマと指標

千光士:スライドは、中計の主要テーマと指標です。主要テーマは「価値創造」「サステナビリティ推進」「市場との対話」と、大きく3つに分けています。

「価値創造」の部分は、先ほどご説明したとおりです。「サステナビリティ推進」に関しては、「持続可能な社会の実現」と「持続的な企業価値の向上」に分け、さまざまな取り組みを実施していきます。

「市場との対話」は、よりわかりやすい情報開示などを推進すべく、新たな情報の開示や追加の株主還元策の検討に取り組んでいきます。

資金計画

千光士:資金計画については、営業キャッシュフローが毎年30億円から50億円程度入りますので、この営業キャッシュフローと手元資金を活用します。

キャッシュ配分は、事業投資が年間30億円です。女性向け事業を伸ばそうとしているため、そちらへの投資やシステム投資が多くなっています。

株主還元については、安定配当の継続や、魅力的かつ追加的な株主還元策を検討していきます。

残りのキャッシュは、戦略方針の1つに掲げていた新たな事業に、3年間で100億円を上限として成長投資を行っていきたいと考えています。

坂本:新事業は、どのようなものをお考えでしょうか? M&Aもこの中に含まれているかと思いますが、お話しできる範囲でもう少し詳しく教えてください。

千光士:新事業は、本業と隣接した「美と健康」に係る事業を獲得していきたいと考えています。また、獲得にあたっては自社による新事業開発だけでなく、M&Aなども検討していきます。

坂本:現在行っている海外展開と、今後の展開についても教えてください。また、海外の増毛やウィッグ市場はどのようになっているのでしょうか? 日本のように、御社とアデランス社が寡占になっているなど、構図も含めて教えてください。

欧米にはガリバーがいるのかどうかもイメージできると、投資家の方々の理解も深まるかと思います。

千光士:当社は、ジュリア・オージェという既製品ブランドの商品を、シンガポール、タイ、マレーシアに出店して取り組んでいます。しかしながら、個別に開示できるような売上規模ではないのが現状です。

海外の市場規模は統計的なデータが少なく、国内のように情報が得られません。しかしテレビなどで、「現在の日本の毛髪市場約1,100億円に対して、中国はその3倍の市場規模がありそうだ」といった情報が流れています。ですので、特にアジアでは、ウィッグのニーズが間違いなくあると認識しています。

ただし、欧米などはアデランス社が先行して市場に進出していますので、当社が少し遅れているかたちです。

坂本:欧米には、現地のメーカーもあるのでしょうか?

千光士:詳しい情報までは把握していませんが、現地にもあると思います。ただし、当然ながら、海外は気候が違いますし髪質も違います。したがって、私たちの商品がすぐ海外に売れるかどうか、ニーズを慎重に調べながら展開すべきだと思っています。

2025年3月期 通期連結業績計画

千光士:通期の業績見通しについてご説明します。スライドは、2025年3月期の計画サマリーです。2024年3月期は減収減益でしたが、2025年3月期は増収増益を目指す計画です。

冒頭で、新規販売が苦戦しているとお話ししましたが、新規販売活動にしっかりと注力していくことで、まずは売上高を2023年3月期の売上水準にまで回復させます。

リピート販売、既製品ブランド(ジュリア・オージェ)の販売に関しては、当初計画の売上を十分に目指していけると見て、計画しています。

売上原価は、物価高や為替の影響による原価増を抑制すべく、原材料の入替などを検討しています。また、原価率の低減を目指し、既存モデルの価格改定も実施していきます。

販管費に関しては、人員の確保が非常に大事ですし、ベースアップも着実に行っていく必要がありますので、増えていくと予想しています。そのため、他の経費をさらに効率化させることで経費の伸びを抑えたいと考えています。

2025年3月期 商品・サービス別売上計画(単体/男女計)

千光士:単体ベースの商品・サービス別の売上計画です。全体的としては、スライドをご覧のとおり、主力のオーダーメイドウィッグを安定的に成長させていきます。スライド一番下から3行目のジュリア・オージェについて、2桁成長となるようしっかりと伸ばしていく計画です。

スライド右側には主要施策を記載しています。未出店エリアへの出店の推進やイベント・催事の工夫、新規顧客の受入体制の整備などを掲げて、しっかりと進めていきたいと思います。

2025年3月期の着地見込みに関するご説明は、以上となります。

株価推移

千光士:株主還元について、まずは株価の推移です。過去2013年まで遡ってご説明します。

2013年12月に東証一部へ市場変更した後、2014年8月をピークに株価が下落しましたが、コロナ禍以降の現在は、緩やかですが回復傾向にあります。

参考として、スライド下の表に6月28日の株価を記載しています。

株主還元

千光士:株主還元についてご説明します。従来、「安定的かつ継続的な配当の維持に努める」という基本方針を出していましたが、2024年3月期から新たな配当方針を設定しました。連結配当性向40パーセント以上を基本に、年間配当28円を下限として、連結業績に応じた配当を行います。

また、下線を引いていますが、ROEが10パーセントを超えるまでは、配当性向50パーセント以上を基本とします。

今年度および来年度に関しては、スライドに記載したような配当を予定しています。

質疑応答:男性向けビジネスと女性向けビジネスの売上比について

坂本:「御社のビジネスには、男性向けと女性向けがありますが、売上比を教えてください」というご質問です。

千光士:売上比は、概算で6対4くらいになると思います。女性向けの売上がまだ十分ではないため、そちらをしっかりと伸ばしていくことが戦略としてあります。

質疑応答:円安の影響について

坂本:「生産が海外だとうかがっています。円安の場合は、収支に影響が出るのでしょうか? 感応度を含めて教えていただきたいです」というご質問です。

千光士:主力のウィッグは海外から仕入れているため、円安はマイナスの影響があります。ただし、オーダーメイドウィッグの材料や既製品ウィッグについては相応の在庫があるため、円安の影響をすぐに受ける状況ではありません。

質疑応答:自社株買いや株主優待などの還元について

坂本:「自社株買いや株主優待などの還元はあるのでしょうか?」というご質問です。

千光士:そうですね。自社株買いはメリットがある一方で、流動性が低いというデメリットがあります。メリットのみならず、デメリットなども考慮しながら検討していきます。

株主優待についても、コスト負担の問題があります。したがって、業績の動向などを見ながら、どちらも慎重に検討を続けるかたちになると思います。

質疑応答:アデランス社以外のプレイヤーの動向とM&Aの可能性について

坂本:「御社とアデランス社で、約6割のシェアを占めているというお話でしたが、残り4割のプレイヤーは、小さい会社がたくさんあるイメージなのでしょうか? その会社をM&Aすることはありますか?」というご質問です。

おそらく、独自の手法で増毛や育毛を行っている会社もあるため、全部の会社を買収できるわけではないと思いますが、同業他社のM&Aについての考えも教えてください。

千光士:現状、私たちの商品ラインナップは、オーダーメイドウィッグ、既製品ウィッグのハイエンドなものからスタンダードなもの、発毛剤など、ひととおり揃っている状況です。そのため、M&Aについて「ポジティブかつ積極的に」という考えは、あまりありません。

坂本:例えば女性向けに特化している企業であれば、御社の現在の戦略とマッチしそうな気がしますが、いかがでしょうか?

千光士:競合する大手企業には、スヴェンソン社やプロピア社がありますが、女性向けに特化して広く事業展開しているところはあまりありません。

坂本:男性向けが多いということですね?

千光士:おっしゃるとおりです。スヴェンソン社も男性向けに強みがあります。

坂本:業界のことがよくわかり、勉強になりました。

質疑応答:再生医療の進展に伴う業績への影響について

坂本:「最近は、再生医療が進んでいます。AGAの薬など、再生医療が御社の業績に対して逆風になることはありますか?」というご質問です。

千光士:市場規模のスライドのグラフをご覧ください。オレンジ色の発毛剤・育毛剤の市場を見ると、2013年の時点で約15パーセントだったものが、現在は約25パーセントにまで成長しています。一方で、私どもの新規販売は苦戦しており、隣接事業に持っていかれている印象です。

しかしながら、発毛剤は医薬品ではありますが、服用しても増やしたい部分を増やせるとは限りませんし、副作用もあります。それに対して、私どものウィッグや増毛は、増やしたい部分を着実に増やせますし、副作用もありません。加えて、自分とは違う髪質や髪色に変えておしゃれを楽しめる点でも、差別化ができていると認識しています。

市場としては、このような潜在需要が広がってきているため、いかにして私どものウィッグに振り向かせられるかが課題です。

荒井:併用している方は、けっこういらっしゃるのですか?

千光士:そのような方もいらっしゃいます。薬を飲み始めても、すぐ髪が増えるわけではありません、ですので、まずは増毛を始めて、薬が効いてくればそれを維持できるとも聞いています。

荒井:会社として、医療との連携などはないのでしょうか?

千光士:医療機関とのサポート事業がありますので、今後はそのような連携も、検討の余地があると思います。

坂本:確かに、よい窓口になるかもしれませんね。

質疑応答:物価高や円安に伴う商品の値上げについて

坂本:「物価高や円安の影響で、商品の値上げが行われていると思います。今後の価格改定の対象は、ラインナップの中でどのくらいあるのでしょうか?」というご質問です。

材料費などの変動で、今後の話は難しいと思いますので、足元の状況を教えてください。

千光士:2023年3月に、オーダーメイドウィッグを中心とした価格改定を実施しています。やはり物価高の影響で、現地の労務コストや材料費が上がったため、そこをまずカバーするために行いました。既製品ウィッグについても2023年8月に実施しており、原価を見ながら適宜行っている状況です。

補足として、新商品は年に2回出しているため、その時々の原価に合わせて価格を設定しています。したがって、物価高や円安の影響は織り込まれています。

質疑応答:4月、5月の売上が厳しい要因と通期の見通しについて

坂本:「4月、5月の月次の売上は、総じて厳しいと思います。御社は例年、第1四半期に最も稼いでいるため、この時期が厳しいと、通期の増収増益予想達成は難しいのでしょうか?」というご質問です。

現在進行中のため、詳細な回答は基本的に難しいと思いますので、4月、5月の売上が厳しい要因について、教えていただけますか?

千光士:鋭いご指摘をありがとうございます。実は今日、スライドを準備しようかどうか迷いました。こちらは投資家との面談でもよく聞かれるところです。

実はコロナ禍以降、納期の遅れがかなり生じています。例えば、お客さまに契約いただいてからウィッグを納品するまでに、約2ヶ月かかることがあります。

2ヶ月後に納品された時に売上が立つため、今までは3月期末までに売上が立つ予定だったものが、4月、5月にずれ込むことがありました。しかし、今年はそのような期ズレが解消されています。

つまり、前年割れはしているものの、計画の想定内で推移しているということです。投資家面談などで質問があった時には、このように回答しています。

坂本:4月、5月など、第1四半期の売上が大きい理由は、例えば「新年度からウィッグをオーダーメイドで作ろう」と考えた方が期末に契約し、それが2ヶ月後に納品され、売上が第1四半期に乗るためですか?

千光士:新生活が始まる方が多い時期ですので、おっしゃるとおりだと思います。

坂本:新生活で4月に欲しい方は、少なくとも1月、2月から準備をする必要があるのですね。非常によくわかりました。

質疑応答:顧客のボリュームゾーンとウィッグの価格について

荒井:一番高価なウィッグはどのくらいの価格ですか? 部分によって違うと思いますが、おおよその価格から、一番高いものまで教えてください。また、一番多い顧客層(ボリュームゾーン)についても教えていただけますか?

千光士:まずはボリュームゾーンからお話しします。男性は、40代から60代の働き盛りの方々がメイン顧客です。

女性は60歳以上の方が多く、70歳、80歳の方もいらっしゃいます。やはり女性は年齢が上がるにつれて、髪の毛の悩みがより深刻になる傾向があります。「いつまでも若々しくありたい」と考えて、その悩みの解決に着手する方が非常に多い印象です。

商品の価格に関して、具体的な数字は開示していませんが、一般的には50万円から60万円程度です。それ以上の価格帯の商品も、相応にあります。

千光士氏からのご挨拶

本日はお忙しい中、ご視聴いただきありがとうございました。スタジオでの配信は初めてで緊張しましたが、当社の事業紹介を通じて、みなさまに理解を深めていただけたかと思います。

当社の収益は安定しており、今回、新たな配当方針も策定しました。個人のみなさまにより着目していただけるよう、引き続き力を尽くしますので、今後もご注目ください。ありがとうございました。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:歴史のある企業だと思いますが、DX化は進めていますか?

回答:当社では、お客さまの利便性向上や現場の生産性向上を目的として、システムのDX化を推進しています。

具体的には、契約書類の電子化やWEB会議の活用等のような一般的な業務のDX化のほか、お客さま専用アプリの導入や自動化ツール導入による電話受付業務の効率化等、当社特有の業務DX化も実現しています。今後も同様の目的やお客様満足を高めるために、継続的にDX化を推進します。

配信元: ログミーファイナンス

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