S&P500月例レポート(24年7月配信)<後編>
企業業績
○2024年第1四半期の決算発表を501銘柄(500社で503銘柄を構成)が終え、そのうちの386銘柄(77.0%)で営業利益が予想を上回り、499銘柄中293銘柄(58.7%)で売上高が予想を上回りました。2024年第1四半期の営業利益は前期比で1.4%増、前年同期比では4.0%増が見込まれています。
⇒売上高は前期比で3.7%減、前年同期比では4.5%増となる見通しです。
⇒2024年第1四半期の営業利益率は、2023年第4四半期の12.09%と2023年第1四半期の11.64%を下回る11.58%になると予想されます(1993年以降の平均は8.41%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
⇒2024年第1四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は13.3%となっています。この割合は、2023年第4四半期は12.6%、2022年第4四半期は18.5%でした。
○2024年第2四半期については、決算期がずれている17銘柄が発表を終え、そのうち14銘柄で利益が予想を上回り、16銘柄中11銘柄で売上高が予想を上回りました。
⇒2024年第2四半期の営業利益は前期比6.6%増、前年同期比6.1%増と予想されており、過去最高を更新する見通しです。
○2024年通年の利益は前年比12.9%増が見込まれており、この予想に基づく2024年の予想株価収益率(PER)は21.9倍となっています。
○2025年通年の利益は前年比14.7%増が見込まれており、予想PERは19.1倍となっています。
個別銘柄
○iPhoneメーカーのアップル
○電気自動車メーカーテスラ
注目点
○米財務会計基準審議会(FASB)は、政府の補助金がより一般的になるのに伴い、企業の財務報告書上での政府補助金の会計処理について要件を定めることを4対3で可決しました。
○ヒューレット・パッカード・エンタープライズ
○ブラックロック
○半導体メーカーのエヌビディア
⇒高値銘柄が大幅な株式分割を行うのは、経営陣が、個人投資家による株式購入を促進するために、株価の引き下げを望んでいることを示しており、投資家への注意喚起となっています。株式分割は通常、取締役会による信任投票とみなされています。
○エヌビディアは1925年末以来、世界最大の株式公開銘柄となった12番目の企業となりました。12社のすべてが今でも存続しており、株式が取引されています(別の企業名で上場している銘柄や、株式分配後の銘柄もいくつかあります)。AT&T
配当金
○2024年第2四半期の配当金は1株当たり18.28ドルで、前期の18.06ドルから1.3%増加し、前年同期の17.13ドルから6.7%増加しました。2024年第2四半期の支払総額は1534億1000万ドルで、前期の1516億1000万ドルと前年同期の1432億ドルを上回りました。
○2024年6月の配当支払額は前年同月比15.1%増となりました。5月は同1.5%増、4月は同5.2%増でした。年初来では4.8%増加しています。
⇒6月の配当支払額は前年同月の1株当たり5.49ドルから6.32ドルに増加し、支払総額も前年同月の458億9000万ドルから530億5000万ドルに増加しました。
○2024年6月は、増配が12件、配当開始が0件、減配が0件で、配当停止は0件でした。2023年6月は、増配が11件、配当開始が2件で、減配と配当停止は0件でした。
⇒年初来では、増配が181件、配当開始が5件、減配が9件、配当停止が0件となっています。2023年の同期間は、増配が189件、配当開始が5件、減配が12件で、配当停止は4件でした。
⇒2023年通年では、増配が348件、配当開始が11件、減配が26件、配当停止が4件ありました。2022年は、増配が377件、配当開始が7件、減配が5件で、配当停止はありませんでした。
○6月の増配率の中央値は、5月の6.12%および4月の7.18%から2.62%に低下し、年初来では6.78%(5月末時点は6.78%、4月末時点は6.90%)となっています。6月の平均増配率は5月の7.05%から8.82%に上昇し(デルタ・エア・ラインズ
○2024年の配当に関して、予想は増加となっており、年間の増配率は1936年以降の平均である5.79%を上回る見通しです。この予想では、アルファベット
⇒注目すべき点として、2024年第3四半期と2024年第4四半期の配当支払い額は、過去最高の更新が予想されます(現在の過去最高は2023年第4四半期)。
⇒6月末以降、米連邦準備制度理事会のストレステストの対象となった米大手銀行(31行すべてが合格)も、増配の意向と自社株買いプログラムの更新を表明しました。
インデックス・レビュー
◇S&P 500指数
2024年も折り返しを迎える中、少なくとも大型株や時価総額加重平均型インデックス(S&P500指数など―敢えて無防備で言えば)、あるいはマグニフィセント・セブンを保有する投資家にとって、まさにパーティーの局面を迎えています。エヌビディア
注目すべきなのは、6月に値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回ったことです(上昇が201銘柄、下落が301銘柄)。第2四半期全体で見ても、同じ7銘柄、中でも現在脚光を浴びているエヌビディアの1銘柄に後押しされて、S&P500指数が3.92%上昇したにもかかわらず(4月の4.16%下落は5月の4.80%上昇よって打ち消されました)、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を極めて大きく上回りました(上昇が199銘柄、下落が304銘柄)。年初来では14.48%上昇していますが、値上がり銘柄数が上回っています(上昇が301銘柄、下落が200銘柄で、幅広く上昇した第1四半期の10.18%高が支援材料に)。
「授かり物」をポートフォリオに組み入れたいとは思いませんが、この「授かり物」を除外すると、S&P500指数の年初来のトータルリターンはプラス15.29%からプラス6.27%(上半期としては良好なリターン)まで低下します。もっとも、上がったものは下がる可能性があり、エヌビディア株が6月の3日間より長い下落局面を迎えることもあり得ます(少なくとも、そうした憶測があります)。ただし、値下がりについていくのは値上がりについていくことほど楽しくはありません。
6月のその他の明るい側面として、市場において、FRBによる利下げの後ずれ(経済と企業利益が持続する限り)や地政学的問題(ガザとウクライナの問題に加え、米国以外の国での選挙に向けた動き)、あるいは懸案となっている米大統領選挙(筆者自身は個人的に注目しており、投票にもおそらく参加するつもりですが、7月1日の討論会の前後には酒量が増えるかもしれません)が悪材料視されることはありませんでした。値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回る中でも、6月のS&P500指数は3.47%と顕著に上昇しました。同指数の11セクター中5セクターが上昇しています。
マグニフィセント・セブンは6月の同指数のトータルリターンの79%に寄与しており、これら7銘柄を除くと、プラス3.59%であった6月のトータルリターンはプラス0.76%まで低下します。くどいかもしれませんが、これでもなお素晴らしい結果ですが、7銘柄を含めた場合には遠く及びません。多くの人々が普段の会話でマグニフィセント・セブンが話題に上るのにうんざりしていますが、数字にこだわる投資家は、(少なくとも年初来では)自身のポートフォリオでこれらの銘柄を目にするのを望むでしょう。売りのタイミングに関して、筆者は自身の保有銘柄に基づき、正常に回帰しようとする一般投資家の側に立っています。プロが推奨する銘柄と一般投資家が保有する銘柄は異なるものですが、一般投資家は誰もがすぐに売れる態勢にあると思われます。
7月は決算と、そしてより重要な点として、2024年下半期の業績見通しが相場を左右するでしょう(企業は2025年について控えめな見通しを示そうとしており、見通しには米大統領と連邦議会の構成に関する選挙結果を織り込む必要があります)。2024年第2四半期の決算発表が7月12日の金曜日に、シティグループ
現在、楽観的なウォール街は、企業利益は(大半が職を維持し、支出をためらわない)消費者と(借り入れを通じて、支出が拡大の一途を辿っている)政府という2つの忠実な顧客層により下支えされるとみています。利益が成長し続ける限り、市場はマネーを追い続けるでしょう(少なくとも、願わくは)。
6月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は0.7684%と5月の0.7687%からわずかに低下し、年初来では0.83%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。6月の出来高は、5月の前月比4%増加の後に、同1%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では4%減となりました。2024年6月までの12ヵ月間は前年同期比6%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年は同6%増でした。6月は1%以上変動した日数は19営業日中1日(上昇が1日、下落が0日)で、2%以上変動した営業日はありませんでした。5月は1%以上変動した日数は22営業日中3日(上昇が3日、下落が0日)でした。年初来では、1%以上変動した日数は21日(上昇が14日、下落が7日)で、2%以上変動した日数は1日(上昇)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。
6月は19営業日中4日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日ありませんでした。対して5月は1%以上の変動が22営業日中4日で、2%以上変動した日数はありませんでした。年初来では、33日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動は2日でした。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。
6月は値上がり銘柄数が減少し、値下がり銘柄数を下回りました。S&P500指数は上昇したものの、6月の値上がり銘柄数は201銘柄(平均上昇率は5.20%)と、5月の327銘柄(同6.66%)から減少しました。6月の10%以上上昇した銘柄数は29銘柄(同15.67%)と、5月の62銘柄(同16.77%)から減少し、25%以上上昇した銘柄はありませんでした(5月は8銘柄)。一方、6月の値下がり銘柄数は301銘柄(平均下落率は4.28%)と、5月の176銘柄(同4.84%)から増加しました。6月は10%以上下落した銘柄数が5月(同14.90%)と同じ21銘柄(同15.76%)で、1銘柄が25%以上下落した銘柄しました(5月はゼロ)。
2024年年初来では、値上がり銘柄数は301銘柄(平均上昇率は16.27%)で、173銘柄(同24.46%)が10%以上上昇し、56銘柄が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は200銘柄(平均下落率は11.16%)で、91銘柄(同18.92%)が10%以上下落し、16銘柄が25%以上下落しました。2023年通年では2022年から改善し、値上がり銘柄数は322銘柄で、値下がり銘柄数は179銘柄でした。10%以上上昇した銘柄数は248銘柄、10%以上下落した銘柄数は85銘柄でした。143銘柄が25%以上上昇し、20銘柄が25%以上下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
https://www.spglobal.com/spdji/en/documents/performance-reports/sp-global-equity-indices-monthly-update.pdf?force_download=true
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