システムサポート Research Memo(8):クラウドサービス市場は今後も高成長。中期業績は年率2ケタ成長を目指す

配信元:フィスコ
投稿:2024/03/06 15:28
*15:28JST システムサポート Research Memo(8):クラウドサービス市場は今後も高成長。中期業績は年率2ケタ成長を目指す ■今後の見通し

2. 中期経営計画
(1) 中期経営計画の概要
システムサポート<4396>は2022年8月に3ヶ年の中期経営計画を発表し、1年を経過した2023年8月に市場環境の変化や業績の進捗状況を考慮したうえで2026年6月期までのローリングプランを新たに策定した。中期テーマとして掲げた「成長と更なるイノベーションの創出」、並びに重点施策である「顧客・社会のDX推進の基盤となるサービスの拡充」「多様な人材の成長と活躍」「ESG経営の強化」に取り組むことで、2026年6月期に売上高26,805百万円以上、営業利益2,407百万円以上、営業利益率9.0%以上を目指す。3年間の年平均成長率では売上高で11.6%、営業利益で18.2%を上回る成長となる。国内のクラウドサービス市場はAIソリューションなど活用領域が広がることで、中期的に年率2ケタ成長が続く見通しで、人材の採用育成が順調に進めば業績目標の達成は実現性が高いと弊社では見ている。

(2) 事業セグメント別の成長戦略
a) クラウドインテグレーション事業
ITシステムのクラウドシフトが継続し、クラウドサービス市場の拡大が続くとの予測のもと、既存事業の伸長及び対応領域の拡大に注力するとともに、リセールによるストック型収益の積み上げによって高成長の実現と安定性向上を図る。売上高は2023年6月期の5,319百万円から2026年6月期には10,000百万円を上回る規模を目指しており、このうちストック売上の比率は31%から40%台前半まで上昇すると見込んでいる。3年間の売上増分の約5割をリセール収入で稼ぎ出すことになるため、利益率は低下するが収益の安定性は一段と向上する。

既存事業の伸長に関しては、技術者の採用・育成を進めるとともに、顧客の利便性と同社グループの生産性を向上させるための独自サービスの開発を強化し、競合するクラウドインテグレータとの差別化を図る。一方、対応領域の拡大については、海外の新クラウドサービスをいち早く日本市場で展開するための投資を積極的に進めていく。直近ではプロセスマイニングプラットフォームのCelonis EMSソリューションが伸び始めており、今後の成長が期待できる。そのほかにも前述したAI関連ソリューションの需要が爆発的に伸びる可能性があり、今後の動向が注目される。

なお、成長の源泉となる人材の採用・育成施策としては、1) 本社一括採用ではなく各拠点に採用担当を配置し、機動的な採用を行うとともに応募者とのミスマッチを防止していくこと、2) クラウド分野を中心としたベンダー資格取得を積極的に推進するなど技術者の育成を強化し、競争力の維持向上を図ること、3) 給与水準の向上や働きやすい環境を整備(総労働時間の削減、育休取得率や女性社員比率の向上)することで退職率を抑制し、人的リソースを拡充する方針だ。

b) システムインテグレーション事業
システムインテグレーション事業では、主力のERP関連を中心に着実に技術者の採用・育成を進めながら、顧客企業と密接な関係を構築し既存顧客内のプロジェクト拡大や継続受注につなげることで、年率1ケタ台の売上成長を目指す。また、品質・期間・コスト・リスクコントロールの観点でのプロジェクトマネジメントを強化することで不採算案件の発生リスク低減とサービス品質の向上を図り、収益性の維持向上に取り組む。

c) アウトソーシング事業
アウトソーシング事業では、データセンターサービスにおいて大手クラウドベンダーの顧客層とは異なる顧客をターゲットに新規顧客の開拓と既存顧客の利用業務拡大を図り、年率1ケタ台の売上成長を目指す。2022年以降、為替の円安進行とともに大手外資系クラウドサービスの利用料負担増が意識されるようになり、一部の企業ではプライベートクラウドを構築する動きも出てきており、こうした需要を取り込んでいく。データセンターの能力増強に関しては、稼働状況に応じて徐々に実施し品質向上と収益性確保を両立する。そのほかSAP社のERP製品の保守については、2027年に向けてニーズが高まることが見込まれており、石川県金沢地区でのニアショア要員の育成を進め体制を強化する。

d) プロダクト事業
プロダクト事業では、新規顧客開拓のため代理店等の販路拡大や広告宣伝を強化するほか、既存顧客内の利用部門拡大によるユーザー数増加を図る。プロダクト別では「建て役者」「SHIFTEE」のほか新製品となる「Smart Rabbit」の拡販に注力することで堅実な売上成長を目指す。また、カスタマイズ案件を減らしていくことで、月額利用料等のストック売上比率を2023年6月期の57%から2026年6月期は70%弱の水準まで引き上げ、売上増が利益増に直結する利益率の高い安定した収益構造に変えていく。また、他社プロダクトに対する競争力を向上すべく、機能強化についても継続して取り組む。

e) 海外事業
海外事業では、米国子会社において北米に進出する日系企業に対するITインフラや人材採用、マーケティングの支援サービスを行っていくほか、カナダの子会社においては日本との時差を利用した日本企業へのリモート監視サービスの提供、並びに会計業務のアウトソーシングサービスを強化し、海外事業単独で収益を得られる体制を強化していく。

(3) ESG経営の強化
同社は経営理念(社会への貢献、顧客サービス向上、価値の共有)に基づいたESG経営を通じて、社会課題の解決に取り組んでおり、以下の取り組みを推進している。

「環境(E)」分野では、脱炭素社会の実現のためCO2排出量目標を設定し、さらなる削減策を実施するほか、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に沿った開示体制を拡充し、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)に対しては回答及びスコアの向上を目指す。

「社会(S)」分野においては、DX人材の育成を通じて地方ビジネスの拡大及び経済活性化を目指す。具体的な取り組みとして、「金沢発、北陸地方IT都市化の実現」をコンセプトにした施設「Microsoft Base Kanazawa」を金沢駅前で運営している。同施設では産学官民のDXに向けた無償のDX教育の提供や、最新テクノロジーの体験も可能なクラウドを軸としたコミュニケーションの場として、オンラインセミナーの開催や商談スペース、コワーキングスペースとして利用されている。開設後の総受講者数は850名、受講団体数で120社(今後の予定含む)と順調に増加している。

「ガバナンス(G)」に関しては、企業価値の最大化に向けて業務の適正を確保するために必要な体制を整備し、適切に運用していくことが経営の重要な責務であると認識し、コーポレート・ガバナンスの整備・運用に積極的に取り組んでいる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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