脱炭素社会を支える影の立役者、「蓄電池」関連株が上昇気運に乗る <株探トップ特集>

配信元:株探
投稿:2024/05/15 19:30

―G7エネ相会合は電力貯蔵量の増加で合意、重要性を強調するIEAレポートも刺激―

 4月29~30日にイタリアのトリノで主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合が開かれ、温室効果ガスの削減対策について議論が交わされた。このなかで、2023年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)で定めた「30年までに世界の再生可能エネルギーの発電容量を3倍に引き上げる」との目標に向け、蓄電池などによる電力貯蔵量を22年比で6倍以上の1500ギガワットに増やすことで合意した。国際エネルギー機関(IEA)が4月に公表した特別レポートで、蓄電池が果たす役割の重要性を強調していることもあり、関連銘柄に改めて注目したい。

●次期エネ計画に向けて存在感増す

  蓄電池とは、繰り返しの充電・放電が可能な電池のことで、リチウムイオン電池やナトリウム硫黄(NAS)電池などがあり、電極間でイオンの移動や化学反応を起こし充放電する。世界的に 脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネの拡大機運が高まっているが、太陽光や風力といった発電は天候に左右されやすく、導入を進めるためには電力の需給をコントロールできる蓄電池の普及が必要不可欠だ。今年は約3年ごとの見直しが行われる「エネルギー基本計画」の議論が本格化するとみられ、国際公約となる35年の脱炭素目標の更に先を見据えた電源構成をどう定めるかが焦点となりそうだが、こうしたなかで蓄電池が主役に躍り出る可能性がある。

 また、文部科学省所管の科学技術振興機構(JST)が「革新的GX技術創出事業」として、4月3日から蓄電池領域における追加の研究開発テーマを募集していることも関連銘柄の刺激となりそうだ。テーマは電池の用途拡大に欠かせない「高安全性を実現する電池開発」、産出国が限られるリチウムに替わる「資源制約フリーを実現する電池開発」、移動体や携帯デバイスなどの需要の高まりを受けた「軽量・小型・大容量を実現する電池開発」の3つで、募集の締め切りは5月21日の正午が予定されている。

●再生可能エネ拡大を支える銘柄群

 直近ではUNIVA・Oakホールディングス <3113> [東証S]が次世代蓄電池開発事業に参入すると発表した。蓄電池などの開発・製造・販売を手掛けるアールエスケーホールディングス(東京都千代田区)から安価で大量供給が可能なマグネシウムを利用した蓄電池製造技術を6月に譲り受ける予定となっており、新たな事業ポートフォリオを構築することで収益力向上につなげたい考えだ。

 ダイヤモンドエレクトリックホールディングス <6699> [東証P]はこのほど、東京電力ホールディングス <9501> [東証P]との共同研究製品であるマルチリンク蓄電システム「EIBS V(アイビス・ブイ)」の出荷を開始。これは 太陽光発電と電気自動車(EV)、及び蓄電池を同時に制御する多機能パワーコンディショナーと、V2H(Vehicle to Home)ユニット、蓄電池ユニットを組み合わせたものとなっている。

 GreenBee <3913> [東証G]は8日、中国の北京グリーン・バナジウム・ニュー・エナジー・テクノロジーが開発・製造するバナジウムレドックスフロー蓄電池を販売すると発表した。同蓄電池は二次電池の一種で、イオンの酸化還元反応をバナジウム電解液のポンプ循環によって進行させて充電と放電を行うもの。主流のリチウムイオン蓄電池と比べて電解液の劣化がほとんどなく、20年超の長寿命、長期安定稼働を実現できるといった特徴があるという。

 日本リビング保証 <7320> [東証G]は4月、国際航業(東京都新宿区)が再生可能エネ関連事業者向けに提供する月額制クラウド型の太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションサービス「エネがえる」シリーズのオプションとして、国内初となる「経済効果シミュレーション保証」を提供すると発表。「エネがえる」を利用して算出した経済効果シミュレーションに基づいて太陽光発電システム(産業用・住宅用ともに対象)を導入したにもかかわらず、対象機器の稼働率が低下し、これによって年間発電量実績が年間補償発電量を下回った場合、支払限度額を上限として、その損害を補てんする。

 日本ガイシ <5333> [東証P]は4月、ドイツの大型グリーン水素製造プロジェクト向けに電力貯蔵用NAS電池を受注したことを明らかにした。再生可能エネの導入が進むなか、NAS電池がターゲットとする大容量・長時間蓄電池のニーズが広がっているとしており、独BASFとの販売提携を活用しながら大型案件の受注拡大を目指す構えだ。

 このほかでは、蓄電池などの分散型エネルギーリソースを運用する事業者向けに最適運用計画を策定するサービスを提供する三菱総合研究所 <3636> [東証P]、レドックスフロー電池を展開する住友電気工業 <5802> [東証P]、系統用蓄電池向けユニット型パワーコンディショナーを開発済みのダイヘン <6622> [東証P]、系統用蓄電池設備を手掛けるジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> [東証P]、再生可能エネ蓄電用としてバイポーラ型鉛蓄電池を実証中の古河電池 <6937> [東証P]などをマークしておきたい。

●産業・家庭用を手掛ける企業にも注目

 昨今の電気料金の高騰を受けて産業用や家庭用の需要も一段と高まるとみられるなか、ニシオホールディングス <9699> [東証P]傘下の西尾レントオールと新トモエ電機工業(東京都大田区)は今月13日、スペインのヒモインサが販売するバッテリーシステムの日本国内での展開に向け、プロトタイプを用いた実証試験を開始すると発表。第一カッター興業 <1716> [東証S]は4月、自動車エンジニアリングサービスを展開するブルースカイテクノロジー(神奈川県厚木市)と協力し、可搬式発電機の代わりとなるプロトタイプの可搬式蓄電池を開発したことを明らかにした。

 家庭用ではグリムス <3150> [東証P]、リミックスポイント <3825> [東証S]、エヌエフホールディングス <6864> [東証S]、京セラ <6971> [東証P]、ニチコン <6996> [東証P]などが展開している。

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